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議会報告

2018年第1回定例会教育福祉常任委員会質問・長谷川薫議員(小学校の英語教育・国民健康保険事業【国保税の引き下げ】・第7期介護保険事業【介護保険料の引き上げの中止、特別養護老人ホームの増設、総合事業の問題点】・生活保護行政(保護基準の引き下げ・制度の周知と利用、申請権の保障)【2018/3/21】

2018年第1回・教育福祉常任委員会質問(長谷川薫)

1、小学校における英語の教科化について

 ?文科省は、グローバル化の進展や東京オリンピックなどを控え、国内でも世界に出てもますます英語力が必要になっていると強調し、このような時代的な要請に応えて小学生にも英語教育が重要との観点から、学習指導要領が改定されました。
新年度の4月から、ゲームに親しむ「外国語活動」を3・4年生に引き下げ週1時間(各35分)、5・6年生は英語を「教科」に位置づけて週2時間(各45分)に授業時間も増やされ、評価も行われます。
 英語の教員免許を持たない小学校教員が大多数の下で、文科省が求める英語教育ができるのかという根本問題や、3年から6年の各学年で週1時間の道徳とともに増える英語の授業時間をどう確保するのか、教員の多忙感がさらに深刻化するのではないか、子どもへの負担が増えないか等、課題が山積しています。教育委員会は、学校現場での担任への指導計画や授業準備などをどのように支援されるのか。答弁を求めます。

 ?大学の英語学の教授など学会の多くの方は、「入門時の英語指導は難しく、小学生への英語の教科化は百害あって一利なし」と言われている。日本語学習が未完成の子どもたちに暗記が中心の英語を教えることは、かえって子どもたちの間に「英語嫌い」が増えたり、授業について行けない子どものために英語塾に通わせることになって、保護者の経済的な負担が増えるのではないかなど、新たな問題も心配されています。
 文科省が求める学習指導要領の下で、子ども達が辛い思いをしないよう、無理なく英語の授業に臨めるよう、できるよう配慮したものにすべきと考えますがどのようにお考えか。答弁を求めます。

 ?文科省の実態調査を引くまでもなく、学校現場で先生は超多忙状態です。英語や道徳の教科化によって授業が増えて、結果として、最も大事な子どもたちに向き合う時間が削られるのは本末転倒です。今、校長先生にお聞きしても多くの先生が英語教育に不安を感じているそうです。 
 先生がゆとりを持ってすべての授業に向かい合い、子どもたちが一人も落ちこぼれなく基礎学力を身につけられるようにするためにも、また全ての子どもたちの人格の成長を保障するためにも、正規教員の定数増と30人学級の早期実現が不可欠だと思います。とくに英語については、文科省や県教育委員会に対して、外国語指導助手(ALT)や英語教諭免許を取得している教員などの全小学校への人員配置を強く要望するとともに、市としても人的サポートが必要だと思いますが、どのように準備されておられるのか、答弁を。

 ●道徳によって「愛国心」を育てる教育の強調とともに、グローバル人材を育成するための英語や教科化が打ち出された、今回の改訂学習指導要領は、今までと同じように「競争教育」をいっそう強め、大企業に奉仕する人材の育成をめざすものであります。このような方向では、いじめや不登校、引きこもりなどの解決どころか、子どもたちの成長・発達はいっそう歪められ、ごく一部のエリートの育成の一方で、大多数の子どもが取り残され、排除されることにつながりかねません。
 学校現場では、先生方から「小学校の5〜6年生の担任は遠慮したい」という本音もささやかれています。教員の多忙化が強められ、新たな教育現場の困難や矛盾が生まれるのではないかという不安も強まっています。英語教育においては、子どもたちを決して追いつめる「詰め込み教育」とならないよう、先生も子どもたちにも無理のないように、十分留意して頂くよう強く求めておきます。

