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活動報告

2020年度前橋市の予算編成に関する日本共産党の要望書(1)【2019/12/3】

2019年11月11日
前橋市長    山本  龍 様
前橋市教育長  塩崎 政江 様
公営企業管理者 箕輪 裕之 様
                      日本共産党前橋地区委員会
                         委員長 白鳥 淳一
                      日本共産党前橋市議団
                         団 長 長谷川 薫
はじめに

市民の命と暮らしを支える各分野の施策の推進に敬意を表します。
今年は、台風15号・19号など、かつて経験したことがないような強風や豪雨による大規模災害が発生しました。本市においても、全国各地の災害の実態を直視して教訓を導き出し、防災・減災対策に生かすことが強く求められています。
 また、7月に行われた参議院選挙では、市民と野党の共闘が大きく前進し、いわゆる改憲勢力が憲法改正発議に必要な3分の2の議席を割り込み、自民党は単独過半数を失う結果となりました。
しかし、安倍政権はこれまでの政治姿勢を見直すこともなく、選挙後に公表した公的年金の「財政検証」では、マクロ経済スライドにより基礎年金の給付が今後約3割も削減されることが明らかになり、現役世代も含め国民の間に将来の暮らしの不安が広がっています。
さらに、消費税10%増税の強行は、日本経済と国民生活に深刻な打撃を与え、格差と貧困を拡げ、市民生活の悪化を招くことが強く懸念されています。
 市民生活と中小業者の生業を守るためにも、逆進性の強い消費税収に依存する財政運営をやめ、不公平税制の是正を図るよう政府に強く迫るべきです。
いま政治に求められているのは、高齢化・少子化を口実にした社会保障の切り捨てではなく、国民の将来不安を解消し、少子化を克服する具体的施策です。そのために、労働者の低賃金と長時間労働の是正、非正規から正規雇用への転換、高齢者支援や子育て支援の拡充などで、誰もが希望を持って安心して暮らせる社会の実現をめざすべきです。
日本共産党前橋市議団は、市民不在で、事実上、民間丸投げの大規模な公共事業優先をやめ、福祉・教育・くらし・防災を最優先する市政への転換を一貫して主張してきました。また、国に追随したマイナンバーカードの普及や民営化や民間委託、官製ワーキングプアーを増やす行財政改革に反対してきました。
地方自治法は第1条2項で「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする」と規定しています。今こそ、次々と押し寄せる国の悪政の荒波から市民の暮らしを守る防波堤の役割を果たし、憲法がかかげる恒久平和、基本的人権尊重の理念を活かした市政運営をめざすべきです。
 本要望書の213項目の要望は、党市議団が市内の各界各層の団体、個人から広く聴取した要求をまとめたものであり、その実現は市民生活の向上に間違いなくつながるものであると確信しております。
来年度予算編成に反映していただきますよう心から要請いたします。

1、平和行政について
安倍政権が強行した安保法制=戦争法が施行され、「米軍防護」や日米共同訓練がエスカレートし、米国が起こす戦争に自衛隊が参戦する危険が現実に高まっている。今年、トランプ米大統領は、安倍首相とともに海上自衛隊護衛艦で、「われわれ(日米両国)の軍隊は、世界中で一緒に訓練し活動している」と演説するなど、自衛隊の海外派兵に道を開こうとしている。
 安倍政権は昨年末、新「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」を策定し、5年間で27兆4700億円もの軍事費を投入する大軍拡路線をしき、「いずも」型護衛艦にステルス戦闘機F35Bを搭載するための「空母化」や、長距離巡航ミサイルの導入、米兵器爆買いでF35戦闘機147機購入や総費用6000億円以上とされる「イージス・アショア」の配備など「専守防衛」の建前をもかなぐり捨て大軍拡へと突き進んでいる。さらに、安倍首相は、憲法9条改憲に異常な執念を燃やし、自民党は「早期の憲法改正」を目指すとしているが、夏の参院選挙で自民公明、維新の改憲勢力は3分の2を割りこみ、自民党も議席を減らすなど、国民世論は安倍改憲に否定的である。
 今、変えるべきは憲法ではなく、憲法をないがしろにした政治であり、世界に誇る日本国憲法の進歩的な諸条項を生かした政治を実現することである。そして、安倍政権が強行した安保法制=戦争法、秘密保護法、共謀罪など、一連の違憲立法を廃止し、立憲主義と民主主義を取り戻し、憲法を生かした平和日本つくることである。
?9条改憲について
安倍首相は、「9条に自衛隊を明記する」だけであり、「自衛隊の権限・任務は変わらない」と言っている。しかし、ひとたび憲法に自衛隊の保持を明記すれば、戦力不保持と交戦権の否認を掲げた9条2項の空文化=死文化に道を開き、海外での無制限の武力行使が可能になってしまう。
9条改憲については、各種世論調査でも世論を二分するものとなっており、9条改憲に反対する3000万署名運動が全国で取り組まれている。それにもかかわらず、強引に推し進めることは国民の声を無視した強権的な暴走政治と言わざるを得ない。市としても9条の改憲はやめるよう国に強く求める。

?憲法違反の安保法制=戦争法の撤回について
この間、朝鮮半島をめぐって、南北首脳会談や米朝首脳会談などの合意によって対決から対話への歴史的な転換が起こっている中で、今、我が国に求められているものは、「戦争する国づくり」ではなく、憲法違反の安保法制=戦争法の廃止である。よって、市は安保法制の撤回及び、大軍拡から軍縮への転換を国に強く求める。

?核兵器禁止条約について
2017年7月、核保有大国の妨害をはねのけて、核兵器禁止条約が国連加盟国の3分の2にあたる122カ国の賛成で採択され、条約はすでに70カ国が署名し、23カ国が批准している(6月19日現在)。50番目の国が批准してから90日後に発効することになっており、近い将来の発効が見込める情勢となっている。国内でも、ヒバクシャ国際署名が941万を超え、核兵器禁止条約の署名、批准を求める地方議会の決議は、全自治体の2割以上の394に達するなど、「核兵器のない世界」をめざす大きな流れが起きている。直ちに核兵器禁止条約に署名し、批准することを国に強く求める。

