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議会報告

前橋市公契約条例の提案理由説明(第2回定例議会最終日本会議・2010年6月9日長谷川薫議員)【2010/7/18】

前橋市公契約条例の提案理由説明(2010年6月9日本会議 長谷川薫議員)

 日本共産党前橋市議団を代表しまして、今議会に提案しました議会議案第2号「前橋市公契約条例」の提案理由説明を行ないます。

 最初に、本条例案を提案するに至った経過と必要性について説明いたします。

 本市においても最近は入札におけるダンピング競争が強まっています。解体工事契約の落札率が50〜60%で推移してきたために、本年6月1日より予定価格の70%を最低制限価格とする制度が導入されました。
また、建設工事Aクラス・Bクラスの契約や電気設備工事Aクラスの契約は予定価格の75%前後の入札が多く、低入札価格調査制度で審査する契約が増えています。ちなみに、昨年契約した南橘団地の市営住宅建て替え新築工事の入札も低入札価格調査対象になりました。このためにやはり6月1日から、設計金額2500万円以上の建設工事の調査基準価格や最低制限価格の引き上げが行なわれました。
さらに、今月の4日に10社の指名による元総社蒼海土地区画整理事業の橋梁の詳細設計業務の入札では、1604万円の予定価格に対して978万円の落札となり、60.9%の低落札率となり、前橋市内に営業所を置く県外業者の落札となりました。 
このような状況に対応するために、同じく6月1日から測量や設計コンサルタント業務等にも最低制限価格制度が導入されました。
 さらには、今年度当初に指定管理者でもある前橋市施設管理公社が行った清掃業務に係る入札では、昨年度に受注した企業が応札した金額の約50%のダンピング受注が行なわれ、最近市内に支店を置いた県外業者が落札する契約が行なわれました。清掃業務は経費の大部分が人件費であり、契約額の下落分が清掃労働者にしわ寄せされることになります。今後、役務における最低制限価格の導入の検討も必要となってきています・

 このように、いま、公共工事の発注総額の減少や指定管理者制度の導入などによって価格競争の激化を招いています。いま市内の中小企業や零細業者は、長期化する不況で仕事が激減し、やっと受注した仕事も利益が少なく、まともに労働者に賃金を支払えないと悲痛な声を上げています。仕事を取るために入札額を引き下げて落札した元請会社は、利益を差し引いて下請けに仕事を出さざるを得ません。現実には重層下請け構造のため、下に行くほど単価が削られ、それが現場労働者の賃金の引き下げに結びついているのです。
 しかし、過度な価格競争による入札は、工事の品質低下や公共サービスの低下さらには、安全性の低下をもたらしかねません。2006年に埼玉県ふじみ野市で起きたプールの吸水口に小学校2年生の女の子が吸い込まれて死亡した事故は象徴的な出来事です。不適正価格による発注は、補修や修繕費の増加となったり、施設の寿命を短くしたり、事故を発生させ、結果的には財政負担を重くしかねません。 
 また、低価格によるダンピング受注が、公共工事や役務に従事する労働者の低賃金・不安定雇用などの労働条件の悪化をまねき、公契約の水準がさらに民間同士のダンピング契約を招くという悪循環をもたらします。

 さらに、いま、わが国においては労働者の雇用不安と低賃金が社会問題になっています。90年代中盤から続いている「構造改革」路線の下で、縮小した公共事業をめぐる激しい受注競争は、建設業界における重層下請け制度の下で、そのしわ寄せが下へ下へとかぶさってきております。そして、最終的には、中小零細下請業者の経営悪化をもたらし、現場で働く建設労働者などの低賃金と労働条件の限りない悪化として表れ、国民の間に格差と貧困が拡大しております。

