前橋工業高校跡地の土壌汚染 近隣住民が「簡易な対策だけでなく汚染物質を完全に取り除いてほしい」と要望(赤城根08年9月3日号)
土壌汚染の対策が求められている前橋工業高校跡地(岩神町)
日本共産党市議団が前工跡地周辺の住民アンケート実施
日本共産党前橋市議団は八月二十五日、前橋工業高校跡地の土壌汚染で不安が高まっている岩神町で、住民アンケート調査を実施しました。長谷川薫市議会議員も参加しました。
詳しい状況説明を求める住民も多数
アンケートに答えた七割の方が「詳しいことはわからない」「もっと市は汚染状況や現在までの経過などを詳しく住民に知らせてほしい」と述べています。前工跡地に接している岩神町一丁目の方を対象にした説明会を実施していないことも分かり驚きました。
大多数が汚染対策が進まない現状に大きな不安
建物を解体して砕かれたがれきのままの前工跡地について、大多数の方が、鉛などの汚染物質による健康上の不安や環境汚染の不安を感じておられます。「これまでと違って砂交じりの風が強くなった」「砂ぼこり対策の塀や植栽を」「夫もがんで死んだ。自分もがんになった。土壌汚染も不安だ」「県と市が話し合い、両者が負担して解決すべき」という意見が多数出されました。
暫定措置ではなく汚染土壌の完全除去を求める意見が大多数
市は県との話し合いが進まないこともあり、跡地の汚染土壌の流出や飛散を防止するための暫定工事を計画しています。九月議会で補正予算(二千万円)を提案し実施を予定しています。
アンケートでは、アスファルト舗装などでの飛散防止や封じ込め工事でよいという意見は少数で、大多数の住民は「早期に汚染物質を完全に取り除いてほしい」という声を上げています。
跡地の今後の利活用についての要望も
さらに、岩神町には高齢者が多いこともあり、住民からは「早く跡地の利用ができるようにして老人介護施設を」「歩いて買い物ができるよう小規模スーパーを」という要望もあがっています。
前橋工業高校跡地の土壌汚染発覚の経過
●二〇〇六年一〇月十八日に前橋市(高木市長)が群馬県(小寺前知事)との等価交換契約によって工業高校跡地二・八㌶を取得。評価額は約十一億円。
契約条件は、①校舎の解体は前橋市が実施する。②前工に水質汚濁法にもとづく有害物質を使用する特定施設があったので、校舎解体後、土壌汚染状況の調査を市が実施する。③市は県に隠れた瑕疵を発見しても損害賠償の請求をしない。
●前橋市は緑化フェアーの駐車場などに前工跡地を活用するために去年七月までに校舎を解体。同年八月から今年の三月末までに土壌汚染調査を実施。費用は約三千三百万円。
●市は、前工跡地を四月三日に土壌汚染対策法にもとづく指定区域とし、立ち入り禁止措置にしました。
●土壌汚染調査は、跡地を一〇㍍四方三〇〇地点、最大一〇㍍の深度までボーリング調査実施。敷地のほぼ全域一・八㌶の土壌から、国が定める環境基準を大幅に超える汚染物質(六価クロム二・六倍、水銀二〇倍、鉛三百六十倍、砒素六・八倍、フッ素三倍)が検出されたと今年の四月二十一日に議会に公表。市環境課は「敷地内三箇所で行なった地下水の水質検査では基準値を超える汚染はなかった。今後飛散したりしないよう簡易舗装や盛り土などの応急対策工事を実施したい」と報告。
●長谷川議員が周辺地域の土壌調査や前工卒業生などの健康調査の実施、近隣住民対象の説明会の開催を要求
長谷川薫議員は、四月二十一日開催の市民経済常任委員会で、「アスベストと同じような簡易舗装による封じ込め工事は、一時的な緊急避難工事。地下水汚染防止のためにも土壌とともに近隣住民が口から有害物質を吸い込まないよう汚染土壌の除去あるいは土壌洗浄措置など有害物質を完全に除去すべき」と求めました。さらに、「高濃度の鉛による汚染は、中枢神経に影響を及ぼし精神遅滞や発達障害、不妊や高血圧症、さらに発がん性などの健康被害を及ぼす恐れがある。太平洋戦争中は同地一帯に軍需工場、その前は繊維工場があったので、旧前工に隣接する富士機械や民間住宅地の土壌汚染も心配される。周辺地区の調査も市が実施すべき。さらに、汚染土壌のグラウンドで野球などの部活の練習をしていた卒業生の健康状況の調査や周辺住民の健康調査も実施すべき。さらに地下水調査も広範囲に行なうべき。また、地元住民への説明会を開いて要望を聞くべき」と求めました。
●六月九日の第二回定例議会の総括質問で追及
一切の瑕疵担保責任まで放棄した異常な契約と合意によって、前橋市の財政に重大な損失が発生しようとしている。
第一に、なぜ、事前に土壌汚染の有無を県で調査させた後の契約としなかったのか。
第二に、市長は小寺前知事と瑕疵担保責任まで放棄するという、本市の土地の売買契約では一度もない異例な契約締結をしたのか。
第三に、前工で約二十億円、工業試験場で数百万円もかかる土壌浄化費用を県に求められるのか。どのような法的根拠に基づいて行なうのか。
第四に、汚染の拡大および近隣住民健康被害防止のための緊急措置をどのように実施するのか。
これに対し市長は、「県が汚染があってもたいしたことはないという説明をしたので、あのような契約合意をしたが、信義誠実の原則を県は踏みこえており、前橋市の側に錯誤が生まれた。そのような点からも県に負担を負う責任がある」と答弁し、前代未聞の契約を締結したことの反省はまったく示しませんでした。
●地下水調査と住民説明の実施を表明
これに対し市当局は、「地下水の水質検査は周辺地域で実施し、地元説明会も実施したい」と答えました。
長谷川議員は「渋川市(旧北橘村)の坂東工業団地に投棄されたテトラクロロエチレンが長期にわたって市の水道水源(地下水)を汚染してきた。今なお除去されず解決していない。同じようなことにならないよう市当局は事態を重視し、『水と緑と詩のまち』にふさわしい環境保全・汚染土壌の完全除去に取り組んで欲しい。住民の不安に応えて対策を急いで欲しい。費用負担も県に要望すべき」と強く求めました。
●五月三十一日に市が、岩神二丁目住民を対象に説明会を開催。一八名が参加。
●その後、市の管財課が土壌浄化費用は二十億円かかると表明。
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