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議会報告

2019年第1回定例会総括質問【長谷川薫】人口減少・少子高齢化社会に置ける街づくり、新道の駅整備計画について【2019/3/20】

2019年第1回定例会・総括質問(長谷川薫・25分)

1、人口減少・少子高齢社会におけるまちづくりについて

(1)立地適正化計画の問題点
 
 私は、初めに人口減少と少子高齢化が進む本市のまちづくりについて質問します。いま、市民は、どこに住んでいても安心で安全な暮らしを続けられる「まちづくり」を望んでいます。
ところが、本市が策定した立地適正化計画は、市街化区域内に病院や商業施設、学校などの公共施設などを誘導する都市機能誘導区域と住宅を誘導する居住誘導区域を定めて、コンパクトな街づくりを進めようとしています。
すでに、中心部には市も財政支援した大規模な民間マンションが建設され、JR前橋駅北口や中心街には大規模な再開発事業が計画されています。国と前橋市による中心部への財政投入が進められる一方で、吸収合併した旧勢多郡地域など誘導区域外の周辺部には、今後は投資が抑制されるため過疎化が一層進むことが心配されます。
市当局は「転入者に居住誘導地域に住んでもらう要請をする」「市民への強制ではなく緩やかに誘導する計画」などと説明しています。しかしこのような誘導策は、小・中学校区を中心とした地域コミュニティーを次第に崩壊させ生活利便性を弱め、市民の居住権を侵害しかねない問題をはらんでいます。
しかも、十分な住民合意のない計画で中心部に多額の財政投資を集中して活性化を図ろうとすれば、結果として高齢者福祉や子育て支援策などが犠牲になりかねません。
これまで市が進めてきた都市計画で周辺に拡散した市街地を、立地適正化計画で縮小しようとすること自体に無理があると考えます。国や財界がめざす国土再編構想に安易に従わず、再度、前橋市は主体性を持って、現状を分析し、将来の都市計画・まちづくりを市民参加で慎重に再検討すべきと考えます。見解を求めます。

【提言】街中や駅周辺などに都市機能や居住を集約すれば、空き家や空き地だらけの地域で生活している人にとっては安心と利便をもたらし、行財政的には効率的だと思います。しかし、一方で、全体として人口が減少するなかで、居住集約的な地域を形成しようとすれば、それ以外の地域の人口減少をいっそう促進します。また、財産として住宅や土地をとらえれば、評価額の差がより拡大することになります。
なにより、自然災害の危険などがさしせまっている地域を除けば、親・子・孫の代まで、そこで長く居住している人々は、住生活を大きく変えるような政策に賛成することは、とてもできないということになると思います。
都市の縮小を拙速に進める政策は必ずゆがみが生まれると思います。決して立地適正化計画のコンパクト+拠点地区のネットワークではなく、既存集落の維持+公共交通によるネットワークという取り組みを進めるよう強く求めておきます。

(2)公共施設等総合管理計画の問題点について

 次に、4年前に策定した公共施設等総合管理計画の問題点についてです。我が党は、人口減や税収減に対応したインフラも含めて公共施設の再編を機械的にすべて否定するものではありません。
しかし、今、前橋市が市民の十分な意見聴取や費用対効果を十分精査し検討しないまま公共施設の統廃合や新設が行われていることは問題だと思います。たとえば、7?もの県内最大規模の新道の駅の整備や事業の長期化が避けられない12か所もの土地区画整理の同時施行、市民合意のない中心街の再開発事業などです。
その一方で、財政難を理由に小・中学校や幼稚園、保育所、保健センターなどの統廃合を拙速に進めることには強く反対してきたことはご承知のとおりです。
しかも、この計画は国・総務省のマニュアルに従って策定されており、老朽化による事故がひとたび発生すると大惨事を引き起こしかねない道路や橋梁・上下水道などの都市インフラについては、長寿命化や更新事業を計画的に進めると定めていますが、市民の暮らしを支える必要不可欠な公共施設については、効率的利活用の推進とともに保有総量の縮減や統廃合を促進するという方針が明確に示されています。
いま全国的に、地域に密着している公共施設を統廃合し、都市機能誘導区域に大規模な公共施設を新設する計画が増えています。
公共施設の総面積を削減して維持管理経費を減らしつつ、大型公共事業のための建設投資を確保しようとする計画は問題です。公共施設の統廃合によって立地適正化計画の先導役を果たすのではなく、市民の要望を取り入れて公共施設の計画的な長寿命化工事を行い、維持管理費用の縮減を柱とするように、管理計画を見直すべきと考えます。答弁を求めます。