 このようななか、日本建設業団体連合会も2009年の4月に発表した「建設技能者の人材確保・育成に関する提言」においても、「現在、建設業を支える大きな要素である建設技能者は、新規入職者の減少、高い離職率等により、高齢化が進み、人材が大幅に減少してきている。その原因は、何よりも年収の低さ、職場環境の悪さ、退職後の生活不安等である。近い将来、熟練した建設技能者が枯渇し建設業が産業として成り立たなくなるのではないかと危惧している」と述べております。
 建設職人が大幅に減少し、営々と築き上げてきた熟練技能が伝承されなくなれば、住民生活の安全を守り、生活の利便性を確保するものづくりはどうなるのでしょうか。

 もちろん市民の税金を原資とする公共事業は、できる限り安く無駄なく執行されることは当然です。しかし、公が行なう事業が競争原理に任せてよいはずがありません。公共工事や公の役務には、完成物の品質の確保、市民サービスの向上と安全性の確保、地域経済の振興、地域建設業の健全な発展、労働者の生活や雇用の安定などが重要な役割として求められます。
 このような中で、本市も入札契約制度のさまざまな改善努力が行なわれていますが、入札制度の改善だけでは、公契約に係る労働者や下請け中小企業や零細業者の低賃金や不安定雇用を改善することはできません。

 いま全国的に、建設労働者を中心に、「税金でワーキングプアーを作らない」を合言葉に、地方自治体に向けて公契約条例の制定を求める運動が広がっております。群馬県内でも、昨年の11月に国や民間の建設労働者を中心にした労働組合や中小商工団体などが参加して、群馬県生活関連公共事業推進連絡会議が結成されました。そして公契約条例の制定を求める請願及び陳情運動が展開されております。全国的には、地方議会の採択は、2009年11月現在ですでに776自治体、45%の自治体議会に及んでおります。

 以上のような経過を踏まえ、わが会派は、本市においても公契約条例の制定の必要性を痛感し、本議会においても第一回定例市議会で私が代表質問し、市当局に条例制定を求めたところであります。市長及び部長と答弁では、基本的に「時期尚早」との立場でありますので、本議会に独自に議案提案をしたものであります。

 以下主たる条文について説明いたします。

 第1条の目的には、「公契約に係る業務に従事する労働者の適正な労働条件を確保することにより、公共事業及び公共サービスの質を確保する」と目的を明確に述べました。今日における貧困と格差拡大の大きな要因に、雇用現場における非正規雇用の拡大があります。とくに若者の雇用形態は、派遣やパートという非正規雇用がおおよそ5割を占めております。前橋市内で働く労働者の皆さんが人間らしく働けるよう、行政も正面から雇用問題に向き合う必要があります。

 前橋市が先頭に立ってその改善を図るため、市が発注する公共工事や役務などに従事する現場労働者の労務単価・雇用形態・雇用条件・労働条件を適正に確保することを入札契約条件とし、その履行を監視するという条例です。元請け企業だけではなく下請や指定管理者が雇用する労働者も対象にします。公共工事だけではなく、施設管理や清掃などの役務を民間に業務委託する場合も、指定管理者の選定条件などにも、現場で働いている労働者の賃金と雇用条件を適正なものとすることを規定します。
賃金額は、条例化してつくられる審議会で協議し市長が規則で決定しますが、以上のような立場で定める労働者の賃金が、条文に掲げる公正な賃金です。

 第3条では、公契約の範囲を定めています。

 野田市が制定した公契約条例では、公共工事は1億円以上としていますが、件数も年間4〜5件で対象事業を限定しすぎています。したがって、本条例ではすべての公契約に範囲を広げ、130万円以下の随意契約のうち市長が定める金額を下回る公契約については除外することができるよう弾力規定としました。
対象事業所の範囲については、例えば契約額が50万円以下で小規模工事登録業者で市から直接発注を受けかつ従業員が家族だけで行なう小規模修繕工事などについては、条例適用の対象事業所から除外すると規則で定めても問題はないと考えております。

