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議会報告

第3回定例市議会議案反対討論【2012年9月27日】長谷川薫議員【2012/10/9】

第3回定例市議会本会議反対討論【2012年9月27日】長谷川薫議員

 私は、日本共産党前橋市議団を代表いたしまして、議案第86号から第92号、第94号および第95号、以上9件について反対討論を行います。
 昨年の東日本大震災と東電福島第一原発事故は、防災対策と日本のエネルギー政策を根本から問い直す事態となりました。
 また、国が進める構造改革路線は、大企業の内部留保が260兆円を越える一方で、官民を問わない労働者への賃金抑制策によって日本社会全体の消費と生産を冷え込ませました。
 それにもかかわらず、民主党・自民党・公明党は密室談合を重ね、消費税増税と社会保障大改悪法案を強行し、TPPへの参加をめざしています。
このようなときだからこそ、前橋市は国の悪政に追随せず、住民福祉の向上をめざす自治体の責務をいっそう強めるべきであります。
 以上の基本的な認識に立って、各議案の反対理由を申し述べます。
 
最初に、議案第86号、一般会計についてです。

 高木前市長は、「本市の行政サービスは県庁所在地で第1位」と自画自賛しましたが、市民にはその実感はなく、市民生活応援の行政サービスの充実を強く求めています。
ところが、本市は一貫して正規職員の削減を行財政改革の中心に位置づけて、技能職の採用中止・民間委託の拡大・嘱託及び臨時職員の増員・小中学校の統廃合、指定管理制度の拡大、前橋工科大学の地方独立法人化などを進めてきました。このような改革は市民サービスを低下させるものであり、認めることはできません。
本市は4町村との合併で中核市となり権限と業務量が増大し、専門知識を有する職員の増員が必要なのに、昨年度は22名の正規職員を減らし、市民と最も接する窓口業務や知識と経験が求められる小中学校・保育所などの子育てを担う教育現場などに官製ワーキングプアーと称される低賃金で雇用期間に定めのある非正規職員を配置しています。すでに全職員の4割を非正規職員が占め、社会的弱者に奉仕する自治体の機能を低下させていることは認めらません。

次に、生活保護行政が不十分です。
 非正規労働者の雇用止めなどによって、本市においても稼働年齢層の生活保護申請が増えています。就労の努力を強調して、保護申請を侵害する窓口対応・いわゆる水際作戦がしばしば見受けられます。生活保護バッシングに追随し、最後のセーフティーネットである生存権保障の後退させることは認められません。
また、生活保護受給者の立場に立った自立の支援を強めるためには、ケースワーカーの大幅な増員が不可欠です。生活保護申請後の決定までの生活費の貸付制度や市営住宅などの退去時のリフォーム費用の扶助など現行生活保護制度の不備を補う市独自の支援制度を創設すべきです。

次に、教育行政についてです。
 今、新自由主義にもとづく過度な競争と早期選別を行なう教育の矛盾が噴き出しており、いじめを苦にした子どもたちの自殺や不登校が大きな社会問題となっています。本市においても昨年度、教育委員会が確認できたいじめは小中学校で89件に及んでいます。本市が3〜4年生の30人学級の実施に必要な教職員は27人、給与は1億5120万円です。少なくとも段階的な実施を決断すべきです。
また、教育委員会は父母や地域住民に小規模校のデメリットを強調して、小中学校の統廃合計画を推進してきました。全国的には小規模校のメリットを生かして、一人ひとりの可能性を引き出すすばらしい教育実践を展開している学校がつぎつぎと生まれております。今、日赤病院の移転計画の推進によってまちづくりが変化するという事態を受けて、教育委員会が主導してきた春日中と広瀬中の合同地区委員会が解散され統廃合の合意が事実上白紙撤回されました。教育委員会はこれを教訓として、教育予算の削減、財政効率第一の行財政改革を機械的に教育現場に持ち込まないよう、統廃合計画を抜本的に見直すべきです。

また、税収納行政では、生活困窮を理由とする税滞納者への行き過ぎた滞納整理を認めることはできません。
 生活実態を無視した多額の分納誓約の強制や売掛金や給与や年金などの強権的な差し押さえによって、事業継続を断たれた零細な自営業者や抗がん剤治療を受けられなくなるなどの命や暮らしを脅かす事態がおきました。中小業者の不動産や売掛金の差し押さえは、融資の道を閉ざし、親会社との取引停止などで倒産の危機を招きかねません。また、あまりにも制裁的な年利14.6%の延滞金を独自に減免する規則を作って本税を完納した場合の救済措置を講じている自治体が全国的に増えているにもかかわらず、本市では延滞金のみの滞納で差し押さえを行なっています。納税者の人権を無視した強権的な収納行政は直ちに改善し、徴収の猶予や執行停止などの納税緩和措置などの的確な運用が必要であります。また延滞金の減免規定を創設し、納税相談への市議会議員の立会い拒否をやめるべきです。

