トップページへ 前のページへ 目次ページへ
議会報告

2019年9月・第3回定例会本会議総括質問・長谷川薫議員(前橋競輪の民間委託・新道の駅)【2019/9/20】

総括質問項目(長谷川薫)

1、競輪事業の民間委託の中止について    (産業経済部長)

(1)公共性の確保について

画像
 私は、はじめに、前橋競輪の民間委託について質問します。
まず、公共性の確保についてです。
 2007年の自転車競走法第3条の改正によって、競輪の民間委託が認められましたが、本来は刑法犯罪である賭博行為の違法性が阻却されるのは、引き続き地方公共団体が施行者として実施するからにほかなりません。
 当局は、市への繰り出しが維持できれば、公共性が担保できると判断しているますが、本質的に利潤追求が避けられない民間事業者への包括的な委託は、売り上げ増を最大の目的にした射幸心を煽る運営や不正行為やいわゆる組織悪の介在などの問題が懸念されます。
 「民間委託が適当」と結論を出した昨年9月から今年の3月まで5回開かれた検討委員会では、公共性が本当に担保されるかどうかについての議論がほとんどされないまま、拙速に結論を出しています。問題だと思いますが、どのようにお考えでしょうか。答弁を求めます。

(反論) 前橋競輪は、1950年に始めて以来69年間一貫して直営を続けてきました。車券の自動販売機がない時代は、約1000人もの従事職員による直接販売や払い戻しも行われ、苦労の多い人事管理も行い、競輪場周辺の環境保全対策、不正防止や治安維持対策も市が毅然とした対応を行い運営責任を果たしてきました。だからこそ、市民の競輪事業に対する理解も得られたのではないでしょうか。
競輪事業を所管する経済産業省も一貫して、賭博行為の違法性が阻却されるのは、公的主体が施行者として実施するからにほかならないと、最近まで強調してきました。たとえ、開催の主催者が前橋市に残り、収益の繰り出し金があっても、民間事業者への包括的委託は問題が出てくると思います。


(2)委託費と収益の使途及び透明性の確保

 つぎに、委託費と収益の使途及び透明性の確保についてです。
今議会に委託契約をするための6年間で上限54億円の債務負担行為の設定議案が出されています。
 運営委託費を年間平均9億円も保証していますが、委託後の毎年の売り上げ減を3?でなくて1?の落ち込みで計算していますが、その根拠が分かりません。
 また、車券売り上げ金総額の75%の払い戻し金を除く収益の使途は、自転車振興会への交付金の納付や市への繰り出し、施設整備基金への積み立てなどに限定されており、委託事業者へのインセンティブ・報償金制度による支出は認められていないと思いますが、委託事業者はそれでも運営努力を強めるのでしょうか。年間9億円の委託費だけで競輪運営する事業者は、当初はともかく時が過ぎるにつれて企業利益を上げるために人件費や宣伝費の削減などのコスト削減などを進めるのではないでしょうか。主催者として節度ある適切な競輪運営を維持するための委託事業者の経営の透明性をどのように担保するのか。答弁を求めます。

(反論)委託を受けた事業者は、当然車券の売り上げ増を責務としていますが、私企業としての利潤追求も同時に行うと思います。車券の販売や払い下げ、警備や清掃業務、施設の管理、防災、広報宣伝のすべてにおいて、業務の効率化と収益性の向上等をめざして様々な取り組みをすると思います。公営事業課職員の人事異動によって施行者自身の事業経営のノウハウが徐々に薄れて、結果とし、受託事業者に対する運営のチェックが弱まるのではないでしょうか。今回受託業者が6年の契約満了後に委託できなくなった場合は、直営に戻して競輪業務を継続することも困難となるのではないでしょうか。

(3)グリーンドームの維持管理

 つぎに、グリーンドームの施設整備については、収益金を基金に積み立てて計画的な改修工事をしてきましたが、今後、委託事業者の修繕責任の範囲をどのように設定するのでしょうか。また、委託後も競輪の売り上げの右肩下がりが続く中で、一般会計からの支出を行わず維持管理できる展望はあるのかどうか、答弁を求めます。

(反論)グリーンドームも建設後30年たっています。当局は、適切な維持管理をすれば今後とも30年間は問題なく利用できると判断されていますが、現在実施している改給排水関係の改修工事で15億円の支出があり、約30億円あった整備基金も半減すると見込んでいます。全体の車券売り上げが減少する中で、現状は、繰り出し金は2億、維持管理費はそれ以上かかる。グリーンドームを維持するために競輪事業を続けるという状況になっていることは、大きな問題だと思います。

