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議会報告

2020.7第2回定例会本会議総括質問(長谷川薫・6月18日)
【2020/7/18】

1、新型コロナウイルス感染症と市政運営の見直しについて
(1)基本認識(市長)
初めに、新型コロナウイルス感染症拡大についての市長の基本認識について質問します。
今回の感染拡大は、資本主義の構造的問題に起因していると思います。
 第一に、未知のウイルスの出現についてです。いま、日本を含む世界中のグローバル大企業による地球規模の乱開発や地球温暖化ガスの大量排出によって、自然破壊や地球温暖化が急速に進んでいます。その結果、住む場所を奪われた多くの動物が人間と接触する機会が増えて、動物だけがもっていたウイルスが人間に感染し、急速に世界中に感染が拡大しました。多くの科学者が、今後も新たなウイルスの出現が繰り返されると警告しています。
 第二に、日本では、政府が進めてきた「構造改革」の下で、急性期のベッド減らし、公立・公的病院の統廃合、保健所の削減など医療費削減と行政の民営化・市場化が進められ、医療提供体制が大きく後退しているために、今回のコロナ危機で国民の命と暮らしが脅かされました。
 第三に、労働法制の規制緩和によって、低賃金、長時間労働、過労死、人間を使い捨てにする不安定雇用など、ひどい働かせ方が野放しにされて、「自己責任」が押し付けられてきました。その結果、労働者の休業要請や解雇の不安が600万人にも拡がり、低所得世帯層にコロナ禍のしわ寄せが集中しました。
 このように、大企業の利潤追求を最優先する政治や「富裕層が富めば、いずれは庶民にしたたり落ちる」と主張する新自由主義がもたらした政治のゆがみが、コロナ感染拡大に脆弱な状況を作り出したと思います。市長は今回のパンデミックをどのように認識されているのか、答弁を求めます。

