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議会報告

改悪された介護保険制度について(近藤好枝総括質問6月19日)【2014/6/19】

安倍自民・公明政権は医療・介護総合法を昨日、強行成立させました。
これまでも介護保険制度の改悪は行われてきましたが、少なくとも介護保険制度の枠内にとどまるものでした。今回は要支援者のサービスを給付対象から切り離す、介護保険制度開始以来の定率1割負担の原則を崩すなど、給付制度の改編を行う大改悪です。

@最初に要支援者の介護保険利用実態についてです。
70代の女性Aさんは自宅で一人暮らし、要支援2で週3回デイサービスに通っています。「小学校時代からの同級生にも会えて行くのが楽しみ」といっています。Bさんは80代の男性、先祖代々住み続けている自宅で妻の位牌を守りながら暮らしています。要支援1で認知症がみられ、遠方にいる娘さんからの依頼でヘルパーさんに掃除や洗濯、買い物や弁当の買い出しなどの支援で一人暮らしを維持しています。娘さんに「支援がなくなったら、施設に入れるか介護のために仕事を止めて同居するしかない」と訴えられました。本市の要支援サービス利用者は3386人、介護保険利用者の34%にのぼり、高齢者の日常生活を支え症状がより重くならないように専門的なサービスを行っていると考えます。本市の利用状況の傾向について伺います。

答弁
三分の二は一人暮らしの高齢者で、生活介護では掃除など専門的な訪問介護の家事援助が圧倒的に多い。

A新しい地域支援事業の問題点についてです。
ア、一人暮らしや老夫婦世帯などの方が自宅で住み続けるための重要な役割を果たしている要支援サービスの通所介護と訪問介護を、介護保険給付から外に追い出し市町村に丸投げして実施するのが新しい地域支援事業です。たとえば、デイサービスから社協や自治会などが運営する月1回開かれている地域のいきいきサロンに移す。専門職のヘルパーサービスから、掃除や洗濯をボランティアに任せる、ヘルパーの作る調理食から民間企業のなどの配食に変える。サービス事業内容も市町村の裁量であり、介護にあたる人員や運営基準も明確でない、事業者に委託する場合の単価は現在の訪問介護・通所介護の報酬以下に設定するなど、利用者の負担は重くサービスは悪くするため、利用者をはじめ介護事業所、専門家から批判が広がっています。要支援者を介護保険から外すようなことをしたら行き場のない多くの高齢者を増やすことになりませんか答弁を求めます。
また、自治会や老人会、NPOや社協などの地域資源を生かして、有償・無償ボランティアを育成するとしていますが、新たにどのようなボランティア体制を考えているのか伺います。

イ、また、厚労省が実施を求めた全国の介護予防モデル事業に参加した市町村によると地域ケア会議が適切なサービスを行っているかどうかをチェックして地域ケア会議が要支援者を介護給付から外し、新しい地域支援事業に移行させる選別の役割を推進しています。モデル事業を実施している荒川区では要支援者に対して地域包括支援センター職員から再三にわたって介護保険からはずし、地域支援事業に切りかえるよう強制され、つらい思いをしていることが問題となっています。また、要支援者の認定は市町村によって実際に差があり、要支援から要介護を行ったり来たりしている高齢者も少なくない微妙な線引きで介護給付から外すことも大きな問題です。本市として、要支援者の方が重度化しないようにこれまでのサービスの維持をし、少なくとも縮小すべきでないと考えますがいかがですか。


今まで在宅で生活を維持できていた高齢者が、状態が悪化して施設に入所しなければならない事態になりかねない。ケアマネージャーなど専門家は共通して「こんなことをしたら重度化が加速して、かえって介護保険財政の負担がふえる、本末転倒」と批判しています。国に十分な財源確保と人的配置を求めるべきです。

B次は利用料の2割負担の問題点についてです
一定以上の所得のある高齢者の利用料負担を1割から2割に引き上げ、定率1割負担の原則を切り崩す重大な改悪です。介護のため休暇を取っているある女性は、介護4の母を父が在宅介護している二人の年金収入も減り続けている。家の維持管理費、税金、食費、介護保険料と利用料を払うと貯金も取り崩して今でもギリギリなのに、父が倒れたらどうやってお金を捻出してよいかわからないと言っています。
しかも、今後は介護保険の利用料も医療費の窓口負担のように年齢や所得に応じて1割・2割・3割負担にしていく検討がされています。利用料が2割になれば、施設入所者や在宅介護を受けている方々の介護保険の利用を抑制することになります。本市としてただちに該当する人に対して介護抑制が起きるのかどうか、実態を調査して見直しを国に求めたらいかがですか。合わせて、生活実態に応じて市独自の利用料減免制度を検討したらいかがですか。