(4)射幸性・ギャンブル性の抑制

 次に、射幸性の問題です。公営ギャンブルは、公益性を理由に、刑法が罰する賭博に当たる行為を許容するが、射幸性を異常に高くせず節度ある販売方法の選択が必要とされています。
 民間事業者の多くは、「若者や女性も楽しめる斬新でスマートな競輪をめざし、賭け事という古いイメージを打ち破って、売り上げを増やしたい」あるいは「ボートレースの様なシンプルな予想で初心者も買い易く当たり券が出やすい新たな賭け式の導入やIT等最新技術を活かした若者が参加しやすい魅力のあるレースの開催などで新たなファン層の拡大をめざす」と云っています。全国競輪施行者協議会も同様です。
 しかし、本当に若者に競輪を広げることが公共団体の仕事でしょうか。施行者である市は、このような流れに安易に乗らず、ギャンブルの持つ負の部分、弊害に目をつむるべきではないと考えますが、見解をお聞かせください。

(反論)例えば、昨年10月に4日間開催された寛仁親王杯は、前橋本場で2億5680万円。全国43か所の競輪場と70か所の場外で約74億円売り上げました。私は相当の売り上げと思いますが、それでも前回より5%売り上げが落ちているそうです。施行者である前橋は、もっと売りたいとお考えだと思います。

 しかし、売り上げをもっと増やそうとすればするほど、競輪ファンの若返りをめざし、若者にターゲットを絞って、ギャンブル性の高い車券の種類を考え、人を寄せやすいイベント考えるのではないでしょうか。
 厚労省は、「日本のギャンブル依存症患者は536万人」と発表しました。成人の4.8%です。このギャンブル依存症を予防するために、文科省は今年の3月に、教師用の指導参考資料を発行しています。ギャンブルを楽しむ段階からだんだん物足りなくなって、掛け金や回数が増えて自分でコントロールできなくなって、生活面で問題が起こってもやめられなくなるギャンブル依存症の恐ろしさを、青少年に教育することが必要との立場です。公営ギャンブルである競輪事業者への警鐘・注意喚起ではないでしょうか。

※ギャンブル等依存症とは、ギャンブル等にのめり込んでコントロールができなくなる精神疾患の一つです。これにより、日常生活や社会生活に支障が生じることがあります。
例えば、うつ病を発症するなどの健康問題や、ギャンブル等を原因とする多重債務や貧困といった経済的問題に加えて、家庭内の不和などの家庭問題、虐待、自殺、犯罪などの社会的問題を生じることもあります。

(5) 運営委託事業者への公的監督

 次に、運営委託事業者への公的監督についてです。民間委託によって市職員が半減します。今後も、市職員は貸館事業を維持するためのイベントの誘致などが求められます。このような中で、委託事業者には、施行者としての厳格な監督管理ができなくなるのではないでしょうか。これまで公設公営の立場から節度ある運営が続けられてきましたが、委託事業者が売り上げを増やせば、多少の歪みや問題には目をつむるという態度に傾くのではないでしょうか。現在の約150人の従事職員の継続雇用や処遇の改善、来客者の安全の確保、不正や組織悪の介在の根絶などのために委託事業者との協議をどのように進めようとしているのでしょうか。

(反論)交通の利便性の良い高崎駅周辺には、全国規模のスポーツ大会を承知しているアリーナ、間もなく完成する芸術劇場、県が整備している大規模施設Gメッセが立ち上げられます。グリーンドームでのイベント開催招致には相当の工夫と努力が求められます。貸館事業と収益金の運営業務で追われて、競輪開催業務は委託事業者任せになることが目に見えていると思います。

(6)募集の中止

 最後に、募集の中止を求めます。当局は、競輪の民間委託の最大の理由を、繰り出し金の確保と説明しています。しかし、そもそも社会的弊害の多いギャンブルに税収効果を期待するのは邪道であり、競輪の賑わいや車券売り上げ増を求めている市民は少ないのではないでしょうか。
 今、市が最優先して行うべきことは、前橋市の経済を支えている中小企業や農業の振興のための強力な支援であり、身の丈に合わない大規模な道の駅や再開発事業などを市民参加で見直して、過大な財政支出を抑制すべきです。
 グリーンドームで何が何でも競輪を存続するのではなく、市民要望であるスポーツや生涯学習の拠点施設として建物を大規模にリニューアル整備して人気が出てきたバスケットやテニス、卓球などの屋内ポーツができるような体育館にすることも展望すべきです。いかがでしょうか。

