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議会報告

前橋版CCRC構想・農地中間管理機構事業・マイナンバー関連に対する反対討論 近藤好枝【2015/12/11】

私は日本共産党前橋市議団を代表して議案第126号、133号、135号、136号及び137号について反対の討論を行います。最初に議案第126号平成27年度前橋市一般会計補正予算について3点述べます。
第1は前橋版CCRC構想基礎調査のための予算1020万円に同意できないからです。 内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局は、健常時から高齢の要介護時まで同じ場所で継続して暮らせる複合型コミュニティを形成したアメリカのCCRCをもとに「日本版CCRC」構想を打ち出しました。東京から地方への高齢者の移住を促し、地方創生につなげたい考えです。また、取り組みの推進にあたって協力を求める機関としては、医療機関、教育機関、商工会議所などの経済団体、ボランティアなどNPO法人、民間企業など多岐にわたっています。 日本版CCRC構想有識者会議がしめした基本コンセプトは「健康な段階から入居し、できる限り健康長寿を目指すこと」で、高齢者をサービスの受け手でなく、地域の仕事や社会活動などに積極的に参加する「主体的な存在」として位置付けるなどの7項目を盛り込みました。
これを受けて、前橋版CCRC構想は日赤跡地を拠点に前橋市内に首都圏から高齢者を呼び込み、それにとどまらず子育て世代にも移住を誘導するとしています。しかし、東京圏では現在でも11万人の特養ホーム待機者が存在し、75歳以上の高齢者は今後10年間で175万人増加すると試算しており、2025年には医療介護のサービスを受けられない高齢者が増加する深刻な問題が予想されている。一方地方では人口減少のため、首都圏から高齢者を移住させれば、人口増につながり非常に有効な解決策に思えます。しかし、子育て世代の地方への移住が弱ければ、一時的に人口増につなげても人口減少に歯止めはかからず、都市の高齢者問題と地方創生を一緒に論じること自体が問題であると考えます。
本市では特養老人ホームの入所待機者は1232人で、待機者解消にはほど遠い現状であります。高齢化率も確実に上がっています。このように、本市の高齢者介護問題を解決しないまま首都圏の高齢者を優遇するシニアタウン構想は結果として医療や介護の財政負担を招き、従来の市民と競合し待機者の解消ができなくなるため市民の理解が得られないものではないでしょうか。
また、受け入れる側の本市では、出生数や雇用の場の減少が問題化しており、若い世代を中心とした東京圏への人口流出が止まらないなどの問題を抱えています。そうした現状に対しても、在宅ケアを支える医療介護従事者の人材確保によるあらたな雇用創出ができ、子育て世代を誘導することができ、地方創生が図られると期待されていますが、安定した多様な雇用の場の確保とともに、子育てしやすい環境、教育機関の確保と保障など地域そのものに魅力がなければ移住による定住人口の増加は見込めないのです。
したがって、高齢者への医療介護の充実のためのまちづくりや子育てしやすい街づくりそれぞれの施策の充実なしには、多額の交付金を使って一時的に目新しい施策展開で人口増に成功しても持続性ある、街づくりには成功しないと考えます。
本市は過去において、医療モールの誘致を目玉に国及び市の財政を投じて、新たな生活と医療を保障すると標榜していましたが、実際には医療機関は長年にわたって確保できず、居住者の信頼を裏切ったと言われた苦い経験をしています。
こうした問題について市長は平成24年の第3回定例会で医療モールと前工跡地の問題の検証の中でこう述べています。「仮にヒューマンエラーがあったとしても、それらの責任は全てリーダーである私の、組織のリーダーの責任であります。したがって、個々の職員のミスをあげつらうのではなく、全てコントロールできなかった時のリーダー、今は私でございますけれども、そういう責任感を持ってこれから対処することで、二度とこのようなミステークが起こらないような仕組みをつくっていけるものだろうと考えています。私自身の反省にもこの問題をきちんと取り入れながら、今後の市政運営に取り組んでまいりたいと思っております」と答弁しています。今回の前橋版CCRC構想は多額の国の交付金を使って、この医療モールの二の舞になるならない保証はないと考えますので反対です。
第2は農地中間管理運営事業費追加予算9483万6千円について同意できないからです。私は九月議会でも申しあげましたが農地中間管理機構の事業は大きな問題があると考えます。2013年度の国の農地面積の担い手の集積は226万ヘクタールで全農地面積の5割に達し、27万経営体になっています。政府の日本再興戦略では八割を担い手に集積・集約し、米生産コストを四割削減する、さらに法人経営体数を5万法人にして、大区画化を誘導する。そのために、貸し手と借り手の間の仲介をする役割が農地中間管理機構です。群馬においては群馬県農業公社が県知事より指定を受けて、昨年度から市町村をはじめとした関係機関・団体と連携しながら農地の集積・集約化の事業を行っています。
本市では農地面積8358ヘクタールのうち、集約農地面積は554ヘクタールで今後、700ヘクタールまで集積・集約目標を掲げています。本市では大雪被害対策等で先送りされ、今年度より事業化し、モデル地区である南部地区を中心に現時点では利用権設定した236ヘクタールの集積・集約を行い事業申請するものです。
反対の理由の一つは事実上優良農地を対象にする一方で、耕作放棄地への対策にならないからです。
本市の遊休農地は現在377ヘクタールです、再利用にむけて農業委員会をはじめ関係機関が貸してと借り手のマッチングを講じて努力されています。本来この遊休農地に対する支援制度としても機能すべきです。しかし、同機構は借り手の見通しがないものは仲介しない、仲介したとしても2年以内に借り手が見つからなければ、農地の出し手に戻され、出し手に支払われた国からの協力金の返還を求める厳しい制裁があります。これでは、中山間地農業が盛んな本市では、遊休農地とりわけ耕作放棄地の解消が緊急課題でありながら抜本的な解消につながらず、むしろ新たな耕作放棄地を生み出すことになり反対です。
二つは株式会社の参入を目的にしていることです。
農地法の特例の見直しで、今まで認めてこなかった承認会社による農業生産法人の議決権保有を総株主の二分の一未満まで認めることになり、投資ファンドが農業法人に投資することができるようになりました。これによって、地域の集落営農組織が法人化して一生懸命集積・集約化した農地を結局のところ株式会社が儲けのために参入して、利益を手中に入れるようになりかねません。まさに現代版の大地主制度になる危険性があり反対です。