 第4条の1項には労働者の範囲を定めました。受注者および下請けに雇用された労働者と、労働者派遣法の規定に基づいた派遣労働者と規定しております。

 同条2項および第5条並びに第6条には受注者の責務に労働基準法などの内容にかかわる条例規定をあえて設けました。

 憲法27条2項は、賃金・終業時間・休息その他の勤務条件に何する基準は、法律でこれを定めると規定しています。そして憲法に基づいて、現在、労働基準法、労働者災害補償保険法、男女雇用機会均等法など労働者保護のための一連の法律が制定されています。労働基準法の姉妹法である最低賃金法も雇用者に最低賃金以上の賃金を労働者に支払うことを定めています。これらの労働者保護法に違反した場合は労働契約を無効にし、過料などの罰則を科すことされております。
 したがって、地方公共団体が、これらの法律に定める基準を上回る労働条件を条例で定め、それを下回る労働条件を無効としたり罰則を加える条例化がなされたとすればその是非が問われることとなります。
しかし、本条例案はそのような規定ではなく、あくまでも、前橋市が当事者となる公契約の内容の一つとして、市が定める最低賃金を上回る賃金を雇用する労働者に支払うことを事業者に求めるものにほかならず、その適用対象も契約の相手がかかわる事業者に限られ、しかも、事業者は本条例案の内容を法的に強制されるわけではありません。
もとより事業者は、民法上の契約自由の原則の下で、本条例案の内容に同意するかしないかの自由を完全に保証されており、もし同意出来ないという場合には、市との契約を結ばなければ良いだけであり、事業者が雇用する労働者の賃金自体を本条例によって一律的に直接規制するものではありません。本条例の運用の効果として労働者の賃金全体の底上げを展望しているものの、あくまでも本条例が求める最低賃金は、市が発注する工事や役務に従事する労働者の賃金だけであります。この意味で、本条例は、労基法や最賃法とはその趣旨と目的を全く異にし、労働法制と競合する関係にはありません。

 さらに付け加えるなら、本条例案が事業者に対して課する制約は、条例および規則で定めた最低賃金を下回った場合は、前橋市と契約することをできなくさせるという一点に尽きるのです。公契約という非権力的な手段を通じて、労働者の賃金の向上を図ろうとすることは、労基法や最賃法の趣旨やその基礎にある憲法27条2項の労働条件の向上や憲法25条の生存権保障の理念に沿うものとして高く評価できるものであり、決して非難されるべきものではありません。

 第6条では、適用労働者の賃金については、工事や製造の請負契約については国が毎年決定する公共工事設計労務単価基準表を勘案し、他の用務委託契約や公の施設の管理の代行については市職員の賃金等を基準にして最低賃金額を決定すると定めています。野田市では、勘案の目安として国基準の8割程度との数字が示されています。前橋市の予定価格の積算は、国基準に基づいて群馬県県土整備部が毎年作成している積算基準及び標準歩掛および群馬県基礎単価表などを使って行なっています。

 以上を踏まえて、本条例では最低賃金額を決定する際には、労働者・受注企業・学識経験者・市民の代表などで構成された審議会の意見を聴取して市長が決定するという弾力的な規定といたしました。なお、条例への記載はしておりませんが、あえて申し上げれば、わが党は女性や障害者の賃金を差別せず、最低でも時給1,000円以上とし、それぞれの専門・技能職に応じて加算・上乗せした賃金額を定めてほしいと考えております。

 なお審議会の設置についいては、地方自治法138条の4第3項では「普通地方公共団体は法律または条例の定めるところにより、執行機関の付属機関として審議会等の機関を置くことができる」と定めております。報酬も同法203条で定めることとされております。 本条例に基づく審議会は、都市計画審議会や国保運営協議会のような法律に設置根拠があるものではなく、条例による任意の設置となります。下請け零細企業などの住民の声が反映できる審議会の設置が必要と考えております。

 第7条は、労働者の労働条件を定めました。公契約に従事する労働者が労働基準法等の労働法制に反する労働条件で働くことを強制されることのないよう、あえて条例に明記をしたものであります。