(反論)
 わが党は市財政をギャンブルに依存すること自体やめるべきだという基本的立場です。しかも、民間委託には、全市民的な合意もなく、道理にも説得力にもかけています。あまりにも拙速すぎる民間委託方針を撤回して、当面は直営を維持しながら、市民参加で全面的な撤退・廃止についても検討すべきです。

2、「新道の駅」整備計画について     (建設部長)

(1)事業目的

画像
 次に、新道の駅についてです。いま、当局は新道の駅の事業認定を県に申請するための地元説明会も開催され、用地買収交渉も間もなく開始されます。
この間、山本市長は道の駅をまえばしのショーウインドウにすると表明し、上武道路を車で通過する外来者に足を止めてもらい、道の駅で休憩し買い物や食事をしてもらう。さらに道の駅で完結するだけではなく、赤城山や臨江閣、バラ園など前橋市内の観光スポットを回遊してもらうなど観光振興や産業振興の拠点施設として位置付けて整備を進めると説明されてきました。
 ところが、今、整備予定地の地権者も含めて、多くの市民は、面積が県内最大規模7?、委託事業者への15年間の維持管理運営費を含めて総事業費が約94億円もかかる大規模事業であること、さらには道の駅がどのような施設になるのかをほとんど認識しておりません。
 農業を中心とした産業振興が目的なのか、観光振興なのか、現時点で事業者が具体化した個別事業の内容も示しながら、事業目的の広報が必要だと思いますが。答弁を求めます。

(反論)
 計画書には事業目的が示されていますが、2年後の2021年委7月には開業を目指しているにしては、多くの市民は、どんな道の駅になるのかが理解されていない、同時に、期待もしていないというのが現実です。逆に、そんな施設を作っても失敗するのではという、冷ややかな見方もされています。我が党は施設規模が課題だと指摘して、住民参加で縮小を求めてきましたが、当局はこのまま当初計画通り進めています。委託事業者に丸投げではないなら、事業内容に踏み込んだ協議をすべきです。

(2)農畜産物直売所の販売体制

 来訪者にとって道の駅の最大の魅力は、新鮮な農畜産物の直売や地産地消レストランです。規模が大きいだけに、安定的な供給体制を維持するためには、事業者だけではなく市が支援することが必要だと思います。現状では、事業者が市内の認定農業者にアンケートをしているようですが、例えば、道の駅近隣の遊休農地を活用して旬の野菜を安定的に直売所に出荷する農業者の育成など、市が積極的に関与して農業振興にも結び付けることが必要だと思いますが、所管課は農政部および事業者とどのような協議をされているのか、答弁を求めます。

(反論)
 JA南橘支所は、支所内の農産物出荷者が少なくなったために、JA富士見に出荷場を集約しました。地元の農業がこのような衰退状況であるだけに、道の駅の直売所の運営を成功させるための手立てを、事業者任せにせず、市の農政部も積極的にかかわるべきです。遊休農地を減らし、新規就農者を増やすなど、本市の農業振興に貢献できる施設にすべきです。現状のまま推移すれば、農業生産者主体の産直ではなく、民間事業者が中心となって経営する異質な魅力に欠ける農産物直売所になってしまいます。直ちに対策を講じていただくよう求めておきます。

(3)周辺住民への騒音・排気ガス被害防止対策

 道の駅整備区域外の北側の住民から、24時間利用可能な80台の大型車用の駐車場と新たに整備する外周道路の車両による騒音被害と排気ガスによる大気汚染の対策を求める声が強く上がっています。当局は、設置者としてどのような検討をしておられるのか。答弁を求めます。

(反論)地元住民の方は、予定地はくぼ地で、かつては細ケ沢川などが氾濫して水浸しになった場所であり、最近全国で多発している洪水による被害が心配と話しています。防災機能を持った道の駅で、集中豪による洪水で発電施設が水没して、電源喪失となれば住民の避難や支援の拠点の機能も失います。田口町、関根町、富士見町横室の住民の騒音や排気ガス、ごみの不法投棄などの不安は当然です。市と委託事業者が、近隣住民の意見を直接聴取しながら不安に応えるための独自の環境アセスや対策工事の検討などを直ちに進めるよう強く求めておきます。

以上ですべての質問を終ります。


ページのトップへ