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議会報告

2016年12月・第4回前橋市議会定例会・本会議総括質問(高齢者介護の充実を)長谷川薫議員【2016/12/8】

2016年第4回定例会本会議総括質問・長谷川薫

1、特別養護老人ホームの増設

 最初に特別養護老人ホームの増設について質問します。ところが、市内の特別養護老人ホームの入所待機者は、今年5月1日現在で1,086人。国の介護保険改定で、2015年以降、特養入所を原則要介護3以上に限定した影響もあり、待機者は昨年よりも146人減っていますが、相変わらず特養ホームの不足は深刻であります。待機者うち、一人暮らしで家族介護が得られない方や病院や他の施設から退所を求められている方など緊急に入所が必要な待機者が359人にも及んでいます。
 このような状況にもかかわらず、前橋市の来年度までの3年間の第6期介護事業計画の増床数250だけでは待機者解消には程遠い状況です。
 高齢化が今後いっそう深刻化する中で、特養の増設は待ったなしの緊急課題です。
第6期事業計画に位置付けた残る72床を前橋駅北口再開発ビルへの整備を視野にまもなく公募する方針ですが、それにとどめず、今年度及び来年度中に、さらなる緊急増床計画を具体化して、遅くとも平成32年度までの第7期事業計画期間内に待機者ゼロを実現すべきだと思います。答弁を求めます。

●国は特養の整備を抑制し、有料老人ホームやサ高住で対応しようとしています。国の政策に追随すべきではありません。入所費用が高い有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅には容易には入所できない低所得の高齢者が大勢おられます。このような中で、費用の負担が比較的軽く、部屋代や食事代の軽減制度・補足給付があり、高齢者3人に一人の介護職員体制で24時間の介護やリハビリが受けられる社会福祉法人や行政が整備する特養ホームの入所が高齢者の切実な願いとなっています。介護給付費の増額による保険料アップのジレンマは、国庫支出金の負担増を国に求めて解決すべきです。
 市内の特養24施設・定員1705床分では足りない。増やしてほしいという市民の切実な要望に応えて、介護難民を増やさないためにも、東京の増設を強く求めておきます。

2、介護予防・日常生活支援総合事業の問題点
 
 次に新しい総合事業の問題点についてです。本市は、来年4月からの移行の準備をしていますが、これまで通り専門的なサービスを求めている要支援者に、十分な受け皿を用意することが求められています。介護事業者は昨年の4月から介護報酬が減額され、どこも経営が苦しくなっています。事業運営の厳しさから、介護職員への給与改善が進まず、介護職員不足も深刻です。本市では少なくとも「みなし指定の事業者」には現行介護予防給付の報酬単価を保障するとともに、事業者にとっても要支援者にとっても歓迎されない、無資格者による基準緩和の訪問・通所サービスAは原則として導入しないようにすべきです。
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 また、住民ボランティアなどによる多様なサービスBについては、介護保険サービスの代替としての位置づけではなく、現行相当サービスを土台として、ボランティアの特性である柔軟性・創造性を生かした社会資源として、介護予防や総合業以外の補完的補助的な役割を果たす役割として位置づけ育成すべきです。
 そして、総合事業の入り口である地域包括支援センターでは、総合事業メニュー以外の介護給付である福祉用具貸与や住宅改修などのサービスを保障するためにも、「要介護認定申請」を抑制しないようにすべきです。申請代行を行う居宅介護事業者も含め、基本チェックリストを安易に活用して「水際作戦」にならないように、くれぐれも総合事業に誘導しないよう、高齢者の暮らしの実態を十分把握して、要介護認定の申請意思を尊重すべきだと思います。それぞれ答弁を求めます。

●高齢者の介護サービスの選択が拡がるという認識は間違いです。国の総合事業の導入目的は、介護保険の範囲を大きく縮小し、自助・互助へと転換するもので介護保険制度の重大な改悪であります。しっかり認識すべきです。
介護給付費の抑制です。市は、無資格者やボランティアなどによる多様なサービスの拡大するのではなく、専門職員による現行相当サービスを基本として維持することを強く求めておきます。

3、介護保険料の引き下げ

 いま市内の高齢者約9万人が、年金から天引きされて徴収される介護保険料の負担の重さに苦しんでいます。
 市長は5年前の初当選の市長選挙で「老後の不安を減らします。年金削減や消費増税で不安が増す中、暮らしを守ります」と公約されました。ところが、当選直後の第5期計画で介護保険料を29.5%の引き上げで年間総額約10億円、昨年の4月第6期計画では再び19.9%も引上げ、約11億円の、6年間で52億円もの負担増を高齢者に求めました。
 今、厚労省も前橋市も、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる9年後の2025年には介護保険料の基準額は、現在の1.5倍の月額8500円、年間10万円をこえると推計しています。高齢者の負担の限界を超えて上昇し続けている保険料の問題は、介護保険制度の最大の問題点です。
  
