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議会報告

今年度末で解散する前橋工業団地造成組合と前橋市土地開発公社の事業の総括と今後の産業振興策や公共用地の先行取得方針について 第2回定例市議会総括質問 2013年6月20日【長谷川薫市議会議員】
【2013/6/20】

第2回定例市議会総括質問 2013年6月20日【長谷川薫】

 私は、今年度末で解散する前橋工業団地造成組合と前橋市土地開発公社の事業の総括と今後の産業振興策や公共用地の先行取得方針について質問します。

1、 最初は前工団についてであります。

 @ 前工団は、この間の放漫な事業運営によって金融機関への多額の借金が累積し、自力再建の力を失って行き詰まり解散に追い込まれました。事実上の財政破綻による清算であります。

 24年度末には、五代南部工業団地分で53億8千万円の赤字、ローズタウンは東地区の未造成地を土地開発公社に11億円余で売却しても、48億2千万円の赤字が出ています。そして拡張した朝倉工業団地は完売できましたが、一般会計を43億円も繰り入れました。


 わが党はその都度、前工団の事業計画の縮小などの見直しを提言してきましたが、ほとんど改善が図られませんでした。理事者として今日の結果を招いたことについてどのように総括されているのか、明確な答弁を求めます。

 ●とくに最近ではローズタウンや五代南部工業団地の分譲が進まず、財政悪化が深まり単年度収支の赤字が続いていたにもかかわらず、高木前市長が朝倉工業団地の拡張事業を開始したために、平成20年から3年間で43億円もの市財政の繰り入れを余儀なくされました。拡張した分譲地が当局の懸命な努力によって完売できたからといって、福祉や教育などの市民のための予算を削るなど、市民の多大な犠牲と負担によって拡張事業が強行されたことは、決して消すことはできない明らかな失政であります。

 また、総面積38f五代南部工業団地は、平成9年から造成され平成15年から分譲が開始されたにもかかわらず、10年たってもまだ3区画約4ヘクタールが売れ残っています。
しかも、地価の下落と売却を進めるために分譲価格を当初事業予算の時に決めた価格の半値に引き下げたことや起債償還利子の支払額が大きく累積したために、平成24年末で53億8千万円もの赤字が発生し、総投資額の半分しか回収できない状況に陥っております。

 さらに、総面積54.9fのローズタウンの大規模な住宅分譲も、平成13年から造成を開始し15年から分譲を開始しましたが、計画通りの分譲が進まず、24年度末で48億2千万円もの赤字が発生しています。また、同東地区の未造成地11.8fを約11億6千万円で土地開発公社に売却した分も含めれば、市民負担はローズタウンだけでもすでに、約59億8千万にも達しています。


 ●「バブルの崩壊やリーマンショックなど、予測できない経済状況の悪化のために、工業団地や住宅団地の計画通りの売却が進まず厳しい事業運営を強いられた」との答弁がありました。しかし外的な要因だけではありません。事業開始の時点での計画の甘さを、22年度の外部包括監査がきびしく指摘しています。
 平成9年に造成を開始した五代南部工業団地については「民間の発想ではとても考えられない。市民にとって、余にも思い負担であるといわざるを得ない」と指摘し、ローズタウンについては、「これだけの大事業を決定するのに、事業決定の際に市場価格調査や不動産鑑定調査、世帯の所得分析などが専門的に行われた形跡がみられないのは尋常とは言いがたい」と指摘しています。
 
 今本市は、行財政改革を推進し、費用対効果を厳密に評価することを全事業に求めていながら、その一方で前工団では100億円を超える赤字を発生させていることを、もっと厳しく総括すべきだと思います。
 借金を返済しないうちに、また借金を重ねてきたわけですから、行政の多重債務状態です。民間なら、破産管財人を置いて、債務整理をしなければならない状態です。
市長は、原因究明を徹底し、今後の産業政策推進上の教訓にすべきです。当然、市民への説明責任も果たすよう求めておきます。

 A 次に前工団の現在の保有土地は約300筆・約40fで、資産総額は約50億円です。解散時に残る組合債の37億円を返済するために、道路や公園などの公共用地を除く土地を売却しますが、その総評価額は約30億円程度です。
 完売しても約7億円は負債が残ることになります。解散に当たっては、更なる一般会計からの繰り入れを抑えるためにも 全庁的な特別体制をとって、残っている工業団地や住宅団地やその他の残地などの売却を確実・迅速におこなうべきです。どのようにお考えかお聞かせ下さい。

●元利償還は今年度予算でも元金償還23億円、利息が5千万円です。償還期間が延びればその分市民負担が増え続けることになります。保有土地を売却するための特別な体制をとるように再度強く求めておきます。

