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議会報告

2019年第1回定例会本会議反対討論(長谷川薫議員)委員会付託省略議案【2019/3/20】

2019年第1回定例会・付託省略議案に対する反対討論(3月8日・長谷川)

 私は、日本共産党前橋市議団を代表して議案第40号、第41号および第43号について反対討論を行います。
 いずれも温泉施設である粕川元気ランド、富士見温泉見晴らしの湯ふれあい館、荻窪公園の温水利用健康づくり施設の指定管理者の指定についての承認議案です。
 わが党は、住民福祉の増進を目的に市が設置している公共施設は直営で管理運営すべきであり、やむを得ず委託する場合でもと社会福祉協議会やまちづくり公社など市が出資して設立した、利潤を追求しない公的外部団体に限定すべきと一貫して主張してきました。
 そもそも「官から民へ」の掛け声のもとに、国が制度化した「指定管理者制度」は、公の施設の管理主体を株式会社等の民間営利事業者にまで拡大し、公の施設での利潤追求を認める制度であるために、住民福祉の増進と住民に平等に、できる限り質の高いサービスを提供するという公共性が保てなくなるというのが最大の問題点です。行政が市民サービス向上のために、民間のノウハウを学び取り入れることを否定はしませんが、公の施設の管理運営というものは、民間事業者が同様または類似するサービスをやっているとか、民間でも管理できるとかいう問題ではありません。公正、安定、平等の公共性の原則と民間営利事業者の本質的に持っている「利潤追求」というものが本質的に対立するからであります。
 本3議案の温泉施設の公募による指定管理者の指定はまさにこのことが危惧されるのです。
 
 具体的な反対理由の第一は、指定管理者は社会的貢献を果たそうと努力はしていますが、計画通りの集客が進まず、厳しい運営を強いられており、安全確保や市民サービスの質の向上が十分図られていないからです。3か所の温泉施設は共通して老朽化が進んでいるために、富士見温泉ふれあい館では2年前に6キロの構造物が天井から落下して82歳の高齢者が顔面に大けがを負い、あいのやまの湯はレジオネラ菌の汚染で長期の閉鎖を余儀なくされました。さらに、事故の影響もあり3施設とも入館者の減少傾向が続いており、指定管理者は大変苦しい施設運営を強いられています。その結果、あいのやまの湯は平成29年度は1604万円も赤字が出ており、今年度の収支決算見込みも昨年度よりもさらに見通しは暗く、富士見温泉とあいのやまの湯も改修工事の間の閉鎖中の損失補償金を市から受け取った後でなければ、収支状況は分からない状況です。指定管理者は、腐食が早い温泉施設という特徴から市からの定期的な施設改修や随時修繕に必要な十分な財政支援を受けられなければ今後とも安定運営ができないと言っています。

 反対する理由の第二は、このような中でも指定管理者に指定を受けた企業が利益をあげるために過度の人件費削減、社会的ルールを無視した労働条件の低下を招く恐れがあることです。事業者は、安定経営のために管理経費を節減しようと思えば、職員を減らし人件費を削減するしかないといえます。指定管理者による雇用形態では、パートなど不安定な雇用の方が全職員の6割から8割を占める実態が普通です。
 市当局は、今回の指定管理者公募では、現状の収支状況から判断し、これまで2施設で実施してきた利用料金収入の一定額を市に納付を求める条件を廃止しました。これまで市は、あいの山の湯では年間1300万円、富士見温泉には200万円を市に納付を求め、それ以上の収料金収入は指定管理者の収入になるとしていましたが、経営状況が苦しくなっている現状ではその納付は難しいと判断して廃止しました。今後とも、厳しい経営状況の下で、利益を上げるため公の施設としての安全性を無視した過度の人件費削減に走ったり、さらに経営状況が悪くなれば撤退、倒産という可能性も否定できません。結果的に、市民に新たな財政負担を負わせる可能性もあります。

 反対する理由の第三は、市民の健康増進を最大の目的に建設運営されてきた3つの温泉を今後も長期にわたって市が責任をもって運営し維持していくという方針がないからです。
  市当局は、指定管理期間をこれまでの3〜4年とせずに、2年に限定し、その間に民営化も含めて今後の運営を検討する方針を明らかにしています。今回の指定は、新たな応募業者があったのはあいのやまの湯だけで、しかも市の審査における評価点数が600点満点に対し、いずれも400点程度であっても、これまでの実績を重視し、いわゆる「横滑り」の対応で指定しました。前橋市も老朽化が進む温泉施設のリニューアル計画を示さないまま公募をしたので、応募も少なく当然の結果であったと思います。このような中でも、富士見温泉ふれあい館の指定管理者は、赤城山観光や東京オリンピックを見据えて、宿泊施設の整備したいなどと市に積極的に提案するなど、集客増に向けての意欲を提案書で示しています。
 今の各温泉の収支状況から見ても、施設のリニューアル工事などを市が行い、引き続き市民が安心して利用できるように管理運営していくべきです。新道の駅が2年後に整備されれば、3温泉にも新たな魅力を加えなければ客足は遠のくのではないでしょうか。今後の検討によって、これらの温泉施設を定期借地権付きで貸し付けたり、譲渡して、民間企業に運営を任せる方針を掲げても、応募企業があるかどうかわかりません。また、市民にとっては、現在510円で入館できる温泉施設の利用料が引き上げられ、市民負担が重くなることは納得できないのではないでしょうか。老朽化による事故や集客減に対応するためにも、住民の福祉を増進するという目的を達成するためにも、民営化ではなく必要な財政投資もして直営に戻すことこそ真剣に検討すべきです。
  
 反対する理由の第四は、市当局が指定管理者の指定にあたって議会の議決を求めながら、判断材料はほとんど示さず、ただ承認を求めるという態度に終始していることであります。
 これだけの問題点がありながら、それを実際に検証しようとしても、所管の公園管理事務所も判断材料を示さなかったのです。今回の指定の妥当性を客観的事実に基づき判断しようとして、応募業者のこれまでの収支報告書の中身を聞いても、明らかにしません。これでどうして判断できるのでしょうか。議会に事業者を指定する議決をうるためには、候補者の「事業計画書」など必要な書類を添付し、候補者選定委員会の「適当とする判断」に至る審議経過と結果に関する議事録は当然つけるべきであります。議員に対してただ承認だけ求めるというのは責任ある態度ではないと指摘せざるを得ません。

 以上、四点の反対の理由を申し上げ、討論といたします。

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