 2014年から政府は給付費の5割の公費負担に加えて、別枠で公費を投入して市町村民税非課税世帯の低所得の高齢者・高齢者全体の3割の保険料の軽減割合を拡大する措置が法制化されました。ところが、消費税増税に伴う低所得者対策として位置づけていたこともあり、消費税の再増税を2年半延期しことを理由に、実際には軽減強化の大部分を延期し第1・2段階の7割軽減を先送りし、55%軽減にとどめています。
 消費税にその財源を頼ることなく、国や県が公費を投入して、当初案通り軽減するように国に強く求めるとともに、介護保険給付に占める公費負担の5割のうち、国25%と県12.5%の負担割合を大幅に拡大し、介護給付費の5割を保険料に依存する仕組みを抜本的に改革するように、国と県に求めるべきです。
 また、市独自の一般財源の計画的な繰り入れを行い、介護給付費等準備基金に積み立てて、少なくとも平成30年度からの第7期事業計画で保険料の引き上げをせず、低所得者の負担軽減に配慮しつつ、基準額をできる限り引き下げるべきです。

 また、本市には災害など法に基づく減免以外には保険料の軽減制度がありません。一般財源を繰り入れて、他市のように一定の要件の下で第2第・3段階の方の介護保険料を第1段階で徴収するなどの低所得者対象の独自減免制度を創設すべきです。答弁を求めます。

●いま全国の多くの自治体が、生計が困難な方の保険料減額制度を導入しています。例えば東京都板橋区や調布市では、第3段階の方でも、一人暮らしで年間収入155万円以下、預貯金350万円以下で本人の減額申請があれば、第1段階で徴収する制度をつくり、年間2万円近くの減免をしています。このような申請減免制度は全国の多くの自治体が実施しています。本市での導入を強く求めておきます。


4、利用料の市独自軽減
 

 次に、利用料軽減についてです。昨年2015年の8月から前年の合計所得160万円以上の高齢者が2割負担に。本市では利用者の約9%1600人が2割負担に。そして、低所得者の施設利用者の食費・部屋代補助.補足給付の要件が厳格化され、世帯分離しても戸籍上夫婦であれば配偶者が住民税課税の場合は対象外、預貯金が1000万円以上あれば対象にしないなどで、約120人が補助を受けられなくなり1年間で70万円もの負担増となりました。
在宅での介護サービスは「介護の必要性」ではなく「いくら払えるか」でサービスの内容と量を決めざるを得ない実態が前橋でも続いています。
 お金の心配をせずに、必要な介護を受けられるようにする利用料の低所得者軽減策が求められていいます。
 本市の利用料減免は法に基づく社会福祉法人の事業所の低所得者減免と風水害による減免だけですが、お隣の高崎市は生活保護水準以下で暮らす高齢者の利用料負担のさらなる半額減免制度を市独自で実施しており。このような自治体独自の利用料軽減は、すでに全国の3割近くが導入していいます。
 長い間保険料をきちんと払っていても、いざ要介護となった時に必要な介護サービスを受けられない方や、やむなく必要なサービスをやめたり、減らしたりする人がいないよう、本市独自の利用料軽減制度を創設すべきです。

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 また、介護サービスを受けている方は、ほかに慢性疾患による医療費負担などがある人がほとんどです。したがって、所得や預金によって、新たに2割負担となった高齢者や補足給付が受けられなくなった施設入所者についても、介護事業者やケアマネジャーと連携しながら、市独自で該当する高齢者の暮らしの実態を把握して、申請による市独自減免制度を導入すべきです。それぞれ答弁を求めます。

●高崎市と財政規模が、ほぼ同じ前橋市で利用料の低所得者軽減を制度化できないとは思えません。制度の早期創設を強く求めます。

5、国が進める介護保険制度改悪について 

 最後に、市長に質問します。 介護を社会保険方式で行っているのは、日本以外はドイツ、オランダ、韓国などほんのわずかな国だけです。手厚いサービスで老後の暮らしの安心を作り出している北欧諸国は税方式で国と自治体の責任で、サービスを提供しています。
 保険方式の前提は、保険料を納めた人が保険事故にあった場合、つまり要介護や要支援になった場合は、平等に給付を行うというのが、保険原理です。
 いま進められている新総合事業の要支援者切り捨てや次期改定で検討されている要介護1・2の切り捨てなどは、保険原理を否定するにも等しい制度改悪です。民間保険では保険事故に対して給付を拒否すれば保険詐欺となります。介護保険制度が前提とする、保険料を納めれば介護サービスを給付するという社会的合意を崩すことは国家的詐欺ではないでしょうか。

●介護保険制度の改悪に反対する多くの国民の世論の高まりの中で、厚労省が当初狙った次期事業計画に向けた要介護1・同2の生活援助の保険外し、車いすなど福祉用具レンタル料の負担増や利用料の3割負担の導入などは、今回は見送られました。手あたり次第に介護保険の負担増・給付減をすすめる安倍政権の道理のなさは明白です。政府が狙う改悪が実行されれば、必要な介護サービスから高齢者が締め出され、重症化が進行しかねません。介護する家族など担い手の負担がさらに重くなり、介護離職、老々介護などの事態がますます深刻化します。いまこそ、市長は、国に対して、介護保険制度の負担増と給付減を迫る制度改悪に反対の声をあげるべきです。

 このことを指摘して質問を終わります。


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