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議会報告

2012年第1回定例市議会議案反対討論・長谷川薫市議会議員【2012年5月30日】【2012/6/1】

2012年第1回定例市議会議案反対討論・長谷川薫【2012年5月30日】

 私は、日本共産党前橋市議団を代表して、議案第50号から56号、58号、から59号および65号、70号の11件について反対討論を行ないます。
最初は、議案第50号平成24年度前橋市一般会計についてです。
先の見えない不況と雇用破壊、社会保障の切り下げが続くもとで、市民は暮らしの応援と福祉の充実を公約した市長の施策におおいに期待しているところであります。ところが、本予算案に示された施策には多くの不十分さがありますので、認定することができません。以下その理由について申し述べます。

1、最初は、子育て支援および教育施策についてです。

その第1は、第3子の学校給食費の無料化についてです。市長が「小中学校に同時に3人通学する世帯」を条件としたため、対象者が約900人、予算額が2,500万円に半減しました。今年度は、子ども手当の縮減、年少扶養控除廃止による増税と、子育て世帯への給付の削減などで、市内の子育て世帯に総額・約9億円もの新たな負担が押し付けられます。義務教育以上に教育費などの支出がかさむ高校生がいる家庭についても、当然第3子以降の子ども給食費無料化の対象とすべきであります。

第2は、30人学級の全校実施についてです。教員の多忙感を解消するために、支援員の増員や図書従事職員・支援教員の勤務時間を延長するなどの施策は重要です。しかし、30人以下学級制度を全く前進させなかったことは明白な公約違反です。1クラスの人数が30人を超えた場合に、15人から16人などの2クラス分割する30人学級制度は、すでに群馬県の独自策「さくらプラン」として小学校の1〜2年生で実施しており、高い教育効果は実証済みであります。市単独の教員を確保し、少なくともすでに「さくらプラン」で35人学級を実現している小学校3〜4年生や中学校1年生からの段階的な実施を決断すべきです。当局の試算では3〜4年生で実施しても26クラスが増えるだけですので教室の確保も教員の増員もそれほどの困難はなく財政的にも実施は可能であります。

第3は、小中学校の統廃合計画についてです。平成23年度の包括外部監査の結果報告書は、「老朽校舎の修繕や耐震化予算など学校の管理運営費の削減を進めるために、統廃合の結論を急ぐべき」と指摘しています。
しかし、これまでに本市教育委員会は「小中学校の適正規模化は決して財政削減が目的ではなく、子どもの行き届いた教育の実現のためであり、そのためにも保護者や地域住民の意思を尊重する」と説明してきました。したがって、当局は今回の監査結果を放置せず、「本市の教育目標と矛盾する指摘」という見解を表明すべきです。今もなお監査結果をそのまま市のホームページに掲載し続けていることは、現在、適正規模化の対象校とされて、統廃合の是非を真剣に模索している各学校の父母や地域住民に対する不誠実な態度であります。

2、次に、地域経済振興策などについてです。

その第1は、住宅リフォーム助成制度の改善が不十分であります。市長は、「住宅リフォームに補助金を積極的に支出して市内業者の仕事を増やします」と公約したにもかかわらず、昨年事業化した「耐震・エコ・子育て住宅改修支援事業」の対象工事を全く拡大せず、昨年1件だけの実績にとどまった耐震改修の補助金を20万から50万円に増額しただけであります。同事業の昨年実績は82件・決算額1,438万円を4,290万円に予算増額しただけでは、改善になりません。昨年から事業化した高崎市では、畳替えはもちろん屋根・浴室・トイレや台所などほぼすべてのリフォーム工事を対象としており、業者からも市民からも大変喜ばれ、昨年度は前橋市の18倍の1,509件・補助額は13倍の1億7,688万円もの実績を挙げています。市当局は経済波及効果抜群と評価し、今年も1億円の予算を計上しています。
いま市内の建設関連業者のみなさんは、「前橋市は高崎市のリフォーム補助事業に学んでほしい」という声を強く上げています。市長は十分受け止めて、直ちに対象工事の拡大など制度の抜本改善を行なうべきです。

