トップページへ 前のページへ 目次ページへ
議会報告

2017年第3回定例会決算反対討論・長谷川薫〜2017年9月27日【2017/10/20】

2017年第3回定例会決算反対討論【2017年9月27日・長谷川薫】

 私は、日本共産党前橋市議団を代表して、議案第100号から第103号、第105号および第108号から第111号、以上9件に対する反対討論を行います。

最初に、議案第100号、平成28年度前橋市一般会計決算についてです。

 反対理由の第1は、平和と暮らしをおびやかす安倍政権の政治に追随し、住民福祉の増進を責務とする地方自治を弱めていることです。

 わが党が、安保法制の廃止や憲法改正の中止さらには前橋上空でのオスプレイの飛行の中止、東電の柏崎刈羽原発の再稼働の中止などを求めましたが、市長はいずれも「国政にかかわる問題」との立場から明確な態度を示しませんでした。
 安倍政権による「異常な対米従属」の政治は、立憲主義という民主政治の大原則を破壊するものとなっています。
さらに北朝鮮の核実験やミサイル発射で米朝の軍事的緊張が高まっている今、政府は、日米同盟の強化や5兆2千億円の過去最大の防衛予算ではなく、米朝間の直接対話による平和的解決の橋渡しを果たすべきです。また、唯一の被爆国の日本政府が、国連加盟国の3分の2が参加して採択した「核兵器禁止条約」に背を向けていることに、国内外で驚きと落胆の声が上がっています。
 このような政治情勢だからこそ、「平和都市宣言」をしている前橋市の市長として、「二度と戦争をしない、過ちを繰り返さない、核兵器を使わせない」という宣言の立場に立ち、大多数の市民の願いである核廃絶と憲法9条擁護、戦争反対の立場に立つべきです。
 さらに、「異常な財界中心」の政治によって、人間らしい雇用や暮らしが根底から破壊されています。消費税の8%増税など庶民への重税、社会保障削減によって、所得の再分配機能が働かなくなっています。格差と貧困が拡大し、中間層の疲弊がすすみ、日本の社会と経済の持続的な発展を不可能にしています。また「原発利益共同体」の利潤追求を国民の安全の上に置く、原発再稼働への暴走が深刻な矛盾を引き起こしています。前橋市政が、暮らしを脅かす悪政に立ち向かわなければ、住民福祉の増進の自治体の責務を果たすことはできません。
反対理由の第2は、官民共同で策定したという前橋ビジョン『めぶく』は、前橋ビジョンとしてふさわしくないからです。
 
 昨年8月に決定した「前橋ビジョン・めぶく」に私たちは賛成できません。前橋市の100年先を見据えて、将来のあるべき方向性を示す言葉がどうして『めぶく』なのでしょうか。ビジョン策定にかかわった糸井重里氏は「前橋は全国的にも特徴がない。ゼロからの出発が必要」と強調し「前橋の大地の下には、たくさんの種がその時を待っている」「めぶかせることが必要だ」と強調しています。しかし、そうした発想は、前橋市民の営々とこれまで努力して築いてきた成果を事実上否定したものであります。明治維新以来、生糸の町として栄えた前橋市は、県庁所在地としても発展してきました。太平洋戦争末期の8月5日には米軍の前橋空襲によって535人が犠牲となり前橋の中心市街地のほとんどが消失しましたが、戦後、戦災復旧事業に官民共同で力を尽くしました。今、前橋が特徴のない街並みになったのは、市街地の多くを全国でもトップクラスの施行率となる区画整理事業を進めたからです。中心街をシャッター通りにしたのも、大型商業施設をダイハツ跡地や郊外の幹線道路沿いに次々と出店誘導してきたからではないでしょうか。
市当局は、前橋の総合計画よりも上位の理念・価値観が前橋ビジョンと位置付けています。次期第7次総合計画素案にも、『めぶく』が意識されて、将来都市像も抽象的でわかりにくい『新しい価値の創造』と記載されています。
将来の方向性は、決して「ゼロからの出発」と位置付けるのではなく、これまでの前橋市の各種施策を市民参加で真摯に総括してこそ、市民と行政そして事業者も心を一つにして、将来に向けて歩んでゆけるのではないでしょうか。 
全市民が共通認識をもって将来にわたって安心して暮らし続けられるまちづくりに臨めるようにするためにも、前橋ビジョンの再考を強く求めます。