2、国民健康保険について

 ?次に、国保事業についてです。新度から国保の運営を都道府県と市町村が共同で担うことになります。群馬県が財政運営の責任主体で、保険証は県国保証となります。すでに県は医療給付費から公的給付などによる収入を差し引いて、県全体で集めるべき保険税収納必要額を算出し、それを医療費水準や所得水準に応じて市町村の納付金を割り当てました。市町村は、県が決定した納付金を納めるため市町村は被保険者から国保税の賦課、徴収を行うことになります。県への新年度の本市の納付金約100億は全額納付が義務つけられていますが、納付金を全額、国保税で徴収できない場合にはどうするのか。答弁を求めます。

 ?答弁いただいた通り、県が設置する国保財政安定化基金から無利息で貸付けを受けることができる制度となっています。したがって、本市の国保基金を何が何でも確保しておく心配はありません。財政運営の県への制度移行を機会に、この基金を大幅に取り崩して、新年度の国保税をできる限り引き下げるべきだと思います。
 本市おいても、年所得200万円の40歳代の夫婦で、子ども2人の4人家族の場合、国保税は年額約38万円にのぼっています。収入のおおよそ1カ月分が国保税額となります。国保世帯の約1割が滞納し、高すぎる国保税が払えないと悲鳴を上げ、引き下げを強く求めています。
 国は、国保加入者一人当たり1万円に当たる3400万円の国庫支出金を都道府県に支出して、国保料・税の大幅な引き上げを抑制する措置を講じた。
本市においても、県が示した標準国保税率のままではなく、国の激変緩和措置による3億9千万円の繰り入れによって、平均1人あたり年間2052円わずかな税額引き下げが実現し、加入世帯の約7割が引き下げとなりました。
しかし、国保税の滞納世帯に対する滞納整理は厳しく、平成28年度は3679件、差し押さえは4095件。差し押さえ率全国トップクラスが前橋市です。最低生活費相当額は差し押さえできないにもかかわらず、給与や年金が振り込まれた預貯金口座を問答無用で差し押さえて、国保世帯の生存権を脅かしています。このような現状を打開するためにも、国保税の引き下げに全力を上げるべきです。納付金の県納付が前提ではありますが、医療給付費は全額県から交付される制度ですので、年度の間に資金不足という事態は発生しません。
従いまして、今年度末19億7千万円の基金のうち11億円を取り崩して特別会計に繰り入れ、1世帯当たり年間2万円の引き下げを行うべきです。知れでも基金は7億円残ります。心配はないと思いますが、いかがでしょうか。答弁を。

 ?平成27年度末の厚労省統計では、本市は基金が17億5千万円で国保税収入の20%です。全国1716自治体の半数の812自治体が国保税収入の10%未満の保有額です。基金積立ゼロ自治体も264自治体あります。先ほども申し述べましたが前橋市は今年度末さらに増えて基金残高19万7千円。本市の国保基金の保有額は全国的にも多くなっています。半分程度の取り崩しは十分可能です。答弁を。

 ?法定軽減以外の市独自の低所得者対策として、子育て世帯の国保税の減免策を実施すべきです。国保の広域化に向けた地方からの要望を受けて、国保法の改正の際に「子供に係る均等割り保険料の軽減措置を検討する」と国会で付帯決議が行われましたが、制度上の具体化がされていません。
 東京都大和市や埼玉県ふじみ野市では、同一世帯内に18歳以下の加入者が3人以上いる多子世帯の場合、3人目以降の均等割りを無料とする措置を、一般財源を投入して実施しています。本市でも、実施すべきではないでしょうか。
 また、地方からの強い要請で、こどもの医療費助成に係る国保の減額調整措置、いわゆる国のペナルティーを来年度から未就学児まで廃止することになり、国の交付金が増額します。対象年齢が拡大されれば県はさらに新たな財源が生まれることになり、こどもの均等割り減免や子育て世帯への支援に活用することができます。国が実施しない子どもの均等割り減免を、県が実施するよう求め、国や県が実施しない場合は、市が独自で実施すべきです。答弁を。