第2に、市営住宅についてです。
修繕費の決算額は平成21年度の約4億円をピークに昨年度は約2億2千万円まで減額し、本年度予算も昨年度並みであります。
いまなお低家賃で快適に暮らせる市営住宅への入居希望者が増え続けているにもかかわらず、計画的な修繕やリフレッシュ事業が進まないために、全管理戸数5462戸のうち653戸・12%もの貴重な市民共通の財産である市営住宅が空き家となって有効活用されていません。
このために現在、入居待機者が416人もいるにもかかわらず、今月の入居斡旋はわずか39戸で空き家の5%にとどまっています。
交通の利便性が悪く老朽化が進んだ郊外立地の芳賀や江木団地などは、ますます入居者が少なくなっており、団地全体の居住環境が悪化しています。
市営住宅修繕は市内建設業者の仕事と雇用を増やし、地域経済を活性化させる効果もおおいに期待できます。住宅修繕予算を大幅に増額して、入居者の希望に沿った修繕の促進と長寿命化計画に沿った耐震化やエレベーター設置、県営住宅のような2戸を1戸にするような大規模リフォームを促進するとともに、デマンドバスなどの公共交通の整備を促進して、市営住宅入居希望に応えるべきです。

第3に、市長が選挙で公約した中小企業振興条例や公契約条例の制定が進んでいません。地域内で経済が循環するためには企業呼び込み型の産業政策重点ではなく、市内の事業所の約1万8千社の9割、従業員16万5千人の7割以上を占めている中小企業の支援を軸にして、域内再投資力をつける産業政策を大きく推進することが必要です。  
中小企業団体と行政、JA、地域の金融機関などの協議への参加を求め、産業振興条例やビジョンを制定すべきです。また、本市が発注する工事や役務の仕事でワーキングプアをつくらないよう、公契約条例を制定して労働者の賃金の底上げとそれによる地域経済の活性化をはかり、公共事業や公共サービスの質を確保すべきです。

3、次は、ゴミ処理問題についてです。

第1は、新清掃工場建設計画の凍結についてです。現3工場の延命の調査にとどめず、高木市長のもとで進められてきた建設計画そのものの検証を直ちに開始すべきです。ハザードマップで指定した2〜5メートルの浸水危険個所であるにもかかわらず下増田町の遊休市有地を建設場所に選定し、環境や災害時のリスク分散を図らず1箇所に統合することを決定の是非などを市民参加の新たな検討委員会を設置して検討すべきです。

第2に、焼却ごみの減量による清掃工場の規模の縮小は大きな財政節約となります。一般廃棄物処理計画の焼却ごみの減量目標値を引き上げ、その他プラスチックの分別回収の再開を検討し、古紙および雑古紙の本格的な分別回収にむけて市民周知をいっそう強めるべきです。

4、次は収納行政の改善についてです。

納税相談をいっそうていねいに行い、税滞納者の自主納付を促進する改善を推進すべきです。
わが党議員が弁護士と相談し、税滞納者の多重債務の過払い請求や自己破産手続などを支援して、当事者の生活再建の道を切り開いた上で収納課窓口に納税相談に出向いても、相変わらず守秘義務を盾にして収納課は納税相談への市議会議員などの立会いを拒否しています。税滞納者が了解し、自主納税を支援する者の納税相談への同席を直ちに認めるべきであります。

5、次は、土地開発公社の経営健全化のための土地の引き取りの問題点についてです。

公共用地や代替地確保のために先行取得して塩漬けとなっている同公社の土地を、今年度、各課が総額約7億7千万円を支出して取得時の価格・簿価で買い取る予算が計上されています。
大幅に地価が下落した土地を購入時の価格で現課が買い取る予算措置でありますが、当該区画整理や都市計画道路事業を施行する上での緊急性はありません。公社の経営健全化推進の代償として、建設事業予算がふくらみ、他の福祉や教育施策にそのしわ寄せがおよびます。
公社の存廃も含め検討するとともに、今後の公共事業施行前の土地の先行取得については、買い取り時期や規模の判断を誤らないよう十分留意すべきであります。

