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議会報告

2018年9月27日第3回定例会本会議議案反対討論・長谷川薫議員【2018/10/12】

2018年第3回定例会決算反対討論【2019年9月27日・長谷川薫】

 私は、日本共産党前橋市議団を代表して、議案第72号から第75号、第77号および第80号から第83号、以上9件に対する反対討論を行います。
最初に、議案第72号「平成29年度前橋市一般会計決算」および議案第73号「平成29年度前橋市国民康保険特別会計決算」、議案第74号「平成29年度前橋市後期高齢者医療特別会計決算」、議案第77号「平成29年度前橋市介護保険特別会計決算」についてです。

決算認定に反対する第1の理由は、各分野の行政施策が市民の願いに寄り添い、市民の暮らしを支えるものになっていないからです。

最初に税収納行政です。

 税滞納整理については、わが党の度重なる指摘にもかかわらず、市収納課は生活困窮への行き過ぎた差押えを改めようとしていません。
昨年度の差押えは、国保税と市税を合わせて5286件、8億9402万円で、その内容を見ても全国的にも大変過酷な滞納処分を行っています。
本来は滞納整理の最終手段である差押えという自力執行権を乱用し、預貯金口座に給与や年金が振り込まれる日を狙って、残額をほぼゼロにする差押えを恒常的に行っていました。わが党が、国税徴収法や地方税法違反と指摘しても、当局は「預金口座にいったん振り込まれれば、年金も給与もその属性を失い一般債権化するので全額を差し押さえても問題はない」という態度をとり続けました。
しかし、今年の1月31日には、前橋地裁が、給与や年金の差押え禁止額は、本人10万円+4万5千円×家族数+税金と社会保険料と定められており、税滞納者の口座に振り込まれた給与や年金の全額を差し押さえて、納税者の生活を困窮に陥らせた前橋市の差押えは違法であり、全額返還と不法行為による慰謝料の支払いを求めるという明確な判決を下しました。
 しかし、この判決が確定した後も収納課は、本税を完納し延滞金だけが残っている零細業者に対し、毎月の分納額が少なすぎると迫り、公売すれば廃業し生活の糧が奪われることが分かっていながら、問答無用で公売手続きを開始すると迫っています。生活困窮による税金の滞納者に対しては、徴収や換価の猶予、執行停止等の納税緩和制度で救済するとともに、家計のやりくりも含めて自主納付できるよう市の関係各課で連携し、生活再建をていねいに支援すべきです。

次に生活保護行政です。

 全国的に生活保護の捕捉率は2割程度です。本市においても、生活保護が、憲法25条に基づく基本的人権であることをもっと広報やホームページで市民に繰り返し周知して、偏見や誤解を取り除くべきです。
また、生活に困窮し活用できる資産もなく生活保護を受給できる方が、相談だけで申請に至らないケースがあります。いわゆる「水際作戦」とならないよう、相談に出向いたすべての市民に丁寧に対応し生活保護の申請権を尊重すべきです。
今、国の生活扶助基準の引き下げで受給者の暮らしが苦しくなっています。ケースワーカーは保護世帯との面接を強め、一時扶助など現行の各種扶助制度をもっと活用して、生活保護世帯の暮らしを支えるべきです。

高齢者支援策です。

 特別養護老人ホームの昨年の入所待機者は要介護3以上だけでも市内で600人を超えています。第7期介護事業計画でも、地域密着型の小規模な特養を含めても合計151床だけです。国が進める特養抑制、民間施設などへの依存では、高齢者の老後の暮らしを守ることはできません。有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅は特養と比べても費用が高く介護サービスの提供は量も質も弱くなっています。定期監査だけではなく利用者や家族からアンケートをとって各種施設の介護サービスの実態を把握し、入所高齢者への介護サービスの質の向上を図るべきです。また、不足する介護職員の処遇改善のための市単独補助も行うべきです。
 また、わが党は、高齢者など交通弱者支援の公共交通の充実を繰り返し求めてきました。マイバスの南橘・城南・芳賀・広瀬地区などへの増設とマイタクの運行時間の延長や長距離利用者への支援金の増額、マイナンバーカードではなくマイタク独自のICカードの作成による利用、さらには「ふるさとバスとるんるんバス」のドアツードア方式への改善などです。当局は「このような市民要望については『地域公共交通網形成計画』で総合的に検討する」と答えてきましたが、策定後もいまだにほとんど改善策は具体化されていません。通院や買い物に日々苦労している高齢者の切実な要望に迅速に答えるべきです。交通弱者支援策は国の『地方創生』の対象事業でもあり、国や県に積極的に財政支援を求め、早期に改善すべきです。

