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議会報告

第3回定例議会市民生活を犠牲にする行財政改革はやめよ(平成22年度決算反対討論 近藤好枝)【2011/10/5】

 3月に発生した東日本大震災と福島第1原発事故による未曾有の災害は住民の生命と財産を守る地方自治体の役割が一層求められていることが明らかになりました。不況が進行し前橋市も深刻な影響が続いています。こうした中、東日本大震災の発生による影響により景気悪化が加速しました。一方国政は民主党政権による公約違反と国民無視の政治運営が続き、貧困と格差は深まるばかりです。市民の暮らしを支え福祉や医療などの社会保障を守り、地域経済を活性化させる市政を運営しているのかが問われています。しかし、本市は『限られた予算の中で事業の「選択と集中」による予算の重点配分を行なうため、一般財源枠配分方式による予算編成』として、身近な暮らしの予算を減額し市民生活を犠牲にする行財政執行を行ないました。以下具体的に指摘します。

第73号一般会計については以下10点に渡って述べます。
○第一は東日本大震災を踏まえた災害対策と被災者支援・避難誘導体制の機敏な対応が不十分です。
福島県などの避難者をしきしま老人福祉センターに受け入れましたが、当初は食事の提供もせず、毛布だけで布団の提供がなく東吾妻町と片品村と比べるとあまりにも冷たい対応でした。市営住宅などに入居した避難者が孤立しないよう物心両面の支援も必要です。福島第一原発の事故による本市の放射能汚染対策は緊急性が求められていました。小中学校や保育所など子どもたちが長く生活する施設に測定器を配って放射線量調査を行ない線量の高いところは除染するなどの対策を立てるべきでした。学校の避難誘導はそれぞれの判断で対応がことなり、子どもたちの命と安全を守るためには改善が必要です。これらの対策には補正予算を組んででも対応すべきでした。
なお、原発事故による放射能汚染から市民を守るための防災計画の見直しを緊急に行なうよう求めます。

○第二は行財政改革による職員の削減や民間委託は認められません。
公民館用務技士の廃止、大胡・宮城・粕川・富士見支所の人員の見直し等により47人の職員を削減し、3億6247万7000円の人件費の削減を行なったと報告しています。本市は2006年の国の「行革推進法」を忠実に方針化し「構造改革路線」を推し進めています。先進国の比較でも人口あたりの公務員数は最低水準です。職員数が減らされ続ける中、非正規職員を雇用し慢性的な人手不足を補っているのが現状ではないでしょうか。これでは、官製ワーキングプアーを増大させ、市民サービスは低下し、地域経済も悪化する悪循環を生み出しますことになります。
また、前橋工科大学の独立行政法人化の目的は経費削減であり、その結果大学の自治を壊し、自由な学問研究をゆがめるものであり認められません。今でも少ない運営交付金が削減され、授業料や外部資金などの自主財源での運営が求められれば、授業料の値上げや教職員の非正規化、研究費の削減で教員は外部資金の獲得に奔走することになります。ただちに、法人化スケジュールを中止すべきであります。

○第三は地域経済活性化策が弱いことです。
市内の中小企業及び自営業者は全事業所の99%で1万6000社、従業員は全雇用労働者の88%で約13万人であり、利益を地域に還元し、地域経済の振興など本市の発展のために大きく貢献してきました。中小企業は長引く不況で仕事の減少とともに単価の引き下げなどで大変苦しい経営を強いられています。これまで本市の中小企業振興策は融資制度と企業誘致を柱にインフラ整備に莫大な予算を投入してきました。昨年度は東芝機器、イトーヨーカドー、サティーの相次ぐ撤退でこの間の施策は成功していないことを示しています。工業誘致などの呼び込み型から内発型の地域振興に軸足を移し、地元金融機関や自治体職員が一体となって構成する中小企業振興条例をつくり、新製品の開発や販路の拡大など地元中小企業の声を生かした振興策を進めるべきであります。
なお、わが党市議団が経済対策として一貫して求めてきた住宅リフォーム助成制度の創設を求めておきます。