 ●いま、国保加入者の多くが年金生活者や失業者、非正規労働者が占めるなど、低所得者が増加し有病率が高い高齢者が増加しています。
 その一方で、政府が1984年には5割近くあった国庫補助率を25%程度にまで削減した結果、国保加入者や自治体に過大な負担をもたらしています。
 政府は、「持続可能な医療保険制度を構築するため」として、財政運営の都道府県単位化をスタートしますが、これでは国保制度が抱える構造的な問題は解決しません。政府は新年度に市町村の一般会計の繰り入れ額とほぼ同水準の3400億円の公費を投入しますが、今後の継続的な予算化は未定です。
 国に対して、高すぎる国保税の引き下げのために国庫負担割合を計画的に引き上げ、低所得者への国保税や窓口負担の恒常的な免除制度の確立とともに、医療費抑制を行わず、住民の健康増進や地域医療体制を整備するよう強く求めるべきです。


3、介護保険事業について

 ?初めに、介護保険料や利用料の引き下げについてです。
18年前の介護保険制度の導入時は、家族介護から「介護の社会化」が大きなうたい文句でしたが、その後3年ごとに、保険料や利用料の負担が増やされ、サービス給付が削られ、いまでは「保険あった介護なし」、「介護殺人」「介護難民」「老々介護」等の言葉が生まれ、介護離職者は年間10万人を超えています。
 高齢者は年金が減らされ続け、消費税も医療費の窓口負担も増えるなか、介護保険料の負担はすでに限界です。7期事業計画では介護保険料の引き上げ案が示されていますが、見直しが必要だと思います。
 本市は介護保険会計の決算では黒字が続いています。3年前の第6期事業計画で介護保険料の基準額を19.9%引上げ、5785円にして年額で11,496円引き上げました。毎年の決算黒字分が介護保険給付準備基金に積み立てられ、今年度末で約11億円に累積しています。第7期介護保険料の基準額の算出に当たって、介護給付費の見込み額は相当厳密に見込んだそうですが、この基金の取り崩しを4億円にとどめたために、基準額が7.8%引き上げとなり、6233円になり年額で5400円の引き上げを提案しています。
 この3年間で積み増しされてきた基金は、苦しい生活を強いられている高齢者が負担してきたものです。保険料を引き下げて被保険者に還元すべきです。答弁を。

 ●全国では、7期は引上げをせず6期の基準額を据え置いた自治体がかなりあります。例えば、盛岡市、秋田市、水戸市、富山市、和歌山市、岡山市、山口市、大分市などです。共通して基金を取り崩しています。さらに6期より引き上げた自治体もあります。札幌市、仙台市、山形市、宇都宮市さいたま市、千葉市、静岡市等です。しかも、前橋市の基準額6233円より低い、5千円台を維持している自治体が多数あります。札幌、仙台、山形、水戸、埼玉、千葉、川崎、相模原、長野、静岡、高知、大分など、全自治体の35%が5千円台です。
 残額7億円と8千万円の一般会計を取り崩して介護特別会計に繰り入れる政治決断をすれば、前橋市も6期の5783円の基準額を維持し、引き上げをしないで済んだのです。このような自治体の努力に学ぶべきです。 

 ?65歳以上の1号被保険者のうち、保険料が天引きにならない普通徴収の年金月1万5,000円以下、生活保護基準以下の方の保険料の月額2600円を2800円に引き上げたことも問題です。このような生活困窮者への保険料を徴収しない減免制度を創設すべきです。答弁を。

 ?利用料の本市独自の負担軽減制度について質問します。低所得者にとって、1割負担は、サービス利用を阻むハードルとなっています。高崎市では、市民税非課税で、介護保険料や利用者負担を払った場合、生活保護基準を下回る世帯は、全ての居宅介護と短期入所サービスの利用料の半額を限度に助成しています。本市においても負担軽減制度を創設し、経済的理由で介護を受けられない人をなくすことを目指すべきです。答弁を。

 ?介護サービスの確実な提供についてです 。特に、介護施設と住まいについてです。特別養護老人ホーム待機者数(在宅)は、2017年5月1日現在953人、うち要介護3以上は624人です。施設数は25か所、1775床です。待機者が横ばいの大元には、高齢世帯の貧困化があると思います。国民年金の平均受給額は月5.1万円です。このような低年金の方が要介護状態になったとき、最後まで入居できる施設は特養ホームしかありません。このことに目を閉じて、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅など月利用料で十数万円から二十数万円かかる低所得者には利用できない施設の整備ばかり応援してきた行政の責任が問われていると思います。
 7次計画(案)では、特別養護老人ホームの増設79床です。あまりにも少なすぎる。第6期の残り142床(前橋駅北口複合ビル72床・協同福祉会70床)が7期にずれ込んでいることで、増設数を絞り込んだのは問題です。有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅が急増しているが、低所得であっても入居できる特養の増設は行政が推進しなければ実現しません。計画数を見直して待機者を大幅に減らせる増設目標とすべきです。答弁を。