6、次は原発及び放射能汚染対策についてです。

第1は、原発事故を想定した防災計画の策定が不十分です。世界最大規模の柏崎刈羽原発は本市から100キロ圏内であります。
国や県の指示待ちではなく、一刻も早く原発災害を想定した防災計画を策定し、安定ヨウ素剤の備蓄および広域的な避難計画などを立てるべきです。

第2は、空間放射線量は平常時に戻ったとの見解もありますが、下水処理施設の焼却汚泥にも清掃工場の焼却灰にもセシウム汚染が続いており、赤城大沼のワカサギの汚染も続いております。またセシウムの付着した粉塵の吸引や食品を通じて体内に取り込まれ蓄積される内部被ばくを軽視することはできません。したがって、核物質の種類別の線量測定検査ができる食品の放射能測定器を購入し保健所に設置し、市内に流通している食品の測定をして市民の命と健康を守るべきです。
赤城山の放射線測定をきめ細かく実施するとともに、農産物直売所の野菜の放射性物質の測定を行い、その結果を公表すべきです。

7、この項の最後は、国政に対する市長の政治姿勢についてです。 

代表質問でも取り上げましたが、市長は、税と社会保障の一体改革もTPP(環太平洋経済連携協定)も国の動向を見守るという態度表明でありました。大変情けない態度であります。 市長は、消費税10%への増税にきっぱりと、反対の立場をとるべきであります。また子ども子育て新システムは、保育の市の実施義務を放棄し、保育に市場原理を持ち込むものであり、保護者の負担増、障害のある子ども・貧困世帯の子どもが排除されかねません。新システムを導入しないよう国に求めるべきです。
 TPP環太平洋連携協定は、大震災からの復興を妨害し、「関税ゼロ」と、政府が目指す「食料自給率50%」とは両立せず、「食の安全」「医療」「公共調達」などあらゆる分野に影響し農業と暮らしを破壊します。この重大な問題に対し、深刻な事態だということを認識し、市民の命やくらしをあずかる市長として、TPPに反対する立場を明確にすべきであります。
 国が一層の悪政を行うとき、その防波堤になるのが、地方自治体であり、その役割は重大です。

次に、議案第51号、国民健康保険特別会計についてです。 
国保税については、市民が払いやすい、目に見えた国保税の引き下げを強く求めます。また、本市では、国保税滞納者にたいして資格書や短期証が数多く出され、市民の医療を受ける機会を奪うものとなっています。
 市民の命を守る立場からも、制裁的に保険証の取り上げをやめるよう強く求めます。そして、市民負担増につながる国保広域化でなく、国の責任を明確にして削減した国庫支出金を元に戻し、住民の立場にたって国保行政を進めることを国に強く求めるべきであります。

次に議案52号、後期高齢者医療特別会計についてです。

本制度は、75歳以上の市民の医療費を別勘定にし、高齢者の差別医療を拡大し、受診抑制を狙うものです。しかも今年度は2年に1回の保険料見直しで、約9.5%の値上げが行われました。高齢者の年金が削減されている中、保険料の引き上げはいっそう高齢者の生活不安を強めています。制度の廃止を国にもとめるべきであり、本会計を認めることはできません。

次に議案53号、競輪特別会計についてです。 
 
不況を反映して、競輪来場者の減少、車券売上減が続いています。もともと市民の懐が冷え込んでいる上に、国の国民負担急増策で、ギャンブルにまで回す金がないのが市民のくらしの実態ではないでしょうか。
 しかし本市の競輪事業は、よりギャンブル性の高い車券を販売し、ファン拡大に力を入れています。 地方自治体の財源確保策の中心は、市民生活の活性化に力を入れ、市民生活を豊かにし、市内中小業者の営業を発展させて、市民税の向上に貢献するような、より積極的施策が求められているのではないでしょうか。 
 