反対理由の第3は、職員削減と民間活力導入を柱とする行革推進路線に賛成できないからです。

正規職員の削減と民間委託の拡大路線には賛成できません。前橋市行財政改革推進計画は、平成27年度から今年度までの3年間で正規職員を200人も削減しようとしています。本市の正規職員は、13年前の平成16年には3130人だったのが、今年の4月1日には514人も減り、2616人になっています。
逆に再任用職員が134人、嘱託職員が637人、臨時職員が184人となり、非正規職員が合わせて955人で、全職員の26.7%、4人に一人が非正規職員となっています。結果として正規職員の業務負担が過重となり、本来なら職員自ら行うべき計画策定や調査業務のほとんどを民間コンサル事業者に委ねるなどの影響が出ています。市役所や保育所などで市民に接する仕事を担う非常勤嘱託職員の賃金は月額16万円、臨時職員は時給890円で、いずれも期末手当の支給はありません。
公務労働を担う方々の賃金引き下げが、結局は民間の賃金引き下げにつながり、それを口実にまた公務員の給与も下がるという、負のスパイラルに陥っています。
 また行革計画では、今後2年間で、税証明や市民課証明交付窓口、斎場管理や職員研修業務も民間委託化し、市立保育所や共同調理場の民営化もさらに推進しようとしていますが、人件費は削減されても業務の効率化や市民サービス向上には到底つながりません。
 さらに、市当局は公共施設への指定管理者制度を外郭団体に限らず民間企業への指定もさらに拡大しようとしています。3年ないしは5年ごとに公募を繰り返す指定管理では、安定した運営やノウハウの蓄積、専門性の向上は不可能です。指定管理の施設で働く労働者の雇用条件も改善されていません。低賃金で市の仕事を担うワーキングプアを、市自らが大量に生み出す行革路線とは決別すべきです。

反対理由の第4は、十分な財源がありながら、貧困と格差の是正、高齢者や生活困窮者など市民の暮らしを応援する対策が不十分にとどまっていることです。
わが党が、子育て予算や高齢者支援策に予算を振り向けるよう要望すると、市当局は「地方交付税が減って財政が厳しい」「財調基金へっている」「地方債が増えている」などと危機感をあおって福祉や教育施策の充実に背を向けています。しかし、本市の平成28年度の一般会計は高崎市に次ぎ1400億円、主要5基金の残高は、昨年度末で過去最高の533億円となっており、支出の重点を福祉や教育の予算にシフトすることは十分可能です。

県都前橋創生プランは、本市の人口が現在の33万5千人から20年後の平成47年には29万3千人に4万2千人も減少すると推計していながら、子育て支援策を抜本的に充実しようとしないことも認めることはできません。
わが党は就学援助制度の対象世帯の拡大や国が認めているPTA会費やクラブ活動費なども給付対象にすること、入学準備金の支給日を現在の7月から3月に前倒しすることを求め続けていますが、一貫して背を向けています。
 小中学校の学校給食の完全無料化を実施した渋川市と同じく、本市予算の1%の約14億円で実現できる給食費の完全無料化も実施を決断せず、第2子からの保育料の無料化や高校卒業までの医療費の無料化にも背を向けています。
さらに今、教育現場では教員がいじめや不登校、発達障害児等の問題など、多くの困難を抱えています。教育委員会は教員の多忙化対策として5・6年生の35人学級化や各種の非正規教職員を配置して対応していますが、根本的対策となる30人以下学級制度実現への独自の努力を尽くさず、国や県の動向を見守る態度では教員や保護者の願いに応えることはできません。すべての児童生徒へのきめ細かな教育の実現と教師の負担軽減のためには、正規教職員の増員による小中全学年の30人学級制度が急務です。
また、教育委員会は、小規模校は切磋琢磨が弱くなるとか、人間関係が固定する、部活動が困難となるなどのデメリットを強調して小中学校の統廃合を進めていますが、教育予算削減のための統廃合を進めないよう求めておきます。 
また、わが党の度重なる指摘にもかかわらず、市収納課は生活困窮による市税や国保税滞納者への行き過ぎた滞納整理を改めようとしていません。1万件を超えた27年度の差押え件数よりも減ったとは言え、国保税と市税を合わせて7000件を超える昨年度の差押えは、全国の他の自治体と比較しても異常に突出した過酷な滞納処分の実施自治体となっており、全国の多くの弁護士・税理士・司法書士・学者研究者、さらには他の自治体担当者からも驚きの目で見られています。
 本来は、自力執行権の行使である差押えは、税徴収の最終手段であるにもかかわらず、本市収納課は税滞納者を収納課窓口に呼び出す手段として乱用しています。預貯金口座に振り込まれれば一般債権化するので給与も年金も禁止額は無視しても構わないという立場で、生活実態を十分把握しないまま残額をほぼゼロにするような差押えは、憲法25条が保障する市民の生存権を否定するあまりにも過酷で違法な行政処分であることは明らかです。このような税収納行政は直ちに改善し、徴収や換価の猶予、執行停止等、納税緩和制度で救済するとともに、自主納付できるよう関係各課で連携し、生活再建をていねいに支援すべきです。

