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議会報告

2018年第1回定例会本会議総括質問・長谷川薫議員(税収納行政の改善【違法な差押えの中止と滞納整理のガイドラインの策定】・交通弱者支援の公共交通の改善充実策)【2018/3/21】

2018年第1回定例会総括質問(長谷川薫・25分)

1、税収納行政の改善について     

(1)違法な滞納整理処分の中止

 ?はじめに、税収納行政の改善について質問します。前橋地裁は、1月31日と2月28日に、前橋市長が行った差押え処分を違法と断定し、差押えた金額の全額返済と国家賠償法にもとづく慰謝料の支払いを命じる民事訴訟の判決を下しました。
 判決文には、市長の責任を次のように厳しく指摘しています。
「市税の賦課徴収権限を有している前橋市長には、給料等が受給者の預貯金口座に振り込まれた場合であっても、国税徴収法76条が受給者の最低限の生活を維持するために必要な費用等に相当する一定の金額について差押えを禁止した趣旨を出来る限り尊重し、差押え禁止の趣旨を没却する脱法的な差押え処分を行ってはならないという職務上の注意義務を怠っていた。本件差押え処分は、実質的に給料自体を差押えることを意図したものであり、脱法的な差押え処分として違法である」と述べています。

 これまで、わが党が、同様の事実を示して本市の行き過ぎた差押えの改善を求めても、市長も財務部長・収納課長も「違法な滞納処分は一切していない。最高裁判例の通り、給与も年金もいったん預金口座に振り込まれれば、その属性を継承せず一般金銭債権化するので、差押え金額には制限がない」などと述べて違法な差押え処分を正当化してきたのです。
 当局は今回の地裁判決を教訓にして、今後、このような違法な滞納処分を根絶する意思があるのかどうか、明確な答弁を求めます。

 ?わが党は、市収納課職員の自主財源を確保するための日々の努力を否定しているものではありません。しかし、税金の滞納整理を進めるにあたって、国税徴収法や通達などを無視して、滞納処分の最後の強制手段である差押えを濫用し、税滞納者の生活や営業を脅かすような違法な滞納処分を続けてはならないと思います。すでに、本市の1年間の差押え件数は1万件から7000千件で推移しており、全国的にも最もきびしい税金の取り立てをしている自治体が前橋市と言われています。
 公売や換価手続きに時間がかかる不動産や動産よりも、預金口座の差押えの方が、迅速に確実に収納できると認識し実行している結果ではないでしょうか。

 税滞納者の生活実態を十分把握しないまま、給与や年金の振り込み日を狙った預貯金口座を中心とした滞納整理は直ちに改善すべきです。答弁を求めます。

(2)滞納整理のガイドラインの策定

 次に、滞納整理のガイドラインの策定です。収納課の幹部職員のみなさんは、「今回の判決を重く受け止めている」と述べています。
そうであるならば、私は、弁護士や税理士など有識者にも参加を要請して、前橋市の税金の滞納整理事務を検証する検討委員会を市長自らが立ち上げて、どこに問題があるのか、改善方向を明確にすることが必要ではないでしょうか。
平成28年の外部包括監査でも、収納課に税滞納整理のマニュアルがないのは問題と指摘し、その策定の必要性を指摘しています。
 そこで、今回の地裁判決を教訓に、例えば、「分納を誠実に履行しているときは、差押えを猶予する。預金履歴から差押え禁止財産の入金が確認できた場合は、国税徴収法等に規定する差押え禁止相当額を控除した額の差押えにとどめる。差押えに係る預金原資が差押え禁止財産であることの識別が可能と認められ差押えが適当でないと判断できた場合には、直ちに差し押さえを解除もしくは取り消す」などの滞納整理のガイドラインを策定すべきです。答弁を求めます。

