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議会報告

2019年9月・第3回定例会本会議議案反対討論・長谷川薫議員【2019/9/20】

付託省略議案反対討論(長谷川薫・9月11日)

 私は、日本共産党前橋市議団を代表して、今議会に上程された議案第80号、議案第81号、議案第83号からから86号、議案第88号、議案第91号、議案第93号、および、議案第95号、以上10議案に対する反対討論を行います。

 はじめに、議案第80号、令和元年度前橋市一般会計補正予算についてです。わが党は,1900万円の自治体行政スマートプロジェクト委託事業を実施するための情報システム運用事業および、1750万4千円の新モビリティーサービス推進事業の追加補正に賛成できません。

 反対理由について申し述べます。いま政府は「自治体戦略2040」を策定し、地方自治体に「従来の半分の職員で業務が成り立つスマート自治体への転換」を呼びかけ、その手段としてAI(人工頭脳)やRPA(ロボットによる業務の自動化)の活用を求めています。
 併せて、近隣の複数自治体の情報システムを標準化・共通化して「重複投資」をなくして、効率化・低廉化を図っていこうとしています。
 今回のスマートプロジェクト事業の実証実験も、前橋市、高崎市、伊勢崎市の共同事業です。
 しかも「自治体戦略2040」は、地方自治体の住民サービスの質を向上させ拡充させる戦略ではなく、住民に提供するサービスをより効率化・低廉化して、これまでより少ない職員で自治体を機能させようとしています。これまでにも地方への財政縮減を進めるために強力に国が求めている地方公務員の定数削減や行政事務の民間委託をいっそう推進することも意図されています。
 このような中で、茨城県つくば市では、すでに昨年、2018年1月からNTTデータなど民間情報産業事業者の数社と共同で、国からの財政支援を受けてロボットを活用した税務行政などの窓口業務を行う共同研究が実施されています。
 しかし、今、進行している「会計年度任用職員制度」や「包括委託制度導入」と同じように、公務に熟練した職員による市民へのきめ細かなサービスが切り捨て、地方自治の本旨である住民自治や民主主義が後退させられていくことは避けられません。以上の理由から反対です。

 また、今、国は多くの情報通信事業者などと連携し、自治体に公共交通の様々な先進的な社会実験の参加を呼び掛けています。追加補正の新モビリティーサービス推進事業も、出発地から目的地までの複数の交通手段を一括して検索し予約から決済まで可能となる前橋版のスマホアプリの開発を行うとともに、タクシーとバスの相互利用のワンマイルタクシーの実証実験などを内容としています。

 本市においても、交通事故や排ガスによる大気汚染などの弊害がある過度なマイカー依存を脱却し、自転車や公共交通優先のまちづくりや生活様式への転換が求められています。普及が進むスマホによる検索アプリの開発を一概に否定するものではありません。
 しかし、本市交通政策課地域交通推進室は7人体制であり、これまでにも、地域公共交通網形成計画の策定やその計画に基づく既存バス路線や各種地域内交通の見直しなど多くの検討・推進すべき課題を抱えております。そのような中で、国が進める自動運転の実証実験や住民要望である城南地区地域内交通の実証実験や、デマンド交通の「ふるさとバス」や「るんるんバス」のスマホ予約の社会実験なども連続的に行いました。

しかし、当局もご承知の通り、いま多くの市民は、マイタクの長距離利用者の負担軽減や利用時間の延長要望、交通不便地域へのマイバスの新規路線の拡充、デマンドバスのドアツードア化など、高齢者を中心とした交通弱者の支援策に迅速に応える公共交通施策の一層の充実を求めています。
 本市が今回、補正予算を組んで実施しようとしている二つの事業は、むしろマイカー利用が少なく軌道交通やバス利用が多く、スマホ利用の若者が多い首都圏でこそ必要性が高く、バスやタクシー検索アプリの活用が求められるのは、京都・大阪・奈良・金沢など名所・旧跡を訪れる人が多い観光都市などが先進的に取り組むべき事業だと思います。
 前橋市内では、スマホアプリを活用して公共交通を利活用する高齢者が限られており、国の言われるままに緊急性の少ない事業を実施してトップランナーになる必要はないと思います。以上の理由から、本事業の追加補正に賛成することはできません。

