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議会報告

2016年第1回定例議会本会議総括質問 長谷川薫議員  地方創生・前橋人口ビジョンと総合戦略について【3月14日】【2016/3/18】

2016年3月・第1回定例市議会総括質問(長谷川薫・25分)

私は、前橋人口ビジョン・総合戦略について質問します。

(1)人口減少・少子化の原因
本市の総合戦略には原因分析の記述がありませんが、今後、加速度的に進む本市の人口減少に歯止めをかけて、地方自治を守り住民の福祉を増進するためには、原因を明確に分析して市民にも周知して対策を講ずることが必要です。見解をお聞かせください。

【反論】答弁をいただきましたが、人口減少の原因を正しく認識されていないと思います。少子化は避けがたい自然現象ではありません。国の政策により生み出された社会問題です。いま、若者の2人に1人は非正規雇用という低賃金・不安定な状況が続き、結婚も出産も子育ても大変となっています。若い人たちの多くが不安定雇用に追い込まれ、ワーキングプアと呼ばれる貧困状態に堕ちいったのは、政府が派遣労働者の適用業種を無制限に拡大するなど、新自由主義的構造改革に原因があります。
さらに、地方衰退の原因は、小泉「構造改革」による「三位一体の改革」で地方交付税が削減され多くの自治体が財政難におちいり、平成の大合併で住民サービスが後退し、地域経済にも大きな打撃を与えました。また、小泉政権の「社会保障費年間2200億円削減」路線は、「医療崩壊」「介護難民」の引き金を引きました。政府・自民党内でもその“誤り”を認めたはずなのに、安倍政権は15年度予算からで「自然増」削減路線を復活させました。さらに安倍首相が推進しているアベノミクスや「社会保障と税の一体改革」は、子育て世代に容赦ない負担を迫るものであり、消費税のさらなる10%への引き上げは、所得の低い若年層の生活を脅かします。子育て世代をさんざん痛めつける政治に無反省のまままでは、人口減に歯止めをかけることはできません。男女とも人間らしく働き、子どもを産み育てる安心の環境づくりに本腰を入れる政治の実現と、大企業の横暴を規制し「ルールある経済社会」への転換こそ急務です。

次に、本市の総合戦略に掲げられている5か年計画の事業について質問します。わが党は、「地方創生」が走り出した現状においては、前橋市の地域特性を十分考慮して主体的に計画を立てて事業を選択し、国からの事業費の2分の1という有利な交付金を活用して、住民と地域の利益を増進させることを目標とすべきと考えています。

(2)所得向上と雇用安定策

そこで、まず、所得向上と雇用安定策について伺います。

@ 労働者の4割、若者の半分が非正規労働者で、若者を使いつぶすブラック企業の働かせ方が、学生アルバイトにまで拡大しています。雇用問題は少し前までは、「国の問題」と多くの自治体が考えてきましたが、今では、子育て支援とともに、安心して結婚できる若者の安定した雇用の確保は、人口減対策としても大変重要な施策です。2008年のリーマンショック以降、国の緊急雇用創出等の基金の範囲が主ですが、とりくむ自治体がひろがっています。「総合戦略」でも、地域内の雇用の安定的な確保策は、市としても正面から問われます。市として、正規雇用の拡大とブラック企業の根絶を宣言して全力で取り組むべきです。また、前橋市事態が市職員削減や民営化を推進する政策を改め、一定期間での雇止めを当然視する非正規雇用をふやすことをやめるべきです。それぞれ見解を。

A次に農業の振興についてです。市場任せの米政策で米価が大暴落して稲作経営が立ち行かない事態が起きています。さらにTPP協定を批准して発効させれば、農畜産業をはじめ本市の地域経済に壊滅的な打撃を与えるのは必至です。また、すでに市内の農地は20年前と比べ、6割に減少しています。
 市内農地の減少に歯止めをかけ、農地保全と農業振興に責任を果たすとともに、農家と市民との共同によって、農地の維持と農業振興をすすめるべきです。そのためにも、農業の担い手の課s九保育性に全力を挙げて取り組むとともに、都市計画における農地・農業の位置づけを明確にして、今後5年間の耕作農地面積を明確にして農地を保全し、第6次産業を拡大するためにも、市が100%出資したり、農業者団体との共同出資の農業公社を設立して、特産品を開発し販売するなどの事業を具体化すべきです。見解を。