?前橋空襲をはじめ戦争の悲惨さと平和の大切さを語り継ぎ、二度とふたたび戦争を
起こすことのないようにするため、平和資料館を創設する。

?広島・長崎市主催の平和式典や原水爆禁止世界大会等への市民代表の公費派遣など、
核兵器廃絶をめざす活動への支援を拡充するとともに、沖縄の平和式典にも派遣する。

?「非核平和都市宣言塔」を市内各所に設置するなど、予算を増額して各種平和事業を
抜本的に充実する。

?前橋市が実行委員の一員として開催するイベント(3大まつりなど)に、自衛隊が実戦
で使う装甲車などを展示し自衛隊員募集案内をしている。
今、安保法制や9条改憲について市民の世論が二分している中で、不特定多数の市民が参加するイベントへの自衛隊の参加はふさわしくないので、実行委員会として要請すべきではないという立場をとるとともに、自衛隊から要請があっても認めない。


2、米軍ジェット機の低空飛行及びオスプレイの配備・飛行の中止について

神奈川県横須賀基地には、安保法制が強行成立された直後の2015年10月に新しい原子力空母ロナルド・レーガンが配備された後、新型イージス艦3隻が相次いで配備され、現在は最大14隻体制となっている。横須賀を母港とする空母打撃軍や佐世保を母港とする強襲揚陸艦の遠征打撃軍は、イラク戦争など、米国の無法な戦争に派遣されてきた。
在日米軍基地が、世界への無法な殴り込みの一大拠点として強化されていることは極めて重大である。
2016年12月、米海兵隊のオスプレイMV22が名護市の海岸に墜落し、その後も、オーストラリア沖やシリアでの墜落事故、大分空港や新石垣空港への緊急着陸や機体から白煙を上げて飛び立てなくなるなどの事態が相次いでいる。ところが、米軍はいずれも詳しい情報を明らかにせず、日本政府は「理解」を表明している。日本国民の安全よりも「日米同盟」を優先するもので、主権国家として恥ずべき態度である
オスプレイは米海兵隊の航空機全体で最も事故率が高い欠陥機であり、日本全国どこでも重大問題である。全国6つの低空飛行ルートで、年間330回もの訓練が計画されている。横田基地に昨年10月に米空軍のCV22オスプレイ5機が配備され、2024年には10機体制になる予定である。米軍が配備を予定しているオスプレイ、自衛隊が佐賀、木更津駐屯地など導入を決めているオスプレイを合わせれば、日米あわせて50機ものオスプレイが日本中を飛び回ることになる。

?横須賀に寄港した原子力空母から飛び立つ米軍ジェット機は、毎年冬場に昼夜を問わ
ず本市の上空を飛行訓練している。市民の平穏な生活を脅かす前橋市上空での低空飛行訓練を行わないよう引き続き国に強く求める。

?米合意では危険なヘリモードでの飛行は、運用上必要な場合を除き、米軍施設内での
み行うとしているが、実際には横田基地周辺の市街地上空での同モードでの飛行が相次ぎ、一部部品が落下する事故が多発している。
市民の平和な暮らしを脅かす、オスプレイの配備や飛行訓練を中止するよう国に求める。

?国内に多くの米軍基地があり、米軍施設・区域に起因する事故・騒音・米軍人等によ
る事件・事故が絶えない。しかし、日米地位協定により、国内法を米軍に適用することができず、国民の安全が脅かされ続けている。日米地位協定の早期改定を米国に働きかけることを国に強く要請する。

3、消費税10%増税について
10月からの消費税の10%増税に、怒りの声が全国で広がっている。政府は「消費税は社会保障のため」と繰り返して説明してきたが、消費税を導入してから31年間、年金は減らされ、サラリーマンの医療費窓口負担は3倍に引き上げられ、介護保険の給付は減らされ負担は増やされるなど、社会保障は切り下げの連続である。
 しかも、31年間の消費税収は総額397兆円に達しているが、同期間の法人3税の税収は298兆円も減り、所得税・住民税の税収も275兆円も減っている。
 結局、消費税は社会保障のためでもなければ財政再建のためでもなく、大企業と富裕層の減税の穴埋めに使われたことは明らかである。
  わが党は、財源確保というなら、大企業への減税をやめ、軍事費などの財政支出の無駄遣いを一掃するとともに、最低賃金の引き上げや安定した雇用など国民の暮らしを応援し日本経済を成長の軌道にのせて税収を増やすべきと主張している。
? 子育て世代や年金暮らしの高齢者などに負担が重い逆進性の強い消費税は、少なくとも5%に減税するよう国に求めるとともに、経済財政政策の根本的な見直しで、消費税に頼らない税制を確立するよう強く求める。

?上・下水道料金への消費税転嫁をやめる。

?消費税の増税を理由に、公民館やスポーツ施設など公共施設の利用料の引き上げを行わない。
4、地方創生について

安倍政権が5年前に人口減少や地域経済の対策として打ち出した「地方創生」は、東京一極集中を是正して地方を活性化するどころか、行政サービスと公共施設等の民営化や集約化、さらには自治体間の広域連携を誘導し、人口減少と地域の疲弊をますます加速させている。窓口業務の民間委託では、2018年度から地方独立行政法人が担えるよう地方自治法が改定され、住民のプライバシー漏洩や偽装請負、行政サービスの後退が危惧されている。
 また政府は、「国際競争力の強化」の名のもとに大都市を中心とした自治体への大型開発を集中するために、地方自治体には、コンパクトシティ(立地適正化計画)を求めている。その結果、都市中心部や駅周辺では新たな大型開発が促進され、一方で「周辺地域」は切り捨てが進められている。
 政府が全自治体に策定を求めた「公共施設等総合管理計画」は、すでに実施段階に移されて各種公共施設の統廃合が進められ、行政サービスの切り捨てや地域コミュニティーの崩壊が進んでいる。
 公営企業についても、2020年度までの「経営戦略」策定が求められ、事業廃止、民営化、広域化、民間活用などの「抜本改革」が迫られている。特に、上下水道では、コンセッション(事業の運営権を民間業者に売却する仕組み)を含むPPP/PFIの導入を強く要請していることは問題である。

? 政府が「地方創生」の名のもとにすすめる「集約化」と「地方行革」に追随せず、本市の基幹産業である農林業振興と6次産業化、中小企業と小規模事業者の振興、観光産業や地域おこしなどの振興策、住宅や商店のリフォーム助成制度、自然・再生可能エネルギーの地産地消など、真の地域活性化策に全力を上げる。

