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議会報告

第4回定例市議会 中道浪子 議案第132号第七次前橋市総合計画基本構想についての反対討論【2017/12/21】


私は、日本共産党前橋市議団を代表して、議案第132号第七次前橋市総合計画基本構想について反対の討論を行います。以下10項目にわたり申し述べます。

反対の理由の第一は、総合計画の柱であるビジョンと将来都市像が抽象的でわかりにくく、前橋市政のめざす方向性が示されていない計画だからです。
地方自治法第1条は、地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることが最大の責務と定められています。
従って、総合計画は、だれもが希望をもって安心して暮らせるまちづくりが目標とならなければなりません。ところが、本市の総合計画は、めざすまちづくりの基本理念・ビジョンを「めぶく」としていますが、昨年8月に官民で行った都市魅力アップ共創事業を発表した際に、ドイツのコンサルタント会社や前橋出身の実業家・田中仁氏や、コピーライターの糸井重里氏などが主張した、前橋ビジョン「めぶく」を議会や市当局に慎重な検討を求めず決めたことは問題です。
「めぶく」とは、何もないから新しくめぶかせるという印象を受ける理念で、戦後72年間の前橋市民が営々と築いてきた営みを否定するものであり、前橋市総合計画に掲げるビジョンとしてはふさわしくありません。
代表質問、総括質問、各常任委員会などで他会派からも「わかりにくい」、「理解しにくい」、「前橋らしさについてもよくわからない」などの意見が多数出されたのは当然です。
また、将来都市像を「新しい価値の創造都市・前橋」と位置付けておりますが、市長は、高齢者が杖を使わずに歩けるようになったのも、子どもたちが今までより早く走れるようになったのも、新しい価値などと説明しました。
このような福祉や教育の現場で行われている日々の努力は、常に新しい価値を生み出し続けており、あえて10年間で新しい価値を創造するということを、ことさら強調することは意味のないことです。本市の前計画の「生命都市いきいき前橋」の方がわかりやすいと思います。

第二は、人口減少や少子高齢化の原因も示さず、それらを乗り越えようとする施策も示さない無責任な計画です。
計画では、依然として少子高齢化が進むとともに、これまで経験したことのない
人口減少が目前に迫っており、低成長時代を前提とした自治体経営が求められていると述べています。しかし、その原因は明らかにされていません。
今、若者の2人に1人が非正規雇用で、低賃金・不安定雇用です。正社員は、異常な長時間労働を強いられ、労働者を使い捨てにする「ブラック企業」は若者たちの未来と希望を奪っているからです。安定した雇用がなければ、安心して結婚し、子どもを産み育てることも出来ません。非正規雇用の正社員化への支援やブラック企業の根絶策等、本市独自の方針を明確にし、政府の労働法制の規制緩和に異議を上げるべきです。
また、教育費や子育てに経済的負担が重く、安心して子どもを産み育てられないのに、その具体策が示されていないからです。

第三は、正規職員を減らし、公務を民間にゆだね、公共施設を営利企業の儲けの場に提供する行財政改革は問題です。
これまでも行財政改革の推進と言いながら、本市では正職員を削減して、職員の
3人に1人が非正規職員となっています。
その結果、最も安全性が求められる水道事業や学校給食を民間営利企業に委託し、温泉施設や道の駅、児童遊園、前橋駅前の駐車場などの施設に指定管理者制度を導入し、営利企業に維持管理を委ねています。
また、小中学校の統廃合を進めるとともに、市立保育所の民営化も進めています。「民でできることは民に任せる」と言う方針を推進すれば、官制ワーキングプア―を増し、市民サービスの質が低下し、現場を把握できなくなった行政運営は一層市民ニーズに応えられなくなります。
さらに、本市が行う一定規模以上の公共事業は、民間資金の活用策であるPPPやPFI手法を導入することを強力に進めています。
すでに、日赤跡地の利活用によるCCRC構想も、上武道路沿線の市内4か所目の道駅、JR前橋駅北口の26階建て複合ビル再開発事業も民間営利企業に事実上丸投げし、多額の財政投入を進めています。
当局は、資金力のある開発事業者が、初期投資を行うことで、本市の財政負担が少なくなると説明していますが、企業はその後の事業運営によって利益を上げて初期投資の回収を行うのです。
公共施設が営利企業の儲けの場とされ、公共の福祉を最優先すべき施設の運営目的がゆがめられます。
また、市営住宅の建て替え事業が迫られていますが、PFI手法を検討しています。市営住宅はすでに維持管理は県住宅供給公社に委託しているので、建設だけで受注企業は利益を上げなければなりません。そうなれば、市内企業が排除されかねません。民間の知恵を借りることと、営利企業に公共の場を提供することとは、はっきり区別すべきでありPPPやPFI路線はやめるべきです。