 第8条は、受注者の連帯責任について定めました。元請及び下請けさらには指定管理者などの受注関係者が労働者に対して支払う賃金が最低額を下回った時、差額分については連帯責任を有すると定めました。

 第9条は、「受注者による適用労働者への周知」について定めています。受注者は、最低賃金額や労働時間、休日、申し出をする場合の連絡先などを、見やすい場所に掲示して、労働者に周知することを義務づけています。建築基準法や他の労働法制や下請け関連法と同様であります。

 第10条では、適用労働者から義務違反の申し出があったときには、受注者に対して報告を求め、立ち入り検査ができることを定めています。

 第11条では、条例の履行を確保し、労働者を救済するために、市が受注者への支払いを保留し、申し出をした労働者に直接請求金額を支払うことができる旨の規定を定めました。

 第12条では、違反を是正するために受注者に命令ができることを定め、命令に従わないときには公契約の解除をすることができると定めました。また、5項には解除したときには受注者名を公表するなどの制裁措置を定めました。

 第13条では、市の損害賠償を求める権利を定めています。

 第14条には行政処分に対して、受注者が行なえる異議申し立ての権利を定めました。

結びに、3つの点を強調しておきます。

 第一に、本条例案は、直接的には公契約に係る業務に従事する労働者の賃金確保が目的ではありますが、それだけではなく、一定の賃金水準の確保によって、結果的には市民生活を豊かにし地域経済の振興に貢献し、安心して暮らせる地域社会の実現に寄与することを目的にしております。つまり、労働者の賃金・労働条件が向上することによって、下請け業者や労働者にしわ寄せする安値競争を減らし、公共サービスや公共事業の質を高め、市民への福祉や教育などをレベルアップする基礎となるものであります。
いま全国どの自治体も、今日の社会情勢である雇用不安の解消策は、取り組むべき重要な行政施策となっております。
全国で約1500万人といわれる非正規労働者を中心に生活保護基準以下の低賃金や劣悪な労働条件が問題になっており、本市においても貧困や失業、失業者の雇用促進や就労支援などが重要な政策課題になっています。本条例の運用で、労働者の賃上げが期待されます。

 第二に、「最小の費用で最大の効果上げなければならない」という行政施策の原則と矛盾するという議論についてです。
私どもも、地方自治法第2条第14項で規定されていることは承知しております。当然、無駄遣いがあってはなりません。しかし、同時にその文言の前に「地方自治体は、その事務を処理するに当たっては、住民の福祉の増進に努めるとともに、」という文言が明文化されており、単に公契約の価格低減をすすめるだけではなく、現場で働く労働者の雇用と賃金労働条件を適正な水準を確保しなければ、同条に定める住民の福祉の向上にはつながらず、公共サービスの目的を達成することはできません。現在の群馬県の最低賃676円では、フルタイムで働いても生活保護基準以下の収入しかえられないという現実の中で、ダンピング競争によって自治体の仕事を引き受けて働いている労働者の賃金が年々引き下げられていくという状況はなんとしても食い止めなければなりません。人間として当たり前に暮らしていける条件を市が整えていく、厳しい財政状況の下でも、地域の福祉や市民の健康なくらしを保障する自治体であってほしいと思います。良い仕事をするには、よい労働条件が不可欠であり、このことを発注者である市と、受注事業者、さらには住民の了解事項都市、公契約によって実現することが求められています。市が締結する契約が、豊かで安心して暮らすことができる地域社会の実現に寄与するものでなければならないと思います。

 第三に、国の公契約法制定を待てないという点です。

 かつて、国の情報公開法よりも10年も先駆けて1982年に山形県金山町が情報公開条例を先駆的に制定し、翌年に神奈川県と埼玉県が制定し、いまや全国の自治体が条例を制定していることはご承知のとおりです。
また、2005年に大型店の無秩序な出店を規制するための福島県商業街づくりの推進に関する条例を全国の自治体に先行して制定したことが、郊外への1万平米以上規模の大型店の出店を規制するために、2006年に国が街づくり3法の改正につながったことは周知の事実であります。