? 本市の情報システムの整備には多額の経費が計上されてきたが、教育委員会の情報システムの漏えい事故が起きている。全市民対象のマイナンバー制度の運用についても、個人情報流出防止のためにも情報セキュリティ対策の強化が課題となっている。すでに本市は、高崎市と伊勢崎市との情報システムの共同利用事業を実施しているが、さらに社会保障給付の抑制と税徴収強化を目的とするマイナンバーカードの利用拡大の環境をつくることは問題である。自治体の自治権を侵害しかねない個人情報の広域的管理システムの拡大は止める。
?老朽化が進んでいる公共施設等は、住民の利益に反する安易な統廃合を行わず、必要な財源を確保してリフレッシュ改修をおこなうなど、適切な維持管理に努める。また、学校などの公共施設の跡地活用は、地域コミュニティ活性化のためにも安易に民間営利企業に売却・定期借地などの貸し出しをせず、住民の声を十分聞き住民が望む公益的施設への転用を優先した利活用を図る。

?子育て支援、若者の雇用創出や非正規社員の正社員化への後押し、若者の「地方回
帰」の流れを強めるための定住促進策や前橋移住のU・I・Jターンへの支援を大幅に拡充する。

?国の「地方創生」関連交付金は、地方自治体の自主性を保障し、使い勝手の良い制
度に改め増額するよう国に強く求める。

?安倍政権と財界がねらっている地方自治を後退させる「道州制」導入と新たな市町村の大再編に反対する。

5、行財政改革と職員問題について

地方自治体は、住民にとって最も身近な行政であり、少子高齢化が進む中で、「住民福祉の機関」としての役割の発揮はますます重要となっている。
 ところが安倍政権は、地方財政の縮小を求め、行政の民間委託や民営化を推進して企業活動への支援を強めている。
また国は、行政サービス切り捨てと公共施設の統廃合を自治体に迫り、政策誘導のために地方交付税制度まで改変するなど、地方自治をふみにじる政策を進めている。「前橋市行財政改革推進計画」は、このような国が求める職員削減と外部委託化を一層推進しており問題である。
行政事務、教育、福祉、水道、市営住宅管理業務、健康増進施設運営などありとあらゆる市民サービスを「スリム化、効率化」の名で切り捨てて民間に委託・民営化し、市民に負担増を押し付ける「行革計画」は抜本的に見直すべきである。

? 本市は、過去10年間で正規職員を263名も減らして嘱託や再任用職員に置き換えたため、市役所で働く全職員の4人に1人が非正規職員となっています。
原則3年間で雇止めにする年収200万円以下の官製ワーキングプアーに置き換える職員政策は、民間労働者の賃上げ抑制にもつながり、市内全体で個人消費を冷え込ませる。しかも、市職員の不安定雇用は、市民全体の奉仕者としての意欲やモチベーションを弱め、市民サービスの質を低下させる。
各職場では管理職の多忙化が進み、調査や計画などのほとんどを外部のコンサル業者などに安易に委ねているために、市民ニーズを正確に反映しない事業が民間主導で開始されるなどの問題が起きている。
今後、団塊の世代の職員が次々と退職し、全体として若手の職員が多くなり、中堅が少なくなって、経験やスキル(技量・手腕)のアップや継承が困難になってくる。また、精神疾患による年間30日以上の休職者が年間15人から20人で推移している。市職員が心と体の健康を保持するともに、「全体の奉仕者」として公正で民主的な職務に専念し、質の高い行政サービスの提供や政策立案能力の向上を図るためにも、さらには、刑法犯罪などあってはならない不祥事を根絶するためにも、職員削減を見直し各部署ごとに正規職員を定数化して正規職員を増やす。また、職員のサービス残業を根絶し、超過勤務手当は実態どおり支払うなど、賃金・労働時間などの処遇を改善する。

? 国は、全国的に臨時や非正規職員の賃金や手当などの処遇面で正規職員との大きな格差が生じてきたため、非正規職員の任用根拠を厳格化し、来年度から会計年度任用職員へ移行させて一定の処遇改善を進めようとしている。
 しかし、本市では現在の月額給与を引き下げて、期末手当で現状の支給額を維持する方針である。正規職員との待遇格差を残し、同一労働同一賃金という観点からも改善しない人事政策は問題である。直ちに来年度からの新制度移行に伴う非正規職員の処遇を見直す。

? 経費削減を目的に、「民で出来るものは民に任せる」という方針のもとで民間委託を推進している。2016年〜2019年実施の行革計画に基づいて、この間、市民課窓口業務や斎場の炉前業務の民間委託や2カ所の市立保育所の民営化を実施したが、次期計画においては、市民サービスの後退につながるさらなる民間化の拡大をやめる。

? 低賃金で市の仕事を担う官製ワーキングプアを、市自らが大量に生みだす公共施設への指定管理者制度の導入拡大を中止する。「行革計画」では、外郭団体に限らず民間企業への指定もさらに拡大しようとしているが、3年ないし5年ごとに公募を繰り返す指定管理では、安定した雇用や運営のノウハウの蓄積、専門性の向上は不可能である。公的施設で働く労働者の賃金や勤務条件などの処遇などを把握し、改善指導を強める。

? 行財政改革は、市民サービスを増進し無駄を省くという基本的な立場から、市民本位の「行財政改革」に転換する。市内12カ所で同時施行中の区画整理事業の長期化問題、新道の駅や前橋駅北口再開発、千代田町中心市街地再開発などの大規模開発事業、郊外型の大規模公園拡張・整備事業の問題点、少子高齢化社会に対応した都市計画道路の見直しの遅れの問題、工業団地造成事業の在り方、老朽化が進み空き部屋が増えている市営住宅維持管理事業の問題点、総合的な公共交通政策の推進策などについて、現行の各事業や今後の計画が費用対効果などで適切かどうか、市民サービスが低下しないかなどの観点で再度検証を行うなど、本来の行財政改革計画に転換する。
?市有施設の整備費や維持管理費の削減をめざして、民間事業活動の領域を拡大するこ
とは、公共施設そのものの性格をゆがめ、財政的には地方債発行による公債費が減っても、委託費や物件費等を際限なく増やすことになりかねない。民間資金導入手法であるPFI、PPPなどの手法を取り入れた公共施設整備や事業運営は安易に行わない。

