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議会報告

前橋市自然環境、景観等と再生可能エネルギー発電設備設置事業との調和に関する条例修正案の提案理由説明/近藤好枝【2016/9/9】

 私は日本共産党前橋市議団を代表して、今議会に提出された議案第120号前橋市自然環境、景観等と再生可能エネルギー発電設備設置事業との調和に関する条例の制定についての修正案の提案理由説明をいたします。
 2011年3月11日、福島原発の過酷事故を受けて、原発が人類にとっていかに有害で一度拡散された放射性物質の回収が困難であることが明らかであり、いまだに故郷に帰れない被災者は10万人以上に及んでいます。このようなことから、原発に代わる再生可能エネルギーを広げる世論が強まり、固定価格買い取り制度の創設などを背景にして普及が急速に進んでおり、安全な再生可能エネルギーをさらに推進すべきと考えています。
 しかし、たとえば太陽光発電の設置は建築物でないことから規制の対象にならず、利益を得るために広大な面積にパネルを設置する事業者も増え、しかも山間部や農地の設置事例が年々増加し、防災や景観、環境などに様々な問題が生じています。これに対する国・地方自治体の法整備が立ち遅れているため、問題を未然に防ぐ手立てがなく、本市においても後手後手に回っているのが実態です。
 また、本市の苗ケ島地区に建設予定の関電工による大規模木質バイオマス火力発電事業は6700kwで国基準の規制は11・25万kw以上であり環境影響評価を実施する対象ではありません。未利用材を原料に焼却をして発電するため、建築廃材の焼却と異なり簡易環境影響評価の対象にもなっていません。さらに、排出ガス規制については群馬県条例では4万㎥を超えている関電工の施設でありながら、事業者が超えないと申告すれば環境影響評価の対象としていないことも問題です。
 また、住民が最も心配している福島原発事故により拡散した放射性物質は栃木県や群馬県など北関東にも大量に拡散し、森林に定着しています。この、未利用材等を燃やすことにより放射性物質が濃縮され、環境汚染を引き起こす3つの問題があります。一つは煙突から放出される煙による大気への拡散、二つは8000ベクレルを超えると特定廃棄物に指定される焼却灰、三つは原木を圧縮させて出た廃液を最大300トンを地下浸透させることです。建設段階から未然に汚染を防止する法規制が整備されていないため、いちばん環境汚染を監督指導する前橋市にチップ破砕施設についても、発電施設についてもどのような施設を建設するのか関電工に説明を求めても説明もありません。前橋市で建設設計書すら入手できないのが実態です。
他都市でも規制の内容は差異があるものの、富士宮市など世界遺産の富士山を抱える自治体では地域を限定して、同事業の設置を禁止しているところもあります。本市は県内で先に条例制定した高崎市や太田市を参考に作成したともお聞きしています。私たちもこれら他都市を参考にしながら修正案を作成し、この条例をより良いものにするために提出しました。
また、条例制定に先立ち、パブリックコメントに寄せられた147人405件の意見は本市に寄せられた意見としてはこれまで前橋市が実施したパブリックコメントの中で最も多い人数、件数であり、市民に非常に大きな関心を呼んでいます。これは、苗ケ島の関電工による大規模木質火力発電所建設の白紙撤回を求める陳情書名に寄せられた市民の願い、太陽光など無法状態で建設されている深刻な問題が背景にあると考えます。従ってこれらの意見を反映した条例に修正すべきと考えました。
以下修正箇所を具体的に述べます。
最初は第1章総則の目的に「安全安心な」を加筆して住民の生活環境の保全に寄与することを目的とするに改め、より目的を明確にしました。