 このように、地方自治体が住民のくらしの実態に着目して政策選択を行い、地方自治権を発揮して条例によって施策展開し、その行政効果を示して国を動かすことが今こそ大事だと思います。公契約条例によって適正な価格による入札が確保されれば、元請業者にも下請け業者も労働者にも歓迎されると確信しております。千葉県野田市に続く本市での全国2番目の公契約条例の制定によって、税金によって行なわれる公共事業などでワーキングプアーを作らない、さらには人間らしく働けるルールを確立していくという全国的な条例制定への大きな流れが作り出され、国に公契約法の制定を迫る大きな力となると確信しております。本議会の議員の皆さんのご賛同をいただきますようお願い申し上げます。


 以上申し述べまして、本条例についての提案理由説明といたします。

  【党市議団が提案した条例案】

前橋市公契約条例(案)
                            日本共産党前橋市議団
 
 (目的)
第1条 この条例は、市が発注する工事、製造その他業務対価を支払う請負、業務委託、委任、その他の契約等において、その業務に従事する労働者への公正な賃金及び適正な労働条件の確保をもって、地域社会を豊かに発展させる公共事業・公共サービスの質の確保に資することを目的とする。

 (定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 公契約 市が発注する工事、製造等についての請負、業務委託、委任その他の契約及び公の施設の管理の代行
(2) 受注者 次条に規定する公契約を市と締結した者
(3) 下請業者 下請その他いかなる名義によるかを問わず、市以外の者から次条に規定する公契約に係る業務の一部について請け負った者

 (公契約の適用範囲)
第3条 この条例が適用される公契約は、市が行う一般競争入札、指名競争入札又は随意契約の方法により締結される契約に適用する。ただし、随意契約であって、その業務対価が市長が別に定める金額を下回る契約については、適用を除外する。

 (受注者の責務及び公契約で定められるべき事項)
第4条 公契約の受注者は、法令等を遵守することはもとより、公契約を受注した責任を自覚し、公契約に係る業務に従事する者が誇りを持って良質な業務を実施できるよう、次の各号のいずれかに該当する労働者に対して、この条例に定める賃金、労働条件が確保されるよう、必要な措置を講ずる義務を負う。
(1) 受注者に雇用され、専らその公契約に係る業務に従事する労働者
(2) 受注者から業務を請け負った下請業者に雇用され、専らその公契約に係る業務に従事する労働者
(3) 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備に関する法律(昭和60年法律第88号)の規定に基づき、受注者又は下請業者に派遣され、専らその公契約に係る業務に従事する労働者
2 公契約には、公契約を締結した受注者の責務として、次の事項を定めなければならない。
(1) 賃金の支払義務に関する次のこと。
 ア 契約時に従事する労働者に支払われる賃金は、この条例に基づき定められる賃金を下回らないこと。
 イ 公契約に従事する労働者に支払われる賃金が、この条例に基づき定められる賃金を下回った場合、労働者を雇用する者と連帯して差額賃金を支払う義務を負うこと。
(2) 賃金以外の労働条件確保の義務に関する次のこと。
 ア 公契約に従事する労働者を雇用する者が、労働基準法(昭和22年法律第49号)その他の労働に関する法令を遵守するよう万全の措置を講ずること。
 イ 労働者の所定労働時間については週40時間を原則とし、労働基準法に従い運用すること。
 ウ 法令又は労働契約に基づく支払義務があって、公契約に従事したことに起因し発生した金額についても、労働者を雇用する者と連帯して支払義務を負うこと。
(3) 周知の義務 この条例によって義務づけられた事項について掲示を行い、公契約に従事する労働者に周知を図ること。
(4) 条例の定める手続きについての同意 この条例に定める支払保留と直接支払の手続に異議なく同意し、これに従うこと。