 ●特別養護老人ホーム入所対象者の要介護3以上への「重点化」は、介護者不在や認知症の周辺症状などの事情で在宅生活が困難な「軽度」高齢者の行き場を奪うものです。待機者の把握は、今後も要介護1・2も対象とし、特例による特養入居も支援し市として支援していただきたい。 

 ?新総合事業について何点か質問します。

 ●本市も昨年4月から要支援者対象の総合事業を実施しています。介護保険の予算を使いますが、これまで介護サービスを利用していた方のほとんどが現行相当の予防給付サービスを利用していますが、今後ボランティアの活用や地域の助け合いなどによる安上がりなサービス、さらには一般高齢者と一緒の健康づくり教室でもよいとするものです。
 要支援者の訪問介護については、既存の介護事業所による現行相当サービスと、緩和サービスAによる生活援助の事業が併存しています。現行相当サービスは、現在の予防訪問介護サービスと同額の介護報酬で、短時間の研修を受けたヘルパーを従事させることを認め、それより低い国基準の8割で設定されています。国のガイドラインには、これ以外にもボランティアによる訪問型サービスBなどが例示されていますが、ボランティアでも可能とするのは、ヘルパーをはじめとする介護職の専門性を全面的に否定するものに他なりません。現在のサービス水準を引き下げないためには、一定の資格や経験を有さない者によるサービス提供については安易に進めるべきではないと思います。訪問介護は利用者の持つ病気や障害などの知識を理解し対応する専門性が求められています。今後、訪問型サービスBを導入すべきでないと考えますが、答弁を。

 ●要支援者の通所介護(デイサービス)については、現行相当サービスが継続されていまするが、訪問介護のような「緩和した基準によるサービス」の実施については、どのように考えているか。緩和サービスをやめ、すべての高齢者が専門職によって必要な介護サービスが受けられるよう、有資格者による通所介護サービスを維持すべき。見解を

 ●総合事業における対象者の選定についてです。これまでは、市が介護認定申請を受け付け、要介護認定審査を経て要支援1,2などを決定してきました。法改定では、明らかに要介護認定が必要な場合以外は、要介護認定を省略して基本チェックリストを使用し、総合事業の対象者を選定できると規定しています。これは介護保険利用希望者を総合事業へと誘導し、介護保険サービスを使わせない、権利侵害にもつながるものだと思います。基本チェックリストのみでの対象者選定はすべきでなく、要介護認定をこれまで通り行うべきと考えますが本市では現在どのようになっているのか。答弁を。

 ?次に、介護の職場では「派遣でも人が集まらない」「夜勤明けでも休めない」等深刻な声が寄せられています。全国的に職員配置ができずベッドが空いているなど介護現場の人手不足は深刻。有資格者が介護職場に就職していないのも、離職率が高いのも、最大の要因は賃金が低いことであり、処遇の問題。処遇改善や安定雇用での介護人材確保に市が責任を持つことが必要。どのような対策を考えているのか。

 ※これまで専門職が提供してきたからこそ、介護に伴う事故も少なく、高齢者の心身の変化も把握できたと思います。総合事業への移行で、介護格差が生まれることのないよう、ボランティアなど簡易な事業は安易に拡大しないよう十分留意していただきたい。