次に、国民健康保険です。

「一般会計からの繰り入れもおこない高すぎる国保税を引き下げるべき」というわが党の要求に、本市は背を向け続けています。2017年度決算では剰余金が7億6千万円にもなっており、国保税を1世帯年間1万円以上引き下げることができたはずです。
昨年度の一人当たりの国保税調定額は89,782円となり、加入世帯の7.5 %、3679世帯が滞納しています。高すぎて払えない滞納世帯に対し当局は、窓口負担が10割になる資格証を437人に発行し、3カ月しか使えない短期保険証を705人に発行しました。資格証発行世帯は、ほとんどが低所得世帯層であり、命を脅かす制裁措置を続けることを認めることはできません。

後期高齢者医療制度では、保険料が改定されて、均等割り額も所得割率とも引き上げられ、減額措置が廃止されたため約5割強の高齢者が負担増となりました。高齢者を差別する医療制度は廃止して、必要な医療を平等に保障する医療制度に戻すべきです。

続いて、子どもの施策です。

 本市は認定こども園が増えて、入所定員も増えてきましたが、希望する保育所や子ども園などに入れない、待機児が3歳未満児を中心に昨年度は150人二及んでいます。各園が3歳未満児を受け入れられない多くの理由は、保育士不足です。当面は市立保育所の未満児保育枠を増やして待機児を解消するとともに、民間保育園や子ども園の保育士の処遇改善のための市単独の上乗せも行うべきです。保育ニーズが強まるなかで、身分が安定している保育士が保育する市立保育所を存続することが極めて重要となっており、2箇所の市立保育所の民営化の撤回を求めます。

また、子どもの貧困対策は喫緊の課題です。

 小中学校の学校給食の完全無料化は、一般会計の1%、14億円で実施できる支援策です。渋川市やみどり市も1%の負担を決意し、実施に踏み出しているにもかかわらず、本市は財政的に困難と実施していません。憲法26条の義務教育は無償、学校給食は食育との立場に立ち、学校給食を無料にして中核市の先進自治体になるべきです。本市の給食費の一部無料化も、小中学校に同時通学している第3子という条件をやめ、全員無料にすべきです。

就学援助制度も今議会で、入学準備金の前倒し支給を来年度から実施すると表明しながら、国が認めているPTA会費・生徒会費・クラブ活動費を支給項目に加えず、対象者も生活保護水準の所得の1.1倍という枠を拡大しない頑なな態度は問題です。

つぎに、学校教育です。
教員の長時間過密労働の改善策が不十分です。文部科学省の昨年度の全国調査でも、月80時間を超える残業など過労死ラインを超える教師は、小学校で33.5%、中学校で57.6%に上ります。学校現場では、いじめや不登校が増え、発達障害など特別な支援が必要な子どもが増えており、教員の多忙化解消は急務です。
本市教育委員会は、全小学校5〜6年生の35人学級化やオープンドアサポータなど各種の非常勤講師の採用により現場教師の負担軽減の努力を進めていますが、多忙化解消の効果はごく一部にとどまっています。英語や道徳など教える教科や授業の持ち時間は増えているのに、教員を増やさないのでは教員は益々忙しくなるばかりです。小・中・高全学年の30人学級制度の早期実現と、教育現場が求める必要な教職員を正規で配置すべきです。
また、1人ひとりの子どもにとって、その力が伸びているかどうかを、その時々に評価することは、大切なことです。それは、担任の教師が日常的に行うテストで十分可能であり、競争教育を強める全国一斉学力テストは中止すべきです。
また、教育委員会は、小規模校は切磋琢磨が弱くなるとか、人間関係が固定する、部活動が困難となるなどのデメリットを強調して小中学校の統廃合を進めていますが、教育予算削減のための統廃合を進めないよう求めておきます。
なお、「メネット・学校ネットワーク」のセキュリティー対策の不備によって、大量の個人情報が流失しました。いま、学校現場では公務と授業準備のためのコンピュータ使用に制限があり、教職員の多忙化が加速し、児童生徒のインターネット活用の学習ができなくなっています。情報システムの早期復活と情報漏えい再発防止のためのシステム構築と体制確立を求めておきます。