(入札及び指定管理者の指定等)
第5条 入札及び指定管理者の指定に当たり、市は、次に掲げる各号について、入札・応募の要件・基準としなければならない。
(1) 業務に従事する労働者への公正な賃金及び適正な労働条件の確保
(2) 業務の専門性、労働者の適正な配置及び質の高い公共サービスの提供
(3) 環境、人権及び地域経済への貢献
2 市は、公共サービスの質及び業務の継続性の確保のため、これまでその業務に従事してきた労働者の雇用が継続されるよう務めなければならない。

 (公契約における労働者の賃金額)
第6条 受注者及び下請業者並びに労働者を派遣する者は、公契約に従事する労働者に対して支払われる賃金額を、次の方法により決定される賃金を下回らない賃金額としなければならない。
(1) 工事又は製造の請負の契約については、農林水産省及び国土交通省が公共工事の積算に用いるために毎年度決定する公共工事設計労務単価基準表を勘案する。
(2) 前号に規定する契約以外の公契約及び公の施設の管理の代行については、その契約と同種の職に従事する市職員に対して支払われている賃金(諸手当を含む)及び市内在住の事業所に勤務する同種の職の労働者に適用されている労働協約等を基準に、市長が決定する。 
(3) その職種等の詳細については、別に規定で定めるものとする。
2 市長は、この賃金額を決めるに当たり、審議会等を設置するなどして、毎年、同時期に市が指定する利害関係のある労働者を代表する者、労働者を使用する者及び学識を有する者の意見を聞かなければならない。
3 前項の審議会の設置については、市長が別に定める。

 

(公契約における労働条件)
第7条 公契約に従事する労働者に適用される労働条件は、賃金に関する事項を除き、次の各号に従い決定されなければならない。
(1) 所定労働時間は、週40時間を原則とし、労働基準法に従い運用されること。
(2) 労働基準法、労働組合法(昭和24年法律第174号)及び雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号)に違反しないこと。
(3) 前各号に掲げるもののほか、労働条件、人権、男女平等に関する法令、施行規則等に違反しないこと。

 (受注者の連帯責任)
第8条 公契約の受注者は、その業務に従事する労働者が、その雇用者に対して有する、次の各号にあげる債権について、連帯して支払う義務を負う。
(1) 公契約に従事したことで支払われた賃金が、この条例に基づき定められた賃金を下回った場合における、その差額賃金
(2) 法令又は労働契約に基づく支払義務であって、公契約に従事したことに起因し発生した金額

 (受注者による周知徹底)
第9条 公契約の受注者は、その業務が履行される事業場の労働者が見やすい場所に、常時次の事項を掲示して、業務に従事する労働者に周知を図らなければならない。
(1) この条例により定められた賃金額
(2) 所定労働時間
(3) 所定休日
(4) 公契約の受注者が、前条の規定による連帯責任を負うべき者の氏名
(5) 責任者の氏名及び連絡先

 (報告及び立ち入り検査)
第10条 市長は、公契約の業務に従事する労働者から、労働者に対して守るべき賃金、労働条件等の義務を受注者又は下請業者が履行していないことについての申出があったとき及びこの条例に定める事項の遵守状況を確認するために必要があると認めたときには、受注者に対して必要な報告を求めることができる。
2 市長が定める職員に、当該事業所に立ち入り、労働者の賃金の支払状況及び労働条件が分かる書類その他の物件の提出を求めさせ、又は検査させ、若しくは受注者及びその受注者から業務の一部を請負った者、その業務に従事する労働者等の関係者に質問させることができる。
3 前項の規定により立入検査する職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があった時ときは、これを提示しなければならない。
4 市長又はその指定した職にある者は、公契約における賃金を定める資料を得るために、関連する事業場、労働組合、団体等に調査の協力を求めることができる。

