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議会報告

第4回定例会総括質問 長谷川薫議員(1.行き過ぎた税徴収の改善 2.高すぎる国保税の引き下げ)【2014/12/24】

 
  1、生活や営業を脅かす行き過ぎた税徴収の改善について質問します。

(1)納税相談

 市内の零細な水道設備業者の方の例です。市から呼び出された納税相談にはいつも出席していた方です。経営に苦しみ、原材料の仕入れと従業員の給料を払うのが精いっぱいで、市税や国保税の滞納がありました。持病も悪化したので昨年で廃業を決意しましたが、収納課の厳しい督促を受けて、精神的にも追い込まれ、結局、離れて暮らしている金銭的にも余裕がない子どもさんに無理に頼んで、滞納している本税約70万円を今年の春、全額一括納付し、その後は、収納課との約束通り現年分は一度も滞納せず納期内納入を守ってきました。
 ところが、収納課は、その方の精いっぱいの努力も認めず、延滞金の執行停止どころか、年金が振り込まれた当日の10月15日に突然、残金がほぼゼロの預貯金口座に振り込まれた月額5万5千円の年金から3万円を差し押さえたのです。
 本人が「医療費も払えない、生活ができない」と収納課に差押えの解除を求めましたが、応対した担当者は、「13万円残っている延滞金が納入されないので差し押さえた」と答え解除を拒否しました。
奥さんの数万円のパート収入と二人合わせて9万円の年金で生活保護水準以下の最低限の生活を営みながら、本税を完納し、最優先して現年分の税金を納めている市民に対して、このような問答無用の滞納整理処分を行ってよいはずはありません。
納税相談に出席した市民から、「市の税金の取り立てが厳し過ぎる、高圧的な態度や言動は市民に奉仕する公務員とは思えない」という怒りの声は後を絶ちません。
このような、前橋市の納税相談の対応を抜本的に改めて、市民の暮らしの困難に寄り添うべきだと思います。答弁を求めます。

【財務部長答弁】〜督促しても納税しない滞納者への最後の手段として、財産調査をしたうえで差押えを実行している。国税徴収法や地方税法に従っている。滞納税が多くなってから差押えると、かえって生活を圧迫するので少ないうちに差し押さえている。納税相談はていねいに行う。

▼たとえ納税義務を認識していても、支払いが困難になっている市民が増えています。「滞納イコール悪質」という認識や滞納した税金をとることだけを最優先する納税相談はあらためるべきです。

(2)次に、差押えについてです。

●すでに3年前から年間差し押さえ件数は8000件を超えています。収納課は「滞納が累積しない早期差押えは市民のくらしを脅かさないので市民のためになる」と説明していますが、私たち議員団には、給料や年金などが預金口座に振り込まれた直後に差し押さえられ、「生活ができない」「暮らしていけない」と市民からたびたび相談を受けています。
 昨年11月27日の広島高裁では、「預金口座に振り込まれたものであっても、児童手当のような差し押さえ禁止財産が原資となっている場合は、差押禁止の趣旨に反し違法である」という画期的な判決が出ました。
ところが、前橋市はこの判決後も「預金口座に入れば一般財産」という立場をとり続け、今年の8月4日に児童手当だけが入金し、出金は学校給食費と就学旅行費の積み立てだけという税滞納者の預金口座の7万8971円の残額を全額差押えました。児童手当以外に口座への入金がない状況を知り得る状態にありながら差押えを断行したのは、児童手当の差し押さえを禁止する法律からの裁量権の逸脱であり、差押え禁止財産を狙い撃ちにした違法な差押えです。  
 本人の抗議を受けて、市は、差し押さえを解除し全額を返金しましたが、今後は、最低生活を脅かすような給料や年金等の違法な差し押さえは、今回の判決に沿ってやめるべきと考えますが、いかがでしょうか。答弁を求めます。

●本来は、滞納整理の最後の手段である差し押さえ処分の権利を、前橋市は濫用していると言わざるを得ません。
 2012年度の前橋市の国保税滞納世帯は6408世帯です。この世帯に対して、4503件も差押えています。世帯数がほぼ同じ中核市の滋賀県大津市の場合は、差押えはわずか104件で前橋市の40分の1以下です。政令市の名古屋市や大阪市と前橋市は国保税の収納率約85%で、ほぼ同じですが、前橋市の差押えの比率は名古屋市の約10倍、大阪市の100倍です。
 このような中、「前橋の差押え件数は、異常に多い」と云う驚きの声が全国から上がっています。他県のある自治体職員は、「預貯金口座や年金や給与など現金債権を差押えると、換価手続きなしで収納できるので滞納繰越金は確実に減ることはわかるが、万が一、市民の生存権を侵害する事態となったら大変なので、前橋市のように早期差押え処分を安易には進められない」と話しています。
 私たちも、資力があり担税力がありながら納めない、悪意の滞納者には厳しい態度で接することは当然だと考えますが、前橋市の税滞納者に対する対応は、市民の生活実態をほとんど無視し、およそ優しさやぬくもりとはかけ離れた徴収強化だけになっていると言わざるを得ません。