(2)税滞納者の生活再建の支援充実

 ?次に、税滞納者の生活再建の支援策についてです。今、格差と貧困の拡大が
社会問題となっています。市民の誰もが様々な生活上の事情を抱え、急にお金が必要になって税金を滞納することが起こりうるのです。
当然、地方税法などもこれらの事態に配慮し、担税力のない税滞納者には執行停止などの救済策が用意されています。
 ところが、本市収納課は、納税相談に出向いた方が生活困窮であっても、いかなる理由があっても、滞納は悪と決めつけ、厳しく取り立てています。決まって、期日内納入している大多数の健全な納税者との公平性を強調し、上から目線で徴税吏員としての強権力で接する態度では、市行政への信頼も失いかねません。 
 共産党市議団には、今もなお「滞納している税金の一括納付を迫られた」「給料が振り込まれた預金口座が差し押さえられて家賃も払えない」など、市収納課による一方的差押など厳しい徴収によって、憲法25条が保障する最低限の生活すら脅かされた市民からの深刻な相談が頻繁に寄せられています。
 徴税が必要であっても、悪意のない税滞納者には徴収の猶予や換価の猶 予など納税緩和制度で救済し、市民の生活の困りごとを解決し、生活再建を支援しながら、自主納付を実現する本来の税収納行政に転換すべきです。見解を。

 ?わが党が視察した滋賀県野洲市では、税金滞納は「市民からのSOS」として捉え、税金を払いたくても払えない人こそ行政が手を差しのべるべき人だと位置づけて、ていねいな納税相談などをおこない、滞納者の自立を支援しています。
 野洲市長は、「税金を納めてもらう以前に市民の生活が健全でなければならない。市民の生活を壊してまで滞納整理をするのは本末転倒だ。生活を崩さず納付してもらうのが原理原則。差押による一時的な徴収よりも、生活再建の支援をして納税していただく方が結果として納税額も大きくなり行政への信頼も強まる」と述べています。
 そうした理念を条例化した「野洲市くらし支えあい条例」では、「市は、その組織及び機能の全てを挙げて生活困窮者等の発見に努め、発見したときは、諸課題の解決及び生活再建を図るための相談に応じ、情報提供と助言、その他の支援を行う」と明確に規定しています。
 9人の専任職員体制で市民生活相談課を立ち上げ、納税相談だけではなく、借金などの法律相談や就労支援、介護・福祉分野の相談にも応じ、弁護士などとも連携を図りながら生活再建の支援を全力で行っています。就労相談で就職を決め、滞納していた税金を早期完納するケースも増えているそうです。このような野洲市に学び、本市においても税滞納者の相談をきっかけとして、ワンストップで支えるための総合市民相談窓口を創設すべきです。答弁を求めます。

【提言】行政の本来のあるべき姿は、市民のいのちや暮らしを守ることです。差押えで生存権を脅かすような滞納処分は、行政を逸脱しています。税金や公共料金を滞納している市民を安易に悪質と決めつけず、野洲市のように滞納は市民からの暮らしのSOSと受け止めて、生活支援を強め、執行停止などの納税緩和制度も活用し、「苦しい時に助けてくれる」という行政への信頼を高め、自主納付に結び付ける税収納行政への転換を強く求めておきます。困っている市民をより困らせないで、優しい手をさしのべる市政への転換を強く求めておきます。

2、交通弱者支援の公共交通の充実策について     

(1)デマンド交通など地域内交通の充実策       

 ?次に、デマンド交通など地域内交通の充実策について質問します。わが党は交通不便地域の移動支援策の充実などを繰り返し議会で取り上げてきました。これに対して当局は、「今年度中に作成する地域交通網形成計画で、総合的に検討したい」と答弁してきました。ところが、議会に示された同計画(案)には、「本計画は、並行して策定を進めている立地適正化計画と相互に連携することで、公共交通軸を中心としたコンパクトなまちづくりを実現し、中心市街地の土地利用増進や魅力ある都市空間整備による賑わい創出など集約的都市構造を図るもの」などと記載されており、中心街や地域の拠点間を結ぶ交通ネットワークの強調だけで、市民が強く求めている高齢者を中心とした交通不便地域を運行するデマンド交通や循環マイバスなどをさらに充実させる具体的な方針がありません。これでは、計画が不十分なのではないでしょうか。どのように考えておられるのか、伺います。