次に廃棄物処理行政についてです。
 今、下増田町の新清掃工場の建設計画を凍結していますが、そもそも国の清掃工場の広域化方針による集約化は、リスク分散や地球温暖化防止に逆行する点からも問題です。さらに、建設予定地が市内最大の洪水危険箇所であり、工場から排出されるガスの影響も伊勢崎市の市街地により多く及ぼす点も問題です。
また、昨年度も4億3千万円もの整備費用をかけて現3工場の的確なメンテナンスを実施しているにもかかわらず、これまでは老朽化を強調して長寿命化の検討すら実施してこなかったことは問題です。

 また、市内の自治会や老人会など326団体が、ゴミの減量と資源の再利用を目的に実施した古紙などの有価物集団回収事業において、前橋市に回収登録をしている前橋広域再生資源事業協同組合の回収業者が、数年前から助成金を要項に違反して過剰請求していたことが今年の7月に発覚しました。公金支出にあたっての公正さにおける緊張感の希薄さ、あるいは欠如ともいえるものであり、前市長の政治姿勢が色濃く反映した事態です。
 市が回収業者に支払った4年間分の約5千万円の助成金のうち、過剰支払い分の早期返還を求めるとともに、全市民に今回の事態と改善策を分かりやすく報告すべきです。
なお、岩手県の震災がれきの受け入れにあったては、放射能物質やアスベストなどの安全確認とともに、試験焼却前に全市民対象の説明会を開催し市民合意で広域処理に協力することを強く求めておきます。

次に、中小企業支援策が不十分であります。

 昨年、中小建設業者の仕事起こしとして全国で広がっている住宅リフォーム助成制度をわが党や中小業者団体の要望に答えて創設しましたが、エコと耐震と子育て支援につながるリフォーム工事に限定したために、利用申請が伸びませんでした。今年度は所得制限をなくし、耐震工事を20万円から50万円に拡大したものの、相変わらず3事業に限定していることは問題であります。
また、わが党が公契約条例や中小企業振興条例派の制定を求めましたが、いずれも制定努力を尽くしませんでした。
さらに、市内の中小企業の労働者雇用や経営実態を悉皆調査して、企業ニーズを把握すべきと再三求めましたが、一部の企業訪問や懇談にとどめました。工業団地の造成で企業を呼び込むことには力を入れるものの、不況のなかで懸命に経営努力を尽くしている市内企業に対して、個々の企業の経営実態に即した技術開発の支援や販路の拡大などの支援策を十分実施しなかったことは、本市の地域経済振興策の弱点であります。

 次に、市営住宅施策についてです。

 今、市民の所得が減少しているため、子育て世帯や高齢世帯などでは快適に暮らせる低家賃の公営住宅を希望する人がふえております。それにもかかわらず、市は持ち家や市場重視の国の公営住宅抑制策に追随し15年以上前から老朽団地の建てかえに限定し、しかも順次管理戸数を減らしていることは問題であります。また、老朽住宅の補修も不十分であり、管理戸数の15%、約500戸が空き家となっています。中でも耐震補強が必要な市営住宅9棟が入居者にその危険な事実を十分知らせず、補強されないまま放置されてきました。緊急に補強工事を行い、危険にさらされている市民の命を守るべきです。また、民間住宅借り上げ式の市営住宅の制度化を具体的に検討すべきです。
 
 次に、農業振興についてです。
 
 本市はTPP参加による影響額を約177億円と試算しただけで、反対運動の先頭に立っているJA前橋などとの連携を図らず傍観してきたことは、農家の理解を得ることはできません。集落営農組織や農業法人などを育成して規模拡大による農業生産の効率化や、農地の流動化などで遊休農地を減らし、赤城の恵みのブランド化の拡大などではとてもTPPには太刀打ちできません。本市の農業を守るために、市庁舎にTPP反対の意思を示す垂れ幕を掲げて、JAと連帯すべきです。 
 また、国の場当たり的な補助メニューの具体化だけではなく、農業で食べていけるよう、大規模農家の支援とともに家族農業への支援を強化するためにも、本市独自の農産物の価格保障制度や所得補償制度、後継者支援策を一層充実すべきであります。

 次に、バス公共交通施策についてです。超高齢化社会に向けて、交通弱者や買い物難民のためのバス公共交通の充実支援策は緊急課題であります。

 いま山本市長の全市デマンド乗り合いバスの運行に向けての検討が開始されていますが、昨年まではマイバスの運賃を距離別料金制にして値上げするなどが検討されて、利用者の自己責任論を強めようとしたことは問題であります。
バスを利用する多くの高齢者は低年金で暮らす低所得者です。運賃を値上げせず、高齢者が引きこもらず元気に外出する自立できる生活を支援してこそ、医療や介護の支出を結果として減らし、全体としての財政支出を抑制できるという横断的な政策判断が必要であります。今後もタクシー事業者などとの相互理解を深め、全市デマンドバスの運行を早期実現すべきです。