 ?次に、高齢者一人暮らしや老々世帯では、病院を退院後に自宅での療養環境が整わないまま生活し続けることで、状態が悪化し再入院となる例が多くあり、入退院を繰り返す例もあります。在宅医療・介護連携推進にあたっては、療養環境が整っていることを確認したうえで退院する仕組み作りが必要です。
 国が目指す地域包括ケアの狙いは国や自治体の責任を弱め、地域住民に責任を押しつけ「自助、共助」による安上がりの地域共生社会づくりという側面を持っています。
 本来の目的は誰もが、住み慣れた地域で、安心して医療・介護・福祉が切れ目なく受けられるネットワークを国や区の責任で構築していくことです。その中核は「地域包括支援センター」です。今年度の市内11か所の地域包括支援センターの延べ相談件数は何件でしょうか。現在専任職員は5人程度だそうですが、今後、機能強化と人員体制の拡充が必要ではないでしょうか。現場の職員は、「今の業務をこなすので精一杯」と話しており、とても地域包括ケアの構築にまで手が回わらないのではないでしょうか。

 市内の介護認定を受けていない高齢者世帯では、「1人暮らしと夫婦2人暮らし」が70%近くに上り、今後、認知症の高齢者が増えていくことからも地域に密着している地域包括支援センター体制を強化することや、市が責任をもって日常生活圏域の実態調査を実施・分析し、政策立案、医療・介護・福祉などのネットワーク構築のための専門職員を配置し、地域包括ケアシステムの構築を図るべきだと思います。見解を。

 ?安倍政権は、医療・介護を中心に社会保障給付は、『自然増』も含め聖域なく見直し、徹底的に効率化・適正化していく方針を掲げ、「給付の縮減」と「サービス単価の切り下げ」によって、介護の質・量ともに後退する深刻な状態になっています。
 自治体の自立支援、介護給付費適正化等に関する取り組みを、国が指標を定めて評価し、交付金を支給する仕組みが導入されました。政府予算で200億円が計上され、10億円が都道府県、190億円が市町村に配分されます。事業者による介護給付費の不正請求を許さない監査の強化は必要でありますが、このようなインセンティブ改革で給付抑制に誘導する仕組や、自立支援の推進に交付金を支給するのではないと思います。
 今、何より求められるのは、現行の25%の介護給付費への国の負担割合を、大幅に増やして、保険料を上げずに必要な介護給付を確保することが必要です。本市独自に保険料引き下げ努力することに加えて、抜本的には、国に公費割合を拡充すべきと要望することが必要だと思います。市として強く要望すべき。答弁を。

 ●いま介護保険制度は、「利用できない介護保険、利用させない介護保険」ともいうべき深刻な事態が広がり続けています。改めて、誰のための、何のための「持続可能性の確保」なのかが正面から問われています。利用者・高齢者の立場からのものではなく、あくまで財政事情を何よりも優先させた「持続可能性」の追求に、すなわち徹底的な介護給付費の削減、受益者負担の強要です。いま求められている見直しとは、現在の介護保険制度が抱えている様ざまな制度や問題点を抜本的に検証・改善し、在宅でも、施設でも、必要な介護が適切に保障される制度に転換することです。高齢者・国民の人権と生活が保障される地域包括ケアは、公的制度の拡充によってこそ実現可能です。

4、生活保護について

 ?政府は今年の10月から、国費ベースで総額160億円、生活保護基準を最大5%削減しようとしています。児童養育加算は、3歳まで1万5000円加算を1万円に引き下げ、母子加算は、子ども一人の場合平均2万1000円から1万7000円に減額します。子育て世帯を直撃する制度改悪です。
 2007年には老齢加算が廃止され、2013年から15年に大幅な受給額の引き下げが行われました。今でもぎりぎりの生活をしている被保護世帯に更なる引き下げが行われようとしています。
 しかも、そもそも政府の削減理由が問題です。所得階層の下位10%の低所得世帯の生活水準が下がったからそれに合わせるというものです。
 生活保護補足率が約2割という日本社会で、生活保護を利用していない低  所得世帯の生活水準に合わせるという発想・「水準均衡方式」自体が極めて非人間的です。いっそう、国民の格差と貧困を拡大する生活保護の基準切り下げにつながると思いますが、この制度改悪をどう考えておられるのか。見解を。