次に、産業支援です。
アベノミクスで大企業は過去最高の利益を上げ、内部留保金は460兆円を超えています。しかし、市内の中小企業やまち工場や商店などは、受注減と単価の引き下げや売上減少で、今なお厳しい経営を強いられています。
市の職員が事業者の声を直接聞くことや、資金繰りだけではなく、新製品開発や販路拡大などの継続的な経営支援策が不十分です。
また、中心商店街も周辺商店街も閉店や廃業が止まりません。わが党が、高崎市の住宅や商店リフォーム助成制度を紹介しながら、経済波及効果が高く、個店への直接支援に結び付く地域循環型の同制度を本市でも実施することを再三求めても、空き家対策に特化して全く実施の検討をしないことは問題です。

次に、農業振興策です。

 本市は、市街地から中山間地まで、自然環境を生かした豊富な農畜産物が生産され、生産者の顔が見える安心・安全・新鮮な農産物が消費者に喜ばれています。しかし、高齢化が進み、新規就農も十分促進されていません。農業支援策を認定農業者や集落営農組織だけではなく、家族農業も支援対象にして、農業機械導入や露地野菜の苗や肥料等の購入助成などを行うべきです。また、廃止されたコメの直接支払い交付金に代わる市独自の支援制度を創設すべきです。
さらに、本市の約400?にも及ぶ遊休農地は、農地中間管理機構による農地集積だけではなく、農産物の市独自の価格保障制度や後継者育成など農業を安定的に継続できる支援策を強めて有効活用するべきです。
さらに、農地の集積の対象とならない中山間地の農地を保全するためにも、食育や景観保全・観光振興・6次産業化などグリーンツーリズム・スローシティーの取り組みを進める農家に対する支援を早急に具体化すべきです。

 次に、市営住宅です。

 低所得者に快適で低廉な住宅を提供する目的を掲げながら、計画的な修繕が遅れ多くの住棟の老朽化が進んでいます。空き部屋が管理戸数の23%、1128戸を超えて恒常化し、さらに増え続けています。
入居者の高齢化も進み、地域コミュニティーが崩壊したり、階段を上がれなくなったり、建物周辺の低木の植木の剪定が困難となるなど、直ちに解決が求められる多くの問題が起きています。団地や棟ごとの実態に即したきめ細かな支援策を、管理委託している住宅供給公社だけではなく、市建築住宅課として検討し早期に実施すべきです。エレベーター設置が計画的に促進されていません。市営住宅を「終の棲家」としている入居者も増えているだけに、国の交付金を強く要求して期限を切って計画的に増設すべきです。また、県営住宅のように、二戸を一戸に合わせて大規模改修したり、公社への委託費に計上される市営住宅の維持管理予算を増額して、住棟の随時修繕にもきめ細かく対応すべきです。
また、重要な課題となっている退去時修繕の負担軽減、入居時の保証人の緩和、入居名義人が死亡した際の子どもへの承継条件の緩和、市営住宅間の住み替えの促進、一人暮らしの入居条件の緩和、グループホームなど障害者や高齢者の福祉施設としての活用、若年単身者の入居などを直ちに検討し具体化すべきです。

つぎに、本市の環境保全行政の弱さを指摘せざるを得ません。

 今年の3月から稼働を開始した苗ヶ島町の関電工の6700㌗・7700世帯分の電力を供給できる大規模木質バイオマス火力発電施設については、近隣住民への騒音被害が発生しています。放射能物質の汚染防止策も不十分です。年間8万トンも燃料として焼却する間伐材などの放射能測定も関電工からまだ公表されていません。間伐材を絞った汚染水を地下浸透させれば水質の放射能汚染の恐れもあります。市当局が住民に関電工との橋渡しをすると述べていた、「環境保全の覚書」の締結も、現時点では全く目途が立っていません。
当局は住民の騒音など様々な環境汚染に対する不安の声を受けとめて、関電工が住民に示した自主的な環境保全基準を遵守するように強く指導すべきです。