【提言】道路や水道のようなインフラも学校や福祉施設・文化スポーツ施設などの公共施設も、地域の共同社会のための社会資本です。それらが地域社会に溶け込むように存在・機能することによって、地域の生産や住民の生活が成り立ち地域コミュニティーが形成され、安心で健全な暮らしを営まれています。
社会資本の廃止は原則として行わず、国の財政措置をうまく活用しながら、長寿命化事業で残していくという立場を明確にすることを強く求めておきます。

(3) 公共サービスの産業化の問題点

 次に公共サービスの産業化の問題点についてです。国は様々な法制度を作り、公共サービスの「産業化」を自治体に強力に求めています。すでに、これらの取り組みで先進的な自治体には、地方交付税などでインセンティブをつけるトップランナー方式まで具体化しています。
本市においても、以前は限られた行政分野で業務委託が進められてきましたが、最近は、「指定管理者」制度やPFI法、地方独立法人法などの新たな法制度で行政の外部化を進め、公的な外部団体だけではなく営利企業まで無制限に委託対象を広げ「ビジネスチャンス」を拡大するとともに、数次にわたる行財政改革計画で、職員人件費の削減を中心として民間化を進め、今年度は偽装請負になりかねない市民課の窓口事務まで委託分野を広げ、公共サービスの担い手の多くを非正規労働者・ワーキングプアーに置き換えてきました。
 行政サービスは、本来は社会的経済的弱者を含む住民全体の福利のために、利潤追求を排除し、住民の総意を尊重しながら直接行政が公費で提供すべきです。また、市民共同の財産である公共施設を、民間事業者が利益を上げる場に安易に提供すべきでありません。
行政の産業化推進方針を撤回し、前橋テルサの民営化検討を中止するとともに、3か所の市の温泉施設の民営化検討も行財政革計画に加えず、利用者が増えるような運営改善やサービスの充実策を検討すべきです。答弁を求めます。

【提言】いま、安倍政権は「人口減少」を錦の御旗に「自治体戦略2040構想」を打ち出し、小規模市町村の権限を奪って中心都市に行政・経済機能を集中させる「圏域」行政の法制化を行い、人工頭脳AIの導入によって公共サービスの産業化を推進し、将来的に地方公務員を半減させる「地方統治構造」改革を進めようとしています。このような改革は、憲法上保障された団体自治や住民自治への視点が欠落しており、地方自治関係者から強い批判の声があがっています。本市もこのような国の方針に追随した「自治体リストラ」公共サービスの産業化推進方針を撤回し、人口が減少しても市民生活の質を落とさないよう、必要な行政サービスを直接提供し、今より豊かな生活ができるようにすべきです。

2、新道の駅の整備計画と農業振興策について

(1)地元農産物の供給体制

 次に、新道の駅への地元農産物の供給体制についてお聞きします。昨年12月に運営事業者と前橋市との契約締結が行われました。新年度から用地買収が開始されますが、道の駅の最大の魅力である地元で採れた農畜産物の直売所や地元食材を使った地産レストランの事業計画や内容が示されていません。
市内の既設の3か所の道の駅では出荷組合法人に参加した近隣農家の方が、農産物を生産し集荷して陳列しています。品切れになったら追加したり、売れ残りが出たら引き取ったりしており、農家の方々が消費者の反応を直接実感できるため、生産出荷する農産物の品質を向上するなど様々な努力が尽くされています。
ところが、すでに3施設への出荷農家も高齢化しており、ほとんどの方が、これ上の農産物の供給はできない状況です。
 このような中で、新道の駅の直売所が、青果市場などから市内農産物を仕入れて販売という供給形態となれば、市内の大型商業施設の販売形態と変わらなくなり、道の駅としての魅力に欠けると思います。市当局は、新道の駅の地元農産物の供給体制を事業者任せにせず、JA前橋やJAの地元支所とも連携を図り、積極的に出荷組合の組織化を進めるべきと考えますが、どのようにお考えか答弁を求めます。