○第四は障害者・高齢者福祉の後退は認められません。
障害者問題では障害者へのガソリン代や難病など特定疾患見舞金の減額など実施されました。高齢者問題では敬老祝い金88歳・90歳は2万円から1万円、99歳は3万円から1万円に引き下げを行い、さらに地域交流事業費の減額、老人会助成金の1割カットなど明らかに後退しました。たとえば高齢者配食サービスは介護保険優先を改善することや療養食などのメニューの改善を行ない利用しやすく拡充すべきです。緊急通報システムは災害時にも起動するよう停電時対応機器に改めることや対象者を限定せず、65歳以上の希望する高齢者に適用できるよう改善すべきです。しかし、予算枠を縮小した中では高齢者の自然増に対応するだけで現状の施策が後退します。
一方、前橋工業団地造成組合には平成20年度から22年度までの3年間で34億円、昨年度だけでも9億7千万円もの莫大な税金を一般会計から繰り入れています。工業団地は五代工業団地が売れ残っているのに朝倉工業団地を新たに造成し、前工団事業会計の赤字をさらに増やしています。これらに投入している財源の一部を高齢者施策に振り向ければ高齢化社会に向け、老後の健康と生活を支える暖かい支援策の拡充が実施できるはずであります。

○第五は収納行政についてです。
行過ぎた滞納整理は市民の生存権を脅かすものであると繰り返し改善を求めてまいりました。病気や失業、倒産による生活苦や収入減、経営難のなかで、納税の意思がありながら、やむにやまれず滞納してしまった善良な市民への強権的な差押えが続いています。なかには、給与や年金が振り込まれた瞬間から「金融資産」として生計費相当額を差し押さえています。差押えによって、生活保護を受ける事態も増えています。こうした強権的で過酷な取立て強化は、市民の生存権を脅かし、行政への信頼を大きく損なうものです。強制執行の前にまず滞納者の個別の事情を十分調査し、聴取しその上に立って滞納者個々の事情に即した滞納整理・徴集業務をおこなうべきです。
また、14・6%のサラ金並みの高利の延滞金利率の引き下げを国に求めるとともに、本市の延滞金減免制度を条例化すべきです。

○第六は新清掃工場建設についてです。そもそも浸水の危険が予想される土地に建設すべきではありません。
清掃工場を1箇所に統合することにより、ごみ収集車経費の大幅なコスト増や排出ガスなどの環境基準には総量規制がありません。排出ガスに混入している重金属類の工場周辺土壌への堆積など生命への健康被害の危険性が増加します。環境影響評価の結果だけで、下増田町に建設する最終決定をすべきではありません。隣接する伊勢崎市民の計画の見直しを求める13749人の高木市長への陳情署名を重く受け止め当該の伊勢崎市民と前橋市民の両者参加の元に建設予定地の再度検討を行なうべきであります。同時に清掃施設の一箇所統合は止めるべきと考えます。また、新たな技術を導入する高効率ごみ発電は発電効率を達成するためにプラスチックごみを燃やすと危険な排ガスが発生し、環境に負荷を与えるものになります。他都市の導入例を十分調査し、慎重に検討すべきです。

○第七は教育分野についてです。
その1つは学校教育施設への民間委託問題です。
本来は公共が担うべき仕事を民営化し経費削減を目的に推進し、平成20年度からの南部共同調理場の民間委託に続き、昨年度は知的財産の拠点である図書館にまで民間委託を導入したことは認められません。
2つは小中学校の統廃合計画についてです。統廃合の地区委員会が統合するほうが良いという結論だけを知らせ、メリットとデメリットを知らせることなく住民アンケートを実施するという住民合意が不十分な統廃合計画は進めるべきではありません。学校は、運動会やお祭り、文化祭なども含めて地域の拠点としての役割を担っています。子どもが少なくなったからといって統廃合を進めれば、集落や地域のコミュニティーの崩壊、地域社会の荒廃という取り返しの付かない事態を招きかねません。子どもは地域の宝です。「地域の子どもは地域で育てる」という教育方針からも、無理な統廃合は止めるべきです。春日中学校と広瀬中学校の統廃合は地域においては地元の要望が出され、PTA,自治会連合会の形式的意思形成はされているものの、地域住民合意の形成はいまだ不十分さが残っています。引き続き、全地域・住民を対象に合意形成のための説明会などを開き、行政としての説明責任を果たすべきです。まして、教育リストラ・行財政改革という観点での統廃合の推進が行なわれれば子どもたちが犠牲になることは必至であり問題です。


