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議会報告

2016年9月第3回定例会本会議総括質問(前橋市の行財政施策の問題点について)長谷川薫議員【2016/9/9】

     2016年第3回定例会総括質問(日本共産党市議団・長谷川薫)

 私は、本市の行財政運営における問題点について質問します。

1、最初は、公共事業の大規模化の問題です。

 少子高齢化と人口減少が避けられない前橋市において、道路などの都市インフラや公共的建築物の整備は、何よりも全市民的な行政ニーズと費用対効果、さらには地方債残高状況などの本市の財政状況を総合的に検討して決定することが求められています。
 本市の公共施設等総合管理計画にも、今後、扶助費など民生費がいっそう増加するために投資的経費や維持補修費などの大幅な確保が厳しい財政状況であるとの認識の下で、「公共施設の数や規模を現状のまま維持することは大変難しいので、総合計画から各分野の計画に至るまで、コンパクトな街づくりを共通ビジョンとして全市を挙げて総合的な推進を図っていく必要がある」と強調しています。
 ところが、いま本市が進めている公共事業は、地域活性化や地方創生の名のもとに事業規模が次々と大きくなっています。すでに総合運動公園の拡張事業が開始され北関東最大規模の天然芝4面のサッカー場が整備されました。さらに、市内4カ所目の道の駅は、県内最大の5fの川場村の道の駅を超える7fの北関東最大規模の整備が検討されています。本当に大多数の市民ニーズでしょうか。首都圏の高齢退職者の移住を期待する日赤跡地のCCRC構想も、本当に市内の若者も高齢者も生き生きと暮らせる地域づくりのモデルになるのでしょうか。跡地周辺の住民の願いに応えられるのでしょうか。さらには、巨額の財政投資が必要となるLRT低床式路面電車構想も、マイカー保有トップクラスの前橋で実現するのでしょうか。 
 リスクが必ず伴う開発型の大型事業はすでに事業化されているものも計画中のものも含めて再検討し、事業基規模を縮小すべきです。明確な答弁を求めます。

★今、市民の多くが求めている公共事業は、通学路や生活道路、歩いて行ける近隣公園の整備、老朽化した市営住宅の修繕やエレベーター設置の促進、そして特養老人ホームなど高齢者施設、そして学童などの子育て支援施設の増設です。これら生活密着型の公共事業は事業規模が小さくても、住民福祉に直接つながるとともに、不況で苦しむ市内中小零細事業者への発注が増えて、地域経済の振興への波及効果が大きくなります。平成25年末で解散した前工団は、ローズタウンや五代南部工業団地の見通しの甘い過大な事業計画のために解散時に約100億円、同じく解散した土地開発公社も解散時には約50億円の負債処理のために、第3セク債などの新たな借り入れを余儀なくされました。このような事態を繰り返さないためにも、大型公共事業を身の丈に合った事業に見直しをするよう強く求めておきます。

2、次にアウトソーシング・民間委託の問題点についてです。

 先日の総務常任委員会では、道の駅については、施設整備や運営など、より幅広い範囲を民間に任せるために、事業の企画段階から民間事業者が参加する手法であるPPP(パブリックプライベートパートナーシップ)で進め、3.8fの日赤病院跡地のCCRC構想は、前橋市が基本的な構想を関係機関と相談しながら策定し、資金提供や事業計画を提案する民間事業者を公募するという説明がありました。しかし共産党市議団は、「これら民間活力導入の手法は従来の民間への事業委託や指定管理者制度と比べても大きなリスクがあり、事業運営に失敗すれば前橋市民の税金で担わなければならなくなる」と指摘し反対してきました。
 全国的には、「財政負担を削減し、住民サービスを向上させることができる」として民間主導で整備された事業が、巨額の負債を抱えて経営破綻しています。例えば、複合的な商業施設として開業した名古屋港イタリア村は3年、また、ごみ焼却熱で発電した温海水を利用した健康増進施設としてスタートしたタラソ福岡もわずか2年8カ月で経営破綻しています。民間にゆだねれば、安定経営が図れるという保証はどこにもありません。
 市民が満足できるサービスの維持を求める行政と経費を削減して利潤追求を求める民間事業者の利害は対立し、結果として集客に失敗して事業が破綻する例が多いためPFIの手法は全国的にも進んでいません。地域活性化や街づくりの視点から先進的な民間活力導入の手法を使った新規事業に取り組めば、地方交付税などで優遇するという政府に誘導されることのないよう、慎重を期すことが必要だと思います。どのようにお考えか、お聞かせください。

★民間事業者に運営を委ねれば、設備費や人件費を抑え、料金などを高く設定して利益を増やそうとする事業運営となり、社会的・経済的に弱者などが利用しにくい事業となりかねません。 公共サービスは、社会的経済的弱者を含む住民全体の福利のために、住民の総意で実施されるべきものです。民間事業者の利潤追求の場を行政が提供する手法の推進は、行財政改革ではなく、公務の市場化であることを強調しておきます。