 B次に今後の産業振興策についてお聞きします。

 前工団解散後は、特別会計で工業団地を造成して分譲するとのことでありますが、これまでのように、大企業呼び込み型の過大な工業団地造成や企業誘致条例による財政支援は見直すべきであります。また、農業振興策と矛盾する優良農地の転用による団地造成も抑制すべきです。

 経済のグローバル化とリーマンショック後の景気低迷による設備投資の冷え込みなどで、全国で進出企業の撤退が相次いでおります。本市の企業誘致も今後とも困難が予想されます。

 これまでのように、高崎など近隣自治体との誘致競争をするのではなく、本市ならではの産業政策を確立すべきです。本市の地域特性や地域資源を生かす独自の産業振興ビジョンを策定して、地元中小企業育成を中心にした雇用拡大・地域内循環型の産業振興策に転換すべきです。とくに、本市の豊かな農畜産物などの地域資源を活用して新たな食品などの産業集積をめざすなどの産業政策に発展させるべきだと思います。見解をお聞かせ下さい。

 また、企業誘致条例の見直しを行なうべきです。これまで、本市は、平成15年から24年までに25社に総額約88億4千万円も財政支援をしてきました。  
 しかし、前工団の負債を返済しなければならない財政状況を直視して、市外から立地する資本力のある大企業については、助成対象から除外するなどの見直しを行なうべきだと思います。答弁を求めます。


 ●わが党は、前工団が産業振興や雇用拡大などに貢献したことを否定するものではありません。(53年間で495ヘクタールの工業団地を造成し、439社に分譲してきました。住宅団地も232ヘクタールを造成し15団地で3575区画の分譲をしてきました。)

 全国各地で、住民の血税を注ぎ込んで「大企業呼び込み」型の企業誘致政策が進められましたが、企業がほとんど進出して来なかったり、せっかく進出しても地元の雇用が増えないまま、景気が悪化したら、たちまち撤退しまうという事態が相次いでいます。

 本市でも、誘致した東芝機器・ダイハツ車体・ビクターなどの大企業が撤退し、1社で1000人規模の雇用が一挙に喪失するという事態を経験しております。

 誘致型の場合、雇用創出効果は企業がハイテク型であればあるほど、ロボット化されて正規雇用は少なく非正規雇用が大多数であります、技術もブラックボックス化して、地元中小企業への最新技術の提供は望めません。下請けなどの仕事も技術水準格差が大きく、地元の中小企業では対応できない場合が多く、地元企業への波及効果は小さく、利潤は本社に転送されるので、地元自治体の税収はそれほど伸びないことが多いのです。

 地域経済をよくするためには、「企業さえ呼び込めば、そのおこぼれで地域が栄える」という破綻した古いやり方と決別し、地元でがんばっている中小企業の力を育て、伸ばし、それによって雇用と消費を増やし、さらに力をつける産業振興策、前橋市内で仕事とお金が循環する仕組みを再構築することが必要です。

 地元企業を育成し、企業を成長させれば雇用も拡大し、利潤も地域内で再投資され、自治体財源も豊かになります。
地域に根ざした中小企業、地場産業、農業を総合的に支援してこそ安定した雇用と仕事を作り出すことができます。

 朝倉工業団地の企業誘致では、結果として市内企業の集積という工業団地作りという経験も生まれてきました。

 雇用の8割を占め、前橋の経済を土台で支えている地元中小企業を育成支援する産業政策に大きく転換するよう求めておきます。

 C、つぎに今議会の補正予算に、工業団地の新たな拡張などを目指す産業団地開発可能地域基本計画策定のための1000万円の予算が計上されています。

 すでに五代南部工業団地の西側約9fの拡張計画も具体化されようとしています。農地法上の手続きや平成27年の都市計画の線引きに間に合わせるために、逆算で計画を推進しなければならないという当局説明もありますが、前工団の清算もすまないうちに、ただちに工業団地の造成を新規に進めるという政策判断は、市民が納得しません。
 今回の計画策定は少なくとも、解散に伴う負債処理の目途がつくまで保留すべきだと思います。見解をお聞かせ下さい。

 ●これまで、工業団地の移転後は、すべて大型商業施設(ダイハツ車体跡地のけやきウォークのように)に変わりました大型店はすでに、オーバーフロアー状態です。当面は既存工業団地から移転撤退した空き工場を埋める斡旋などに力を注ぐべきです。今日の質問でも、空き工場が14件あり、8件が売却希望と答弁がありました。五代南部の3区画の完売とともに空き工場を埋めるためのマッチングの努力優先すべきです。

