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議会報告

第4回定例議会「第5期介護保険事業計画策定に関する請願」の賛成討論 小林久子議員(12.15)【2011/12/15】

 私は日本共産党前橋市議団を代表して、請願第4号「第5期介護保険事業計画策定に関する請願」について採択に賛成の立場から討論を行ないます。

 介護保険がスタートして11年になりますが、社会保障費削減路線のもと、サービス切捨てや、介護報酬削減などの改悪が繰り返され、必要なサービスを受けられない低所得者や、療養病床を追い出され行き場のない介護難民の増大や、増え続ける特養待機者、介護現場の劣悪な労働条件など、制度の矛盾がさまざまなかたちで噴出しています。
 この間国は、介護保険給付費の抑制策として、軽度者からの介護とりあげを段階的に進めてきましたが、さらに、税と社会保障の一体改革の中間報告では、要支援1・2の人や年金320万円以上の高齢者の介護保険利用料を2割に引き上げ、ケアプランの作成費として要介護は毎月1000円、要支援は500円を徴収、ヘルパー利用時間を60分から45分への短縮などの改悪案が示されています。
このような中、本請願は、本市を中心に医療、介護事業を展開し、数多くの事例をふまえ現状をつぶさに見てきている群馬中央医療生活協同組合から提出されたものであり、現在本市が策定中の第5期介護事業計画に市民の願いを反映してほしいというものであります。

 請願項目1の介護予防・日常生活支援総合事業についてです。
本年6月、介護保険法の改定により、市町村は、介護予防・日常生活支援総合事業、いわゆる総合事業を創設することができるとされました。この総合事業は要支援1.2と認定された高齢者と介護保険非該当とされた高齢者を対象とした事業で、訪問・通所サービスや、配食、見守りなどの生活支援、権利擁護などを総合的に支給するとされています。
 不採択とした会派は介護予防の充実強化であるとの立場、あるいは生活支援事業は引き続き実施するので問題はないという立場ですが、総合事業の本当のねらいは、要支援と認定された人を介護保険サービスから市町村が外す仕組みの導入であります。
従来の「予防給付」では要支援1.2の方は、要介護者に対する介護給付に準じて、全国一律の基準、利用料も一割負担で通所・訪問介護サービス、短期入所サービスなどが提供されてきました。しかし今回の総合事業では、介護保険の指定サービスから外し、内容や料金設定などすべて市町村任せにして、サービスの担い手も必ずしも専門職でなく、ボランティアなど『多様なマンパワー』を活用するとされています。総合事業を実施すれば明らかにサービス水準の低下につながります。
今回の法改定では、総合事業を実施する市町村は、要支援者について、従来の予防給付を受けるのか、総合事業に移行させるのか一人ひとり判断することになり、本人に決定権はなく、今受けているサービスが減らされることになりかねません。
さらに問題なのは、総合事業を含めた地域支援事業が介護給付費の3%以内と制限されていることです。
 本市は介護保険認定者1万3000人のうち、要支援1.2の方は約3割の4000人になります。介護給付費のうち要支援の方の利用割合は6.77%をしめており、総合事業の創設で3%の制限が加われば、サービスが削減されることは明らかです。
 わが党は総括質問で総合事業は導入すべきでないと質問しましたが、本市が次期計画にこの事業を取り入れることになれば、混乱は免れず問題であります。
請願者は、総合事業の創設により、総合的な多様なサービス提供を口実に要支援利用者のサービス給付が削減されないように、市に対して引き続き介護予防事業を継続して実施してほしいと求めています。また、現在実施されている給食サービスや一人暮らし高齢者の見守りなど多様な生活支援のよりいっそうの充実を求めるものであり、願意は妥当であります。

 次に請願項目の第2は現在市が策定中の第5期介護保険事業計画の策定にあたって、市民への公開と日常生活圏域ごとの公開討論会など開催し、市民や高齢者の要望や意見を取り入れてほしいというものです。
本請願を不採択とした会派は、社会福祉審議会の高齢福祉専門分科会の審議、事業所及び要介護者と自立の高齢者3000人を対象にしたアンケート調査の実施、パブリックコメントの募集など、幅広い分野の意見をとりいれており、願意を充たしているとしていますが、国が示す方針に照らしても不十分です。
 厚生労働省は、市町村に対して、介護保険事業計画策定に際して、日常生活圏域における高齢者のニーズ調査や給付の分析を行い、地域の諸課題をふまえてサービスの整備方針を検討するための「日常生活圏域部会」設置の方針を出しています。
 ところが本市は社会保障審議会での集計分析にとどまり、請願者が求めているような日常圏域ごとの公開討論会や公聴会なども実施していません。事業計画案のパブリックコメントを募集するだけでは不十分です。
 地域包括ケアの確立をめざすためには、少なくとも現行の15圏域ごとにどのようなニーズを持った高齢者がどのような生活をしているのかなどきちんと把握し介護サービス基盤の整備をすることが必要です。そのためにも住民参加で計画の策定を薦めることを求める請願者の願意は妥当といえます。

 最期に、請願審査に当たって、日本共産党以外の会派の多くが紹介議員の趣旨説明や当局からの参考意見の聴取を求めず、さらに、市当局が政策推進に向け努力しているから願意はすでに満たされていると述べ、「不採択」という態度をしばしばとっています。しかし、市民が直接市議会に政策を提言し、意見を表明する政治参加の権能である請願を、私たち議員は市民の目線で受け止めるべきであります。まったく賛同できない請願項目であれば不採択という判断もあるとは思いますが、請願趣旨に賛同できるならば、一層の努力を求める市民の思いを受け止め、採択し、市当局に更なる施策の推進を求めるべきであります。
 
 以上申し述べ、本請願の賛成討論を終わります。

 

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