第四は、総合計画には、市民要望に応える事業と目標を明確に掲げるべきです。
今、本市への施策の充実を求める各分野の市民要望が山積しています。しかし、この計画にはほとんどの事業が明確に示されておりません。
本来なら、総合計画を策定するために、市民要望が選択できる市民アンケートを実施するとともに、市民の中に各分野別にワーキンググループなどの論議を経て市民要望をまとめあげ、今後10年間で市民要望がどのように進展するのかを分かりやすい計画にすることが求められています。
ところが、当局は、3,000人余りの市民アンケートを実施したと言いますが、隔年恒例で行っている市民アンケートでは市民要望を十分把握したとはいえません。
また、総合計画は、少子化と高齢化が同時に進行し、合計特殊出生率は平成27年には1.45となっており、人口の維持に必要とされる2.07を大きく下回る一方で、平成37年には団塊の世代が75歳以上となることから介護や医療ニーズが増加することが懸念されていると述べています。それにもかかわらず、総合計画には、将来の少子高齢化に対する具体策が盛り込まれておらず問題です。
当然ですが、わが党が求めた市民要望である特養老人ホームの千人もの待機者解消をめざす増設計画や、いじめや不登校・教員の多忙化をなくし、全ての子どもたちに行き届いた教育実現のための小中全学年の30人学級化、保育料や学校給食費の無料化、地域経済の活性化策である住宅や商店のリフォーム助成、車優先から自転車や歩行者優先の道路整備への転換、市営住宅の2割・千戸の空き部屋解消、田口町の水道水源汚染の解消対策、木質バイオマス発電所による環境破壊、高すぎる国保税の引下げ、生存権を脅かす、行き過ぎた税滞納整理への改善、平和資料館の開設や平和行政の充実策など市民の願いに応え、希望と展望が持てる総合計画にすべきです。

第五は、国の都市基盤整備の誘導策に安易に従うまちづくりは問題です。

本市の中心市街地衰退の最大の原因は、大型店の郊外出店を放任し、けやきウォークや南部拠点地区、旧前工跡地などへの商業施設の出店誘導を優先してきたことです。
今後においても、日赤移転跡地や新道の駅にも物販機能を強めていることはさらに大きな影響をもたらします。
中心街で一過性のイベントをいくら繰り返しても、賑わいは取り戻せません。郊外立地の大型店は野放し状態で、さらに中心街と新前橋の都市機能誘導区域に大型店を誘導しようとしています。
大型店の誘導策をキッパリやめなければ、シャッター通りと呼ばれる中心街の各個店の営業は好転せず、中心市街地の活性化策は無駄な投資になってしまいます。
また、住民が公共交通や自転車などを利用して公共施設や医療・福祉施設、商業施設などにアクセスしやすいコンパクトなまちをつくることは今後のまちづくりに不可欠です。しかし、政府の人口減少対策として打ち出した「地方創生事業」は、立地適正化計画として、新たな大型公共事業を推進する危険性を持っています。
また、本市のまちづくり手法である区画整理事業は、10か所もの同時施工により、事業の長期化と高い減歩率によって、地権者にも市民にも負担と日常生活上の不便さをもたらし、決して、住民本位のまちづくりの手法とは言えません。
しかも、事業完了後の評価額も高くならず、幹線道路整備を最大の目的とし、多額の税金を投入する区画整理は、人口減少、少子高齢化社会を迎える今こそ、新規事業を抑制し、生活道路改修への転換を図るべきで、時代に合っていないことは明らかです。