?本市幹部職員による女性市職員へのセクハラ行為が昨年の5月25日に新聞報道された。
事実確認の上で加害職員に対する停職9か月の懲戒処分は行われたが、市当局は機敏な救済策を講ずることもなく消極的対応を続け、被害女性をさらに傷つけたことは問題である。刑事事件となり有罪判決が下されたこの事件を教訓にして、市役所職場だけではなく民間職場も含めて、セクハラやパワハラの根絶をめざした施策を強力に推進する。

6、マイナンバー制度について
政府はマイナンバーカードの普及に力を入れているが、個人情報の漏洩やカードの紛失や盗難といった国民の不安はぬぐえず、顔写真付きのカードを取得した人は13%(19年4月現在)にとどまっている。
 ところが政府は、国民がカードを使わざるをえない状況をつくりだすため、2021年から健康保険証としても使用可能にする、戸籍事務とマイナンバー制度を結びつける戸籍法改正、行政の手続きをオンライン化する「デジタル手続き法」を、今年の通常国会で成立させた。
 さらに政府は、消費税増税「対策」として、自治体発行ポイントのマイナンバーカードへの付与を盛り込み、国民が必要としない制度に固執していることは問題である。
? 本市は、高齢者などの交通弱者が利用するマイタクにマイナンバーカーを導入するなど、国に言われるまま、なし崩し的に制度の運用拡大をしている。ICTのさらなる利活用を推進し、マイナンバー制度の積極活用をはかるとしているが、市民のカード取得率が今年の4月1日現在で12.5%にとどまっているにもかかわらず、カードの市独自の利用を拡大することは問題である。利便性の向上をことさら強調して、慎重なリスク管理も行わないで「推進ありき」で進めることはやめる。マイナンバー制度は拡大せず運用を中止するように国に強く求める。マイタクの利用をカードに一本化することはやめる。
? 全国的にはマイナンバー制度を悪用した詐欺事件や個人情報の流出事故が発生している。今年に入ってからも、トヨタ自動車の販売子会社やユニクロでの顧客情報の大量流出や、イオンカードの不正ログインによる総額約2,200万円の不正利用も確認されている。また、昨年2月には横浜市鶴見区役所でマイナンバーカード78枚と交付用端末パソコン1台が盗まれる事件も起きており、マイナンバーの情報漏えい事案も年々増えており、個人情報保護が課題となっている。本市においては、重要な個人情報が集約されているマイナンバーの各種申請書への記載を強制せず、未記載でも申請書類等を受理する。
? 情報は集積されるほど利用価値が高まり攻撃されやすく、情報漏えいを100%防ぐ完全なシステム構築は不可能である。意図的に情報を盗み売る人間がいる中で、一度、漏れた情報は流通・売買され、取り返しがつかなくなる。政府は顔写真入りのマイナンバーカードを希望者に発行し身分証明書として使えると便利さを強調しているが、「国民の利便性向上」 をいくら強調しても、企業にも国民にもマイナンバーによる恩恵はほとんどない。政府は、経済成長やイノベーションの促進に資するためのビックデータの利活用を進めているが、個人情報保護をないがしろにした、民間企業の利益優先のビッグデータ利活用の推進には重大な問題がある。
 本来、個人に関する情報は、本人以外にむやみに知られることのないようにすべきものであり、プライバシーを守る権利は、憲法が保障する基本的人権である。とくに、現代の高度に発達した情報化社会では、国家や企業などに無数の情報が集積されており、本人の知らないところでやりとりされた個人情報が、本人に不利益な使い方をされるおそれがある。
 カードに情報の範囲を広げるほど情報漏れリスクは高まることは明らかであり、市民に発行促進の啓発は行わない。
7、税収納行政について
日本の貧困率(相対的貧困率)は15.6%、子どもの貧困率は13.9%でOECD加盟国平均を上回り、とくに、ひとり親家庭の貧困率は50.8%と、深刻な事態になっている(2015年調査)。いま「ワーキングプア」「下流老人」「子どもの貧困」などの言葉がマスメディアをにぎわしており、あらゆる年代・階層が、失業や病気などで所得が減れば、たちまち生活が行き詰まり、貧困におちいる危険と隣りあわせで暮らしている。
安倍政権の6年半で、1世帯当たりの実質消費支出は、年20万円も落ち込んだままで、働く人の実質賃金も、年15万円も落ち込んだままである。
このため、多くの納税者が生活や営業に困窮し、税金や国保税を払いたくても払えない世帯が急増している。したがって、税滞納者の暮らしの実態を十分把握しないまま、税金の滞納者を安易に悪質と捉え、「納めている人との公平を図るためにも厳正な滞納整理が必要」と強調して過酷な税金の取り立てを続けてはならない。

?本市の財産差押えは、2018年度一般税は3,288件、約4億2,009万円。国保税は2,809件、
約7億2,793万円に及んでおり、全国的に見ても相変わらず行き過ぎた差押えを続けている。国税徴収法では民事と違い、債権者である徴税吏員が裁判所の判決を待つことなく差押えができる自力執行権という強力な権限が与えられている。しかし、法の精神は、丁寧な納税相談による自主納付が基本であり、差押えは最後の手段とされ、乱用を戒めている。生活実態を十分把握しないまま財産差押えを乱用する本市の収納行政を直ちに改める。

?滞納整理に当たって、収納課はこれまで給与や年金が振り込まれた預金口座を狙い
撃ちにして残額すべてを差押えていたが、前橋市の差し押さえは違法という昨年1月に確定した前橋地裁判決を受けて、差し押さえ禁止額の差し押さえはしていないと表明している。この立場を堅持する。

?滞納税を分納約束した人に、分納が滞った場合には、さらなる多額の分納や差押えを
迫っている。最低生活を維持できなくなるような分納額を要求したり、差押えを求める承諾書を提出させたりすることはやめる。

?生命保険を差し押さえて返戻金を換価し配当するという手法は、とくに慎重さが求
められる。入院や手術の補償約款があり、解約すれば高齢のために再加入できない保険など配慮が必要な場合は差し押さない。