 次に、議案第81号、令和元年度前橋市競輪特別会計補正予算についてです。

 本議案は、前橋競輪の事業運営を上限54億円で来年度から6年間、民間事業者に包括的に委託し、減り続けている事業収益を何とか確保しようとするものです。わが党は、次の理由で反対するものです。
 競輪事業が、太平洋戦争の戦災復興を主目的にして、公設公営の公営ギャンブルとして開催され、地方公共団体の財源確保に一定の貢献をしたことは事実であります。しかし、戦後74年もたった今なお、財源の確保を公営ギャンブルに頼るというのは、健全な市民生活を支えるべき地方公共団体として本来あってはならないことであります。
 しかも、日本では,パチンコや競輪・競馬・競艇などにのめり込み、借金漬けで生活が破綻する、いわゆるギャンブル依存症が、他の先進国の10倍も存在するという指摘もある中で、地方財政に寄与するという理由で公営ギャンブルを続け、さらに有効な地域経済活性化施策と主張して政府や一部自治体が推進している民設民営のIR・カジノまで拡げることを、わが党は認めることはできません。
 今回の前橋競輪の包括的な民間委託は、主催者は前橋市に残すものの、車券の販売から払い戻し、投票機器の運用、イベント、広報・宣伝などギャンブル事業の根幹に当たるほとんどの業務を民間事業者に任せ、その経営努力によって売り上げを伸ばそうとするものです。結果として、射幸心を煽るような販売戦略が強められる恐れがあり、青少年に対する悪影響が強く懸念されます。
 また、営利企業としての利潤追求が行われるため、雇用の継続がなされても従事職員などの処遇が現状より悪化することも心配されます。
しかも、競輪ファン層の高齢化が進んでいる中で、民間委託をしても収益の減収を抑え、繰り出し金を増やせるほどの収益を確保できる保証もありません。
 委託方針を撤回して、当面は直営を維持しながら、市民参加で全面的な撤退・廃止について検討すべきです。

 次に、議案第83号、前橋市会計年度任用職員の勤務時間、休暇等に関する条令の制定、議案第84号、前橋市会計年度任用職員の給与及び費用弁償に関する条例の制定、議案第85号、地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律の施行に伴う関係条例の整備に関する条例の制定、および議案第86号前橋市職員の育児休業等に関する条例の制定の4議案についてです。
 
 これら4議案の条例制定及び改正案は、国の地方公務員法及び地方自治法の一部改正を受けて、非正規職員の任用根拠を厳格化し、臨時・非常勤職員を会計年度任用職員へ移行させて、一定の処遇改善を行うというものです。
 しかし、わが党は以下の理由から4議案に反対であります。

 第一に、今回の国の法改正は、非正規職員の一定の処遇改善を可能とする内容を含んでいるにもかかわらず、本市の改正条例案による新たな運用は、現在の嘱託職員566人をすべて会計年度任用職員のパートに位置付けようとしています。勤務時間をあと1時間15分伸ばして、期末手当に加えて退職金も支給できる常勤職員と同じ週38時間45分のフルタイム任用の職員には一人も移行する方針はありません。これでは、市行政を支えている全職員の4人に一人の非正規職員の処遇の改善はできません。また、本市の嘱託保育士の多くが正規職員が担うべきクラス担任をしており、実際の勤務時間も正規の保育士と変わりません。埼玉県川越市では、勤務の実態を認め、保育所や学童保育で働き、会計年度任用となる職員の賃金を大幅に引き上げる提案をしています。正規職員化ができないのであれば、少なくとも退職金の支給規定のあるフルタイム職員に任用すべきです。