さらに、わが党は、高齢者などの交通弱者支援の公共交通の充実を繰り返し求めてきました。市当は、交通不便地域運行の4路線のマイバスを城南地区や芳賀地区などへの増設と移動困難者支援のマイタクの運行改善、さらに「ふるさとバスやるんるんバス」のドアツードア方式への改善などの市民要望についても具体化を先送りしています。通院や買い物に日々苦労している高齢者の切実な要望に迅速に対応しない行政姿勢を認めることはできません。交通弱者支援策は国の『地方創生』の対象事業でもあり、国や県に積極的に財政支援を求め、早期に改善すべきです。
農業振興策も国の農政に追随しており不十分です。本市は、市街地から中山間地まで、自然環境を生かした豊富な農畜産物が生産され、生産者の顔が見える安心・安全・新鮮な農産物が消費者に喜ばれています。しかし、高齢化が進み、新規就農も十分促進されていません。農業支援策を認定農業者や集落営農組織だけではなく、家族農業も支援対象にして、農業機械導入や露地野菜の苗や肥料等の購入助成などを行うべきです。また、来年度から廃止されるコメの直接支払い交付金に代わる市独自の支援制度を創設すべきです。本市の約400?にも及ぶ遊休農地の有効活用は、農地中間管理機構による農地集積だけではなく、農産物の市独自の価格保障制度や後継者育成など農業を安定的に継続できる支援策を強め、家族農業も集落営農組織も共に共存できるようにすべきです。
また、農地の集積の対象とならない中山間地の農地を保全するためにも、グリーンツーリズム・スローシティーの取り組みを進める農家に対する支援を早急に具体化すべきです。

 さらに低所得者に快適で低廉な住宅を提供する市営住宅は、計画的な修繕が遅れ多くの住棟の老朽化が進んでいるために、空き部屋が管理戸数の2割、1000戸を超えて恒常化して増え続けています。 
高齢者の入居も増えており、コミュニティーの崩壊や退去時の高い修繕費の負担が困難となったり、階段を上がれなくなったり、トイレやふろ場への閉じ込め事故、建物周辺の樹木の剪定が困難となるなど、直ちに解決が求められる多くの問題が起きています。国の交付金を強く要求して大規模修繕を促進するとともに、市の市営住宅の維持管理予算を増額して、これらに対応すべきです。更にエレベーター設置が計画的に促進されていません。市営住宅を「終の棲家」としている入居者も増えているだけに、期限を切って計画的に設置すべきです。また、すでに県公社住宅は若年単身者の入居も認めています。国土交通省も入居基準を緩和しています。直ちに、空き部屋解消のためにも入居を認めるべきです。

また、本市の環境保全行政の弱さを指摘せざるを得ません。今、苗ヶ島町に建設中の関電工の6700㌗・7700世帯分の電力を供給できる大規模木質バイオマス火力発電計画については、「福島原発事故で放射性物質に汚染されている間伐材を年間8万トンも燃料として焼却すれば、周辺地域への2次汚染の恐れがある」「汚染水を地下浸透させれば水質汚染の恐れがある」と1万人を超える住民の白紙撤回を求める署名が市長に提出されました。ところが、市当局は住民の不安の声を受け止めず、開発を許可し、指定確認検査機関が出した建築確認許可の内容も詳細に把握せず、「関電工は自主的な環境保全基準を遵守すると述べている」と傍観者的な姿勢に終始しています。
工事が進み発電施設の稼働も目前ですが、市当局が住民に関電工との橋渡しをすると約束をしていた、関電工と周辺住民との「環境保全の覚書」の締結も、現時点では全く目途が立っていません。太陽光発電などを中心に自然エネルギー施設の設置を規制する条例を制定しましたが、当該火力発電施設による環境汚染に対する市民の不安に応えるものとはなっていません。