【提言】
● この間、エボラ出血熱、エイズ、SARS、そして、新型コロナウイルスなどの新しい感染症が次々と発見されています。感染症への取り組みの強化は人類的な課題です。
 この点では市長とわが党は共通認識ですが、感染症に十分対応できない脆弱な社会を作り出した大元の原因である新自由主義、経済効率優を最優先する新自由主義の弊害についても問題意識を持たれるよう要望しておきます。
● 再度、申し上げますが、医療体制の充実を進めてきたドイツなどと異なり、日本においては、医療費削減・社会保障費抑制政策が強力に続けられ、医療・保健・公衆衛生の体制は、大きく弱められています。とくに保健所は、この30年間で852カ所から472カ所に約半分に減り、職員定員は7000人も減らされました。PCR検査などを担う地方衛生研究所や、国立感染症研究所の予算・人員も、連続的に削減されました。小さな政府を目指す行革推進をあたらため、感染症対策の体制強化が急務という認識に立っていただきたいと思います。
● 治療薬もワクチンもない感染症によって命が脅かされる事態は、決して自己責任ではありません。公衆衛生をないがしろにしてきた国や地方の行政を抜本的に改めなければ、市民の命は守れません。そして、市長には効率優先、弱肉強食の新自由主義ではなく、社会全体で連帯して暮らしを支えあう社会への転換が必要という認識に立っていただきたいと申し述べておきます。
(2)市政運営に臨む基本姿勢(市長)  
次に、コロナ禍の下で市政運営に臨む、市長の基本姿勢について伺います。
いま緊急事態宣言は解除されましたが、すでに、この間の厳しい自粛要請によって、リーマンショック以上の経済危機が深まり、雇用不安や小規模事業者の経営危機、生活困窮者の急増など、民の暮らしを取り巻く状況は深刻さを深めています。今後、第2波3波の感染拡大も予想されており、検査や医療供体制の強化を急ぎ、市民の暮らしを支える長期的な対策が重要となっています。
  市長は、ICT(Information and Communication Technology)情報通信技術を利用した産業振興や行政サービスなどに大変熱心です。今後も、国が示した「新しい生活様式」に沿って、ICT、非接触型の施策を推進する立場を強調されて、テレワークや電子チケットや5G、さらにはスマートホンを使った多くの行政分野のサービスを推進されようとしています。
  しかし、今後もますます進展する高齢化社会の下で、コンピュータやインターネット、スマホなどの機能を自在に使いこなせる市民はまだまだ多数にはなってはいないのではないでしょうか。1CT推進策は、必ずしも長期に続くコロナ禍の下での市民の暮らしや地域経済活性化につながる支援にならない側面もあると思います。事実、市民の中には、今回の定額給付金や持続化給付金などのオンライン申請に戸惑う方が大勢おられました。
 今後の市政運営の重点を、多額の経費が必要なICT推進ではなく、高齢者も含めて使い勝手の良い、全市民を視野に置いた暮らしや営業を支える実効性のある支援策や医療・福祉・教育の充実策を前面に打ち出すべきだと思います。
コロナウイルス感染症対策や冷え込んだ地域経済をどのように活性化させるのか、子どもたちの教育や市民の暮らしを支える施策をどのように強めるのかなど、市政運営に臨む基本姿勢についての市長の見解を伺います。
【提言】
●私も最近のことですが、3密対策として開催されたオンライン会議に参加しました。わが党も、ICT活用をすべて否定しているわけではありません。必要な行政分野もあると思います。しかし、先月の臨時議会でも議論になった電子チケット事業のように、利用店舗の選定基準もあいまいな上に、導入コストが総事業費の半分に及ぶ点や、市民以外のチケット利用を排除できないなど、制度設計が不十分なまま導入することは、費用対効果や、市民の暮らしを支える緊急施策として有効かどうかなどの点で、市民の理解が得られないと思います。
●またICT教育も、分かりやすい授業ができる点や子どもにとって楽しい授業になる、今後の情報社会に対応する力をつけるなどのメリットがある反面、考える力が弱くなる、活字離れが進む、情報漏洩の恐れがある、教員の多忙化の加速、タブレットなどの導入コストがかさむなどのデメリットがあります。
●市長はICTを活用したシステムやサービスが普及することで、社会インフラとして新たなイノベーションを生むことが期待されていると強調されてきましたが、今市民が求めているのは、教育格差の是正などの子育て支援策、さらにコロナの影響で飲食店が廃業の淵に立たさ、派遣切りで生活できないなど生活や営業の危機を乗り越えられる支援策です。当面は、ICTによるイノベーションの創出を重視せず、低所得者支援や中小事業者支援を具体策化するよう求めておきます。
(3) 今後の財政運営方針
次に、コロナ対策を充実するための今後の財政運営の考え方について、財務部長に伺います。経済面でのマイナス影響は、国民総生産が戦後最悪の落ち込みになると予想されるなど、リーマンショック時以上になると言われています。何よりも、市民の暮らしや教育、小規模事業者の営業を支援する施策の強化が求められます。
 今年度予算化したものでも、執行の規模や時期、方法についてあらためて検討するとともに、来年度の予算編成に向けては、不要不急の事業を中心に抜本的な事業見直しに取り組むことが求められています。
 とくに、新道の駅の整備事業や中心市街地の再開発事業など大型事業などを見直しながら、感染拡大防止のために保健所体制の強化や検査や医療提供体制の強化を積極的に支援し、市民が求めている暮らしの支援策を継続的に強めるためにコロナ対策財源を緊急に確保すべきと考えます。
  また、国は2兆円の臨時交付金の追加補正を決めましたので、十分な本市への配分を求めると同時に、本市の当初予算で計上した各種イベント中止による総額約3億5千万円の不用額や約60億円の財政調整基金などの独自財源を今こそ最大限活用して市民の暮らしを応援する強力な支援策を具体化すべきです。財政運営方針について、それぞれ見解をお聞かせください。
【提言】
●先月の臨時議会では、国が本市に配分した7億8千万円の地方創生臨時交付金の半分の約3億5千万円の支援策が具体化されただけです。多くの市民が今回の定例会で、暮らし応援の市独自の支援策補正予算を期待していましたが、ほとんどがすでに専決処分されたり臨時議会で議決された事業の補正であり、高崎市のような国の10万円の給付金に加え、子育て中の3万世帯に市内の商店で使える5万円の商品券を総額15億円も給付するような事業化は示されませんでした。
 前橋市は、すでに終了した経営安定資金融資の利子補給や保証料負担の約14億円の支援策以外は、県内の自治体と比べても独自支援策があまりにも弱すぎると指摘せざるを得ません。

●コロナ禍による市民への暮らしの影響は今後も長期化すると思います、したがって、市の財政運営は、福祉・暮らし・教育を最優先して、とくに大型事業、いわゆるハコもの整備については、費用対効果をこれまで以上に慎重に判断し、不要不急の事業は中止し、新規事業の規模や時期はより厳格に判断すべきだと思います。また、すでに開始している事業についても、見直しの検討が必要になっていると思います。
 用地買収がほぼ完了しつつある新道の駅の整備は、本市においても、大規模な道の駅の整備が全市民的な要望とは思えません。広域的な外出自粛が今後も予想される中で、整備を急いでも年間100万人の集客は期待できないと思います。オープンを急いでも赤字運営を強いられかねません。施設整備については国や県と改めて協議し、長期的視野に立って施設整備の規模や時期等を見直し、生み出した財源をコロナ対策に回すよう求めておきます。
2、検査及び医療提供体制の強化について