三つは政府は、この事業を農業「構造改革」の決め手と位置づけ、多額の「農地集積協力金」で誘導しているからです。しかも、農業委員会にも事業への積極的な協力・役割を求めています。しかし、地域が直面している耕作放棄地の解消や農地の流動化・集積の課題は多様であり、関係者の要求や気分もさまざまです。それと離れて「上から」一律に押しつけるべきではありませんので反対です。さらに、今後は機構の借り受け、貸し付け実績を明らかにして、実績を上げた都道府県に対して施策面で優遇する一方で、機構に農地を提供しているか否かによって、遊休農地への課税の強化や軽減化を行うものです。

したがって、受け手の見込めない農地も「機構」の借り入れ対象にし、受け手が見つかるまで管理や基盤整備をおこなう、貸し出し先は地域の担い手を優先し、借り受け希望者の不足する場合に地域外の新規参入をすすめる仕組みにする、農地集積協力金を「機構」事業以外の農業委員会があっせんした農地貸借にまで適用するなどの抜本的な改善をしなければ、本市の農業の困難を打開する根本問題は解決されません。このまま突き進めば農家間の競争をあおり集積・集約できる農家と遊休農地を抱える農家との格差を広げて、本市農業の発展を阻害することになり反対です。
さらにTPPに突き進む政府の目玉施策と位置付けていますが、農地面積を集積・集約しても広大な農地を抱えるアメリカやオーストラリアなどと競争にならないことは明らかであり、本来の農業が子子孫孫に受け継がれるためには、農業経営の保障である価格・所得政策を強化し大規模化一辺倒でなく、大小多様な農家を地域農業の担い手として重視し、農地の集積やあっせん、機械の導入・更新への支援などを通じて、さまざまな形で農業に関われるようにすべきであり、祖ためにもTPP交渉から撤退すべきです。

第3は社会保障と税の共通番号制度、マイナンバーに係る予算について同意できません。具体的には住民基本台帳管理事業追加、個人番号カード交付事務実施に伴う事務費等追加予算526万7千円、証明書コンビニ交付実施に伴うシステム構築費1945万6千円、子ども子育て支援システム個人番号制度対応のためのシステム改修の994万4千円の予算です。
1つはマイナンバーの利用開始は来年1月ですが、多くの国民は仕組みを詳しく知っている状況ではありません。準備・対応を迫られる地方自治体や企業からは、新たな出費や業務負担の増大などに悲鳴が上がっています。国民が望んでもいない番号を“これがあなたの一生変わらない番号です”と一方的に送りつけようというやり方はあまりにも無謀です。
2つはマイナンバーを知らせる通知カードは、住民票登録をしている住所に市区町村から世帯全員分まとめて簡易書留で送られています。国内約5600万世帯のほぼすべてに書留を送ったことは、日本の郵便史上例がありません。留守にしていた人からの再配達要請の殺到や夜間休日の郵便窓口の大混雑など、多くの混乱がおきています。