 ?低所得者の生活水準に合わせて行けば、生活保護基準はどんどん下がっていきます。社会保障制度の根幹であるである生活保護制度は、すべての福祉制度に影響します。生活保護基準の引き下げは、就学援助・国民健康保険・介護保険など生活保護以外の多くの福祉制度に影響を与えます。国民生活の最低限の保障である「ナショナルミニマム」をすべての国民に保障するためにも、生活保護水準の連続的な引き下げの中止を国に要望すべきと思いますが。見解を。

 ?次に制度の周知と活用についてです。10月以降の被保護世帯の扶助費の減額による生活水準の引き下げを実質的に抑えるために、現行の制度で実施できる支援を周知し活用することが必要です。通院のための交通費、就職支度金、技能習得日、生業費、葬祭扶助費の支給や、一時扶助による家屋補修費や家具什器、配電設備費等、生活必需品の支給制度を周知して、保護世帯の暮らしを救済すべきです。答弁を。

 ?次に扶助費の貯蓄による生活保護の停止処分についてです。切り詰めた生活によって、一定額を越えた時に保護の停止をしていますが、市営住宅の退去時の修繕費用や高校生の自動車免許の取得など目的を持った貯蓄は認めていると聞いています。著しく扶助費の支出を節約すれば、健康を害することも心配されます。生活指導を行い、保護の停止に結び付かないよう、必要以上の切り詰めた生活をしなくても良いことなどをていねいに指導すべきだと思います。答弁を。

?いわゆる『水際作戦』についてです。生活保護の申請の相談に出向いた市民
が、預金通帳や健康保険証など、申請時に確認が必要な書類などの持参をしない場合、いったん生活状況だけ聴取して、再度の来所を促す場合があります。そうした対応は、申請を拒否されたと受け止めて、再度の申請を諦めてしまう事例が起きています。相談窓口では、資産活用などについては審査で確認できるので、窓口で本人の申請の意思がある市民に対しては、必要な書類は後日提出を求め、申請書は即日受理すべきと考えますが。見解を。

?次に扶養義務の説明についてです。生活保護法1条は、「この法律は、日本
国憲第25条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする」と規定しています。そして、扶養義務について厚労省は、「生活保護を受給する要件、前提としない」と説明しています。しかし、本市の生活保護の相談窓口では、「親、子、兄弟姉妹などから、援助を受けられるときは、まずその援助を受けて」、「離婚などにより、ひとり親になった方は、養育費などを受けられるように努力して」などと説明しています。親族の扶養などを要件と受けとめ、申請をあきらめることになれば、申請権の侵害にあたります。法や国の見解の主旨に沿って、扶養義務は「要件ではない」ことをていねいに説明すべきです。見解を。

 ?次に、資産活用についてです。申請に訪れた市民に「土地、家屋、自動車など保有が認められないものは、売却などの処分をして、生活費にあててもらう」と説明しています。厚労省は、処分するより、所有している方が、生活維持、自立の助長に、効果がある場合は、保有が認められるとして、土地、家屋など、資産保有容認の範囲を示しています。国の方針を、正確に市民に知らせて、自宅等を処分しなければ、生活保護の申請ができないかのような誤解を受ける説明はやめるべきとかんがえます。見解を。

 ?被保護世帯への支援の強化とケースワーカの負担軽減についてです。国の基準は一人当たり被保護世帯80人です。本市の現状はどうなっているのか。訪問指導の充実のために増員が必要ではないでしょうか。見解を。 

●2013年は国費総額で670億円の削減。5年後の今回の160億円の削減と連続的に生活保護基準の引き下げで、生活保護を現に受けている人たちは「もう削るところはない」という声をあげておりも、10月以降の扶助費の引き下げに不安な思いを強めています。
 生活保護を受給していない方も、生活に困窮し、生存を脅かされている人たちや、社会から孤立させられている人たちがたくさんおられます。
 生活保護制度を受給者にも市民にも周知し、さらに使いやすい制度にして、憲法25条で保障されている生存権という人権を行き渡らせることこそ、いま求められています。

 生活保護への偏見をなくし、保護を必要とする方には確実に保護を適用するという立場にたって、誰もが人間らしい生活ができる社会を目指して、生活保護行政の現場から制度を改悪しないように声を上げていただくよう強く要望します。

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