次に、議案54号農業排水事業特別会計、議案56号、簡易水道特別会計、第58号、水道特別会計、59号下水道特別会計についてです。 

上下水道事業についてです。水道局は、老朽管の更新や施設の耐震化などライフラインの維持管理及び新設のために努力されていますが、最も安全性が求められる水源井戸や浄水施設の管理を民間企業に委託継続していることは認められません。計画的に直営に戻すべきです。また、受水単価の高い県央水道の受水量を減らして地下水の利用比率をもっと高め、財政収支を安定化すべきであります。
また、これら水道料金や下水道料金に消費税が転嫁されている事を認めることはできません。今喫緊の課題となっている消費税増税は市民生活と地域経済に多大な負担を押し付けます。市長や公営事業管理者はそのことをしっかり自覚し、消費税増税にきっぱりと反対の表明をされるよう求めます。

次に、議案55号、介護保険特別会計についてです。
 


市民がねがう介護保険料引き下げではなく、保険料の基準月額を4825円に1100円、平均29.5%も引き上げた事業運営を容認することはできません。 高齢者人口が今後ますます増え介護利用者も増えていく中、保険料が上がっていくのが当たり前といった考え方でよいはずがありません。市は国に対してこの根本的な問題点をただしていく姿勢を強めるべきです。軽度者からのサービス取り上げをやめ、国に25%の国庫負担割合の引き上げを求めるとともに、当面は保険料引き下げのため、本市一般会計からの繰り入れを行うべきです。 また、多くの自治体が実施している保険料の低所得者を対象とする独自減免をいまだに実施していないことも問題です。
 市民の意見を聞き、利用料などの経済的負担を軽減するとともに特別養護老人ホームの増設を進め、在宅でも施設でも、個々の高齢者の状況に応じ、必要な施策が受けられるよう条件整備を進めることを強く求めます。

次に、議案65条公立大学法人評価委員会条例の制定および議案70号前橋工科大学の定款策定についてです。

わが党は、工科大学の法人化には反対であります。山本市長の判断によって、法人化しない選択肢があったにもかかわらず、前市長の判断に追随していることは認められません。しかも提案された定款では、理事長を市長が任命し、学長は理事長が任命することとなっています。また大学運営についても5年間の中期目標を市長が策定し、市長が委嘱した評価委員会が実績を評価します。
しかし本来、大学の目標やあり方を決めるのは大学自身であって、市長は教育環境・教育条件の整備を専らとすべきです。大学の目標や運営、理事長や学長の選任等は、教授会や職員、学生など大学自身の構成員を主人公として決定すべきです。理事長を市長が任命する仕組み等々、外部委員を含む経営審議機関や評価委員会等を通じて、学問研究とはかけ離れた財政確保重視の方向へと大学運営が変質していくのではないでしょうか。
 大学教育の成果というものは、一朝一夕に答の出るものではありません。公立大学に対する地方交付税措置も大幅にも減らされ続けており、市からの運営費交付金も当然減額をもとめる判断が強まり、その一方で、中期目標で科学研究費などの外部資金獲得の目標も大きく求めていくことは必至であります。
教員も職員も、外部資金の獲得に時間と労力が費やされ、文科省であれ企業であれ、外部資金の性格や目的によっては自由な研究が制約されるおそれも出てきます。産学連携の強化が求められなか、長期の営みが要求される教育研究分野において、目の前の実用化の研究ばかりが重視される心配があります。    
大学の自治や学問研究の自由が侵害され、大学間競争に勝ち抜くための外部資金獲得競争を強める大学運営に変質しかねない独立法人化は撤回すべきです。

以上申し述べまして、上程された議案11件に対する反対討論を終わります。

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