(1) 積極的な検査戦略への転換
次に、検査及び医療提供体制の強化についてです。
政府の専門家会議では、国内では少なくとも今把握できている感染者の10倍の患者がいるとの発言があります。第2波第3波に備えるためにも「新しい生活様式」を呼びかけるだけでなく、感染状況の実態を把握するためにPCR検査と抗体・抗原検査をできるだけ大規模に行う必要があると思います。
  本市ではこれまでに800件以上のPCR検査の実績がありますが、今後とも、保健所のコールセンターへの市民からの相談には、かかりつけの医師の受診や本市が開設した発熱外来の受診を進めるとともに、濃厚接触者などで症状が出ていない場合でも、検査に結び付くように対応すべきだと思います。
 また、県内でも高齢者介護施設や医療施設で集団感染が発生しています。治療目的だけにとどまらず、広く感染の有無を調べるスクリーニング目的のPCR検査の実施が必要だと思います。とくに、感染症の危険と隣り合わせで働いている医療や介護従事者については、PCR検査や抗体検査を積極的に行うべきと考えますがいかがでしょうか。積極的な検査戦略への転換を求めますが、いかがでしょうか。
【提言】
●前橋保健所の帰国者・接触者相談センターでは、かかり付けの医師からのPCR検査の要請があれば、市内の帰国者・接触者外来を紹介していますが、市民からの直接の検査要望には発熱など国の判断基準に沿った対応をしてきました。しかし、コロナウイルス感染症は軽度の場合は症状が出ない場合が多く、発熱や味覚障害などの症状が出た時などには、急速に重症化し人工心肺・エクモで救命する以外に治療できない事態も起こります。

●全国的には、「症状があるのに検査を受けられない」など、多くの人が検査を受けられず苦しみ、重症化して「手遅れ」になる事例も相次ぎました。こんなことを繰り返してはなりません。感染を早期に発見し、適切な治療・隔離を行えるようにするためにも、PCR検査や抗体検査を増やし、感染の全体像をつかむことが必要です。そうしてこそ感染拡大の次の波が起こった際に、迅速で的確な対応ができるようになります。県の衛生研究所の体制強化だけではなく、市独自に財政支援も行い大学や民間事業所等の検査協力要請もすべきです。感染拡大防止と段階的な経済活動再開を両立させる最大のカギは、検査の抜本的強化にあることを強調しておきます。
(2)医療提供体制の強化
次に、医療提供体制の強化についてです。今後、市内の感染症患者の治療担う医療機関は、今回を教訓に感染病床の確保、防護資材の確保、人工呼吸器や人工心肺・エクモの確保、さらには医師・看護師・臨床工学士など医療従事者の研修や人材確保など、今後に備えた体制整備が求められています。
 しかし、2月から現在に至る中で市民の感染を恐れた受診抑制が大きく広がり、中核的な病院でもひと月で1億円近くの減収となるなど、帰国者・接触者外来を受けつけた病院や直接コロナ患者に対応していない病院・診療所でも職員の給与の減額を検討せざるを得ないなど、経営危機が深刻化しています。
 
  国は、第2次補正で医療機関に1兆2千億円の予算化をして、コロナ患者などの入院対応をした医療機関には、診療報酬を3倍化する措置や運営費支援、さらには医療従事者への支援金の給付を行うとしています。一方、非コロナ対応医療機関の経営危機に対する財政支援はまったくありません。前橋市内の医療機関は、役割分担をして地域医療を支えているのであり、その全体の経営を守り抜くための国や県に財政支援を求めるべきです。また、クラウドファンディングによる支援やマスクや消毒液だけではなく、医療崩壊を引き起こさないための強力な支援や病院経営を支える実効性のある市独自の財政支援を具体化すべきと考えますが、見解を。
【提言】
●本市は医療機関が多く健康医療都市前橋として、全国に魅力をアピールしてきました。しかし、今回のコロナウイルス感染問題によって、前橋市も感染症対応の体制は決して十分ではないことが露呈しました。国や県と連携しながらも、コロナ患者を受け入れる病院の減収・負担増に対する補償、病床の確保や宿泊療養施設の借り上げ、さらには、地域の通常の医療を担う診療所・病院への減収補償を市独自に支援して、第2波に備えて医療提供体制を維持することが必要だと思います。
●懸命な感染防止の努力を続けている医療機関、医療従事者への支援を前橋市が独自に行ってこそ、医療機関と前橋市との信頼関係が構築され、ひいては市民の命と健康が守られることに結び付くと考えます。このことを強調して質問を終わります。

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