第3条6項については、近隣住民の定義を事業区域の境界100メートルを200メートに改め、さらにバイオマス発電のように煙が空気中に拡散する場合の影響は200メートル以内だけでなく広範囲にわたるので、「同程度の影響を受けると認められる者をいう」を加筆しました。同じく、該当自治会についても、同趣旨で「当該自治会の区域に居住する者と同程度の生活環境上の影響を受けると認められる者が居住する区域をその区域に含む自治会をいう」を加筆しました。
今回指定している特別保全地区は人家がまばらで山林が多いところです。近隣住民は100メートル以内となれば、限定されすぎてしまいます。いま、問題となっている大規模火力発電問題のように隣接する赤城ビュータウンの場合は100軒ほどの住宅がありながら100メートル以内となると一部の住民だけが対象となることや、木質火力発電の場合は地下水汚染や煙突から出る煙の影響から、広範囲にわたることで適切ではありません。
また、太陽光発電においても、いま宮城地区で大量の土砂が運び込まれ山林に囲まれた場所では、土砂の搬入やそれに伴うダンプトラックによる振動、道路の崩落、河川への流入の危険性がおこっており、それは100メートル以内にとどまらないからです。
第6条は土地所有者等の責務について、再生可能エネルギー発電設備等を加えて土地所有者だけではなく、設置する発電設備に対しても適正に管理することを求めました。
第12条5項・6項及び7項の事前協議等については、近隣住民等と協議した場合に、「合意に達した場合に協議が終了したものとする」を5項に入れて明確にしました。これは、現在住民が問題にしている苗ケ島の大規模木質火力発電において、事業者である関電工は昨年の5月に井戸の掘削を突然始めて、隣接する住宅団地には一切のあいさつも説明もありませんでした。隣接住民が問題にしてはじめて個別に簡単なチラシを配りました。住民から事業の説明会を求めても応じず、前橋市に陳情してはじめて説明会を実施したのです。その後も住民からの不安や疑問に答えることなく、発電事業の建設着工を強行しています。合意に至らなければ住民の理解は得られず、周辺環境への影響は払拭されません。合意に重きを置くことが12条の中心点です。
第13条1項の(1)の事業計画の許可については、太陽光発電についての原案は屋根又は屋上と規定していますが、専用住宅・併用住宅の屋根又は屋上に設置する事業を除くと改め修正し、工場の屋根や畜産ハウスの屋根など大規模なものへの設置もあり、太陽光パネルの反射や反射熱など問題が起きていることから許可対象にしました。また、太陽光以外は2000キロワット未満を除くとしていますが、たとえば赤城大沼の小水力発電は235kwで騒音や振動、環境破壊が懸念されますので、河川法での規制があるとはいえ、対象にすべきです。風力発電やバイオマス発電についても周辺環境を保全できない問題も起きていることから許可対象にしました。同時に、売電を目的とする事業と規定すると利益を得る事業者になり、より明確になると考え、対象にすべきと修正しました。
第13条2項の(13)は、放射性物質等の拡散による生活環境に対する被害を防止するための措置を求め、木質火力発電などを想定したものを加筆しました。たとえば空間放射線量を測定し、国の基準が明確でなくとも環境保全の指導は行えます。
第14条1項(8)においても、バイオマス発電では木材を燃焼して蒸気タービンを回したり、風力発電でもプロペラを回転させるときに振動や低周波が大きな問題になっています。ヒートポンプによる振動低周波は裁判でも認定され、住民の環境悪化を招くことは明らかです。国でも問題にしており条例にしっかりと明記すべきと考えました。
従って許可基準等において太陽光の反射、騒音に加えて放射性物質の拡散、振動、低周波を加えて被害を防止するための措置を求めました。
第14条2項の(2)(3)(4)(6)(8)(9)は申請に係る工事施工者について高崎市の条例を参考に、法令違反を行った業者など不正や不誠実な工事施工者を排除するために、より厳格に規定しました。
第24条は審議会の委員については専門家だけではなく、公募による市民代表を加え、市民の意見が反映できるように加筆しました。
最後に、第29条で既設の土地所有者等に対して許可事業者と同じように、条例施行前の着工または事業を始めている場合も「すでにこの条例施行前の事業、条例施行の際にすでに着工している事業であって施行後に行われたものについて、自然環境若しくは景観を損ない、又は災害若しくは生活環境への被害が生ずるおそれがあると認めるときは当該土地所有者等に対し、相当の期限を定めて、再生可能エネルギー発電設備の除却、事業区域の原状回復その他違反を是正するために必要な措置をとることを求めることができる」と加筆修正して、強い行政指導ができるようにしました。
2項は土地所有者だけでなく発電事業者についても同様としました。
また、太陽光についても粕川町中ノ沢に設置工事中の大規模なものや宮城鼻毛石地区に設置中の大規模なものは、事前に情報収集してまたは土砂条例に基づく許可を受けていれば関係課に提出されている書類を入手して、環境破壊や災害の危険性についてしっかりと把握すべきと考えました。
どちらも、場合によっては緊急を要する危険性があることも想定されますので効力あるものにしました。
以上、10点に渡って加筆を行い、真に実効性のあるより良い条例になるように修正しました。各会派の議員の皆さんにおかれましては是非ご賛同いただきますようよろしくお願いいたしまして提案理由の説明といたします。

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