?生活困窮を理由に税滞納に至った場合は、徴収の猶予や換価の猶予などの納税緩和
制度の活用で救済する。

?納税相談においては、滞納税の納税は一括納付が原則と説明したり、差押えの中止や
延滞金の減免が認められる申請及び職権による猶予制度を説明しないまま、生活を脅かす分割納付金額を求めない。

?差押え不動産の公売を安易にしない。まして、いたずらに公売手続きの開始を予告し
て、分納額の引き上げを求めるなどの納税折衝をしない。

?税滞納者の人権を侵害するような納税折衝をすることのないように、経験の浅い職
員への国税徴収法・地方税法など税に関する基礎的な研修を強める。

?納税者の最低限の生活を脅かしたり、事業の廃業を招くような滞納整理は国税徴収
法や地方税法も認めていない。納税者の生活や営業実態を充分聞き取り、生活困窮に陥らせるような滞納整理は行わない。今、格差と貧困が広がる中で、そもそも担税力を超えた国保税などは病気や失業で誰が滞納してもおかしくない状況である。
 生活に窮して税を滞納している人を追い込むのではなく、生活再建を支援して、自主納付できる納税者にしていく。滋賀県野洲市のように、ワンストップで生活を支援する体制を本市もつくる。

8、介護保険・医療について
今、家族の介護のために仕事をやめる「介護離職」が年間10万人近くに上り、「介護難民」と呼ばれる“行き場のない要介護高齢者”が数十万人規模にのぼるなど、介護をめぐる問題が、高齢者はもちろん現役世代にとって重大な不安要因となっている。「独居老人」や「老老介護世帯」が急増し、高齢者の貧困・孤立が進行するなか、65歳以上の「孤立死・孤独死」は年間2万人にのぼると推計され、介護を苦にした殺人・殺人未遂が、年間に約50件、1週間に1件のペースで起こる状況も続いている。安倍政権はにわかに「介護離職ゼロ」といっているが、この7年間、同政権が実際に行ってきたのは、公的給付の削減や利用料の引き上げなど“介護を受けにくくする制度改悪”の連打である。これでは、介護をめぐる危機的事態は深刻化するばかりである。介護職員の劣悪な労働条件の根本原因は、介護報酬が低すぎ、しかも、削減が続いていることである。とくに、安倍政権が2015年度に強行した報酬全体でマイナス2.27%、介護職の「特例加算」を除いた報酬本体はマイナス4.48%という空前の報酬カットは、介護事業所の倒産・撤退を急増させ、“施設入所の制限”“利用者からの追加負担の徴収”“施設における食事の質の低下や、年中行事のカット”など、利用者や家族を犠牲にする事態まで引き起こした。誰もが安心して介護が受けられるような改善が必要である。
? 国は次期介護保険事業計画において、ケアプランの有料化や介護保険利用料を基本的に2割負担にしようとしている。制度改悪しないように国に強く求める。
? 介護保険は、サービスの利用が増えたり、介護職の労働条件を改善すれば、ただちに保険料・利用料の負担増に跳ね返るという根本矛盾をかかえている。厚労省の見通しによれば、給付削減の改悪がこれだけ繰り返されるもとでも、現在、全国平均で月5,500円である65歳以上の介護保険料は、2025年には月8,100円にまで引き上がる。介護報酬を引き上げ、保険料・利用料の高騰を抑えながら、制度の充実や基盤の拡充を図り、真に持続可能な制度とするには、公費負担の割合を大幅に増やす以外にない。国庫負担の大幅な増額を国へ要望する。
?第7期事業計画中であっても、一般会計の繰り入れや基金を取り崩して介護保険料を
引き下げる。特に、第一段階の保険料は無料とするよう国に求める。

?低所得者対象の介護保険料および利用料の市独自減免制度をつくる。

?介護保険料の滞納によって、2018年度の給付制限措置者(利用料の3割負担)は27人
である。生活困窮による滞納者には、1割負担とするなど市独自に救済措置を講じるとともに給付制限の是正を国へ求める。介護保険料の滞納者に対する納付相談では、徴収ありきではなく、滞納の理由が生活困窮であれば、社会福祉課などと連携し、生活再建ができるよう支援を行う。

? 特養などの施設利用料に適用される補足給付の申請に対して、生活保護申請のように預金通帳の写しや同意書などを一律に求めないことを国へ要望する。
? 特養ホームの入所待機者は575人(2019年5月1日現在)で解消が進んでいない。第7期介護保険事業計画の残り116床を確実に整備する。待機者ゼロを基本に特養の整備計画を策定し本市単独施策として、㋐市有地たとえば学校の統廃合によって利用検討されているあるいは検討の遡上にのる中央小、春日中、広瀬中跡地などを建設用地として無償貸与する。㋑施設整備の補助金を上乗せする。㋒介護人材の育成と助成金を上乗せする。また、国に対し補助制度の復活を求める。
?介護職場は依然として慢性的な人員不足となっている。保険料・利用料の引き上げに
連動させることなく、緊急かつ確実に介護・福祉労働者の賃金アップを図るため、介護報酬とは別枠の国費の直接投入によって賃金を引き上げるよう国に求める。政府の介護報酬抑制路線のもと、介護分野は低賃金の非正規労働が主流となっている。介護報酬を引き上げながら、正規化・常勤化の流れをつくり、賃金の引上げ、サービス残業の根絶、長時間労働の是正をすすめるよう国に求める。

?特養ホームの入所の要件が原則要介護3以上とされているが、要介護1・2でも特例
入所の4要件を満たせば入所できることを市のホームページ等に加え、あらゆる機会を利用して市民に周知する。また、要介護1・2というだけで退所扱いにならないよう、特例入所要件の周知も徹底する。

?特養ホームの入所待機者の受け皿となっている低所得のサービス付高齢者住宅利用
者や有料老人施設利用者への入居費助成を行う。

?地域包括支援センターを21の中学校区ごとに増設する。

?「介護予防・日常生活支援総合事業」について、利用者が必要なサービスを使えるように、サービスの量と質の確保に市として責任を持つ。生活援助中心型の訪問介護の訪問回数上限を撤廃する。また、上限を超えたケアプランの届け出義務化を撤廃するよう国に働きかける。本市として届け出は求めない。