○第八は環境行政の問題点が改善されないことです。
株式会社群馬化成産業の悪臭対策は桂萱地区、荒砥地区住民にとって長年の懸案事項です。地域住民は本市の強力な行政指導を望んでいます。昨年9月におこなった3回目の施設改善勧告に基づく指導は効力を発揮せず、今年の夏場の悪臭臭気指数は基準値を超えていました。事業者に対し、あらゆる施設改善の方策を示し断固とした改善を求めるべきです。
また、西大室町のコンクリート破砕施設と連動して建設予定の混合廃棄物を低温処理するゼオライザー施設は環境を汚し爆発などの危険性もあり、圧倒的多数の地元住民が建設に危惧を表明し反対しています。建設予定企業による事実と異なる施設計画や住民への圧力が行なわれ、当該企業に対して住民は大きな不信と反感を持っています。環境行政を担う本市が住民の声に真摯にこたえ建設は認めるべきではありません。
 また、坂東工業団地の地下水汚染問題は解決の方向が見出せていません。旧前橋工業高校の土壌汚染問題も提訴による解決手段を選択したため先送りとなっています。両者とも県との連携が一番求められています。西大河原地区の悪臭対策についても解決が不十分です。

○第九はまちづくり行政の矛盾が拡大していることです。
この間、中心市街地の活性化策とも矛盾する市街地の拡大を誘導する市政運営を進めてきました。南部拠点地区の開発は東地区に大型商業施設が次々に開店しましたが、西地区は開発業者のめども立っていません。先行き不透明な中で道路や下水道など基盤整備に市の税金を投入しています。一方中心市街地活性化を唱えて、旧ウオーク館を改修し、美術館建設計画をすすめ、今後は8番街への公共施設建設を検討しています。しかし、中心街の歩行者通行量調査では10年間で約4万人から約1万人に激減しています。どちらも莫大な予算をつぎ込みながら、今後の街づくりの方向性や展望は見えていません。しかも、市内の商店街は大型商業施設に客を奪われたため、地元商店は次々に閉店して、とうとう大型店の売り場面積が85%を占めるようになりました。その結果、買い物難民や交通移動難民が生まれています。今迄の街づくり施策が矛盾を拡大しているのです。街づくりを成功させるためには地域のコミュニティーを大切にし協力共同して、住民が住んで安心できる地域づくりが大事です。市長のトップダウンで、はこものを建設ありきや大型商業施設の郊外への呼び込みでは成功しないのであります。
 
また、公園管理・整備では前橋公園整備は総事業費34億円投入され、昨年度4146万円で事業が完了しました。荻窪公園整備に昨年度12億8千万円支出し、総事業費は約21億6千万円が投入されています。先には敷島公園ばら園整備など、莫大な市の税金を投入してきました。わが市議団はかねてから、スクラップ&ビルドで今まであった公園を作り直すのではなく、活用できるものは使い、より効果的な施設作りができるよう求めてまいりました。高齢者予算を削り公園土木偏重の市政は問題であるとの指摘もしてきました。一方で嶺公園や南町緑地や宮城千本桜公園などなど公園の維持管理が行き届かなくて、草がおい茂っていたり、用地の拡大をしたため手入れが行き届かない問題が各所に起こっています。公園の規模拡大や一点豪華な公園に偏重して経費をかけることなく、身近な公園管理に手がしっかり入り、市民が憩える場所となる施設管理にすべきです。荻窪公園のこれ以上の規模拡大は止めて、今後の管理経費も十分考慮した公園整備を求めます。
 なお、東日本大震災による大規模災害から市民の命と安全を守るため、地域防災計画の速やかな見直しを行ない、地震や風水害など防災に強い街づくりを進め、避難所となる小中学校の体育館の耐震補強工事や市営住宅九棟の耐震補強工事、避難誘導体制の整備も直ちに行なうべきです。
 
○第十は農業施策についてです。
本市の農業は規模を拡大した農家も家族経営の農家も経営が続けられない事態が広がっています。農業就業人口は10年間で14%減少し、深刻な高齢化・担い手不足に直面しています。耕作放棄地は339ヘクタール農地の荒れも深刻で農地の流動化対策にも成功していません。こうしたなか、がんばる農家を支援し安定した経営ができるよう一層支援することが行政に求められています。国民の食料を支える食料自給率の向上を国政の柱にすえ農業を国の基幹産業と位置づけるよう国に強く求めるとともに農業を壊滅的打撃へと追い込むTPPへの参加は止めるよう断固とした態度をとるべきです。
また、本市として遊休農地の解消のため農協などと連携し、近隣農家への斡旋や都市住民など就農希望者への斡旋、市民農園の活用、作業受委託などの取り組みの強化をすること。地域特産物への価格保障の拡大や集落営農への支援、ハウス・果樹栽培施設、有機農業、畜産支援策などきめ細かい支援をするなどの拡充が求められています。そして、新規就農者への手厚い支援を行ない定着、育成に力を入れるべきであります。