【意見・要望】国の地方創生政策の中心が、「外部からの企業や人の誘致」と「選択と集中」にあることは問題です。東京に本社を置く、一部のグローバル企業にとってのみメリットがある。「地方創生」は、規制緩和によって、新たな経済主体がビジネスチャンスを拡大することを意味しており、決して、地域経済を現に担っている既存の中小企業や農家、協同組合の投資力を高めるところに重点を置いてはいません。だからこそ、国は「地方再生」という言葉を使わずに、ゼロからの出発を意味する「創生」という言葉をあえて使っているのだと思います。しかし、地域からの視点からみると、たとえば一時的に域外から企業が進出して売り上げが増えたとしても、その所得が域外に流出したり、撤退したりすると、地域経済の持続的発展は失われてしまい、地域住民の所得や生活の向上に結び付く可能性は低いものです。地域を持続的に発展させるには、自治体と住民が問題意識を共有し、協同して地域内で再投資できる仕組みを作らなければなりません。カギとなるのは、地域に根差し、地域経済の圧倒的部分を担う中小企業であり、農家や協同組合です。外から企業を誘致する場合でも、地域内から商品やサービス、雇用を調達してもらうことが重要です。国がトップダウン的に進める「地方創生」ではなく、地方自治体が地域の住民や企業ととともに自らの地域特性に合った実現可能な目標を掲げ、それに向けた取り組みを国がサポートする「地域再生」こそ、大都市でも農村でも求められていると思います。そのためにも、市独自の農産物の価格保障制度を作る、住宅や商店リフォーム助成制度や市民ファンド型の自然エネルギー事業、地産地消の学校給食や家族農業や小規模事業者を支える「道の駅」事業など自治体と住民が力を合わせ、地域内で再投資できる仕組みを作り、仕事と所得が生まれて地域は活性化させる事業を推進していただきたいと思います。

(3)医療・介護・子育て支援策

@次に、安心して子どもを産み育てられる環境を行政が整備することこそ、少子化克服の大きな力になることは言うまでもありません。
わが党国会議員が繰り返し政府に求めていたことですが、自治体が独自に取り組む医療費助成制度・窓口無料化制度に関して厚生労働省は、「地方創生関連の交付金を医療費助成に充てる場合は、国庫負担金の減額・ペナルティーを科さない」と明記した通知を全国の自治体に出しました。
本市の総合戦略に、現在の県制度の中学校卒業までの医療費無料制度をさらに市独自で18歳まで引き上げる拡充を掲げるべきだと思います。また、就学援助制度の対象を現在の生活保護水準の1.1倍を1.3倍に引き上げ、学校給食の無料化や高校生への就学支援金の支給制度の創設、第2子以降の保育料や幼稚園の保育料を全額無料化、そして30人学級の全学年実施など、子育て支援のためにできる施策は可能な限り実施して、文字通り「全国トップクラスの子育て支援都市・前橋」を目指すべきです。そして、同時にその支援制度をナショナルミニマムとして国としての実施を強く求めていくという立場が重要と考えます。見解を。


(4)まちづくりについて

@次に街づくりについて2点質問します。
総合戦略では前橋版CCRC構想を推進しようとしています。
国の「まち・ひと・しごと創生基本方針」は、東京圏では今後10年間で75歳以上の後期高齢者が175万人増加すると予測し、「そのままにしておけば医療・介護人材が東京圏に流入し、東京一極集中が加速し、合計特殊出生率の低いエリアに若者人口がいっそう集積すれば、日本全体の人口減少がいっそう深刻化する」と述べています。そのような事態回避のために、労働需要の発生原因である高齢者そのものを地方に移す以外に方策がないとの判断から提起したものが日本版CCRC構想です。さらに、構想を推進する国の本音は、東京にグローバル大企業を集積させて国際経済戦略都市として再構築することを目指しており、そのような企業に勤める人材も東京圏に居住することが必要です。膨大な高齢者の出現は、間違いなく福祉施設や福祉サービスのニーズを大きく押し上げると考え、東京圏に膨大な土地と空間が必要となり、国際経済戦略都市としての再編成ができなくなることを避けようとしているのです。富を生み出さない高齢者と社会福祉のために東京圏の資源が使われることのないようにしようというのが、国と財界の方針です。地方創生と言いながら、東京圏こそ経済成長に貢献できる都市づくりをしたいというのが本音です。
本市においては、現在の高齢化率が4人に一人、今後、更なる増加が見込まれます。1200人を超える特養待機者問題の克服など介護需要に適切に対応するため、計画的に基盤整備を進めなければなりません。国の言いなりになって前橋版CCRC構想推進のゆとりはないのではないでしょうか。計画は撤回すべきだと思います。見解を。
 