?要支援者の基本チェックリストの実施によるサービス利用の抑制は行わない。また、
「自立支援」を優先し、介護サービスが取り上げられる利用者を出さない。

? 介護認定にあたっては、全体として実際よりも軽く認定されているので、利用者の実態を正確に把握し判断するため、認定審査員を増員する。

? 自立支援・重度化防止」の取り組みを国が採点し、成績に応じて交付金を配分するインセンティヴ制度を撤廃するよう国に求める。

? ケアプラン作成に関する特定集中事業所減算は、公平・中立の名のもとにサービス抑制が行われる仕組みとなっているため、利用者の選択権を奪う実態となっているので国に廃止を求める。

? 65歳以上の障がい者に対する介護保険制度の優先原則を撤廃するよう国に働きかける。機械的に介護保険の申請を促すのではなく、障がい者本人の要望をふまえ、障がい福祉サービスが利用できるようにする。

? 施設入所を探す家族に寄り添い、担当課は親切丁寧に相談にのり、施設探しを支援する。

? 厚労省が発表した病院の統廃合計画の対象に済生会前橋病院が名指しされたが、地域医療の拠点病院として重要な役割を担っており、病院が存続できるように支援する。

? 産婦の産後うつはホルモンバランスの変化や新生児への子育て支援に夫や親族の支援が得られないなどの理由から発症している。本市の支援策をさらに充実させ、産婦の2週間及び1カ月検診を市として位置付け、無料化する。支援が必要な産婦にはデイサービス・ショートステイに加えてアウトリーチ型も設置する。

9、国民健康保険について
前橋市の年間の平均国保税額は、1人あたり95,372円である。総収入360万の3人家族(40代の夫婦・子ども1人)では、年間の国保税額は39万8千円で、収入に占める割合は11%にもなる。本市の国保加入者には、所得200万円以下の世帯が7割を超え、低所得者や高齢者が多く、派遣切りされた失業者も含まれている。また、低所得者世帯の国保税を軽減する7割・5割・2割の法定軽減世帯が加入世帯の約半数を占めている。国保税滞納世帯は1637世帯(2018年10月現在)におよび、保険証の取り上げで資格証発行が178世帯241人、短期保険証発行が1459世帯2257人となり、命や健康を脅かす事態にもなっている。さらに、差押え件数は2809件3億702万円(2018年度)にもおよび、他の自治体と比べても、異常に多い件数となっている。また、2018年度から国保の都道府県単位化が実施され、群馬県と共同で運営され国保財政が一括で管理されるようになった。高すぎる国保税の問題を改善するどころか、今後さらなる負担増と徴収強化となり、医療給付抑制策や病床削減が結びつけば、地域の医療基盤が壊れかねない。

? 国保税滞納者への短期保険証・資格証の発行をやめ、きめ細やかな相談体制を拡充する。

?「申請減免」の対象基準を見直し、前年度所得の5割以上の減収者ではなく3割以上の減収者・自己都合退職者にも適用する。生活保護基準以下の生活困窮世帯減免、一人親減免、障がい者減免、高齢者減免など、新たに市独自減免を創設・拡充する。

? 人間の“頭数”に応じて課税する人頭税は、古代に作られた税制で、人類史上でもっとも原始的で過酷な税とされている。それが21世紀の公的医療制度に残っているのは問題である。この時代錯誤の仕組みこそ、国保税を低所得者や家族が多い世帯に重い負担にしている最大の要因である。全国で「均等割」「平等割」として徴収されている保険税額は、およそ1兆円であり、公費を1兆円投入すれば、「均等割」「平等割」をなくすことができ、多くの自治体では、協会けんぽ並みの保険税にすることができる。本市として「均等割」「平等割」の課税をなくすよう国に負担を求める。

?市独自で18歳までの子どもの均等割りを廃止する。

? 子どもの医療費無料化を、高校卒業の18歳まで拡大する。県に対しても要望する。

?基金活用と一般会計の繰り入れで、少なくとも1人1万円の国保税の引き下げを行
う。

? 医療費の窓口負担の免除ができる無料低額診療をもっと増やすよう、医療機関
に働きかける。さらに、薬局にも無料低額診療事業が適用されるよう市独自の支援を行う。また、同事業を広く市民に周知するよう、広報やホームページへの掲載、国保のしおりなどに記載するなど、関係部署をあげて行う。

?医療費の窓口負担の減免制度の周知を徹底する。

? 国保税滞納者に対しては収納課任せにせず、滋賀県野洲市のように、滞納は生活困窮のSOSであるとの認識に立ち、国民健康保険課が収納課の納税相談に同席し、徴収ありきではなく保険税減免等、利用できる制度をきちんと知らせる。あわせて、関係部局と連携し生活再建ができるよう支援の手を差しのべる。

10、高齢者・後期高齢者医療制度について

(1)高齢者
高齢者は戦前、戦中、戦後の苦難の時代を、身を粉にして働き、家族と社会のためにつくしてきた人たちであり、老人福祉法には「多年にわたり、社会の進展に寄与してきた者」「豊富な知識と経験を有する者」として「敬愛されるとともに、生きがいをもてる健全な安らかな生活を保障される」と明記されている。

?加齢性難聴については、本市でも70歳以上の高齢者のおよそ半数は加齢性の難聴と
推定されており、高齢化が進むなか、今後さらに増えていくことは否めない。難聴になると、家庭や社会でも孤立しやすく、人との会話も減り、引きこもりになりがちで、認知症のリスクが高まると言われている。難聴は自覚しにくく、早期発見・早期支援が重要で、医療体制を強化する必要もある。国に補聴器購入への助成制度の創設を求める。

?本市では、自立した高齢者の日常生活用具給付事業としての補聴器利用者はH30年
度11人と極めて少数である。制度が市民に周知されていないことや、自立した高齢者に限定していること、制度の利用範囲や方法が実態に沿わない。制度の周知を広く徹底するとともに、介護保険利用者の日常生活用具サービス事業には補聴器が対象になっていないため、介護保険利用者も対象に制度を拡充する。