第六は、財政が苦しいといいながら、トップダウンで進める大規模開発優先は問題です。
本市が進めている新道の駅構想は、上武道沿線に7?もの膨大な整備計画です。
すでに、優先交渉権者は、ヤマトOCOGグループに決まり、事業の提案も提出されています。それによれば、年間100万人の誘客をめざし、道路利用サービス機能のほかに、農産物直売所をはじめ加工施設,地産レストラン,バーべキュー・グランピング施設、野外ステージ、温浴施設、コンビニなどによる施設規模は9,200?もの大規模な施設整備が予定されています。
市は、新道の駅を整備するにあたり、募集要項で農業と食を核にした官民連携の取り組みと自然や観光など地域資源を取り入れ、赤城を味わい赤城を体験する
としましたが、新道の駅での多彩な取り組みが実施されることになれば、赤城山観光やスローシティ―の取り組みへの影響、市内3つの既存の道の駅への影響などが心配されます。同様に、前橋駅北口の26階建て複合ビル再開発事業や、日赤跡地のCCRC構想についても、国が進める民間丸投げの大規模開発です。
財政が厳しいとの理由から、元気21の子育てプレイルームを有料化しながら、トップダウンで進める大規模開発優先は問題であり、事業計画を見直し、身の丈に合った施設規模に縮小・変更すべきです。
なお、新年度の機構改革が提起され、新道の駅事業は政策部・政策推進課から建設部道路建設課、用地・道の駅推進室に改変されますが、道の駅は本市の観光振興や、地域経済にも大きな役割を持つものであり、今後についても様々な研究や、JAや地元農家などとの連携が必要となるとともに、店舗の出店や新製品の開発なども重要な施策となります。従って、事業者まかせにせず、市としてもこれまで通り新道の駅の所管は政策部にとどめ、積極的に責任をもってかかわる必要があります。

第七は、市民に自助・自立を強調し、企業にはビジネスチャンスを提供する計画は問題です。
市長は市政運営に地域経営を強調し、計画に掲げられたすべての施策推進について、「市民、企業・団体、行政」の役割を明確に区別して示しているところは、大変具体的です。同時に、市民には受益者負担の立場からの自助や互助・共助を求め、企業には公的分野への進出・ビジネスチャンスの可能性を示し、「官民協働」の名のもとに、市行政はその不足分を担うという責任を最小とする全国でも異例な計画となっております。
そもそも、企業は利潤追求を放棄してまで、社会貢献を優先することはありません。製造業でも大型商業施設でも、赤字経営となれば撤退することは本市でも経験済みです。
企業を過大に評価し期待して、市政運営をすることは誤りです。自治体の最大の責務である「住民の福祉の増進を図る」ために全力を尽くしたうえで、市民や企業に協力を求める、あるいは企業や団体の独創的なアイディアも大事にする必要性は認めますが、最も大事にしなければならない自治体の基本は、市民の意見に耳を傾けて、市民要望にできる限り応える態度ではないでしょうか。