 ?次に城南地域では、16町の自治会が中心となって自主的に企業や住民に資金協力を呼び掛けてデマンド相乗りタクシーを運行しようとしています。高齢者の日常の通院や買い物の足を確保するために、やむにやまれず決断したとのことであります。バス路線があっても運行本数が少ないなどの理由から交通不便地区となっている地域は、城南地区だけではなく、芳賀地区や総社清里地区など多くの地域に広がっています。市街地を拡散させた前橋市の都市計画が高齢化の進展で、現在の状況を作り出したのですから、城南地区にも富士見や大胡・宮城・粕川地区に続いて、早急に市の責任でデマンド交通を運行すべきです。見解を。


 次に、新規マイバス路線の増設についてです。東西南北で運行しているコミュニティーバス・循環マイバスは、乗車料金100円で、経営的には困難を伴っていますが、路線バスの補完交通として交通弱者に大変喜ばれています。路線バスやデマンド交通との調整を図り接続も考慮して、住民の要望も聞きながら、交通不便地域に新規マイバス路線を増設すべきと思いますが、見解を。
※バス事業者に運行を委託すれば、経営に苦しむ事業者の支援にも結び付くのではないでしょうか。ぜひ、早期に具体化していただきたいと思います。
(3)マイタクの改善

 次に、マイタクについてです。1日に600人もの利用者がいるマイタクも、遠距離利用をすれば重い負担があるために、郊外に住む方の利用が広がっていません。検討会では、年間利用回数の抑制も議論されていますが、抑制せず、交通弱者が制度を公平に利用できるように、市の支援額の増額などの改善が必要です。答弁を求めます。

 ※なお、マイタクについてはマイナンバーカードによる利用を強力に誘導していることは大きな問題です。マイナンバーカードは、税金の徴収強化と社会保障給付の抑制が制度導入を急いだ政府の最大の目的であり、この制度に異議を唱えている市民も少なくありません。政府は様々な個人情報をカードに集約しようとしているときに、タブレットやソフトの開発が国の全額補助であったとは言え、政府の誘導策に乗って、マイナンバー普及のトップランナーになって、高齢者などの交通弱者事業に積極導入すること問題です。マイナンバーカードによる利用に1本化するという方針は当面は撤回されましたが、こうした方針は法の下の平等(憲法14条)にも思想信条の自由(憲法19条)、公務員は全体の奉仕者(憲法15条2項)にも反する施策です。マイタクの効率化を考えるなら、国や県にも補助金交付を求めて、マイタク独自のICカードを作成すべきです。強く申し上げます。

(4)路線バスの改善について
 
 最後に、路線バスの改善についてです。自家用車依存の本市は、路線バスの利用者は市民の3%まで落ち込んでいます。利用者増を図るためには、バス事業者へのこれまで以上の支援が必要です。各事業者間のバス運行ダイヤの調整による効率的な運行の確保やバス停留所に各社別に掲示されている時刻表の統一化、バス停に高齢者が利用しやすい椅子の設置、さらには、たとえば月1回のバス利用促進デイの設定・呼びかけなどを市が強力に推進すべきと思いますが、答弁を求めます。

【提言】これまでの本市が進めた無秩序な郊外型開発と大型商業施設の出店の放任、さらには、マイカー優先・幹線道路整備偏重の施策の結果が、高齢化の急速な進展とともに交通弱者急増させていると思います。
提案された新年度予算を見ても、バス関係に約3億、マイタクに約1億7千万円という公共交通の予算は昨年度並みです。市民が安心して豊かな生活と人生を享受するためには、交通・移動の権利を保障することが欠かせません。憲法が保障した居住・移転の自由(第22条)、生存権(第25条)、幸福追求権(第13条)など関連する人権を集合した新しい人権・交通・移動の権利を守る立場から、また高齢化社会に欠くことのできない財源として、公共交通予算をさらに増額して、住民の足を守り、人間を優先した施策を強めるよう要望します。
以上で終わります。

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