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議会報告

公契約条例の議案提案の賛成討論   中道浪子【2010/6/30】

 私は、日本共産党前橋市議団を代表して、議会議案第2号前橋市公契約条例について、賛成の討論を行います。

賛成の理由の第一は、市が発注する工事や役務などに従事する労働者に適切な賃金を確保することを目的としていることです。 
 本条例案は、本市と公契約を結ぶ事業者に対して、最低賃金と労働条件を条例規則で定めるものであり、国の労働基準行政と矛盾・対立するものという論(を主張する会派)がありますが、違法性はまったくありません。
 むしろ、本条例案は、市長の裁量権に一定の規制を加えるにすぎず、市の契約条件を規制するもので、最低賃金法を上回る規制をすることは、法律を上回る違法な条例規制との判断は当たりませんし、契約当事者間の市の契約意思内容を規制するものであり、一般的な労使関係や民間と民間との契約に介入するものではありません。
 また、労基法や最賃法は労働条件の最低基準を示したもので、これらの法律に示された基準を上回る労働条件の実現を禁止しているものではありません。   
たとえば、建築基準法で建築強度の最低基準は定められていますが、それ以上の強度を保つための建設をしても違法とはなりません。
最低賃金についても、審議会を設置して開かれた議論の中で、多くの人が納得できる適正かつ公平な賃金額を決定することは不可能なことではありません。  
仮に、提訴があっても、敗訴のリスクはほとんど想定できません。野田市の公契約条例では、公共工事の賃金は千葉県設計単価の8割相当額、業務委託の賃金は市職員の用務員の給与の初任給13万5100円をベースに積算し、千葉県の最低賃金よりも101円高い時給829円と定められています。何の法的な争いも起こっていません。
 
第二は、公契約における事業者に最低賃金を定めることは、ワーキングプアー層の拡大を押さえ、労働者の雇用とくらしの安定につながり、多くの市民からも求められているものです。
 公契約を受注する事業者に、雇用する労働者の賃金や労働条件などについて、条例で定めてその履行義務を求めることは、行政の逸脱ではないかという議論が公契約制定の運動の中でしばしば出されることは承知しています。
 本市の入札も一般競争入札の拡大や総合評価方式の採用などの改革が進められてきましたが、一方で、提供されるサービスや公共工事に対する品質の確保が問題となり、低入札価格調査制度を拡大し、最低制限価格の見直しなども行われてきました。しかし、低入札価格による契約も行われており、その結果、業務に従事する労働者や下請業者などにしわ寄せがおよんで、賃金の低下を招く状況が発生しております。
品質の確保は、公共工事の品質の確保に関する法律、いわゆる品確法によって保障されることも期待されますが、賃金の問題は解決しておりません。
 本市においても、本市と契約を締結した元受業者、及び下請業者、さらには指定管理者が雇用する労働者にどのような賃金が支払われ、どのような労働条件となっているかについての十分な把握は行われておりません。ワーキングプアー層が拡大されている中で、雇用の安定に向けての市の施策の充実は、多くの市民の願いです。公契約における事業者に最低賃金を定めて、労働者の雇用とくらしの安定を求めるための本条例案の制定は本市行政に求められているのです。
 
第三は、地方分権が強調され、本市としても中核市として権限が拡大されている中、地方からこのような政策を推進していくことが求められているのです。 
 今回提案した公契約条例は、市の発注する工事や役務に従事する民間労働者の安定した賃金や労働条件を保障することによって、労働者の専門性や熟練度を高め、質の高い公共サービスを可能にし、下請や指定管理者も含めて受注企業への適正利潤を保障し、地場産業の発展や地域経済の活性化をもたらすもので、今こそ求められている政策です。
 歳出の効率化だけを追求する観点からは、調達価格の低下が求められますが、調達コストの削減だけを優先すれば、事業者間に過当競争をもたらし、結果として賃金引下げの要因となり、官製ワーキングプアーが生み出されるのであります。最小の経費で、最大の効果を目指すという地方自治法の規定にも反するとの指摘がありますが、その指摘は当たらないのであります。

第四は、職員体制の補強などにより、予算を伴う内容となりますが、問題はありません。 
 本条例を制定した場合、契約課などの事務量が増えて職員体制の増員などの必要性が生まれることは有りうることですが、本市と契約した事業者との間に事務の簡素化を推進する制度を設けるなどして、事務の簡素化に務めることは可能であり、経費を縮減することは可能であります。
 
第五は、国レベルで制度化することが必要ですが、多くの自治体が率先して条例制定することにより、国も制度化することになるのです。
 千葉県野田市議会は、2009年9月29日に日本ではじめての「公契約条例」を全会一致で可決しました。本来、この問題は、国が法律によって、統一的に規定していくことが必要ですが、多くの自治体や議会が公契約法の早期制定を求めていながら、未だに国は制定に至っておりません。
 本市では、子どもの医療費無料化を全国に先駆けて、中学校卒業まで先進的に拡大してきました。わが党が2005年3月市議会で小学校卒業までの無料化を議会議案として提案しましたが、他会派の賛成が得られず否決されました。また、2007年の予算議会では、中学校卒業まで年齢を拡大する質問をしてきたことは、ご承知のとおりです。それが今や、県レベルで中学校卒業まで拡大したことにより、国の制度として創設を求める声に広がっています。
 このように、本市において、全国に誇れる先進的な子育て支援策を展開してきたことの意義は多大なものがあります。
公契約条例を野田市に続いて、本市でも条例化して、労働者の暮らしを守り、公共サービスの質の向上を目指すことの意義は大きいと確信しております。
 結びに、本市が締結する契約が全ての市民が豊かで安心して暮らすことのできる地域社会の実現に真に寄与するものとなるよう、各議員のみなさんにおかれましては、本条例案の制定に賛同していただきますようお願い申し上げます。  
以上、述べまして、日本共産党前橋市議団を代表しての賛成討論といたします。

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