  次に、まちづくりについてです。

 私たちは、中心市街地の活性化方針にブレーキをかける南部拠点地区開発を急ぐべきではないと繰り返し主張してまいりました。しかし市当局は、中心市街地の魅力と郊外の大型商業施設の集客は別のもので、十分に棲み分けできると述べて強引に推進してきた結果、前橋プラザ元気21に多くの市民を集客しても、中心市街地の空洞化は進むばかりです。 
 今、さらに美術館に続いて、8番街区に公的な文化施設の整備が検討されていますが、駐車場が不足する中心街にハコモノをつぎつぎと集中させる計画には、慎重に検討すべきです。
また、人口減少と少子高齢化が進行していく中で、郊外型の大型商業施設をいまだに行政みずからが誘導する都市計画は、文字どおりまち壊しにつながります。これ以上の郊外型大型店の出店誘導を見直すべきです。
 
 また、昨年度末に前工団の事業継続のために、当該年度の赤字補てんとして10億円を一般会計から繰り入れ、3年間で34億円もつぎ込んだことは認められません。前工団事業の収束を急ぐべきです。

 さらに、区画整理事業は相変わらず現在もなお11箇所で同時施行されており、ほとんどの事業が長期化しているのに、新たな事業区域を次々と広げております。事業区域内の仮換地の未指定地区や家屋の移転が遅れている地域では地権者や借地借家人は生活設計が立てられず、道路や下水の整備がおくれて地域住民の生活に支障が起きるなどの問題が起こっています。今施行中の大部分の事業を完結させてから新たな事業を検討するよう改めるべきです。また、道路整備が主たる目的の場合には、面的整備の区画整理手法ではなく、国や県の有利な補助金や交付金を活用した用地買収方式の街路整備も積極的に取り入れるべきです。
 
次に環境行政についてです。

 原発事故による放射能汚染から市民や子どもたちの被曝を最小限とするための、ホットスポットの発見とその除染の努力が不十分です。
わが党の指摘に答えて、全小中学校や市民サービスセンターなどへの測定器の配備が行われましたが、国基準の地上から1メートルで毎時0.23マイクロシーベルト以上を除染基準としていることは問題です。
 セシウムは半減期が30年、除染しなければ汚染は長期間継続します。被曝は少ないほど安全が担保できるという放射線防護の原則に立ち、今でも基準を大幅に超える線量が測定される雨どいの下などの除染を進めるべきです。そのためにも、市民サービスセンターに配置している測定器の貸し出しを促進すべきです。
また、赤城山の放射能汚染については現時点では、昨年の秋から25%空間線量が低下しているとの報告ですが、原発事故発生以前の上沖町の県のモニタリングポストの平均通常値は0.018マイクロシーベルトであり、赤城山の線量は今でも通常より7〜14倍も高くなっています。大沼のワカサギの汚染も続いています。多くの市内外の人々が訪れる赤城山の放射線量測定は安全確保から今後も継続すべきです。

 また、渋川市の坂東工業団地の産廃による田口町の市の水道地下水の汚染や前工跡地の土壌汚染、荒口町の群馬県化成産業の悪臭問題などの解決の努力が不十分です。
前工跡地の問題については、前橋市は判決を待たず取り下げて和解という選択もできました。しかし、あえて山本市長が判決を求めて敗訴したため、法理論上は、県に土壌浄化費用を請求できなくなりました。       
 汚染土壌に盛り土し、舗装をすれば立ち入りを認め、汚染された土地の掘削をしなければ駐車場や運動広場などの土地利用はできるとの現行法上の措置はあくまでも暫定的な措置であります。

 跡地は、利根川に隣接しており、利根川の水位の上昇などで地下水脈が上昇し、汚染物質が地下水に溶出して広範囲に汚染が拡大する恐れもあり得ます。  
市民の共通財産となった前工跡地の末永い有効活用のためにも、県にも費用負担を求め汚染物質を早期に完全除去すべきです。

次に、平和行政についてです。

 前橋上空は、米軍の飛行訓練空域に設定されているため、米軍ジェット機の低空飛行による爆音被害の苦情が長年にわたって、市民から寄せられています。、今米軍の欠陥輸送機オスプレイの配備が強行されようとしているだけに県内の被害を受けている市町村とともに、直接、防衛省や米軍に中止を申し入れるべきです。また、爆音被害の事実を告発するためには、市役所屋上などに騒音測定器を設置すべきです。