3、次に、政府が進める地方創生策への安易な追随の問題点です。
 
 安倍内閣が進める「地方創生」の本質は、国際競争力の強化と人口減少を想定した地域の再編成であり、今後進む高齢化社会を自助と互助で乗り切る地域コミュニティーの再編成です。政府の施策への追随は市民自治を弱め、逆に地方の衰退を進めかねません。政府は、自治体に地方版総合戦略の作成を求め、地方創生の事業メニューに手を挙げさせて、確かな実績を挙げれば「地方創生推進交付金」で支援をするという誘導策も示しています。
 市長は、まだ決めていないと答弁されていますが、このような国の地方創生方針に従って民間主導で道の駅やCCRC構想を推進していることは間違いありません。これらは本当に市民ニーズにこたえる事業でしょうか。
 本来ならば、市職員が全市民的な要求を十分調査して把握し、率直な市民要求を最大の指標にして、前橋市の再生や活性化に向けたまちづくりの政策を選択すべきです。ところがそのような努力を尽くさず、街づくりに係る多くの事業を三菱総研や八千代エンジニアリングなどのコンサルタント事業者に調査を依頼しています。結果として、コンサル事業者は多くの場合、官民連携など民主導の施策展開を提案し、国の政策に沿った結論を導いています。
 これでは、市職員の政策立案能力が衰え、市民ニーズに的確に応えたものとはなりません。費用対効果が十分検討されているか。市の財政負担が過大ではないか、少子高齢化が進行しているのに、事業目的が時代の変化やその要請に的確に対応しているか、漫然としたコンサル事業者の提案に誘導されていないか、総合計画や公共施設の再編管理計画などとの整合性は保たれているか、コンパクトな街づくりの基本方針に矛盾する市街地の拡大になっていないか、などの視点で再度これらの事業構想を検証すべきです。答弁を。

★前橋市を活性化・地域再生の主役は、なによりも市民であり地元中小企業であり、懸命に頑張っている農業者であります。地域再生の道を民間事業者に広く委ねれば、公務の自主性も地方自治も痩せ細ってゆきます。国のトップダウン政策に追随せず、前橋市民の暮らしの実態を市職員自身が縦割りを廃して総力で調査分析し、市民参画も強め、これまでの施策を点検して施策を見直すべきです。「民間でできることは民間で」とか「職員削減による総人件費抑制」という行財政改革のこれまでの方針を決して金科玉条とせず、町づくりも福祉サービスも真に市民ニーズに沿った施策展開おこなうよう強く求めておきます。

4、最後に、行政の公平性に欠ける補正予算ついてです。

 先日開かれた、前橋ビジョン発表会に私も参加しました。率直に言って、派手な大きなイベントではありましたが、発表されたビジョンは、抽象的なわずか20行の散文です。少子高齢化を迎える前橋の街づくりや福祉や暮らし応援の具体的な方向性を示す文章は全く示されず、期待外れという印象を抱きました。前橋市の再生に向けての総合的なビジョンにはなっていなかったのではないでしょうか。逆に、今回の前橋ビジョンは、本市が市民参画で策定している総合計画で努力してきた様々な施策については、十分な成果が上がっておらず、活力ある街づくりには成功していない。だから種を芽吹かさなければならない、というメッセージを突き付けたという側面があったのではないでしょうか。
 私は、このような民間主導の町づくりの提案を、市長が過大に評価して一挙に1,000万円の負担金支出を提案したことは、大変安易だと思います。今後、補助金の金額にかかわらず、市政への積極的な提言などを行う団体には、費用の2分の1を限度に補助金を交付する方針なのでしょうか。また、健康づくりと中心市街地の活性化を兼ね備えたNPO法人の事業に350万円を支出する補正予算が提案されています。市内には、健康増進を目的としたさまざまな団体が、自立して活動しています。今後、そのような団体も含めて、補助金交付の事業化を考えておられるのでしょうか。それぞれの団体の積極的な活動を否定するものではありませんが、当局は、行政の公平性を常に強調し、市政執行をしているだけに、今回の補助金交付方針は、これまでの行政方針に照らして問題となる支出とならないでしょうか。答弁を。
 
★収納課は、市税滞納者には納期内納税をされている圧倒的多数の市民との公平性を強調して、税滞納者への厳しい滞納整理を行っています。執行停止は例外中の例外で、延滞金だけでも給与や年金の全額差し押さえなど生存権や営業を脅かす厳しい差押えは、全国でトップクラスです。そのときに強調されるのが、公平性です。
 
 前橋ビジョン発表の立役者である田中財団への1000万円の補助金、中心街の活性化と合わせて健康づくりをめざすNPO団体に350万円の補助金という今回の2団体への補正予算提案は、公平性の観点からも、認められません。前橋ビジョン参加団体への市長の特別な計らいは市民の理解は得られません。指摘しておきます。

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