?高齢者緊急通報システムの設置要件を緩和し、60歳以上のすべての希望する高齢者
を対象にする。

?高齢支援配食サービスは要件を緩和し、60歳以上の希望するすべての高齢者を対象
とする。

?70歳から74歳までの医療費の窓口負担2割を元に戻し1割とするよう国に求める。

?65歳以上の住民税非課税世帯や低所得世帯などをも対象に、猛暑対策としてエアコ
ン購入・設置に補助を行う。

(2)後期高齢者医療保険制度
後期高齢者医療制度は、国民を年齢で区切り、高齢者を別枠の医療保険に強制的に囲い込んで、負担増と差別医療を押しつける稀代の悪法である。2008年の制度導入以来、5回にわたる保険料値上げが実施され、高齢者の生活を圧迫する重大要因となっている。2008年の制度導入時、差別制度に怒る国民世論に包囲された自公政権は、低所得者の保険料を軽減する措置(「特例軽減」)を導入したが、安倍政権は、その「特例軽減」を打ち切り、保険料を値上げする改悪を、2017年度から実行に移している。
 また、財務省や財界からは、75歳以上の窓口負担を現行の「原則1割」から「原則2割」に引き上げることがたびたび提言され、国民のなかに不安が広がっている。差別制度を廃止したうえで、減らされてきた高齢者医療への国庫負担を抜本的に増額し、保険料・窓口負担の軽減を推進すべきである。県の今年度の平均保険料は月々5,712円であり、年金から天引きされる保険料の重さが暮らしを圧迫している。年金天引き対象外の低所得者の保険料滞納も深刻で、昨年度の本市の滞納者は加入者49,441人のうち289人(0.58%)で、そのうち差押え件数は70件・3,817,100円(同0.1%)である。短期保険証を交付された人は35人(滞納者の12%)で、医療にかかれなくなる恐れのある制裁措置は問題である。
?保険料の特例軽減の廃止は中止するよう国に求める。

?県後期高齢者医療広域連合に対しても保険料を引き上げないように強く求める。

?短期保険証の発行はやめる。

? 負担増・給付削減を迫る後期高齢者医療制度は廃止して、当面もとの老人保健制度に戻した上で、新たな医療制度の構築を図るように、国に働きかける。

11、年金について
今年6月、金融庁の金融審議会が、“厚生年金だけでは足りないから2000万円の老後資金が必要”という「報告書」を出したことが国民に衝撃を与えた。「年金は100年安心」という政府・与党の宣伝がウソで、「自己責任」で老後資金を準備しないと生活ができないと、政府の「報告書」が認めたのである。
 自公政権がいう「100年安心」の中心は、「マクロ経済スライド」という年金給付の水準を減らし続ける仕組みである。実際、安倍政権の7年間で、年金は実質6.1%も減らされた。金融庁の報告書をきっかけに、年金の給付が低すぎることや、それが毎年減らされることが国政の大問題に浮上している。
 この仕組みを発動しつづければ、2040年代には「7兆円」の年金削減となることが明らかである。現在でも月6万5000円に過ぎない基礎年金の満額は約3割、月2万円分も削られ、月4万5000円の水準にされ、重大な問題であり、抜本的な改善が求められる。
 そのためには、㋐高額所得者優遇の保険料を見直し、現在年収1000万円程度となっている上限額を、健康保険と同じく、年収約2000万円(月収139万円+賞与)まで引き上げれば1.6兆円の保険料収入が増える。㋑巨額の年金積立金を年金給付に活用すべきである。年金積立金は、厚生年金、国民年金、共済年金をあわせて200兆円にのぼり、給付費の4年分にあたる。ヨーロッパ諸国の年金積立金は、ドイツが給付費の1.6カ月分、イギリスの2カ月分、フランスの1カ月分未満などで、日本の“ためこみ”は異常である。㋒年金の支え手である現役労働者の賃上げと、非正規雇用の正社員化で、保険料収入と加入者を増やし、年金財政を安定化させることこそ、もっとも根本的な対策である。
?年金引下げにつながる「マクロ経済スライド」の発動や「キャリーオーバー」の仕組
みを撤廃するよう国に強く求める。

?安倍政権が2016年の「年金カット法」で導入した、賃金の指標がマイナスになった
場合に、年金もそれに合わせてマイナス改定する仕組みである「賃金マイナススライド」(2021年施行)を撤廃し、その他の物価・賃金指標にもとづくスライド制度についても、年金の引き下げにつながる仕組みを全面的に見直すよう国へ求める。

? 公的年金制度のなかに、最低保障の仕組みがないのは、先進国では日本だけであり、国連の社会権規約委員会からも「最低年金を公的年金制度に導入すること」がたびたび勧告されている。最低保障年金制度の導入に踏みだし、低年金・無年金の増大、年金制度の「空洞化」、サラリーマン世帯の専業主婦の「第3号被保険者問題」など、今日の年金制度が抱えるさまざまな矛盾を抜本的に解決するよう国に強く求める。

? 安倍政権が導入を検討している、年金の支給開始年齢の「67歳」「68歳」「70歳以上」などへの年金受給年齢のさらなる引き上げを行わないよう国に求める。
12、生活保護について
 安倍政権は、生活扶助費の切り下げ、期末一時扶助の減額、住宅扶助基準の引き下げ、冬季加算の削減など、生活保護費の連続削減を強行してきた。政府は、そうした削減を実行する際に、生活保護世帯と“生活保護を利用していない低所得世帯”の所得や消費を比較し、「格差是正」や「均衡」の名で保護費を減らすことを常套手段としている。しかし、生活保護世帯よりさらに困窮している世帯があるなら、支援の拡充や貧困の打開に国を挙げて取り組むのが政治の責務である。生活保護基準は、就学援助、住民税の非課税限度額、最低賃金などの基準となり、国保や介護保険の減免基準、公営住宅の家賃の減免基準などに連動している。生活保護基準の引き下げは、福祉施策の全面的な後退を引き起こす。生活保護費の切り下げに反対し、「ナショナル・ミニマム」にふさわしい水準への改善・向上をめざすべきである。削減された生活扶助基準を元に戻し、物価上昇や生活実態にふさわしい水準に引き上げ、期末一時扶助、住宅扶助、冬季加算などの削減・改悪を中止し、元の水準への回復と制度の改善をはかるべきである。
? 生活保護は、憲法25条が明記した国民の生存権をまもる“最後の砦”であり、保護費の水準は、国民生活の最低基準(ナショナル・ミニマム)を具体化したものとされている。生活保護の改悪は、憲法が保障した人権を国民から奪いとり、あらゆる福祉制度を後退させる攻撃にほかならない。この間削減された支給水準の回復と物価上昇や生活実態にふさわしい水準に引き上げるよう国に求める。

