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活動報告

前橋市の新清掃工場建設計画を考える講演会を開催(2010.2.13)【2010/2/26】

前橋市が計画している新清掃工場の建設を考える講演会(日本共産党市議団主催)が13日、県総合福祉センターで開かれ、市内や伊勢崎市、玉村町などから約100人が参加しました。
 市は現在稼働中の3か所の清掃工場の老朽化を理由に下増田町に大規模な清掃工場の建設を計画。現在、機種選定委員会で焼却炉の方式を決める作業を行なっています。
講演会では長谷川薫市議が計画の概要と問題点を報告。「市民への十分な説明や合意がないまま推進すべきではない。建設も維持管理にも経費がかさむ溶融炉は採用すべきではない。本格的なごみ減量に取り組むべき」と述べました。フリーライターの津川敬さんは、高熱でごみや焼却灰を溶かす灰溶融炉やガス化溶融炉の危険性を、全国の清掃工場での爆発事故やトラブルを具体的に示して報告しました。
参加者からは、「市は市民にもっと情報提供すべき」「ごみを減らす取り組みに市はもっと力を入れるべき」「清掃工場からの環境汚染が心配」などの声が出されました。


 市の新清掃工場建設計画の概要と問題点
2010.2.13 日本共産党前橋市議団
 
1、市の建設計画の概要
@ごみ発生量の将来予測
 現在の市のごみ発生量は年間14万5千d・人口は34万6千人。市が収集するごみは微減傾向にあるが、市民や事業者が搬入する可燃ごみは増加傾向にある。
人口は今後15年間で約1万8千人減少して32万8千人になると予想しているが、焼却すべきごみは年間14万7千d発生すると見込んでおり、全体として増加傾向にある。

A稼働中の現有3工場の焼却炉の老朽化への対応が必要。
●六供清掃工場・平成3年稼働開始、現在19年目。処理能力は一日24時間連続焼却405d。運営費用年間6億3千万円。年間可燃ごみ搬入量約10万d。市全体の可燃ごみの75%処理。
●亀泉清掃工場・昭和52年稼働開始、現在33年目。一日8時間25d。運営費用年間約8千万円。年間可燃ごみ搬入量約5千600d。
●大胡クリーンセンター・平成2年稼働開始、現在20年目。一日24時間連続焼却108d。
運営費用年間2億4千万円。年間可燃ごみ搬入量約1万2千d。

3工場の年間合計運営費用9億5千万円。
3工場ともダイオキシン対策工事実施(平成12〜14年合計約60億円)。亀泉と大胡は大規模改修工事済み (亀泉は新炉工事に12億円)
耐用年数は六供・25年目の平成28年、大胡は大規模改修から10年目の平成27年、同様に亀泉は平成24年と見込んでいる。(注・今後とも大規模改修工事をしない場合)

B新清掃工場建設の必要性
 老朽化に対応する大規模改修をすると多額の費用がかかる(六供清掃工場の場合は50〜億円70億円見込まれる)
国は「ごみ処理の広域化と一日の処理能力300d以上の施設が望ましい」と方針化している。市がめざしているごみ減量化方針から見ても、現在の3工場の538dの工場をそのまま残すことは過剰な設備規模となる。
整備計画は建設費や維持管理費の削減が図れて財政的に優位、熱回収施設としての規模が確保できて、1箇所で集中的な管理することで長期的に安定した稼働も可能になる。
したがって、3清掃工場を廃止して、新清掃工場を平成27年度の稼働開始をめざして建設する。

C新清掃工場建設にあったての課題
 収集効率の低下、市民の利便性の低下については、今後検討。
3工場のごみのパッカー車による搬送費用年間約7億円〜1箇所に統合した場合には運行距離が伸びるため約30%、年間2億円増加する。

D新清掃工場の建設計画内容
●場所は前橋市の最東端・下増田町の市の所有地(約25年前に六供清掃工場建設前に清掃工場予定位置として取得した土地) 
●施設規模〜日量430~450トン。
●建設単価〜トン当たり4000万円から6000万円・180億から270億円。
●補助(交付金)〜総建設費の3分の1の国庫補助 不足分は起債(9割は交付税算入)

