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議会報告

第2回定例市議会・請願賛成討論(長谷川薫議員・2011年6月28日号)【2011/7/4】

新日本婦人の会の請願賛成討論(6月28日長谷川薫市議会議員)

 日本共産党前橋市議団を代表して、新日本婦人の会前橋支部が提出した請願第1号および第2号「東日本大震災、原発事故に関する請願」について、賛成の立場から討論を行います。
 本請願は、東日本大震災によって発生した東京電力福島第一原子力発電所の重大事故によって飛散した大量の放射性物資の汚染から、市民やとりわけ健康被害を受けやすい子どもたちを守るために、本市行政の具体的施策の強化を求めるものであります。

 最初に請願第1号の要旨1は、農畜産物・魚介類などの食品の測定体制を抜本的に強め放射能測定の実施を求めるものであります。
 
 不採択を主張した会派からは、出荷先の自治体が測定しているので暫定基準を超えた食品は流通していないとか、県内の農畜産物もすでに群馬県がサンプリング検査をしており、いずれも暫定基準以下なので心配はないなどの討論がありました。
 しかし、今本市に流通している農畜産物や海産物のすべてが牛肉のBSE対策の全頭検査のようなチェック体制になっていないことはご承知のとおりであります。海産物ではこれまでにイカナゴの出荷停止がされた以外は、すべて東北地方で水揚げされた海産物も出荷販売されています。しかし、福島原発からは高濃度の放射能汚染水が海洋に流され、今も汚染水が地下水を通じて海に漏れ出しているという観測もあり、今後、深刻な海産物の汚染被害が出るのではないかと漁業関係者が心配しています。
 また、震災後に作付けされ今後収穫される福島県内の農産物の放射能汚染も心配されています。したがって、加工食品も含め全食品を対象に、放射能汚染がないかどうかの抽出検査を本市保健所が実施するとともに、検査機器の整備や検査体制の強化を求める市民の願いは当然であります。

 次に請願要旨2は、子どもたちへの安全な給食を求める多くの父母の願いであります。

 不採択を主張する会派からは、市当局によってすでに主食材の検査が行われ、不検出なので願意は満たされているという討論がありました。水道水についても不検出で安全と強調する討論もありました。しかし、給食食材や水道水の測定の実態は、測定機器の精度による限界があり、食品については1キロあたり20ベクレル、水道水については5から13ベクレル以下は測定不能であり、不検出と公表されています。しこの点では、県当局も市当局も、「ゼロと確定しているのではなく、微量の放射能物質が含有していることはあり得る」と説明しています。不検出と公表し続けることが、市民の不安に本当に応えることになるのでしょうか。とくに成長期の子どもは微量でも長期に摂取し続ければ体内に蓄積します。内部被爆は将来癌を発症したり遺伝的影響を及ぼすことが心配されます。
 また、6月23日に県は、本市の水道水源になっている榛東村の県央第一水道の沈澱槽の土から、1キログラムあたり8万7千ベクレルの高濃度のセシウムが検出されたと公表しました。利根川から取水している水道水源にも上流に降り注いだセシウムが流れ込んでいるのです。
 精度の高い測定ができる検査機関に依頼して、水道水も給食の食材も抽出検査を実施して安全性を確認すべきです。

 請願第2号の請願要旨1についてです。

 不採択を主張した会派からは、本市が放射線測定器サーベイメーターを12台購入し、市内70か所の空間放射線量の測定を開始し、県当局がすべての小中学校や保育所などの測定を行うなど市内200か所の測定調査をするので願意は十分満たされているという討論がありました。また、上沖町のモニタリングポストの測定値が平常時に戻ったので、現状の測定状況でよいと現状を楽観視した討論もありました。しかし、放射性ヨウ素と比較して、半減期が30年のセシウムが、本市に大量に飛散して土壌などに蓄積している現状を決して楽観視することはできません。
 3月11日発生の地震そのものによる原発の重大な損傷と津波による全電源喪失による核燃料のメルトダウンと水素爆発によっておびただしい死の灰・放射能汚染物質が福島県内はもとより東北や関東各県にも飛来し、前橋市内にも大量に降り注いだことは各種観測データーで明らかであります。県環境衛生研究所のモニタリングポスト地上21メートルの空間線量は、3月15日に0.56マイクロシーベルトを記録し、事故発生前の平均通常値0.018マイクロシーベルトの約30倍もの値を示しました。地表面では一桁高い線量を測定しています。6月の測定値は、0.03マイクロシーベルトに下がっていますが、それでも平常値の2倍です。
 このような中、本市においても表面積が大きく放射性物質が滞留しや「すいほうれん草」や「カキナ」が暫定基準値を大きく超えて出荷停止となり、富士見町の牧草の利用が停止されました。さらに、合流式下水道処理施設の市水質浄化センターの汚泥の高濃度汚染が明らかになりました。モニタリングポストの空間線量が安定しているとはいえ、いわゆるホットスポットと呼ばれるような、風などによる吹き溜まりや雨水が滞留する場所などは、私たちが六供町の児童公園で独自に測定しても0.24マイクロシーベルト前後の高濃度の空間線量の測定結果が出ています。
 さらに、火山噴火などの微粒子の大気拡散に詳しい地震学が専門の群馬大学の早川由紀夫教授が最近公表したデーターでは、3月15日の空間線量の測定では、福島原発から約200キロも離れている沼田市や川場村で0.5マイクロシーベルトという高い放射線量が計測されており、気象条件によっては県内各地に高濃度汚染のホットスポットが存在するので、警戒が必要と指摘されています。この指摘を受けて、群馬県が暮坂峠や川場小学校のグラウンドの土壌を6月9日に測定したところ、1キロ当たり暮坂峠でセシウムが1000ベクレル、川場小では1270ベクレルという高濃度の汚染が測定されています。この濃度は、福島県内で子どもたちの安全確保のために校庭の表土を削って除染をしている深刻な値であります。
 この様な放射能汚染の事実を見ても、今なお空中に飛散し浮遊している放射性物質が、今後も集中豪雨などの気象条件で雨粒などとともに本市に降り注いでくる危険性は存在しております。また、今なお事故の収束のメドさえ明らかになっていない状況のもとで、更なる原子炉の爆発などの発生による新たな放射性物質の拡散もありえます。乳幼児を育てる父母からは、「たとえ空間線量が低レベルであっても、外部被爆と放射性物質を体内に取り込む内部被爆の合計が、1年間に1ミリシーベルト以下になるように、行政としてまた教育委員会として最大限の努力を尽くしてほしい」という要望が党市議団に数多く寄せられています。この願いは当然であります。
 したがって、子どもたちが長時間過ごす学校や保育所や公園などの詳細な放射線測定をできうる限り本市独自で実施すべきであります。このような立場から、本議会の総括質問でわが党市議団が全幼稚園・保育園・小中学校などで独自に計測できるサーベイメーターの配備を要請し、日々測定を行い線量の高い場所にはこどもたちを近づけないようにするとともに、土壌の除染を求めたのであります。放射能は色もにおいもしません、見えない放射能を見えるようにするのが行政の責任です。測定をしない限り安全性の確保はできません。未来を担う子どもたちが放射能汚染によって将来チェルノブイリ原発事故のように甲状腺がんなどの発症が広がるような事態を絶対に生み出さないためにも、被爆ゼロに限りなく近づける万全の対策が必要であります。