決算認定に反対する第2の理由は、コンパクトなまちづくりを進めると言いながら、開発優先のまちづくりが進められている点です。

 本市は、今後とも人口が減少し高齢化が進むと予測し、立地適正化計画を策定し、道路や下水、公共施設など都市基盤・インフラが整備されている中心街や地域の拠点地区などに都市機能や住宅を再整備し、コンパクトなまちづくりを進める方針を掲げています。
 ところが、多くの大規模な公共事業を市内各所に同時多発的に次々と立ち上げていることは問題です。
 2020年の開業を目指している市内4カ所目の道の駅の整備事業は、面積7?の大規模な計画です。市長は「前橋市のショーウインドウにする」と述べていますが、観光振興なのか農業振興を目指すのか、目的もあいまいなまま、必須施設だけ示して(株)ヤマトグループにPFI事業として事実上丸投げしています。総事業費は100億円を超えると見込まれていますが、事業者、国、市の負担も現時点でも判明していません。市民の意見も十分聞かず事業計画が検討されているため、年間100億人もの集客が望めるのか、中心街の活性化と矛盾するのではないか、農政部や文化スポーツ観光部など横断的な検討が今後も必要であるにもかかわらず、政策部から建設部に所管を移したことが適切なのかどうか、多くの疑問が出されています。地元地域でも「負の遺産」にならないかという事業への不安の声も出始めています。
 また、日赤病院跡地の前橋版CCRC生涯活躍のまちづくり事業も、地方創生事業として推進していますが、市民の強い要望に基づく事業ではありません。当局は、東京圏の元気で安定した所得層の退職者などに移住をしてもらい、地域住民との多世代交流の機会を作り、生涯活躍してもらう拠点を作ると説明してきました。いま、?大和ハウス工業などと事業計画を検討していますが、事業者から当初提案された計画は市長が考えるCCRC構想とは似て非なるものです。有料老人ホームなどの高齢者施設や大型商業施設、運動施設などが整備されても、首都圏から富裕層を迎え入れられる魅力ある拠点を作れるかどうかわかりません。
 昨年度当初予算で計上した跡地購入の12億円は支出しませんでしたが、病院の建物の解体除却費用として今年度予算で9億円余りを国と市で助成する必要はありません。跡地周辺住民は、今も診療所機能を残してほしいと要望していますが、全く具体化していません。 
さらに、JR前橋駅北口に26階建ての分譲マンションや高齢者住宅などの高層複合ビルを造る計画も進んでいます。ゼネコンの?大京が再開発事業者に選定されて、総事業費100億円で2021年の完成を目指すと市は説明しています。  
ところが、市が3階から5階への入居を公募した特養老人ホームへの応募が全くなく、事業計画の見直しを迫られています。国の交付金に加えて前橋市も北口再開発には約10億円もの市財政を投入する方針です。今後さらに多額の補助金を交付することが見込まれますが、莫大な市財政を投入しても、事業が成り立つのかどうかわかりません。
 これらの大型事業以外にも、千代田町2丁目の4番・8番街など中心市街地の再開発事業を立ち上げようとしています。すでに中心街周辺には、住友不動産のマンションなど3つの高級マンションが建設されており、当局は中心市街地活性化計画に沿った事業としてすでに13億円の補助金を支出し、今年度も9億円もの補助金を出すなど、民間開発には市財政が苦しいと言いながらも、惜しげもなく税金を投入しています。
 当局は「中心市街地の新たなにぎわいの創出のために再開発が必要」と判断していますが、再開発に多額の税金を投入しても、長期間にわたってイベント開催時以外には賑わいが取り戻せない状況の下で、投資効果があるという保証はありません。できる限り市民の意見や、現在、中心街で営業している個人商店など中心街のコミュニティーを担っている方の意見を丁寧に聞いて合意形成を図ることが必要です。できる限り多くの市民が参画しなければ、再開発事業は再び空回りするのではないでしょうか。

また、市内の区画整理事業は11地区も同時施行しているために、それぞれの事業地区が計画期限を越えて長期化しています。国の事業採択率が下がり続けており、年間約27億円の事業費を支出しても、家屋移転も道路や下水道整備も円滑に進まず、逆に長期間にわたって市民の生活の利便性が損なわれる状況が続いています。わが党が、これ以上の新規事業を増やさず現在施行中の事業を早期に完了すべきと主張しても、元総社落合地区の新規事業化を決めたことは問題です。
市内各所の道路のボトルネックなどを解消するためには、用地買収方式、権利変換方式、代替え地の提案による等価交換などによる街路整備事業、市街地再開発事業などを選択し、出来る限り短期間で事業を完了し安全な道路通行を実現すべきです。

なお、各種公共施設の再編については維持管理の費用面だけではなく、地域のコミュニティーの維持のために果たしている現状も十分評価し、できる限り市民に詳細に利用状況や経費など各種情報を詳細に公開し、施設の存廃の賛否の意見を丁寧に聴取し、慎重に結論を出すべきです。