全国では東京都葛飾区の一部地域に住む世帯の通知カード約5000通が作成されていなかったり、高齢者らが詐欺に遭ったりといったトラブルが相次いでいま。さらに通知カードが作成され配達に回されたが、不在のため市区町村に返還された数が3日現在で全世帯の6.8%に当たる約386万通に上り、どうやって各世帯に届けるかは自治体の悩みの種であると報道されています。
 本市でもマイナンバーは11月15日から送付し、12月10日には完了する見込みであるということです。対象世帯143,522世帯のうち、不在配達で市役所に返送された簡易書留は12月3日現在約7600通。今後,中身を精査して、年内に普通郵便でマイナンバーを市役所で保管しているとのお知らせ通知を郵送する予定です。担当課である市民課には連日数百件の問い合わせが寄せられ、内容はマイナンバーがいつ届くのか、内容がよくわからない、申請の方法がわからないなどが主ものです。
このように、市民にとっても行政にとっても大混乱を起こしているまま突き進むべきではありません。
 3つは東日本大震災の避難者、家庭内暴力(DV)で住民票を移さず転居中の人、特別養護老人ホーム入所者などで住所変更手続きをしていない人の手元にはそもそも通知カードは届きません。また、視覚障がい者の方に通知が届いても封筒に点字表示されているだけで、マイナンバーそのものがわかる表示がないため、本人自身が確認できません。必要な番号を知ることすらできない人が、制度スタート段階で100万人以上見込まれること自体、仕組みの矛盾とほころびを浮き彫りにするものであり反対です。
 4つは初期費用だけで約3000億円も投じ、国民にも自治体・企業にも多大な負担と労力を求めるマイナンバー制度ですが、国民には政府が宣伝するような「メリット」はありません。マイナンバーによって、現在は各機関で管理されている年金、税金、住民票などの個人情報が容易にひとつに結び付けられることになります。これは、国家が国民のあらゆる個人情報を一元管理するもので、プライバシーの侵害であり憲法第一三条の幸福追求権に含まれる憲法上の人権侵害であり、憲法違反です。

 5つは個人情報を簡単に引き出せるマイナンバーを、他人に見られないようにしたり紛失しないようにしたりする手間が大変です。国民の所得・資産を厳格につかみ徴税・社会保険料徴収の強化などを効率よく実施・管理したい政府と、マイナンバーをビジネスチャンスにしたい大企業の長年の要求から出発したものです。このような狙いを持った制度は国民にとって百害あって一利なしでありますので来年1月の本格運用をやめ凍結・中止すべきです。
次にマイナンバー関連議案の第133号について同意できません。これは前橋市の個人番号利用条例の制定については特定個人情報の庁内連携、同一執行機関内における特定個人情報の授受についての規定です。個人情報は分散して管理をした方がリスクは低くなるのに、マイナンバーのように「一元化」するやり方は、個人情報を格段に危険にさらす逆行でしかなく反対です。しかも政府は、マイナンバーを銀行口座や健康診断などの情報にも結びつける方針で、健康保険証や図書館の貸し出しに使う案まで検討しています。消費税増税時の「還付金」手続きに使う案まで持ち出していることは大きな問題です。
次にマイナンバー関連議案の第135号について同意できません。これは前橋市手数料条例の改正について、住民票の写し及び印鑑に関する証明について個人番号カードを利用してコンビニエンスストア等に設置された多機能端末器により自動的に交付する場合の手数料の額を現行の窓口での交付手数料よりも100円安くして、250円とするもの。また、議案第136号前橋市印鑑登録及び証明に関する条例の改正については印鑑登録証明書を印鑑登録証を利用せずにコンビニエンスストア等に設置された多機能端末器により自動的に交付を受けられる規定をしています。先に議案第126号の補正予算でも述べましたが、証明書コンビニ交付実施に伴うシステム構築費1945万6千円は国が地方自治体に義務化したものではありません。本市が積極的に導入してマイナンバーカードの普及促進のために、実施するものです。そのために、予算の半分を一般財源で支出し、さらに交付手数料を100円も安くするものです。しかし、そんな手続きは日常生活では頻繁(ひんぱん)にありません。一方、利用範囲を野放図に広げる意向を示して、積極的に推進していることは「利用対象を限っているから安全」という政府の『安全神話』がまったく成り立たないことを示しています。
市民のプライバシーを侵害し、あまりにも多くの情報が紐付けされると、万一流出してしまった場合のリスクも大きくなるという危機感がありません。まさに、無責任な行政と言わざるを得ません。
最後に議案第137号前橋市介護保険条例の改正については介護保険料徴収猶予申請及び介護保険料減免申請書にマイナンバーを記載するもので反対です。以上申し述べまして5議案の反対討論とします。





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