○第74号国民健康保険特別会計についてです。
1つは国保税についてです。
国保加入者の約5万5千世帯の平均所得は155万4千円で1世帯あたりの平均国保税額は15万8724円、所得に占める保険料負担率は10・16%に及んでいます。子ども2人の4人家族で年間所得200万円の世帯では32万円の国保税、年金生活者で所得130万円の夫婦では15万円を超えています。高すぎて払えない国保税を引き下げることが求められています。生活破壊をくいとめ、滞納の増加を防ぐためにも、一般会計からの法定外繰り入れを行ない国保税の引き下げを行うべきです。
2つは低所得者や事実上の失業者に対する国保税の減免制度を改善拡充すること、国保法第44条の基づいた窓口の一部負担の減免制度の積極的活用をすべきと考えます。資格証明証は昨年10月1日で1278世帯、交付率2・3%、短期保険証は2382世帯、交付率4・3%です「体調が悪く半年間我慢に我慢を重ね、見かねた隣人が救急車を呼び、医療機関にかかったときには末期がんで5日後に死亡した」50歳代の方は資格証明書の発行を受けていました。保険証の取り上げにより医療機関への受診を抑制し重症化・死亡事件が起こっています。命への制裁となる資格証の発行は止めるべきです。
なお、国保の広域化は国の支出を抑え、医療給付費を削減することを目的に、導入されようとしています。保険税の引き上げか医療費の抑制か2者択一を迫る制度であり、命を犠牲にする制度改革は撤回するよう国に求めるべきであります。

第76号後期高齢者医療特別会計についてです。
平成20年4月から実施された本制度は、年々増加する高齢者の医療費負担を減らすため高齢者を他の制度から外し、保険料と医療費の自己負担と受診の抑制で公的医療費を減らす仕組みをつくりました。世界でも例を見ない高齢者差別医療であると大きな批判を受けたにもかかわらず民主党政権は先送りしました。国民・市民の願いを受け止め、後期高齢者医療制度は直ちに廃止し、老人保健制度に戻すべきであります。

第77号競輪特別会計についてです。
景気の悪化により車券売り上げが伸び悩み、競輪事業は全国的にも低迷しております。ギャンブル性の高い重勝式車券の導入も問題です。全国的に競輪場の閉鎖が進んでいる中で、今後の競輪事業を継続するか否か全市民的な検討をする時期に来ているのではないでしょうか。私たちは市財政をギャンブルに頼る競輪事業には賛成できません。

第79号介護保険特別会計についてです。
1つは介護保険料・利用料についてです。本市独自の施策が弱いため高齢者の介護保険利用率が約6割弱と低い実態です。介護保険料の軽減について生活保護水準の住民税非課税者は免除すべきです。利用料の軽減について全国一律の介護保険の低所得者負担軽減措置だけでは限界があります。ケアプランは介護の必要性よりも利用料負担額によって決めているのが実情です。お金の心配なく安心して介護が受けられるよう本市独自の利用料の軽減策こそ実施すべきです。
2つは特別養護老人ホームの入所待機者解消がはかられないのは問題です。
昨年の待機者は1472人でそのうち必要度が高い申込者は491人です。昨年度までの180床の整備計画ではとても対応できません。介護保険料を払いながら全ての人が入所できない、「保険あって介護なし」という深刻な実態です。待機者解消のため、国や県に整備計画の上乗せを強く求めるとともに、第5期スマイルプラン計画にあたっては待機者を解消できる増床計画を作成するとともに、低所得者でも入所できるよう多床室の建設を進めるべきです。また、待機者解消のために小規模多機能型居宅介護施設などの整備を進めること。施設に入りたくても入れない低所得者のために、認知症対応型グループホームや今後一本化されるサービス付高齢者向け住宅などに入居できるように市としての家賃補助など検討すべきです。
なお、来年度から改定される介護保険については、軽度者外しの「総合サービス」は選択すべきではありません。

第78号農業集落排水事業特別会計・第80号簡易水道事業等特別会計
第82号水道事業特別会計・第83号下水道事業特別会計についてです。
それぞれの料金に消費税が転嫁されており賛成できません。
また、水道事業については職員の削減を行ない、業務の委託をつづけるならば、職員の技術の伝承や後継者の育成がむずかしくなります。その結果、水道水の安全確保や安定供給という本来の水道業務の使命が損なわれかねません。最も安全が求められる浄水施設や水源井戸の保守点検業務を民間営利企業に委託することなく順次直営に戻すべきであります。
以上申し上げまして反対討論といたします。


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