決算認定に反対する第3の理由は、職員定数の削減を優先する行財政改革方針を認めることができないからです。

 当局は、行財政改革といえば真っ先に職員削減による人件費削減を最優先で進めています。そのために、民営化、民間委託、指定管理者制度、そしてPFIやPPPなどを全行政分野で拡大しています。行政の市場化によって、行政自らが官製ワーキングプアを作り出し、低賃金の労働者が多くの行政分野の仕事を担っています。3年から5年ごとに公募を繰り返す委託や指定管理では、安定した運営やノウハウの蓄積、専門性の向上は不可能です。
そのような中で、正規職員は、13年前の平成16年と比べて今年の4月2日には524人も減り2606人になっています。最近は、毎年100人前後の退職者がありながら、新規採用は80人前後で、直営部門も再任用や嘱託など非常勤職員の雇用などで対応し毎年連続して職員定数を削減してきたことは問題です。公募型プロポーザルの多用など、野放図な民間丸投げが進められるなど、自治体の公的責任を歪め、さらに市民の貴重な財産を、企業の新たな儲けの手段として活用させていることは問題です。
 今年の4月2日には、再任用、嘱託、臨時職員などが合わせて853人で、全職員の24.6%、4人に一人が非正規職員となっています。嘱託職員の賃金は月額16万円、臨時職員は時給890円で、いずれも期末手当の支給はありません。公務労働者の賃金引き下げが、結局は民間の賃金引き下げにつながるという、負のスパイラルに陥っています。
 今年の12月からは、県内自治体で初めて市民課証明交付窓口を?富士ゼロックサービスシステムに委託し、斎場管理も年度内に民間委託を進めようとしています。市民の個人情報が漏えいする恐れもあり、人件費が削減されても業務の効率化や市民サービス向上には到底つながりません。
また、かつて市民への福祉サービスが措置制度で提供されていた時と異なり、介護サービスなどが福祉法人や営利事業者にほとんどすべてが委ねられているために、市が所管している行政分野でも、現場を十分把握できなくなり、市民ニーズにこたえる行政の企画や政策立案能力が明らかに後退しています。
この間策定した、総合計画、県都前橋創生プラン、前橋スマイルプラン、公共施設の再編計画、地域公共交通網形成計画、立地適正化計画など多くの計画などは、コンサルタント会社の主導で策定されたといっても過言ではありません。
 
決算認定に反対する第4の理由は、市職員のセクハラ行為に対して、被害者救済のために迅速かつ適切な対応をしていないからです。

 本市幹部職員による女性市職員へのセクハラ行為が今年の5月25日に新聞報道されました。人事評価に責任を持つ立場にある人が、セクハラによって管理責任を問われる状況は、大変深刻な事態です。被害女性は「今年の1月5日にその事実を市長にメールを送って助けを求め、2月5日には職員課にセクハラ行為を告発しましたが、市当局は何の対応も調査もありませんでした。5月下旬に思い余って東京新聞に苦しい胸の内を伝え、警察に相談に行った後、新聞の記事になってから、やっと市職員課の事情聴取が始まった」と話しています。
 わが党が6月1日に市当局に真相究明を求めても、当局は「被害女性にも、行為を行った職員にも人権がある」などと述べ、セクハラの被害を受けた女性の心身の苦しみを正面から受け止めようとせず、人権侵害であるセクハラ行為を許さず根絶するという姿勢があまりにも鈍いということが露呈しました。 
 加害職員に対する処分は行われましたが、市当局は2月に事態を把握していたのに、機敏な救済策を講ずることもなく、事態をもみ消すのかと思わせるような消極的対応を続け、被害女性をさらに傷つけたことは重大問題です。男女共同参画社会を推進すべき前橋市が、今回の事態の中で機敏に対応せず被害女性を苦しませたことを深く反省し、市役所職場だけではなく民間職場も含めて、今後のセクハラ根絶・再発防止の施策推進の上で、重要な教訓にすべきです。