 滞納繰越を減らすために、差押え処分を濫用し、機械的な滞納整理に職員を駆り立てるべきではないと考えますが、見解お聞かせください。

●収納課の職員の方と話していると、滞納した税金を取り立てる立場からしか物事を考えようとしていません。なぜ滞納という状態になったのか、今どんな生活状態にあるのかというのをもう少しきちんと見極めるような対応が必要だと思います。確かに滞納をなくしていくのは大事なことですし,目標を持って取り組んでいくのも必要なことだとは思いますが、そのためには信頼関係というのがないとそれが成り立たないと思います。
すべて強権的な対応をしていると言いませんが、行き過ぎた対応が非常に多く見られて,最近は特にそれが顕著にあらわれてきていると思います。
 なぜ滞納する状態に至ったのか、1人1人の状態を把握して、どうやったら滞納分を解消できるかということを一緒に考える対応が必要だと思います。今は、市民との距離が遠くなっているために、強権的な対応になっているのではないでしょうか。もう1つは、取り立てそのものが第1の目標になっているからこそ異常に多い差押え件数になっているのではないかというふう思います。もう一度現在の税債権回収、滞納処分の在り方に対して改善する意思はないのかどうか答弁を求めます。

【財務部長答弁】〜鳥取高裁の判決は、これまでの最高裁判決通りで、差押え禁止財産であっても預貯金口座に振り込まれれ場、一般財産となり差押えはできると判断しつつ、今回の鳥取県の児童手当が振り込まれた直後の差押えは、児童手当の属性を失っておらず、差押えは違法であるとみなしたものである。しかし、預貯金口座の差押えは、その内容をよく把握して留意して行いたい。

▼朝日新聞が今年の10月に前橋市の差押えの実態を特集した記事は、参議院の厚生労働委員会でも差し押さえ件数の多さに驚きの声が上がり、わが党の小池晃議員の質問に対して、厚生労働保険局長も「『個々の滞納者の実情を把握したうえで対応する、生活を窮迫させる恐れがある場合は処分を停止する』という今年1月の総務省事務連絡を、全国担当者会議などで周知徹底する」と約束しています。
塩崎厚生労働大臣も、「あえて杓子定規なことをやらず、温情を持って臨まなければいけないし、配慮をしなければならない、ぬくもりを持った行政をやるべき」と答えています。
差押えという強制処分で収納率を上げるという行政ではなく、市民に自主納付してもらう啓発を粘り強く行うべきです。


(3)つぎに、納税緩和制度の活用についてです。

 すべての税金の徴収は、納税者の「事業の継続又は生活の維持」ができることが前提で組み立てられています。これは憲法25条・生存権の保障の当然の要請なのです。滞納処分によって、すべてのもの奪ってしまえば、後は生活保護に頼らざるをえなくなります。
 これまでに私が相談を受けた事例ですが、前橋市が税金滞納を理由に差押えていた自宅兼工場を公売し換価し配当したために、事業の継続ができなくなって廃業し生活保護世帯となった零細業者がいます。公売しなければ、同居していた子どもに経済的支援を受けながら、細々でも事業の継続ができたのです。執行停止して事業の継続と生活を支援していくのと、全財産を取り上げて滞納税に充てて、生活保護で扶助するのとどちらが行政上からみても合理性があるのか明らかではないでしょうか。
 また、前橋市は病気で生活保護を受給している稼働年齢を過ぎた高齢者に、生保受給前の滞納税の分納を求め、実際に扶助費から6000円の分割納付をさせました。今も返還しておりません。執行停止すべき対象者に督促状を出して納入を促すことは直ちに改めるべきです。
 当局は、口を開けば「税の公平」を強調しますが、真の「公平性」というのなら、国税徴収法や地方税法の本来の趣旨をきちんと納税者に周知し、生活困窮などの一定の事由が生じた場合には、納税の猶予をして延滞金を減免し分納を認めたり、換価の猶予や滞納処分の執行停止をする「納税の緩和措置」制度を運用して納税者を保護し、強権的な徴収を緩和すべきです。
 納税者の生活や営業の実態には目もくれず、「何がなんでも滞納税の債権を回収さえすれば良し」とする姿勢を改め、納税緩和措置で救済すべきです。いかがでしょうか。