 
(履行確保の方法)
第11条 公契約に従事する労働者から次の申出があり、当該申出に相当な理由があると認められるときは、市は申出のなされた額の全部又は一部について、受注者に対する支払を留保することができる。
 (1) 公契約の受注者が、その業務に従事する労働者に対して、この条例に基づき負担すべき義務を履行していないこと。
 (2) 公契約の受注者が、その業務に従事する労働者に対して、支払うべき金額が確定しているにもかかわらず、その支払義務を履行していないこと。
 (3) 公契約の受注者に代わって、市がその業務に支払われる対価総額の中からその業務に従事する労働者に直接支払うことを求めること。
2 支払留保の額は、その業務に支払われる対価総額のうち、その業務の種類及び金額に応じて市長が別に定める。
3 市は、公契約の受注者に意見陳述の機会を与えた上で、公契約に従事する労働者からの申出に相当の理由があると認められる場合は、その申出に応じて請求金額の全部又は一部を直接支払うことができる。この場合において、市はその労働者に直接支払った額について公契約の受注者に対する支払義務を免れる。
4 市は、公契約に従事する労働者に対して直接支払を行ったことについて、重大な過失が認められる場合に限り、これにより公契約の受注者の被った損害を賠償する義務を負う。
5 市は、直接支払の申出を認める証拠が不十分であると判断したときは、当該申出をした労働者に対し、通知を発した日から30日以内に、公契約の受注者を相手として、その権利を確定するための訴訟提起、調停申立て、仲裁申立て等の法律上の手続きを行い、かつ、その申立て等が受理されたことを証明する書類を提出することを催告する。
6 申出をした労働者の権利が法律上確定したときは、市は支払を留保した限度で、その労働者に請求額を支払い、その額について公契約の受注者に対する支払義務を免れる。
7 市は、次のいずれかの場合、公契約の受注者に対する支払留保を解除する。
 (1) 申出をした労働者に対して、通知を発した日から30日以内に、訴状等が受理されたことを証明する書類が、その労働者より提出されないとき。
 (2) 申出をした労働者の所在が不明であるとき。
 (3) その他支払留保を解除すべき相当な理由があると認められるとき。

 (監督と制裁)
第12条 公契約の受注者について、この条例で定める事項に違反する事実が認められた場合は、市長又はその指定する職にある者は、その受注者に対して、速やかに是正措置を講じることを命じなければならない。
2 受注者等は、前項の規定により違反を是正するために必要な措置を講ずることを命じられた場合には速やかに是正の措置を講じ、市長が定める期日までに、市長に報告しなければならない。 
3 公契約の受注者等が次の各号のいずれかに該当し、業務を継続しがたい重大な義務違反が認められる場合は、市は契約違反を理由として、その公契約を解除することができる。
(1) 前項の報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は第9条の規定による調査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは質問者に対して答弁せず、若しくは虚偽の答弁をしたとき。
(2) 第1項の命令に従わないとき。
(3) 前項の報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。
4 前項の規定により公契約を解除した場合において、受注者等に損害が生じても、市長はその損害を賠償する責任を負わない。
5 市長は、本条第3項の規定により公契約を解除したときは、市長が別に定めるところにより受注者名を公表するものとする。
6 公契約の受注者が是正措置を講じることを命じられながらも、是正を怠ったと認められるとき、又は公契約を解除したときは、市長は、その受注者から聴聞を行った上で、その者に対し期間を定めて新規に公契約を締結しないものとする処分をすることができる。

 (損害賠償)
第13条 受注者は、前条第3項の規定による契約の解除によって市に損害が生じたときには、その損害を賠償しなければならない。ただし、市長がやむを得ない事由があると認めるときは、この限りではない。

(異議申立て)
第14条 公契約の受注者及びその業務に従事する労働者等は、この条例に基づく行政処分に対して異議を申し立てることができる。
2 市長は、異議申立てについて審査する第三者機関を設置しなければならない。
3 第三者機関の設置については、市長が別に定める。
4 第三者機関は、異議申立てがあったときは、30日以内に、市長に対して意見を述べなければならない。

 (委任)
第15条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。
附 則
 この条例は、市規則で定める日から施行する。

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