つぎに議案第75号、平成29年度前橋市競輪特別会計についてです。

わが党は、戦後復興期の財政難を打開するための緊急避難的な公営ギャンブルが、今もなお継続実施されていること自体に問題があるとの立場です。
本市の競輪事業は、通常の本場開催のレースでは売り上げが低迷しており、場外車券の売り上げを伸ばさなければ経営赤字に追い込まれかねません。
昨年度は2億円の一般会計への繰り出しが行われていますが、今後、ヤマダグリーンドームの老朽化に伴う維持管理費や場外の関連経費の負担増などで事業運営の一層の困難も想定されます。また、寛仁(ともひと)親王杯などのグレードの高い大会やミッドナイト競輪などを開催し、車券の売り上げ増に力を入れていますが、競輪そのものへの集客が減り続ける中で、車券売り上げを増やすことはすでに限界ではないでしょうか。
今、交通の利便性が高い高崎競馬場跡地に群馬県が350億円もかけてコンベンション施設を建設中です。グリーンドームの貸館収入の確保もいっそう困難となるのではないでしょうか。 
今、ギャンブル依存症が社会問題になっており、経済破たんや家庭崩壊を招いて苦しんでいる人が増えています。その対策と治療・回復のための社会基盤づくりが課題になっているにもかかわらず、政府は地域活性化策と位置付けて民間企業が運営するギャンブル施設「カジノ」を合法化するなど事態をさらに悪化させようとしています。全国にある43カ所の競輪場のうちすでに19カ所で民間委託が進んでいますが、車券売り上げを増やすために公営事業としての節度が弱まり、ギャンブル性が高まるなどの問題が指摘されています。市民の所得を吸い上げるギャンブル収入を自治体の財源とする競輪事業は、存廃を含めて議論する時期に来ていると指摘せざるをえません。

次に議案80号、平成29年度前橋用地先行取得事業特別会計および、議案第81号、同前橋市産業立地推進事業特別会計についてです。

昨年度は用地の先行取得のための支出はありませんが、ローズタウンの分譲住宅造成事業のような、過大な需要を見込んで事業を開始し、結局、長期間の苦労の末に破綻するような事を繰り返してはならないと思います。五代南部工業団地の拡張地は完売できましたが、今後の産業政策は工場誘致などの「呼び込み型」から「内発型」の地域振興に軸足を移すことが重要です。
市内でいま人口が減少するのに、再び行政が主導し民間が事業展開する大規模な再開発事業が進められていますが、ローズタウンのように、今後事業が円滑に進まなければ、再び市財政の投入による支援をせざるをえません。
都市間競争に安易に参加し、国の地方創生方針に追随するまちづくりはやめて、身の丈に合った、住民合意のまちづくりを進めるべきです。
また、企業立地促進条例によって、市内中小企業だけではなく、内部留保金を積み増して、資金力のある市外の大企業にまで各種助成を行い、企業誘致を促進する本市の産業政策には賛成できません。

最後に議案82号、平成29年度前橋市水道事業会計剰余金の処分及び決算および議案83号、同前橋市下水道事業会計剰余金の処分及び決算についてです。

水道料金の値上げを回避しているものの、市民生活に不可欠な飲み水に消費税を課税していることを認めることはできません。
本市の昨年度の1日平均給水量は約13万㎥で、そのうち約45%が地下水を水源とする自己水で、残り55%が利根川を水源とする群馬県企業局の県央第一水道と県央第二水道から受水しています。水需要が減少しているにもかかわらず県央水道からの受水を続けて本市の豊かな地下水の利用を抑制していることは問題です。昨年度、県に対して受水料を約17億円も支払っています。県央第二水道の受水単価が昨年度から5円引き下がりましたが、県央水道の受水単価は本市の自己水の2倍も高く、水需要の減少に伴って本市の水道経営が苦しくなっています。他の受水自治体とともに群馬県と交渉し、過大な受水量の見直しを求め、自己水比率を高めるべきです。
また、生活困窮者、生活保護世帯を含めた水道料金の滞納世帯まで機械的に給水停止を行っていることは問題です。
また、水道施設の管理を民間営利企業に委託していることは、安全性確保の上でも、水道技術の継承の上でも認めることはできません。命にかかわる水道水を安全かつ安定的に供給するという水道事業の性格を考えても、本市による完全な直営に戻すべきです。

 以上述べてきたように、平成29年度の本市の行政運営は、市民の暮らしの深刻な現状に目をふさぎ、市民の声にも十分耳を傾けず、ひたすら国の方針に追随し、再開発事業と行政の民間化を推し進めてきました。昨年実施したサマーレビューでは、今年から3年間で約26億円もの市民向け予算を削減する方針を掲げるなど、住民福祉の増進を責務とする地方自治を弱めています。
 日本共産党前橋市議団は、市民の暮らしと営業を応援し、市民の願いを活かす市政へ抜本的に切り替えることを強く求めるものです。以上申し上げて、9議案

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