 D、今、TPP協定への参加や後継者難などによって農業経営に展望を見出せない農家は、残念ながら公共事業による土地売却を待望する傾向があります。
 しかし、農業の振興は食料自給率の向上はもとより、地域の雇用と経済の活性化にとっても大切であり、農業の水源涵養や環境保全などの多面的な機能も保持していかなければなりません。中山間地の遊休の農地の流動化も進んでいない中で、幹線道路沿いの土地改良事業も完了した優良農地を減らす新たな工業団地造成は、今後は抑制する政策的判断が必要だと思います。政策の総合調整を担う政策部長の見解をお聞かせ下さい。

 ●総合計画にもとづく実施計画で各課が事業を展開するわけですが、どうしても地域の要望による利益誘導が強まれば、中心市街地の活性化に矛盾する郊外大型店出店が放置され、農地の保全といいながら、優良農地の転用が進行します。いまこそ政策部局の総合調整機能をしっかり発揮することが必要です。強く指摘しておきます。

2、次に土地開発公社の解散について質問します。

 @最初に、今日の事態を迎えた原因についてです。
土地公社が24年度末に保有する塩漬け土地は約22.7fにも及び購入時の価格に元利償還の利息と管理費などを加えた簿価総額は約63億円に及んでいます。総務省統計によると群馬県内でも北関東でもトップクラスの土地保有であります。
 市長は利息の2分の1が交付税算入される第3セク債の活用期限である今年度中に解散する方針を決めていますが、24年度末の公社債務約55億円のうち、少なくとも約44億円以上の元利償還が市民負担となると試算されています。 
公共用地の先行取得目的で購入しながら、事業化されないまま結果として市民負担となるような現在の事態を迎えたことは明らかに弁解できない失政であります。なぜこのような事態を迎えたのか原因を明確にお答え下さい。

●公社制度は、迅速に公有地を取得できる半面、あいまいな目的で高値で土地を買い取り、長期保有した後に財政難を理由に安値で民間に売却して、その損失を一般会計で補填するということになりかねません。自治体本来の社会福祉などの予算が削減される結果を招きます。外部包括監査も厳しく指摘しておりますが、市長自らが個別の土地ごとに、不良債権を生んだ「政策判断の誤り」の原因をしっかり検証すべきです。

【この項目以降は持ち時間が足りず質問できませんでしたので、予定質問原稿です】
 A次に公社の債務残高を解散に向けてどのように減らそうとされているのかお聞きします。
 事業化の目途がない土地まで行政財産として買い取れば、結果として引き受けた所管課に移動するだけになりかねません。20年以上前に公社が13億円で取得した旧協和銀行跡地は、管財課が引き取りましたが、全く利活用の目途もなく、地価は取得時の1u当たり205万円が16万円まで下落しています。売却しても10億円近くの損売りになってしまいます。したがって、地価が下がり続けているだけに、目的が明確ではない土地については普通財産として早期に売却して、第3セク債や地価の下落による損害額の縮減によって市民負担の軽減を図るべきと考えますが見解をお聞かせ下さい。

 ●わが党は郊外型の大規模公園整備や公共施設建設については、事業予算はもとよりその後の維持管理経費もかさんでくることから、利用目的の不明確な土地の保有を避けるべきと考えています。したがって、公社解散に伴って代物弁済を受けた土地については、特別の体制をとって庁内で横断的に仕分け作業を行なうべきだと考えています。失策によって長年放置されてきたツケを後の世代に引き継ぐべきではありません。指摘しておきます。

 B公共用地の先行取得は、区画整理の減歩率の引き下げや施設建設の補助金獲得の上で必要な場合もありますが、地価が下落している現在は事業計画が具体化しない段階での取得は、逆に総事業費や借金の元利償還金を増額させて、結果として市民負担を重くしかねません。今後、公社解散後の先行取得は一般会計による直接取得のほか、特別会計又は土地開発基金の活用で行なうとのことですが、をどのような判断で実施されようとしているか、先行取得の適正化方針をお聞かせ下さい。

 ●最後に市長に質問します。「親方日の丸」という比喩があります。官庁や公営企業は、経営は破綻しても、倒産する心配がないので、厳しさに欠け、経営が安易になりやすいということです。行財政改革というなら民間委託や職員減らしではなく、真っ先に、工業団地や住宅団地の造成・分譲や公共用地の先行取得を従来のような発想で続けず、よりいっそう厳格に費用対効果を判断し、これまでの進め方を検証しなければならないのではないでしょうか。厳しい生活の中で納税している市民に説明できないと思います。今後の市長の産業政策や先行取得についての市長の見解を最後にお聞きしまして質問を終わります。
























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