第八は、中小企業振興策と農業振興策の具体的な支援策が明確になっていない
ことです。

本市では、相も変わらず、外需頼み、呼び込み型の経済対策では地域経済の真の活性化にはつながりません。
市外の大手ゼネコンが受注する大型開発や大企業呼び込み型の産業振興策ではなく、市内の90%以上を占める中小企業の仕事と雇用が増え、お金が地域に循環する振興策が必要です。東大阪市や東京都墨田区では、総合計画の重点政策に中小企業・零細企業振興策を掲げており、数多くの中小・零細企業が高い技術力と多種多様なモノづくりで活躍しています。本市の総合計画には、住宅・商店リニューアル助成事業など具体的な施策がありません。
法人関連税収を増やす中心を担うのは、従業員5人以下の小規模企業者である町工場のような製造業や商店街、技能職、市場の仲卸業者、そして、若者が立ち上げるベンチャー企業などです。事業承継や安定的な雇用の確保などの中小企業振興策を総合計画に明確に掲げるべきです。
農業振興策については、この間、経営耕地面積や総産出額、農業所得はともに減少し続け、厳しい経営を余儀なくされ、担い手も減り高齢化が一層進んでいます。
ところが政府は、農産物の自由化に道を開き、農業を壊滅的打撃に追い込むTPPや日欧EPA及び日米FTAなどの経済連携協定を推進し、来年度からコメの生産調整に伴う直接支払交付金の廃止を決めています。
本来なら本市の農業産出額の中心を占める酪農や肥育、養豚などが大きな打撃を受ける国の自由化政策に反対の立場を計画に明示すべきなのに、全く表明がされておりません。
具体的には、市独自のコメも含めた農畜産物の価格保障制度の充実や国の新規就農者への給付金制度の上乗せ支給などの支援方針、また、遊休農地対策として農地の流動化支援だけでなく、小規模農家にも農業機械の導入助成を行うとともに、反当りの収量が少ない中山間地の営農支援策として、収穫量に応じた作物の販売額の補てんや種苗購入費などの助成を計画に盛り込むべきです。

第九は、個人情報漏えいの危険性あるマイナンバーやICTなどの利用拡大はやめるべきです。
市長説明では、各事業の推進に当たっては、ICT(情報通信技術)を積極的に利活用することにより、市民サービスの提供の迅速化、利便性の向上を図っていくと述べていますが、福祉の向上に利用することは否定するものではありません。
しかし、企業の利益追求のために使われ、市民負担が増えたり、市民の個人情報の漏えいなど必ず危険が付きまといます。
本市ではすでに多額の予算をかけて、小中学校の児童生徒へのICT教育であるタブレット授業を進めていますが、現場の教員からはIT教育とかタブレットの活用は、うまくできる人が教員として登用される傾向が出ていることや、IT教育より30人学級を優先にした方が行き届いた教育が実現できるという声も上がっています。
また、東京大学とのビッグデーター連携協定が結ばれましたが、ビッグデーターの活用について、市民の福祉の増進など、市民要望に応えるものに活用されるのであれば認められますが、行革推進で市民の願いなどが削減されるような活用はやめるべきです。
また、マイナンバー制度の国の最大の普及目的は、徴税強化と社会保障費抑制の狙いであり、特に高齢者や障害者がマイタクの乗車に利用するマイナンバーカードは問題でやめるべきです。
本市は、こうした国の推進策に対して、全国で初めてと率先して手を上げることは、恥ずかしいことです。
マイタクの乗車にマイナンバーカードを活用させることは、日常的に高齢者や障害者がマイナンバーカードを持ち歩くことになり、紛失や盗難などの心配は避けられず大変危険なことです。
個人情報漏えいの危険性あるマイナンバーカードやICTなどの利用拡大はやめるべきです。

第十は、総合計画には平和に関する記述や、国政についての態度表明が何もないことです。
安倍自公政権は、秘密保護法から、集団的自衛権行使容認、安保法制いわゆる戦
争法の強行など立憲主義を無視し、数の力で強行採決を重ね、憲法尊重擁護義務を負う自らの責任を放棄して、「海外で戦争する国づくり」へ暴走を続けています。前橋市は、太平洋戦争で多くの市民が戦場で犠牲になり、本市の市街地でも戦火に焼け出され、多くの市民の命が奪われました。二度と再び戦争は起こしてはならない決意が計画に盛り込まれることが強く求められています。
ところが、総合計画には、「平和都市宣言」をしている前橋市として、「憲法を守り生かして平和であってこそ安心して暮らせるまちづくりができる」などの記述が全くありません。平和資料館の開設や平和行政の充実策など盛り込む必要があるのに、そうした記述もありません。平和を求める市民の声に応えようとする市長の姿勢が見えないのは問題です。

以上、第七次前橋市総合計画基本構想について、10項目の問題点を申し述べまして反対の討論といたします。

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