反対理由の第5は、人口が減少するのに、民間主導の大型再開発事業を推進するなど、住民合意のまちづくりが進められていません。

 前橋市は「立地適正化計画」を策定中です。将来人口の減少や少子高齢化の進行やひっ迫する市財政に対応するために、コンパクトな街づくりが必要であると言いながら、市が主導して大規模な民間事業者による市街地再開発事業が進んでいます。予測通りの需要がなければ事業が破綻しかねません。
 JR前橋駅北口の26階建ての高層複合ビル建設計画や日赤病院跡地の前橋版CCRC構想はすでに民間事業者を優先交渉権者に決定しています。国の交付金に加えて前橋市も北口再開発には10億円もの市財政を投入する方針です。CCRC構想にも補助金交付を進めようと検討していますが、前橋市民の特養入所待機者の解消につながる事業にすべきであり、周辺住民が期待する診療所など医療施設の整備を優先すべきです。
今後とも「立地適正化計画」で位置付けられた市内7地区の都市施設誘導区域において、住民の強い要望もないのに、国の地方創生事業に位置付けられる再開発事業に安易に手を上げて事業化を進めるべきではありません。
上武道路沿線の関根町に計画中の4カ所目の道の駅も、既存の市内3か所の温泉施設や農産物直売事業などと競合することは避けられません。吉岡町など市外の道の駅も近接しており、5?の川場の道の駅を超える北関東最大規模の7?道の駅を整備しても期待するほどの集客や収益効果は期待できないのではないでしょうか。民間事業者に事業構想を委ねていますが、過大な事業計画とならないように、事業規模や内容は市民の意見も聞きながら慎重に判断すべきです。

さらに、市内の区画整理事業は12地区も同時施行しているために、それぞれの事業地区が計画期限内に完了せず長期化しています。家屋移転も道路や下水道整備も円滑に進まず、年間約40億円の予算を計上しても、逆に長期間にわたって市民の生活の利便性が損なわれる状況が続いています。わが党が、これ以上の新規事業を増やさず現在施行中の事業を早期に完了すべきと主張しても、元総社落合地区の区画整理事業を新規に事業化したことは問題です。
市内各所の道路のボトルネックを解消するためには、用地買収方式、権利変換方式、代替え地の提案による等価交換などによる街路整備事業、市街地再開発事業などを選択し、出来る限り短期間で事業を完了し安全な道路通行を実現すべきです。
また、今後いっそう高齢化社会が進む本市においては、従来のような大室公園や荻窪公園など郊外型の大規模公園の新規整備を抑制し、歩いて行ける近隣公園のバリアアフリー化などを優先すべきです。高齢者が多い公園愛護会に管理の多くを依存するのではなく、維持管理予算を十分確保し、定期的に業者発注をして遊具の安全管理や樹木の剪定や除草や清掃を進めるべきです。国が規制緩合した都市公園の敷地利用を、民間資金活用の公園リフレッシュの事業と位置づけて、民間営利企業に提供することはやめるべきです。

また、わが党は、市民のスポーツ要求に応える施設整備を否定するものではありませんが、前橋総合運動公園や下増田サッカー場の整備規模が過大です。老朽化した市民プールや六供温水プールなど既存のスポーツ施設の改修や耐震化を優先すべきであり、強い市民要望もないなかで、全国規模の大会を誘致するなど都市間競争に勝つための施設整備を優先すべきではありません。

特に学校を含む公共施設の再編統合については、小規模校のデメリットを強調し、保健センターなど利活用についての住民合意が不十分なまま統廃合を進めていることは問題です。小学校区を基礎単位として形作られている現在のコミュニティーを崩壊すべきではありません。また、公共施設の再編については、できる限り市民に詳細に情報を公開し賛否の意見を聞くとともに、市民合意を前提に行政と市民が共同して慎重に結論を出すべきです。そして、コンパクトとネットワークなどを強調する国の地方創生の方針に前橋市は安易に追随せず、市民の声に耳を傾けて、住民参加のまちづくりを進めるべきです。

