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議会報告

前橋市公立保育所のあり方検討委員会の報告書【2016/6/1】

                              平成28年4月28日
前橋市長 山 本 龍 様
                       前橋市公立保育所のあり方検討委員会
                       委員長 塩 美智子
                 報 告 書
平成27年9月14日付けで市長から委嘱を受け、前橋市公立保育所のあり方検討委員会において、これまで5回の委員会を開催し、平成17年度の前橋市立保育所民営化検討委員会の報告書(以下、「前回報告書」という。)の検証とともに、民営化実施保育所のその後の状況、公立保育所の3歳以上児施設や民間保育園の3歳未満児施設、及び公立保育所のあり方についての協議や検討を行ってまいりました。
その結果について、下記のとおり報告いたします。
                  記

1.民営化の検証と民営化検討委員会の報告書について
(1)民営化した5園の検証と評価
平成23年度に実施した保護者アンケートにより検証を行った結果、民営化した5園については、延長保育や0歳児からの受入れ、行事の日程といった保育サービスが向上するとともに、施設整備も実施されたことから、多様な市民のニーズや期待に応えており、概ね評価できる、という意見になりました。
(2)前回報告書の検証と評価
前回報告書は、当時の状況において十分な検討を経た内容であること、また、公立保育所のあり方及び民営化を進める上での方向性をまとめたものであり、前橋市も基本的にこれに則り民営化を進めたものであることから、評価できるという意見となりました。今後の検証方法の向上を図るために、以下の2項目について提案します。
@ 保護者の保育ニーズへの対応や保育の質の検証にあたっては、保護者に対してのアンケートの実施と最新のデータの収集に努めること。
A @においては、行事や開所時間などのニーズだけでなく、保育内容や保育の質に対する保護者の要望を確認するよう努め、アンケート項目に加えること。

2.公立保育所の3歳以上児施設(総社、清里、東)のあり方について
(1)3歳未満児への対応の必要性
一部地域の公立保育所は3歳未満児の保育需要が高いことから、その対応を図る必要がありますが、上記3施設についてはそれぞれの地域性もあることから、個別に検討することとします。
また、就学前の保育については、乳児から年長児まで同じ施設、または同一法人で実施することによる保育の連続性を保つことが望ましいことから、これに基づいた対応を図る必要がある、という意見になりました。

(2)総社保育所
隣接地に民間保育園である宝塔保育園(3歳未満児施設)があり、上記2(1)後段を踏まえて一体化(民営化)するという意見と、児童の環境適応能力を伸ばし成長を促すという意味では、必ずしも同一法人による運営だけが望ましいということではない、という意見がありましたが、同施設の設置・運営状況や保護者の利用状況を踏まえると、民営化による一体的な運営が望ましいという結論に至りました。
今後は民営化を前提として、より一層充実した保育が提供できる施設となるよう、関係団体・関係者と検討・協議を行うよう提案します。
(3)清里保育所
施設内に3歳未満児のためのスペースはなく、施設を増築したくても、敷地の形状や建物の配置から難しい状況にあります。また、保育ニーズはありますが、地域的に祖父母と同居・近居世帯が比較的多く見られる地区であると考えられることから、ある程度3歳未満児の対応は図られていると考えられます。
さらに、清里保育所については、総社保育所と同じ第六中学校区であることからも、総社・清里地区の公立の拠点保育所とするよう提案します。
(4)東保育所
3歳未満児の保育ニーズが高い地区ではあるものの、この地区では現在、近隣の民間保育関係施設及び認定こども園へ移行する幼稚園による施設整備を進めており、3歳未満児を含めた定員増を行うことで、受入れ枠を増やしています。
このことから、同地区の入所状況の様子を注視しながら、当面は地域の公立保育所として現状のままとします。しかし、上記の施設整備に伴うこの地区の3歳未満児の入所状況をもとに運営方法について検討を行うよう提案します。

3.3歳未満児の入所ニーズへの対応について
市内には3歳未満児の多い地域や今後も人口が増えそうな地域があること、さらには、子育て世代の母親の就労率の向上などにより、保育関係施設への入所ニーズが高くなることも考えられることから、以下のような対応を図るとともに、在宅支援も充実させていくという意見になりました。
(1)既存の保育所(園)、幼稚園、認定こども園の施設の有効活用による対応
既存の保育所(園)の増改築にあたっては、3歳未満児の定員増に努めるとともに、幼稚園から認定こども園への移行にあたっては、3歳未満児の受入に努めるなど、既存施設等の有効活用を積極的に進めること、あわせて、保育園・幼稚園等の関係団体の協力を得るとともに、行政として必要な支援を行うことを提案します。
(2)在宅の3歳未満児の子育て支援の充実
在宅で3歳未満児の子育てをしている保護者が、親子行事や相談を気軽にできる場として、保育関係施設で実施している「子育て支援センター」や「元気保育園」といった既存の事業をはじめ、児童館、公民館等でも育児相談等の事業の充実を図り、今後、在宅でも子育てをしやすい環境づくりの推進に努めるよう提案します。