▼ 生活保護受給者への扶助費からの納付を求めたり、本税を完納した方の延滞金だけでも差押えることはやめて、執行停止を迅速に行うべきです。


(4)つぎに、市長マニフェストについて市長に質問します。

 市長が3年前の市長選挙のマニフェストに記載された文章を読み上げます。「滞納者との相談を充実させ、延滞利率の改定、無理な取り立ては生活保護の原因」「やめるべきこと、市税滞納者に対する問答無用な差押え」と書かれており、市民に公約しました。
 少なくとも、市長になる前には前市長時代の税金の収納行政に、「市民の暮らしを守るべき自治体が、生活と経営に困窮する市民を追い込み、苦しめている行き過ぎがある」との認識があったのではないでしょうか。
 前橋市の税の取り立て強化の背景には、地方交付税の削減や不況による税収減があると思いますが、『税の公平性』を口実に、日々の暮らしに困っている市民に執拗(しつよう)なまでに支払いを迫るやり方はまさに異常です。市民の暮らしを守る自治体にふさわしい対応となるよう税収納行政の抜本的な改善が必要だと思いますが、市長はどのようにお考えでしょうか。市長の見解を求めます。

▼おもてなし前橋の考え方は、訪れる観光客だけへの態度であってはならないと思います。納税が遅れた市民に対しても、丁寧に生活実態を聞き、強権的な取り立てで市民を苦しめ、行政に対する信頼、市長に対する信頼を失わないようにしていただきたいと思います。「三位一体の改革」などと云って、政府が自治体への地方交付税や補助金の削減を強め財政難を招いていますが、これを住民へ転嫁し、徴税攻勢を強権的にすすめていくことはやめるべきです。税金を支払う意思がある納税者への制裁措置は行わないこと。納税者本人の納付意思確認や実状把握なしに差し押さえをしないこと。を強く求めておきます。

【市長答弁】〜収納課は丁寧な納税相談をしていると思う。議員が挙げた例も、滞納額を本人が承知していたのだから、問答無用の差押えではないのではないか。ひどい差押えが行われているとは承知していない。

 2、高すぎる国保税の引き下げについて

 国保税を昨年度は一世帯平均で11%、年間2万2千円引き上げました。その結果、所得192万円の3人家族(40歳台の夫婦・子ども一人)では約5万7千円の負担増で、年税額では34万円。所得に占める割合は約18%にもなりました。
すでに、国保税の収納率は84%、滞納世帯が5万3千の加入世帯の1割を超えています。ほとんどの加入者が低所得世帯である国保税の負担はもう限界です。
 税額を上げた昨年度は7億円、今年度は税額を据え置くために9億円を一般会計から国保会計に繰り入れました。今年度の決算はこれからですが、国保基金に8億円残っています。
 今、アベノミクスによる円安の影響によって、食料品やガソリンなど生活必需品の物価が高騰しています。さらに、4月からの消費税の8%増税が追い打ちをかけ、年金削減、介護保険や医療の負担増で、零細業者や高齢者のくらしは火の車です。このような中で、多くの市民が、「高すぎる国保税を引き下げてほしい。滞納者から保険証を取り上げる制裁や売掛金やわずかな預貯金を問答無用で差押える強引な取り立てをやめてほしい」という声が高まっています。
 伊勢崎市や高崎市は、『この時期に値上げはできない』と一般会計から繰入れ額を増やし、基金を取り崩してして国保税を引き下げました。前橋市も来年度は8億円の基金を取り崩すとともに、一般会計からの繰入額を増やして国保税の引き下げを行なうべきです。
 そして、現行の国保税の減免規則や病院窓口の3割の一部負担金の減免要項を緩和して、生活困窮世帯の医療を保証すべきです。今年の10月に879世帯に発行した、命を脅かす保険証の取り上げ・資格証交付はただちにやめるべきです。また、歴代政権によって25%まで減らされた国庫負担をかつての50%まで復活させるよう国に強く求めるべきです。それぞれ、見解をお聞きします。

【健康部長】〜一昨年度から国保特別会計に一般会計からの法定外繰り入れを行って、国保税の引き上げを抑えている。引き下げは難しい。

▼国保税は、自民党・公明党政権のもとで値上げが繰り返され、この20年間に全国平均で1.6倍、一人あたり3万円も値上がりしました。市町村の国保税の高騰を招いている最も大きな原因は、国の予算削減です。1984年当時は医療費の「45%」であった国保への国庫負担が、今や24.1%まで削減しています。
多くの市町村が、国保税の高騰を抑え、自治体独自の減免などを行うため、一般会計から国保会計に国の基準(法定額)以上の公費を繰り入れていますが、収納率は下がる一方です。国保税を滞納せざるを得なくなった人に対して、強権的で過酷な取り立て強化は、収納率の向上にもつながりません。低所得者が多く加入し、保険税に事業主負担もない国保は、適切な国庫負担なしには成り立たちません。国庫負担の増額が欠かせません。国に強く求めていただくよう求めまして、私の質問を終わります。

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