 請願要旨の2は、市内3清掃工場の空間放射線量測定と焼却灰の放射線の核種検査を求めています。
 不採択を主張した会派は、工場内の空間線量の測定を計画しているので願意は満たされているという討論をしましたが、焼却灰の核種放射性濃度測定をしなければ実態の把握はできません。清掃工場にも剪定枝や雑草などに付着した放射性物質が持ちもまれ可燃ごみとして焼却されているために、焼却灰やバグフィルターなどが汚染されている可能性も十分予想されます。排ガスとともに周辺に飛散している恐れもあります。焼却施設職員や近隣住民の安全を確保するためにも測定は欠かせません。

 請願要旨の3は、再生可能な自然エネルギーのいっそうの普及促進施策の実現を求めるものです.不採択を主張した会派は、公共建物への太陽光発電の設置が行われ小水力発電など再生可能な自然エネルギーの設置促進の努力が行われているので願意は満たされていると討論しました。
 いま、多くの国民が原子力発電の危険性を再認識しています。東京電力・福島原発事故は、日本と世界の人々に大きな衝撃をあたえ、原発に依存したエネルギー政策をこのまま続けていいのかという、重大な問題を突きつけています。
海外では、ドイツ政府が2022年までに原発から完全撤退を決定し、イタリアでは国民投票で95%の方が原発ノーの審判を下しました。また日本でも原発「削減・廃止」を求める意見はNHKで65%、朝日新聞で74%にのぼっています。
 日本共産党も原発からのすみやかな撤退、自然エネルギーの本格的導入を、国民的討論と合意で行おうと、政府と国民へのアピールを発表しました。
 本市においても、自然エネルギーの推進のための各種施策の抜本的充実が求められます。本市で実施している太陽光発電の助成制度は1キロワットにつき2万円、上限4キロワットまでで8万円となっており、設置を市民に広げる施策としては不十分です。また、市の公共施設に太陽光発電設置するための予算も思い切って増額しなければ設置の推進にはなりません。
 いま全国の自治体では太陽光発電設置への助成枠を拡充する動きが広がり、群馬県・太田市では一般家庭への導入時に通常3〜4キロワットで180万〜200万円程度かかる設備費を県からの補助金も含めて100万円程度に抑え、財団が低利融資を斡旋する制度を、3千戸を対象に始めます。また、集合住宅には1千棟を対象に設備をレンタルし、利用11年目からは無償譲渡し、発電・買電分は集合住宅経営者の収入になります。太田市長は最終的には市内2万5000戸に太陽光パネルの設置を目指しています。
 環境にやさしい自然エネルギー政策の抜本的な強化推進を求める今回の請願を積極的に採択することによって、本市の施策をさらに推進させることが期待されます。市内中小企業への太陽光や小水力、バイオマス発電などに関する技術開発の支援は市内産業育成と仕事起こしにつながり、高い経済波及効果が期待されます。


 なお、今回の大震災と原発事故を教訓にして、行政の抜本的見直しが求められている今、行政をチェックして政策を提言する議会の役割の発揮がいまほど求められているときはありません。委員長報告にありましたが、委員会審査では清新クラブ・真政会・市民フォーラム・公明党市議団は、いずれも、本請願の願意は県当局や市当局の現在までの対応策ですでに満たされているので不採択という立場の表明がありました。しかし、すでに述べましたとおり、大震災と放射能対策に対応する本市の施策は緒に就いたばかりであり、市民の不安や願いに十分答えたものになっていないことは明らかであります。
市民が直接市議会に政策を提言し意見を表明する政治参加の権能である請願を、私たち議員は市民の目線で受け止めるべきであります。 今議会では、多くの会派のみなさんが総括質問で放射能汚染対策について質問し、市民の不安に答え、安心・安全の前橋市実現にむけて様々な施策の推進を求めました。その一方で、同趣旨の市民からの請願には背を向けて「不採択」という態度ではあまりにも論理矛盾しているのではないでしょうか。 最後に、本議場において各会派の議員の皆さんが採択していただきますよう強く求めまして、本請願への賛成討論を終わります。

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