(3)3歳未満児施設の対応について
民間保育園の3歳未満児施設は、市内の3歳未満児の保育ニーズを満たすために設置され、本市の保育を支えてきたという歴史的経緯があります。また、依然として3歳未満児の保育ニーズが高い中で、本施設の果たす役割は大きいものがあると考えます。
一方、近年の保育においては、0歳児から就学までの連続性のある保育が児童の発育上重要であるとされており、日々の保育の情報共有が可能となる同一施設や同一法人による保育の実施が、保護者・児童双方の負担を考えても望ましいと考えられます。
また、子ども・子育て支援新制度(以下、「新制度」という。)の施行により認定こども園への移行が進んでいる中、3歳未満児施設単体では制度上、施設が希望しても認定こども園への移行ができない状況にあります。
このようなことを踏まえ、今後の保育及び保育所運営を考えると、民間保育園の3歳未満児施設の解消を図ることが必要であると考えます。この際には、3歳以上児に対する施設は足りている状況から、近隣の公立保育所の民営化(宝塔保育園であれば総社保育所、長昌寺・長昌第二保育園であれば第四保育所)を含めて関係団体・関係者と検討・協議するよう提案します。

4.保育の質の向上について
(1)保育士の研修体系(育成プラン)の策定
新制度の施行により多様化する保育に対応するためには、現行の研修を継続するとともに、国や県、関係団体と連携を図り、保育士のステップアップのための育成プランなど各種研修の充実を図る必要があるという意見にまとまり、以下2項目について提案します。
@ 育成プラン策定について
育成プランの策定を行うとともに、策定にあたっては、経験や実績のある保育士が継続して勤務できる職場環境の充実や改善を図り、後進の育成に配慮したプランとなるなど、人材育成推進のための支援に努めること。
A 研修の実施について
・各施設長等のリーダーシップのもと、研修時期や時間帯等が通常保育に影響の少ないよう、保育士の配置に配慮するなどにより施設内の環境を充実させることで、多くの保育士が研修に参加できる体制づくりに努めること。
・園外での研修のみならず、施設内での研修ができるような環境整備に努めること。
・保護者に対する子育て支援のための研修等の充実に努めること。
(2)研修等の人材育成に対する行政の支援
公立・民間の対象を問わずに様々な研修を実施している幼児教育センターは、県内で唯一、市町村が単独で設置していることの強みを活かし、今後、他の行政関係機関とも連携を図りながら、園外研修を一層充実させることとします。
また、同センターでは、専門のアドバイザーを各保育関係施設に派遣し、通常保育を活用した出前講座を実施しており、このような園内研修(OJT)等による保育士等の一層のスキルアップを図ることとします。
さらに、優秀な保育士等を採用するために、行政として支援を行うよう努めていくことを提案します。

5.公立保育所の今後のあり方(ビジョン)について
(1)地域の拠点
公立保育所は、地域の子どもを育てる子育て支援の拠点として、さらには地域の人的、物的資源や地域の力を活かした保育を行うように努めるものとする。あわせて、前回報告書にある「地域の子育て支援の核としての役割を担うことが必要」という考え方を継承するという意見となりました。
(2)公立保育所の民営化・統廃合
公立保育所は、地域の拠点保育所という位置づけとします。ただし、前回報告書の考え方や保育ニーズの増加する地域や児童数の減少する地域などの状況を踏まえて、民営化・統廃合も含めて検討するという意見にまとまり、以下2項目について提案します。
@ 民営化について
保育ニーズの増加や児童数の減少など、市内の地域の保育状況の変化を考慮する中で、例えば、複数の公立保育所が同一地区内にある場合には、民営化することも含めて検討し、地域性を考慮すると民営化に向かない地域の保育の実施は公立保育所が担うこと。
A 統廃合について
公立保育所は、保育関係施設が供給過剰となった場合や地域の状況を踏まえ、市内全体の中で調整機能の役割を担い、規模の縮小、場合によっては統廃合等について必要に応じて検討すること。
(3)サービスの向上
今後の保育サービスのあり方について、各委員の意見や保育士のアンケート結果をもとに検討を行い、財源や人員の確保などの状況を踏まえ、以下5項目について提案します。
@ 保護者及び関係者・市民全体に対して、公立保育所での保育内容や行事などの情報発信を行い、公立保育所全体の認知度及び質の向上に努めること。
A 民間保育園との情報交換や研修などの連携強化を図り、公立保育所で作成した各種マニュアルの情報提供を行うとともに、保護者ニーズを反映したものをより一層取り入れるよう努めること。
B 公立保育所では障害児保育向上研究会において事例検討などを行い、知識を深め、共通認識を高めていることから、今後は障害児保育に対する研究内容を民間保育園等と情報共有する仕組み作りに努めること。
C 一時預かり保育や看護師の配置など地域の実情に応じた保育サービスの充実に努めること。
D 「施設の老朽化」への対応については、施設の改修・改築の安定的な財源確保は難しいが、限られた財源の中で整備計画に基づき改修等を継続的に実施し、安全・安心な施設管理に努めること。

6.保育行政の財源の確保について
様々な保育関連の事業を実施するにあたっては、その財源の確保が必要となることから、民営化等による財源の確保に努めるとともに、その財源は、子育て支援などの保育サービスの充実、保育の質の確保・向上のために活用するよう強く提言します。
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