●焼却方式〜新清掃工場機種選定委員会で選定作業開始(専門家4名の委員)    
     @従来のストーカー炉 Aストーカー炉+灰溶融炉 Bガス化溶融炉
      (清掃工場プラントの大手メーカーは約10社・入札方法は今後検討)

E市民への説明
●前橋市廃棄物減量等審議会〜平成20年1月諮問・審議・平成21年3月パブリックコメント(※市民の意見表明は1件のみ)、同5月答申。

●新清掃工場整備検討委員会〜平成21年2月発足 委員12名で構成 
これまでに5回の委員会開催(議事録.資料は市のホームページで公開している)
※学識経験者2名(工科大学教授・准教授) 住民代表4名(市環境保健地区組織連合会長・行   政自治委員会長・市消費生活啓発の会会員・旧富士見村元区長会長) 住民代表1名(下増田町自治会長) 事業者代表2名(農協木瀬支所長・商工会議所環境委員長) 廃棄物処理業者2名(一般廃棄物処理事業協同組合理事長・再生資源事業協同組合専務理事)・・・・整備計画や環境アセス内容などはすべてこの検討委員会で協議している。市当局は検討委員会で協議しているので市民合意は得られている認識している。

●地元対策〜市は平成20年5月、下増田町清掃工場設置対策委員会を組織 
      地元下増田町住民29人で構成 他自治体の清掃工場などの視察を実施

F現在〜埋蔵文化財の予備調査・周辺5キロ圏内の環境影響調査開始(昨年11月7箇所〜市内4・伊勢崎2・玉村1で説明会開催)・隣接の運動広場(野球場やグランドゴルフ場などに整備)の土地購入と造成整備(すでに20年・21年度の2年間で24億円支出)
●今年度から清掃建設準備室を設置。専任4名。兼任6名体制。

2、日本共産党市議団の主張(議会での論戦の概要)
@市民への十分な説明や合意がないまま整備計画を推進すべきではない。
 大量焼却による効率化を求める国の誘導策に安易に追随すべきではない。ごみ焼却コスト削減のために1箇所に統合といっているが、規模の大きな焼却施設は同時に建設経費も維持管理経費もかさみ浪費型施設となる恐れがある。単純に財政効率が向上すると判断することはできないのではないか。
さらに、建設場所は前橋市の東端であり市民の持ち込みに不便。一方、伊勢崎市にとっては市の中心部に近く、市議会や隣接地区住民は建設に反対の声をあげている。多くの市民には、これらの疑問や整備計画の詳細説明が十分行われておらず、1箇所への統合の是非についての市民合意が得られていない。環境影響評価を先行するのではなく、市民参加で統合の是非や焼却炉の安全性や採算性などを十分検討すべき。

Aごみの減量について本格的な取り組みが不十分。 前橋市は、平成12年から27年度までの16年間に現在より20%のごみ減量をめざしている。平成20年度は対前年度比で、家庭ごみは2%減少しているが、事業系ごみは逆に1%増えている。自治会設置のリサイクル倉庫の設置費用の助成などを実施しているが、ごみの減量にむけての全市民的な運動が不十分。かつて、平成16年にごみの指定袋導入や新たなごみ分別方式を導入するときには、市内の全自治会単位の説明会を239回も開催するなどのきめ細かい説明会が開かれた。清掃工場の規模を縮小して財政支出を減らすためにも、本格的な取り組みが求められている。排出抑制やリサイクルなど事業者と行政・市民が一体となったごみ減量のとりくみが大変不十分。

B1箇所への統合は環境への負荷を増やし、市民サービスの低下にならないか。
 一日400台の収集車の運行距離が伸びるために、収集経費が3割増える。そのために、CO2削減・地球温暖化防止対策と矛盾する。1箇所への統合は、収集車の運行時間も延びるために地域のごみ収集時間が予定通りできなくなったり、市民の持ち込みが不便になるなど、市民サービスが後退する。