 第二に、これまでの非正規職員の給与にかかわる財政負担が増えないようにするために、現在の毎月の給与を減額して期末手当に充てる方針は、新制度の立法趣旨を否定するもので認められません。これまで週30時間勤務の嘱託職員の給与月額16万4千円、年額196万8千円を引き上げるのではなく、新制度ではわざわざ月額給与を14万8500円に1万5500円引き下げました。会計年度任用のパート職員には期末手当が支給され給与年額は199万7325円になりますが、プラス分はわずか2万9,325円だけです。ほとんど処遇改善が図られていません。
 また、現在の臨時職員91人は臨時的任用職員へ移行するだけで、一般事務職員の時間給930円・日額7200円、保育士990円・日額7670円の引き上げも示されておらず、待遇の底上げがありません。
 本来、非正規職員の処遇改善として求められるのは、本格的恒常的業務を担う非正規職員の正規化や均等待遇をはかることです。ところが、当局は同一労働同一賃金をもとめる均等待遇の願いにこたえる制度運用に向けての方針を持っていないことは大きな問題です。
 第三に、会計年度任用職員は、原則一年間を勤務期限としています。毎年更新も可能とされていますが、いつでも雇い止めができる有期雇用の不安定雇用の非正規職員であることに変わりありません。正規職員を増やさないための「調整弁」としての位置づけはやめるべきです。しかも、正規と非正規職員の待遇格差は厳然と残されたままにもかかわらず、新制度のもとで正規職員並みに守秘義務や処罰だけが厳しく適用されることになり問題です。
 第四に、新制度への移行によって、行政職場は任期の定めのない常勤の正規職員を中心とした公務運営の原則が掘りくずされることが懸念されます。今、国が強力に進めている住民サービスを民間企業に丸投げする包括委託等公務現場における人件費削減路線に追随せず、非正規職員の正規化や抜本的な待遇改善を進めることを強く求めておきます。

 次に、議案第88号、前橋市市税条例の改正についてです。

 未婚のひとり親世帯への個人市民税の非課税措置の適用などは必要な措置であり歓迎するものです。しかし、軽自動車税に関する改正について反対します。環境性能の良い軽自動車を購入するときに、今年の10月1日から1年以内に購入すれば、本来2%のところ1%に減税するという条例改正はすでに実施されています。本条例改正案は、自家用の電気軽自動車や天然ガス自動車のグリーン化特例(軽減課税)をさらに2021年と22年の購入分の2年間を延長するものです。消費税増税による軽自動車の販売落ち込みを防ごうとする自動車業界の要請に沿ったものです。前橋市としては税収が減少しますが、その分は国が全額交付税で措置することになっています。自動車業界の利益確保のために国の予算を使うことになり問題です。消費者にとっては、軽自動車購入の際、今までより2%多い消費税を払って購入するので、1%減税してもらっても、どれほど購入意欲が沸くか疑問です。正に目先の対策です。こんなことで、全国の自治体が条例改正だ、システム改修だと、振り回されるのは本当に迷惑な話です。 今回の軽自動車税に関する条例改正は、労多くして効果なし、むしろ、市民の負担を増し、国の財政も、市の財政も悪化させることになりかねません。

 つぎに、議案第91号、前橋市保育所、保育の実施及び保育料等に関する条例及び前橋市立学校の授業料等に関する条例の制定についてです。

 本条例改正案は、市民税非課税世帯の3歳未満児と3歳以上児の保育園や幼稚園、認定こども園等の児童の保育料を無償とするものです。子育て中の世代の負担軽減や、少子化対策を進める上で無償化は大切であると考えます。
 しかし、今回の「幼児教育の無償化」は、解散総選挙を前にした2017年9月、消費税10%増税への国民の反対の声を抑えるために十分な制度設計がされないまま出されたために多くの問題を含んでいます。我が党は以下の理由で本議案に反対です。
 