【提言】前橋市内の農業や農家の経営実態を把握しているのは前橋市農政部ではないでしょうか。事業者の取り組みを傍観しているのでは、魅力ある直売所にはならないのではないでしょうか。官民連携があまりにも希薄すぎると思います。
 用地買収と合わせて、市民ニーズを把握し、急いで生産・出荷農家を中心に置いて事業者と話し合うべきです。 
事業者への丸投げの計画では魅力ある道の駅にはならないと思います。
施設規模が大きいだけに、農産物の供給体制の確立には相当の努力が求められると思います。3か所の道の駅の生産出荷農家には、これまでのノウハウの蓄積があります。ぜひ協議に参加してもらいながら、運営事業者に提案をしていただきたいと思います。

(2)農業振興策  

 次に、新道の駅は市債も発行し多額の市税も投入する総額95億円もの大型公共事業です。当然、農業振興にも結び付く事業にしなければなりません。例えば、直売所に安定的に豊かな農産物を出荷できる農家が増えるような施策として、家族農業や認定農業者、集落営農組織などに農業機械の購入支援、農業後継者や新規就農者を増やす支援、作付けを増やすための遊休農地のあっせん支援、生産出荷などの農作業に必要なパート労働者の支援、さらに農産物に付加価値をつける第6次産業化の支援、加工品の開発や販路拡大の支援などを具体化すべきだと思います。
また施設全体の集客や売上を考えた場合、産直や加工品の販売だけでなく、レストランや軽食コーナーの売上をどのように伸ばすかという点が収益性においての分かれ道になります。農産品の品質を知り尽くしている生産農家と調理にかかわる方との連携をはかり、地元食材を使った食事をどのようにメニュー化するか、そして、食べてみたいと思ってもらえるような工夫をどうするかなどにも参画すべきだと思います。現在までにどのような検討がされているのか伺います。

【提言】答弁をお聞きしても、農業振興に結び付く事業にするという熱意が感じられません。整備の主管課が建設部になっているので、農政部との連携が弱くなっているのではないでしょうか。何と言っても、道の駅の最大の魅力は、来訪者も地元市民も新鮮で安全な地元農産物の購入ではないでしょうか。
農産物の輸入の自由化で価格が低迷し、様々な困難を抱えている農業経営者を、この道の駅の整備事業を通じて、積極的に応援するという構えが必要だと思います。運営事業者の取り組みを傍観するのではなく、前橋市が積極的に農業振興策を実施するよう強く求めておきます。


(3)既設3か所の「道の駅」の事業運営への影響

 次に既設の3か所の「道の駅」の事業運営への影響についてです。
新道の駅は、県内最大規模7?・600台の駐車場・年間100万人の集客の目標を目指す道の駅ですから、既設3か所の道の駅との共存共栄を目指すと言っても、集客や売り上げ減少などの影響は避けられません。すでに上武国道が全線開通して以降、南面道路の交通量が減って、大胡も富士見の道の駅も客足が減っています。
そのためには、赤城山麓のスローシティーの取り組みや赤城山観光を成功させるためにも、道の駅に併設されている富士見温泉見晴らしの湯やあいの山の湯の温泉施設の民営化検討をやめて、農産物直売所やフードコートなども併せてリニューアルなどを行い、客足の減少を食い止めるべきです。設置者である前橋市が既設3ヵ所の道の駅の現状の運営状況を詳しく分析し、集客増を図るための方針を明確にして、必要な資金も投入すべきです。どのように考えておられるのか答弁を求めます。

【提言】新道の駅オープン後も既存3か所の道の駅が安定的に運営されるような支援はどうしても必要だと思います。
4か所の道の駅の共存共栄を本気で目指すのなら、3か所の直売施設も温泉施設も老朽化が進んでいます。新道の駅にはない温泉施設を併設している富士見や荻窪の道の駅は、集客を維持するためにも大切な役割を果たしています。施設の廃統廃合などを検討せず、いずれもリニューアル整備を進めるべきだと思います。
それぞれの道の駅の顧客の志向は相違があると思います。主に地元の人を対象にするのか、遠隔地からの観光客を対象にするのか、近隣地区からの客を対象にするのか、それぞれ仕掛けのコンセプトがあると思います。温泉施設の利用もありますが、現状では、トイレ休憩と地元の野菜販売をする場所となっている傾向もありますので、既存の3か所も今後とも寄ってみたいと思うような魅力あふれる道の駅にするようなリニューアル事業の取り組みを強く求めておきます。

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