トップページへ 前のページへ 目次ページへ
議会報告

前橋市議会議員定数(削減)条例の改正」の反対討論 中道浪子【2011/12/16】

 私は、日本共産党前橋市議団を代表して、今議会に上程されました議会議案第2号 前橋市議会議員定数条例の改正について、反対の討論を行います。

 反対理由の第一は、定数削減で市民の声を聞きにくくするとともに、市民の政治参加を狭めることです。
市議会は、本来、市民の声をできる限り反映することが議会制民主主義の基本であります。
今回の議員定数の条例改正は、清新クラブ、真政会、市民フォーラム、公明党、真澄会、心世紀、あかぎという会派の議案提出によるもので、改正の内容は、2年前に富士見地域と合併し、現行43人の議員定数になっていますが、富士見地域と合併前の2005年第1回定例会ですでに6名を削減し、40名の議員定数がわが党以外の全会派による賛成多数で可決されており、それをさらに今回2名を削減し、議員定数を38名にしようとする条例改正案です。
旧勢多3町村の議員は、合計52名が合併によって一挙に10名に減員し、その後の改選で現在6名となっています。加えて、旧富士見村では、合併前の議員数は18名でしたが、合併によって3名の選出になり、旧4町村だけでも70名の議員が現在9名となっているのです。
旧町村の議員をされてきたみなさんは、住民の少なくない方々から「合併により住民の意見が施策に反映されにくくなった」「地域の声が届きにくくなった」「市政の内容や方針がよくわからない」などの声を多く聞かれているのではないでしょうか。
合併という地方自治体のリストラにより、311平方kmという広大な地域が旧前橋市と1つの自治体になる中で、現在43名・欠員1で議員を構成しており、次回の改選で定数を40名と決めているのです。
富士見地域の合併からまだ2年余りしか経過していないのに、さらに2名を削減し、38名の定数にすることは合併後の市民の強い願いが市政や議会に反映しにくくなっていることは明白であり拙速すぎます。合併した旧町村はもとより、市民の声を議会や市政に十分反映させるために、今、定数を削減するべきではないと考えます。

 第二は、定数削減に対する本市市議会の主体性が全くないことです。
今回の議員定数削減について、各派代表者会議で会派の代表者や本日の議案提案者への質疑でも議員定数を削減する正当な理由や明確な根拠を求めましたが、はっきりとした理由や根拠を示すことができませんでした。提案者は、議員定数削減のための理由の1つに、隣の高崎市などの中核市がわが前橋市議会より定数が少ないということを取り上げて、本市議会も削減しなければ市民の理解が得られないと主張しているだけで、まことに主体性がないといわざるを得ないのであります。

 第三は、議長からの資料提供によれば、本市市議会の議員定数削減は必ずしも必要性がないのであります。
議長から本市との類似都市の資料が提出されましたが、それを見る限り、前橋市と同様に議員定数が40人という中核市の自治体は、「郡山市」「いわき市」「岡崎市」の3市で、前橋市の他に3つの自治体が存在しています。類似都市の中で、前橋市議会だけ定数40人が突出しているわけではありません。
しかも、この3つの自治体の人口についても、前橋市とあまり変わらない状況の中で、40 人という議員定数を維持しております。従って、前橋市だけが突出していることもなく、議員定数を削減しなければならない理由はありません。
あえて、財政問題を比較してみれば、1つは議員報酬ですが、「岡崎市」と比べると、前橋市議会のほうが1万1千円ほど高いですが、「郡山市」と比べると前橋市議会の方が17,000円低く、「いわき市」と比べても、前橋市の方が45,000円低く抑えているのが実態です。また、2つは政務調査費ですが、前橋市は1人年間80万円です。岡崎市は60万円で本市より低いですが、郡山市は120万円、いわき市は132万円と前橋市議会の方がはるかに低く抑えています。よって、前橋市議会が議員定数40人でも何ら問題もないし、定数削減をしなければならない理由も根拠もありません。