結論
そもそも、介護保険事業全体が公費が半分65歳以上の高齢者負担が半分では高齢者
の負担が重すぎます。この負担割合を変え、高齢者の負担を3分の1に軽減すべきです。
  
C次は特養ホームの維持拡充です
ア、第1は補足給付の減額及び打ち切りの問題点についてです
現在、本人及び世帯が市民税非課税であれば、特養や老健などの介護施設の入所者には、食費や部屋代を補てんする仕組み「補足給付」があります。本市の対象は(2014年3月現在)2051人で施設入所者の6割、特養では8割になっています。政府は特養ホームの施設入所が必要な高齢者を排除し、収入要件を厳しくして払えない高齢者は排除する方針を打ち出しています。
中身は貯金など「資金がある」とみなされた場合(単身で1000万円)、世帯分離をしている配偶者に一定の収入がある場合、遺族年金や障害年金も所得要件に加えることにより、給付の減額や給付の打ち切りをおこなうものです。新たに月平均5万〜8万円もの負担増が強いられます。払いきれないため、施設を退所せざるを得ない高齢者もでるのではないですか。どのように対応しようと考えていますか。

結論
そもそも介護保険料を払って給付されるはずの社会保険制度に資産要件を導入すること自体が許されません。
この制度は施設利用する高齢者の資産や収入による分断を持ち込む悪政に他ならないと考えます。

イ、第2は要介護1・2を特養ホーム入所の対象外にすることの問題点についてです
本市の特養ホーム入所者のうち、要介護1〜2は372人で15・4%を占めています。全国調査で入居の理由を聞いたところ、介護者不在、介護困難、住居問題などが6割、認知症の周辺症状などによる判断力の低下喪失が2割です。厚労省は社会保障審議会で入所者を限定することについて異論が相次いで出され、やむを得ない事情については市町村の関与により特養ホームごとに設置されている入所検討委員会で個々に判断することにしています。
しかし、重度の待機者でさえ入所できないのにやむおえない事情と認められても入所できる保証はないこと。やむおえない事情の解釈いかんでは入所が実現するどころか待機者リストから除外される可能性があること。特に、独居や認知症高齢者が行場を失うことになるのではないですか。市はどのように考えていますか。

結論
これらの受け皿として特養が除外されればセーフティーネットとしての特養の役割が失われるのではないでしょうか。
介護1・2はもちろんのこと、国であれ市であれこれを機会に入所希望者の1人1人の状況を把握して入所させるべきです。
 
ウ、第3は特養ホームの増設
本市の特養ホーム待機者は1507人で、そのうち要介護1・2は32%と高い比率です。
国は増え続ける待機者対策として在宅サービスへの転換及び受け皿としてサービス付き高齢者向け住宅の建設を促進しています。2020年度までに全国で11万戸から60万戸整備目標を持っています。本市でも(24)箇所設置されています。
しかし、このサービス付きは利用料が国民年金受給者では高すぎる、施設側の都合で認知症や糖尿病など持病のある人は受け入れられないなど入居者を選別できる。急激に増えている施設に対し、違反する事業者に行政や外部機関の目が行き届かないなど多くの解決すべき問題が指摘されています。これらの、問題の是正は喫緊の課題です。専門的な介護が行き届かないなど特養ホームの受け皿にはならないと考えますが見解を伺います。
一方、国は特養ホームの増設の抑制をする方針です。特養ホームはすべての高齢者が安心して24時間専門的な介護が受けられる施設であり、低所得者でも入所できるセーフティネットです。本市では第5期介護事業計画で230床増床しても、待機者は解消されていません。ますます、特養ホームの必要性は増すと考えます。待機者ゼロにするためには大幅な増設をすべきだと考えますが答弁を求めます。


結論
多くの高齢者は住み慣れた自宅で最後まで暮らしたいと願っているが、在宅で24時間介護は現状の制度では保障されないため、特養ホームの入所を希望しているのです。せめて、安心して介護が受けられるように特養の増設とともに小規模多機能ホームの増設など高齢者のニーズにこたえてほしいと思います。


まとめ
心安らかな老後を過ごせる社会をいかにつくるかが問われています。しかし今後、政府は現在40歳以上となっている保険料支払い年齢の引き下げやケアプランの徴収など「介護の社会化」から「介護の自己責任化」を進める際限ない制度改悪を推進しようとしています。消費税増税は社会保障のためといいながら大企業の法人税減税に走り出して、さらなる社会保障の削減をし、介護難民医療難民を生み出す続ける政府に怒りが広がっています。いまこそ、高齢者が安心して暮らせるための社会保障の充実を実施すべきで、そのための財源を国に強力に求めるべきです。
それでも、国が答えなければ、市として一般会計から繰り入れてでもサービスが後退しないように求めておきます。


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