次に、議案第101号、平成28年度前橋市国民健康保険特別会計についてです。

高すぎる国保税の引き下げを願う加入者の要望に応えない事業運営を認めることはできません。
本市の国保税は、1世帯平均年間16万円、一人あたり10万円の負担であり、低所得者などにとって、もはや支払い限度を超える水準に来ています。このため加入者の8%、約3700世帯が保険料を滞納しており、そのうちの26%の970世帯余に短期証、5%の210世帯余に資格証が発行されています。全国的に正規の保険証がないために受診をためらい手遅れで死亡したり、病状が悪化するなど、加入者の命が脅かされる事態が進んでいます。本市においても例外ではありません。
 来年度から始まる国保運営の都道府県化では、自治体一般財源からの繰り入れが禁じられ、国費の投入が不十分な規模となれば、国保税のさらなる引き上げと医療抑制、徴収強化が心配されます。昨年の本市の国保特別会計は12億4千万円の黒字です。約13億円の国保基金を活用したり、他の多くの自治体のように一般会計を繰り入れればすれば、少なくとも加入者一人当たり年間1万円の引き下げは十分可能です。引き続き国に対し、総事業費の約23%まで引き下げられている国庫負担金を大幅に増やすよう強く求めるべきです。

次に議案第102号、平成28年度前橋市後期高齢者医療特別会計についてです。

国が低所得者の負担軽減策として制度の当初から行ってきた、低所得者の保険料を最大9割軽減している特例軽減を今年度から段階的に廃止する制度改悪が進められています。2年間で所得割の軽減を廃止し、被扶養者だった人の均等割も本則の5割に戻します。さらに次期消費税の増税の時に、国が低所得者への給付金支給や介護保険料の軽減策を行うことを口実として、均等割りで残っている特例軽減対象者についても世代との負担の公平化の名で段階的に廃止していく予定となっています。
 高齢者のくらしは、年金が減り続け、物価の高騰、消費税増税で大変苦しくなっています。これまでに保険料は4回も値上げされ、昨年度の平均保険料は月5344円です。これらの特例軽減がすべて廃止されれば、本市でも加入者4万6千人の約半数の方が負担増になってしまいます。もともと後期高齢者医療制度は、75歳以上の高齢者に差別医療を押し付けるという大きな問題のある制度であり、一日も早く廃止し、高齢者が安心して医療を受けることができる制度に転換すべきです。 

つぎに議案第103号、平成28年度前橋市競輪特別会計についてです。

わが党は、戦後復興期の財政難を打開するための緊急避難的な公営ギャンブルが、今もなお継続実施されていること自体に問題があるとの立場です。
本市の競輪事業は、寛仁親王牌などのグレードの高いレース開催時には車券売上が増えていますが、通常の本場開催のレースでは売り上げが低迷しており、場外車券の売り上げを伸ばさなければ経営赤字に追い込まれかねません。昨年度は2億円の一般会計への繰り出しが行われていますが、今後、ヤマダグリーンドームの老朽化に伴う維持管理費や場外発売の関連経費の負担増など事業運営の一層の困難も想定されます。
今、日本の成人の男性8.8%、女性1.8%、推計536万人がギャンブル依存症であり、経済破たんを引き起こし、家庭崩壊を招いて苦しんでいる方が増えています。その対策と治療・回復のための社会基盤づくりが課題になっているにもかかわらず、政府は「カジノ」を合法化するなど事態をさらに悪化させようとしています。本市もミッドナイト競輪などを開催し、車券の売り上げ増に力を入れていますが、市民の所得を吸い上げるギャンブル収入を自治体の財源とする競輪事業は、存廃を含めて議論する時期に来ていると指摘せざるをえません。


次に議案第105号、平成28年度前橋市介護保険特別会計についてです。
わずか月1万5千円の年からも強制的に天引きされる介護保険料の引き下げは、市民の切実な願いです。わが党は、一般会計からの繰り入れを行って介護保険料を引き下げるべきと求めましたが、一貫して背を向けたことは問題です。さらに、サービス利用限度額に対する利用割合は、平均6割程度で推移しています。「介護の必要性」ではなく「いくら払えるか」でサービスの内容を決めざるを得ない実態があり、「保険あって介護なし」の状況を根本的に変えていくことが必要です。利用料の3割負担の導入や、「補足給付」のさらなる縮小などは許せません。低所得者の利用料を減額・免除する制度をつくり、経済的な理由で介護を受けられない人をなくすことや施設の食費・居住費負担の軽減をすすめ、自己負担から保険給付へと戻すよう国に求めるべきです。市民が払える保険料にすることと、市独自の保険料・利用料の減免制度創設を求めます。
 また、第6期事業計画の250床の特養人ホームの増設計画が計画通り進められず、特別養護老人ホームの待機者が1086人にもなっています。さらに、一定所得の施設入所者の補足給付の打ち切りや特別養護老人ホームへの入所を原則「要介護3」以上としたために、在宅で暮らせない高齢者が行き場を失い、老人保健施設や費用負担の重い有料老人ホームやサービス付の高齢者住宅に入所を余儀なくされています。本市は、特養待機者ゼロにつながる増設計画に改め、要介護1.2の人も含め、介護難民にならないよう全力を上げるべきです。
昨年度に準備され、今年の4月から要支援1・2と認定された人などを保険給付からはずす介護予防・日常生活支援総合事業が始まりましたが、必要な介護サービスが使えず重度化を招くようなことは絶対あってはなりません。
本市は、このような高齢者の老後の暮らしを脅かし、生きる希望を奪うような制度改悪に追随せず国にその中止を求め、本市独自で出来る最大限の横出し上乗せサービスを実施すべきです。 