Cガス化溶融炉の導入はやめるべき。多大な建設・運転費用・事故の不安・環境汚染の危険。
 前橋市は2015年末の完成をめざす清掃工場の焼却方式選定委員会を昨年12月に設置して、わずか半年でスピード選定しようとしています。
採用を検討しているガス化溶融炉は、ごみを前段のガス化炉で低酸素状態で加熱して可燃性のガスと炭に分解し、発生したガスと炭を後段の溶融炉に投入し1300度以上の高温で燃焼して、溶融スラグを生成する焼却炉です。メーカーはゴミから生成される溶融スラグは道路の路盤材に活用できるので最終処分場がいらない。廃熱を利用して発電や熱供給もできる「夢のゴミ処理施設」といっています。
しかし、@高温で燃焼することによってダイオキシンの発生量は減らせるが、不完全燃焼によって他の有害物質を発生させる恐れがある。A溶融スラグは有害物質が含有されている心配があり、路盤材に使えば地下水汚染の心配がある。リサイクルが確立されておらず、取引先がなく野積みされている自治体もある。B高温によって水銀やカドミウムなどの重金属がガス化されて大気に放出される危険性がある。C高温・高圧の可燃性ガスを発生させるため、爆発事故を起こす危険性がある。D莫大な費用がかかる。

D溶融炉計画を撤回した川崎市。
 川崎市は人口約140万人の政令都市です。現在4カ所のごみ焼却工場がありますが、そのうちの王禅寺処理センターが老朽化したために隣接地に2011年の竣工をめざして新清掃工場の建設工事を行なっています。
 市当局は2002年当初は、コークスなどの助燃剤をごみと共に2000度の高温で燃やし、溶鉱炉のようにごみを溶かし灰も凝固させ(スラグ化して)再利用する処理方式・ガス化溶融炉を採用しようとしていました。
 ところが、日本共産党川崎市議団と多くの市民団体が「溶融炉は安全性に問題があり、建設費用も運転費用も多額の経費がかかる。溶融スラグの需要も安定していない。溶融炉でなくても建設費の3分の1の国の交付金は受けられる。最終処分場の延命は従来の処理方式のストーカー炉と変わらない」と提言しました。
 市の焼却方式選定委員会はその提言を受け、全国の自治体の溶融炉の運転状況や経費などを調査しメリット・デメリットを総合的に検討しました。その結果2005年、溶融炉をやめて、これまでの4清掃工場と同様の「ストーカー式焼却炉」に選定し直したのです。

E党市議団の見解
●国のごみ処理の広域化・焼却炉の大型化方針への追随である、1箇所への統合計画をやめ、複数の清掃工場で処理する方向で計画を見直す。
●国の清掃工場の長寿命化補助制度(環境省による「廃棄物処理施設における長寿命化計画策定支援事業」の交付金対象・一括交付は3分の1となっている)を活用して、稼働中の3清掃工場の延命策を検討する。
●新清掃工場の建設予定地が適切かどうかを、再検討する。
●新清掃工場については、危険な溶融炉をやめて、従来のストーカー炉を採用する。
●検討委員会だけの検討ではなく、全市民に計画の内容を周知し、市民合意を前提とする。

3、高木市長に伊勢崎市議会議員(7名)・三郷地区区長会(区長5名)・宮郷地区区長会(9名)から新清掃工場建設予定地の再検討を求める要望書が3通提出される。〜1月28日(要旨)
 ごみ処理施設は、市民生活にとって必要不可欠な施設であるが、建設地の選択は非常に重要。前橋市の整備構想は、建設地の適地の検討が不十分。前橋市は昭和52年に用地取得したが、現在の伊勢崎市の周辺環境は住宅が密集し商業集積地域と変貌している。学校・病院・介護施設も多数ある。当該予定地は、建設費や維持管理費の削減が図れるなどの説明がされているが、隣接地域で暮らす住民への配慮が検討されていない。このような計画は到底理解できない。生活環境の悪化や地域経済の発展を大きく損なう。建設予定地の再検討を要望する。


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