 第四は、今回の定数削減は、民意の反映、基本政策の立案、行政に対する監視と言う議会が果たすべき役割の発揮に大きな影響を及ぼすことです。         
そもそも、地方議会は、憲法と地方自治法により規定される議事機関であり、条例の制定、改廃、予算の決定、地方税の徴収、使用料、手数料、契約などの規定があり、また、権限に属する選挙権、歳入歳出予算の増額修正権、執行機関の事務に関する検閲、検査権、監査委員に対し監査を求めること、国会または関係行政庁に意見書を提出すること、及び普通地方公共団体事務に関する調査権の規定があります。
つまり、行政に対する住民の監視機関としての役割を十分に果たし、地方自治体の本旨住民福祉の増進が図られるようにすることが、議会の役割であるということです。
このように重要な役割を果たす議会の議員定数を議論する場合、何を問題とするのでしょうか。
第一に、議会が民主主義及び地方自治の根幹をなす重要な機能を果たすものであることから、単なる経費の節減等の観点からのみ、これを論ずることは必ずしも妥当ではないということであります。
第二に、議会が民意の反映、基本政策の立案、行政に対する監視といったその求められている機能を十分に果たせる体制であるかなど、地方議会のあの方をめぐる本質的な議論を十分行う必要があります。
今日、国の悪政のもとで貧困と格差の広がりが深刻化する中、住民のくらしと福祉、教育、環境などの充実と市財政の立て直しを、どう図るかが重要課題となっています。
こうした時に、経費削減の立場からのみの観点で定数削減を進めれば、議員が減った分だけ住民の声を議会に反映させ市政に届ける上で、大きな障害となるとともに、ムダづかいをなくし、くらし、福祉を充実する方向へ行財政改革の流れを切り替える役割発揮も困難になります。
 議員定数を減らして、チェック機能が高まったという話は聞いたことがありません。少数より多数でチェックすることが機能を高めることは自明の理です。
 多種多様な意思を議会に反映させることが、行政に対するチェック機能も高まります。
 議員は、住民を代表して審議決定をするのですから、前橋市民34万人を超える代表にふさわしい議員数が必要です。そうした観点から議員定数の問題は論議すべきです。

 第五は、議員定数削減の審議が極めて不十分で、削減に対する民意が反映されていないことです。
議員定数は、議会の構成にとって極めて重要であるにもかかわらず、各派代表会議で4回の意見を出し合う場はありましたが、議会のあり方や改善・改革などを含む十分な論議が行われたとはいいがたいものでした。結果的に、内容は定数削減ありきで、全く論議がかみ合わない状態でした。
地方自治法は議員定数を廃止しましたが、その理由は、地方自治体で論議して定数を決めればよいという地方分権の権限を尊重しているもので、本来なら、その趣旨にのっとって定数を幾人にすべきかと言う論議をすることが求められているのです。定数削減ありきの論議は民意を歪め、審議不十分といわざるを得ません。

第六は、議会改革というなら、定数削減をするのではなく、より市民に開かれた議会、活発な議論が保障される改革こそ行うべきです。
  憲法と地方自治法は、議会と首長が対等平等、チェックアンドバランス・抑制と均衡によって、地方自治と民主主義を保持する「二元代表制」を取っています。このたび、その一方の側から議員定数を減らす議案を提出されたことは、まことに残念なことであります。
確かに市民の中には議員が多すぎるという声があるようですが、こうした声を真摯に受け止めるなら、市議会と議員活動の質を問う声と受け止め、今必要なのは、議会や議員に対する不信感を取り除き、活発な論議が行えるように議会改革をさらに前に進めることです。
本市市議会では、政務調査費の問題も解決されておらず、国へ意見書を挙げるという内容の請願についても、前橋市議会では特別な扱いをしており、事実上議員が提出すれば事足りるとして、市民の請願権を認めない他市にない異常な扱いをしています。
また、市民から提出された請願の審査にあたっては、紹介議員の出席を求め、当局の意見聴取を認め、名実ともに、慎重・審査を行うべきです。
こうした問題を1つ1つ丁寧に解決することが、市民への信頼を深め、議員定数を削減せよという声はなくなります。
なお、日本共産党前橋市議団は、議員や市長などに厳しい「政治倫理条例の制定」を求めつつ、清潔で透明かつ公正な議会運営を進めることを軸としながら、質問時間の拡大や請願審査・議会傍聴の改善、インターネットの拡充、議会広報の改善と公聴活動で市民にわかりやすい議会をめざすなど、一歩前進してまいりましたが、まだまだ、改善が必要であり、市民の声をよく聞きながら、十分に論議を進めることを求めます。
以上のことから、「前橋市議会議員定数条例の改正」を撤回すべきことを求めて反対の討論といたします。

ページのトップへ