 第一に、子育て中の低所得者への支援が図られない条例上の問題が残されています。保育料はすでに所得に応じて段階的に設定されており、保育料が免除されている生活保護世帯や住民税非課税世帯などでは「無償化」による恩恵はなく、消費税増税分が重くのしかかるだけです。
本市でも、住民税非課税世帯は、月額1800円の保育料が無料になっていますが、消費税増税により、保育料の無償化分は消費税の負担増で消えてしまいます。
 一方、所得階層が最高の層は、月額28400円、年間では34万800円の軽減になり、所得の多い世帯が消費税増税の負担軽減の恩恵を受けられるという逆転現象が起きるのです。
安倍政権は、消費税の増税分は低所得者層に配慮し還元すると言ってきましたが、本条例でも、保育の無償化によって低所得者ほど負担が重い逆進性に輪を掛けることになり問題です。

 第二に、本来、保育の一環であるべき給食費が無償化で切り分けられ、副食費が保護者負担とされたことも問題です。
 給食費が無償化の対象から外されたために、これまで保育料に含まれていた副食費が保護者負担となり、実費徴収となります。今回の国の保育料の無償化により、市の財政負担が軽減され約2億円が生み出されます。この財源も活用して、副食費を無料にすべきです。

 第三に、これまで国から各施設に支払われていた公定価格の運営費が3歳児は月額5090円、4歳児以上は5100円減額されました。各施設は4,500円の副食費を親から徴収することになりますが、それでも、一人当たり約600円収入が減りことになります。例えば定員90人の保育園では年間50万円以上の減収となり、保育園の運営に打撃を与え保育の質を低下させかねません。不足分を市が補う支援策も検討すべきです。

 第四に、副食費の徴収も市が関与せず施設任せです。多忙化が加速するとともに、滞納があればすぐに経営に影響するため、リスク回避のために入園者の選別につながる懸念があります。これまでの保育料のように、市の徴収を検討していないことも問題です。
 
 第五に、安倍政権が、来年度からは、公立保育所の保育料の無償化に必要な財源を全額自治体負担にしていることは、今後さらに公立保育所の廃止・民営化の加速を誘導するものであり認められません。保育の無償化で、ますます公立保育所の必要性が増してきます。 待機児童、いわゆる保留児の解消のためにも、本市の市立保育所の3歳未満児保育の拡充など、市民の保育ニーズに答えて入所待機児問題の解決を目指すべきです。

 次に、議案第93号、前橋市家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準を定める条例の改正についてです。

 家庭的保育事業等は、民間事業者が0歳から2歳児を対象に小規模で行う保育事業です。現在、本市にはありませんが、待機児童の解消とともに、過疎化が進み、保育施設の確保が困難な地域での普及をねらいとしています。
 しかし、保育士資格のない職員を研修だけで保育を認めることで果たして幼児の安全が確保できるのかなど、多くの問題が指摘されています。また、いったん受け入れた子どもたちの卒園後の保育を安定的に継続していく上で、連携施設の確保が大切です。法改正で、保育園や子ども園など連携施設の確保が著しく困難と市長が認めれば不要としたり、5年間は確保を猶予するとされていたものを更に5年間猶予し10年に延長する等、保育の規制緩和がすすめられるもので、認められません。

 最後に、議案第95号、前橋市森林環境譲与税基金条例の制定についてです。

 森林環境税は、2023年度末で期限切れとなる復興特別住民税に替えて、個人住民税均等割に上乗せ徴収されるものです。個人住民税の均等割は固定額の課税であり、所得割が非課税となる人にも課税される逆進性の高い税であり、その均等割への一律額、県税市税それぞれ500円、合計1000円の上乗せは、低所得者の負担をさらに強めるものです。
 また、国や温室効果ガス排出企業が引き受けるべき負担を、森林保全対策や森林の公益的機能の恩恵を口実に、国民個人に押し付けるものともなっています。さらに、森林環境譲与税として市町村と都道府県に配分されますが、不合理な配分率により、結果として森林のない大都市のほうが、森林のある地方部より剰余額が大きくなるという矛盾も生じています。このことから、本市で、無批判に基金を設置して譲与税を積み立てることにも賛成できません。
 以上、10議案について反対理由を申し述べまして討論を終ります。


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