 次に、議案第87号、国民健康保険特別会計についてです。

 昨年度は国保税の滞納者1,324人から保険証を取り上げて資格証明書を発行しました。短期証は4,390人に発行しました。国の言いなりではなく、深刻な受診抑制を招き、市民の命を危険にさらす制裁はやめ、憲法25条と国民皆保険制度の理念に基づく血の通った国保運営に転換すべきです。また、所得が激減しても、本市では国保税の申請減免の条件を前年所得の5割以上の減少世帯を対象としているために、十分な救済策になっておりません。申請減免制度を改善すべきです。また、今こそ法定外の一般会計からの繰り入れを行い、国保税の引き上げを抑えるべきです。抜本的な解決は、国庫負担金の増額を求める以外に道はありません。
 
 次に、議案第88号、後期高齢者医療特別会計についてです。 

 社会的に弱い立場にある75歳以上の高齢者を別建ての医療制度に囲い込み、応益負担を押しつけた上に、健診から外来、入院まで医療差別する制度は、手直しや見直しではなく、廃止させるしかありません。
 
次に、議案第89号、競輪特別会計についてです。
 景気悪化のもとで、車券売り上げ収入額の減少が続いております。かねてから我が党は、ギャンブルに市財政を依存すべきではないとの立場から決算認定に反対してまいりました。高配当を期待させる一層ギャンブル性を高める車券販売で売り上げを伸ばそうとすることには賛成できません。

 次に、議案第91号、介護保険特別会計についてです。

 昨年度は、第4期介護保険事業計画の最終年度でした。3月の臨時議会で4月からの介護保険料を約3割も引き上げ、約8万人の高齢者に10億円もの負担を増やしたことは認められません。市は、特養増設を十分進めず在宅介護を重視した国の介護給付費の抑制策に追随し、特養入所待機者が1500人を超えるにもかかわらず、市独自の待機者解消策を講じませんでした。 
 待機者の受け皿となっている老人保健施設では、新たな入所希望者に対応するために、入所から3カ月から半年たてば退所を求めており、在宅で暮らせない高齢者の行き場が奪われ、たらい回しにされる深刻な事態が恒常化しています。今、民間の有料老人ホームや老人の共同住宅・高齢者専用住宅が待機者の受け皿としてふえてきているものの、入所費用が月に10数万円もかかり、余りにも高過ぎて、低所得の高齢者にはとても入所できません。今後3年間の本市のスマイルプランでは、特養増設の目標は230床しかありません。現在の国や県の施設整備計画の範囲での計画では、今後ますますふえると見込まれる入所希望者には全く対応できません。

 特養の増設はもちろん、グループホームや小規模多機能居宅介護施設などの増設に向けての国や県の予算配分をふやすよう、強く市長は国、県に働きかけるべきです。また、一般会計からの繰り入れを行い、国庫支出金の増額を求め、市独自の保険料や利用料の負担軽減措置やサービスの上乗せ横だし補てん制度をつくるべきです。
 
次に、議案第90号、農業集落排水事業会計、議案第92号、簡易水道事業会計、議案第 94号、水道事業会計、議案第95号、下水道事業会計についてです。

 それぞれの料金に消費税が転嫁されていることを認めることはできません。 また、水道事業については、浄水場や井戸などの45カ所の施設監視と管理を民間営利企業に業務委託しております。最も安全性が求められる水道施設の管理を営利企業に任せるべきではありません。順次直営に戻すべきです。また、地震に備えて各種上下水道施設の耐震化を促進するとともに、水道については今こそ地下水保全条例を制定し、地下水を涵養し、水質保全に力を注ぎ、利根川の表流水に多くを頼らず、もっとおいしい地下水を市民に提供すべきです。

 なお、討論の最後に一言申し述べます。今、市当局は、財政の効率化のみを強調した外部包括監査の言いなりに市立幼稚園や学校統廃合を推進しています。 
また米寿祝賀会の中止や堀越町のメガソーラー設置など市民の意見も議会の意見も求めず庁内検討だけで結論を出して、突然、議会の承認を求める事案が多くなっています。さらに、サマーレヴューと称して、今本市のほぼ全ての事業を対象に事業仕分けを行ない、まもなく結論が公表されるとのことですが、何を基準として存続・充実・見直し・廃止などを判断するのか、事業評価手法などの詳細も議会に示されていません。これでは行政のチェック機能を議会が果たすことはできません。

 議会軽視を改め、今後、新たな施策を実施する場合や施策を変更するなどの場合は、検討段階から議会に十分な情報公開を行なうとともに、結論に至った判断の詳細を報告するよう、直ちに改めるべきです。

以上申し述べまして、9議案に対する反対討論と致します。


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