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議会報告

2010第4回定例議会 請願第3号「旧・麻屋デパート」を保存し、歴史や文化を基軸とした「平和で活力あるまちづくり」を求める請願賛成討論(小林久子議員)【2010/12/10】


 私は日本共産党前橋市議団を代表して請願第3号「旧・麻屋デパートを保存し、歴史や文化を基軸とした平和で活力あるまちづくりを求める請願」について、賛成討論を行います。
 本請願は、前橋市の戦後復興のシンボルであり、歴史的建造物として国登録の文化財でもある千代田町8番街区の旧麻屋デパートを保存し、平和資料館や民俗資料館などに活用して欲しいという請願であります。
本請願は、11月26日に提出され、今議会の開会日の12月1日に開かれた議会運営委員会で受理したことが正式に報告されました。提出後に本請願に賛同する470名の個人署名も提出されております。議会運営委員会には総務部長が出席されていたので、当局は12月1日には本請願が議会に提出されたことを承知していたと思います。
 従って、12月2日に麻屋の所有者と、建物を解体して更地にすることを条件にして跡地を前橋市が購入する売買契約を締結したことは、市議会に出された市民の請願を、事実上無視した態度であり、大変残念であります。しかし、当局は6日に行なわれた請願団体の市長への申し入れに答え、13日からの解体工事の開始を、15日の請願審査の終了を待って16日まで延期を決断しました。さらに、同請願団体は8日、高木市長に解体工事の着手見合せと、建物解体の「是非」を広く市民参加で検討する機会を求める請願を市長に提出し、市長との懇談を求めまたところ、市長は13日に請願団体との懇談を約束しました。当局のこれらの対応は、適切であります。
 一方、12月7日に開かれた議会運営委員会で、わが党議員団が建設水道常任委員会への付託を主張したにもかかわらず、売買契約が締結されたことをもって、請願事項が消滅したと決めつけ多数決で委員会に付託して審査することを不要と判断したことは問題であります。本議会の請願の取り扱い規定にもないのに、議会の実務的な請願の処理についての一般的な解説書のコピーを示して、提出要件を具備した請願を、委員会付託が不適切との判断を行なったのであります。
 憲法16条が定める国民・市民の請願権を尊重する立場に立てば、紹介議員に取り下げの指導を求めたりせず、何よりも誠実に審査すべきです。
 今回の請願は売買契約によって請願事項の変化はありますが、請願の趣旨は、麻屋を解体せずに保存して欲しいという内容であります。請願提出後の事態の変化については、本請願の趣旨が存在しているかどうかをより慎重に判断すべきです。
これまでの契約締結にいたる経緯からも、麻屋の建物所有者は、テナントも見つからず建物の補修や維持管理が困難となったために、前橋市に再三にわたって町のシンボルとしてまたデパートという販売方法の先駆けとして、建築構造の面でも貴重な価値を持つ登録有形文化財でもある建物を末永く保存して活用してほしいと繰り返し要請していました。本来なら前橋市に建物付で購入を願っていたにもかかわらずそれがかなわず、止むに止まれず建物の解体除却という苦渋の決断をしたことは明らかです。
 前橋市が改めて市民の声に耳を傾けて、建物の保存を決断すれば、建物所有者は直ちに解体工事を中止することもあり得ます。
 売買契約の変更は、利害関係人双方が合意すればいつでも可能であります。従って、現時点で、麻屋の建物が解体されず現存している事実を踏まえるならば、請願者の願意を受け止めて請願者からの説明も聴取して、議会として誠実に審査すべきであります。

 請願事項1は、建物を解体せずに前橋市が土地とともに建物を買い取るべきと言う請願内容です。前橋市は、耐用年数を超え老朽化した建物を保存するためには多額の経費がかかるので保存は難しいと判断し、建物所有者が解体し跡地を購入するという契約を締結しました。麻屋の建物解体の判断は所有者自身が独自に判断したとはいえ、更地にしなければ購入しないという立場で契約条件を示したことは事実であり、前橋市が本来は支援して大事に残すべき国登録の有形文化財である建物の解体の決断を誘導したと言っても過言ではありません。
 しかし、麻屋は1945年8月5日の前橋空襲でも焼け残り、多くの市民にとっては戦災復興のシンボルさらには戦争のない平和な世界を願う戦争遺跡として現在に至った建物であります。末永く保存してほしいと願う市民が大勢いるのはごく自然であります。
 少なくとも、前橋市は解体を急がず、市民の意見を聞いた上で、保存の可否を判断すべきです。
 多額の保存費用がかかるとはいえ、いま整備計画中の清掃工場予定地に隣接する下増田町の運動広場には、多くのスポーツ施設が整備されている中で、新たな運動広場としてすでに約24億円もの財政を投入しています。市当局は麻屋の保存には約5億円程度かかると試算されたようですが、決して他の市有施設の整備と比較しても、麻屋の保存は、平和学習や生涯学習の拠点として、中心市街地の活性化に寄与する施設として、費用対効果の点では問題はないのではないでしょうか。
 しかも、8番街区の再開発の具体的な計画はまだ定まっておらず、前橋市が建物の解体と土地買収を急ぐ特別の理由は何もありません。
 全国的には、歴史的な建造物をリフォームし、再開発ビルに調和させて保存して利活用している自治体も少なくありません。市役所の関係部所の検討だけではなく、文化財保護の専門家や建築家や歴史化など、学識経験者や市民参加で公聴会や検討会を開き広く意見を聴取して、税金投入による建物保存の可否を慎重に判断すべきです。
 以上のことから、請願者の現在の願意は、市長に対して麻屋の建物付きで土地を購入する契約への変更を求め、少なくとも建物所有者に解体工事を保留するように求めているものであり、妥当な願いであります。

 請願事項2は、前橋市のさまざまな物産を販売する店舗や平和資料館・民俗資料館などへの活用です。本市には、公的な資料館はありません。糸の町・前橋にふさわしい民俗資料館はありません。いま保存しなければ、貴重な文化財も資料も散逸してしまいます。また平和都市宣言をしている前橋市として、建物自体が戦争遺跡とも言える麻屋を残すことこそ、未来を担う子どもたちの平和学習の教材であります。文学館・美術館とともに一体的に整備されれば、新たな集客力が生まれ、中心街に回遊が高まり、活性化への貢献も期待できます。

 以上、本請願者の願意は、多くの市民の願いであり、採択すべき請願であることを申し述べまして、本請願についての賛成討論といたします。


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