A次に、市営住宅や学校などの公共施設についてです。国は公共施設の老朽化の状況を踏まえ、従来の長寿命化促進だけではなく、最近は人口動態に合わせて公共施設の集約や縮減を求め、各自治体の財政運営とリンクさせようとしています。国はコンパクトな都市づくりや公共施設等の整備・運営に民間資金の積極的に入などを内容とする公共施設等総合管理計画の策定を各自治体に求めて、その内容の積極性を比較して、建設費などを地方交付税に算入するなどの財政措置に差をつけて、新たな地域再編を押し進めようとしています。
本市の総合戦略で掲げた都市のコンパクト化やそのための立地適正化計画の策定方針は、明らかに国の誘導策に沿った計画となっており、市民が願う街づくりが具体化されていません。
わが党は、人口減少に歯止めをかける重要な施策としての街づくりは、ローズタウンのような大型開発ではなく雇用に役立つ小規模な事業、住宅リフォームや商店リフォーム助成制度の拡充、生活道路や市営住宅の適切な維持管理と修繕の促進、閉校した嶺小学校などの公共施設の市民本位の利活用など住民生活密着型・地域循環型・市民の命と暮らしを守り、地域経済再生に役立つ公共事業政策街づくり政策を強く押し出すべきだと思います。見解を。

(5)財源確保策
 この間の地方財政計画の流れは、地方財政抑制による財政再建基調の強化であり、特に人件費や市単独の投資的経費が抑制のターゲットになっています。このような中で、今後の地方財政政策の方向性は「地方創生」への重点化で、地方創生に自治体財政が一層強められ、それぞれの地方自治体が地方創生への取り組みが十分であるのかを国が検証し、国に施策が誘導される心配があります。政府の意に沿った計画を出した自治体が支援され、計画を出せなかった自治体は衰退していくという自治体競争に巻き込まれかねません。地方創生への取り組みにおいて、住民の自治や住民要望を計画の柱に据えて、十分な財源保障を国に求めるべきだと思います。見解を。

【意見・要望】。政府は今も、「今後も東京圏への人口流入は続く可能性が強い」として、「東京一極集中」は聖域とする姿勢ですし、アベノミクスにもとづく労働法制の規制緩和やTPP参加や消費税10%増税は国民の反対の声を無視して進める方針であり、「地方創生」とは逆行させる立場です。上から「地方創生」を押し付けても住民との矛盾は深まらざるをえません。高齢化が進み、災害が頻発している中で、誰もが住み続けられるように、地域活性化に取り組む自治体の自主性を尊重し、応援し、財源を保障して地方自治の拡充をはかるなど、住民の立場にたった「地方再生」こそ、求められていると考えます。

今こそ、地方自治と住民の暮らしを守りぬく立場から、政府は地方を衰退さるような施策を続けながら、その一方で地方自治体に「地方創生」という鞭で脅かし、交付金という飴で競い合わせるというような矛盾した態度を正して行く立場を強めていただきたいと思います。

(6)市町村再編と道州制の問題点について

 最後に、市町村再編と道州制の問題点についてです。地方創生は、政府の意に沿った計画を出した自治体は支援され、そうでない自治体は衰退するという、自治体間競争が進みます。「このままでは消滅自治体になる」と脅かして、国からのトップダウン的な行政の強化では、地方は再生しません。政府はすでに、「消滅」が避けがたい自治体では周辺にある地域拠点都市との連携をすすめ、その拠点都市に行政投資や経済機能の選択と集中をすすめると表明しています。「脅し」ともとれるやり方で、有無を言わさず、選択されなかった地域の切り捨て、住民サービスの後退を進め、地域の疲弊をさらに進めようとしています。
 切り捨てられた地域は結局、合併や自治体再編を選択せざるを得なくなり、こうした先には、政府がかねてからめざしてきた「道州制」がねらわれています。地方自治を壊す「道州制には反対」との立場を鮮明にすべきと思いますが、見解を求めます。

【意見・要望】政府は「行政の選択と集中をしなければ生き残れない」という雰囲気をつくり、30万人の地方中枢拠点都市を地方創生の支援策の対象にして「道州制」導入の地ならしをして、将来的には現行の都道府県制を廃止し、10程度の州と州都を置き、再編しようとしています。国は外交、軍事と通商政策、州政府は経済開発や公共事業、高等教育政策、人口30万人程度の基礎自治体は住民の生活に近い初等教育や医療、福祉を担うという「役割分担」を狙っています。外交・軍事については国の専権事項にしようとしています。
道州制によって、今日の日本が抱えている課題が解決するとは思えません。地方分権をはじめとして、地方自治を高めていくことのほうが優先されるべきだと思います。地方活性化に取り組む自治体の自主性を尊重し、応援し、財源を保証して地方自治を拡充するなど、住民の立場に立った地方再生こそ求められていると思います。「道州制」に反対していただくよう要望しまして私の質問を終わります。

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