次に議案108号、平成28年度前橋用地先行取得事業特別会計および、議案第109号、同前橋市産業立地推進事業特別会計についてです。

事実上経営破綻し解散した前橋工業団地造成組合の資産と負債を受け継いだ前橋市が、累積した組合債の穴埋めに多額の市財政をつぎ込まざるを得なくなっています。総事業費約240億円でスタートしたローズタウンは当初の東西両地区1300戸の分譲計画は、結局、大幅に下回る400戸余りの分譲にとどまりました。そして今も、東地区に売却も賃貸のめどもない12.8?もの保有土地を抱えています。昨年度は特別会計に8億円の一般財源を組合債の元利償還のためにつぎ込みましたが、まだ19億円の償還金の残額を残しています。
このような過大な需要を見込んで見通しの甘い事業をスタートさせて、結局、事業破綻するような事業を繰り返してはならないと思います。
 いま人口が減少するのに、再び行政が主導し民間が事業展開する大規模な再開発事業が進められています。拠点地区の再開発なので国・県・市の補助金交付も得られるとアピールして事業提案をして公募し優先交渉権者を選定したのは前橋市です。ローズタウンのように、今後事業が円滑に進まなければ、再び市財政投入による支援を余儀なくされます。
都市間競争に安易に参加し、国の地方創生方針に追随するまちづくりはやめて、身の丈に合った、住民合意の再開発を進めるべきです。
また、企業立地促進条例によって、市内中小企業だけではなく、内部留保金を積み増して、資金力のある市外の大企業にまで各種助成を行い、企業誘致を促進する本市の産業政策には賛成できません。

最後に議案110号、平成28年度前橋市水道事業会計および議案111号、同前橋市下水道事業会計についてです。

経営努力によって水道料金の値上げを回避しているものの、市民生活に不可欠な飲み水に消費税を課税していることを認めることはできません。非課税とすべきです。本市の昨年度の1日平均給水量は13万1,000㎥で、そのうち約45%が地下水を水源とする自己水で、残り55%が利根川を水源とする群馬県企業局の県央第一水道と県央第二水道から受水しています。水需要が減少しているにもかかわらず県央水道からの受水を続けて本市の豊かな地下水の利用を抑制していることは税金の無駄遣いであります。本市は昨年度、県に対して受水料を17億円も支払っています。県央第二水道の受水単価が今年度から5円引き下がり年間4200万負担軽減が見込まれるものの、県央水道の受水単価は本市の自己水の2倍も高くなっており、今まで通り高い水道を県から買うことは本市の水道経営を困難にし、今後の水道料金の値上げにつながりかねません。他の受水自治体とともに群馬県と交渉し、受水契約を見直して、自己水比率を高めるべきです。
また、生活困窮者、生活保護世帯を含めた水道料金の滞納世帯まで機械的に給水停止を行っていることは問題です。今、貧困と格差が広がって暮らしが大変苦しくなっている中で、セーフティーネットである水道まで止めてしまうことは、餓死者や孤独死を生む原因になりかねません。ライフラインである水道水の給水停止は、滞納世帯の生活実態を十分把握した上で、払う能力がありながら悪意で払わない人に限定すべきです。同時に、低所得者対象の上下水道料金の減免制度を創設するとともに、福祉部局とも連携を深め水道料金滞納者の支援策を講じる立場に立つようを求めます。
また、水道施設の管理を民間営利企業に委託していることは、安全性確保の上でも、水道技術の継承の上でも認めることはできません。命にかかわる水道水を安全かつ安定的に供給するという水道事業の性格を考えても、本市による完全な直営に戻すべきです。

以上、9議案に対する反対理由を申し述べまして、反対討論と致します。

ページのトップへ