? 厚労省は所得が生活保護基準を下回る世帯のうち保護を利用している世帯は約2割(捕捉率)という推計結果を発表しており、補足率向上は緊急に取り組むべき課題である。本市においても、独自に補足率を調査し、補足率向上に取り組む。
? 生活保護申請書を窓口に常置し、申請権を保障する。また、根強い生活保護忌避感
情を市民の間から取り除くため、憲法25条の生存権にもとづく制度であることなど、市民が正しく理解を得られるよう周知する。

? 増加する生活保護利用者に対応するため、相談・申請窓口で丁寧に対応できるよう、嘱託職員に頼らず正規職員の面接担当を増やす。

? 生活保護利用者へのきめ細かな対応がはかれるようケースワーカーを増員する。研修の充実を行い、生活保護利用者への援助を強める。

? 生活保護決定は、生活保護法第24条を守る。(申請のあった日から14日以内、特別の理由がある場合は30日以内)

?当局の誤りによる生活保護費に年金受給額や児童扶養手当などを反映しないために
発生した、過支給は返還を求めない。

?医療扶助としての通院交通費の制度の周知を徹底し、タクシー利用にとどまらずバ
スや電車代などをもれなく支給する。また、通院のための常時タクシー利用者へはタクシー券を発行する。

?車の所有・使用については保護利用者の実態を詳細に把握して運用の拡大を図る。

? 高校生のアルバイトや運転免許証の取得、生活保護費の一時扶助などの説明を丁寧に行い、きめ細かい制度の内容を知らせ、保護利用者がわかりやすく利用しやすい内容に改善した「生活保護のしおり」を作成し、利用者や関係者に配布して制度の周知を徹底するとともにもれなく適用する。

? 生活保護利用世帯等の高校生が、学業、部活動等に専念できるよう、教育委員会等と連携して成績要件のない給付型奨学金を創設する。

? 生活保護利用世帯の高校生が、アルバイトせずに学校生活が送れるよう、教育扶助費を市独自に増額する。

?保護利用世帯の子どもの大学・専門学校等への進学は、学費が高額などの理由から、
進学は困難なのが実態である。国が制度化した一時金の増額など改善を求めるともに、教育委員会等と連携し、市独自の給付型奨学金制度を創設するなど、大学等への進学を支援する。
?猛暑対策として、新規生活保護利用者だけでなくすべての生活保護利用者のエアコン設置と夏季加算を国に求める。国が制度化しない場合は、熱中症防止対策のため、夏季に月額1世帯1万円を福祉手当として支給する市独自の制度を創設する。
13、保育所・認定こども園・幼稚園・学童保育・子育てについて

国連で子どもの権利条約がつくられて今年で30年。権利条約は、「すべての子どもには、生命・生存・発達の権利、最善の利益を保障される権利、意見が尊重される権利、差別されない権利の保障」をうたっている。子どもの権利が守られ、安心して子育てできる希望ある社会をつくるために、教育費など子育ての経済的負担を軽減し、人間らしい働き方とくらし実現を目指し、保育・学童保育の拡充、子どもの命と健康を守る制度を拡充すべきである。

?全ての幼児が豊かな保育が受けられる体制を整えるとともに、3歳未満児について
も保育料無料化を図るよう国に求める。

?本市の保留児(事実上の待機児)は4月1日時点で174人。3歳未満児がほとんどで
ある。保留児解消のために、入所を保留している具体的な理由を把握して、本市が率先して不足する地域の保育所等への定員増を要請し入所できるようにする。今後も待機児が予想される利根西の地域及び本庁管内、南橘地域について具体的な手立てを進める。

?市立保育所や市立幼稚園の公立の役割をしっかりと位置付け強化し民営化は行わな
い。

?幼児教育の無償化で除外された副食費は全幼児を対象に無料化する。

?幼児教育の無償化により新たな負担が増えた保育園事務への運営費を増額をする。
また、副食費の滞納により運営費に影響した場合は市として支援する。

?企業主導型保育や家庭的保育などは、保育基準が緩和されており、保育の安全・安心
が危惧されるので国に制度の中止を求める。

?子どもの健全な発達、ゆきとどいた保育を保障するためには、保育士の過重負担、長
時間労働の負担を軽減し、働き続けられるようにする。保育士の配置基準の引き上げをおこない、保育士を増やすとともに、完全週休2日制や有給休暇が取得できるようにする。そのために、公定価格を見直し、運営費の増額を国に求めるとともに、本市独自の支援を行う。
?保育士不足の解消を図るため、本市独自の就労相談窓口を開設し、商業施設などあら
ゆるところで就労相談を実施して潜在保育士を掘り起こし、再就職につなげる。また、市独自の処遇改善を行う。

?子ども子育て会議の役割を一層重視して、構成員の補充や会議開催を増やし、内容の
充実を図る。

?私立幼稚園・認定こども園について、通園送迎バスへの保護者の実費徴収の軽減をす
るため、市独自の補助をするとともに、「幼児の幸せを考える子育てセミナー」への補助金の増額をする。また、教職員研修会への講師料などへの補助をする。

?私立幼稚園・認定こども園・保育園への熱中症や感染症対策としてミストシャワーや
加湿器等設置への補助制度の創設を行う。さらに、乳製品やアナフィラキシーなど食物アレルギーにより重症化する幼児もアレルギー加算対象とする。

?老朽化した施設への建て替えや補修などへの施設整備への補助金の充実を図る。

?公設民営・民設民営などの運営形態に限らずに、学童保育の保育料の無料化を目指し、
当面第3子の無料化と低所得者減免、多子世帯減免を実施する。

?学童保育所の指導員の処遇改善、希望する高学年も利用できるように施設の増設や
拡充をおこなう。

?商業施設では多く設置されているおむつ交換もできる授乳室をすべての公共施設に
も設置する。

?増え続けている児童虐待の防止と即時対応できる児童相談所を本市として創設する。

14、障がい児・者について
障がい者の差別をなくし、尊厳をまもることは、国際的にも大きな流れになっている。憲法と障害者権利条約の理念を地域の隅々に広げながら、だれもが安心できるインクルーシブ(排除しない)な社会の実現をめざすことが求められる。 国は「自助」と「共助(助け合い)を前提に、生産性と効率性の向上のために介護・障害者・子どもの分野を一括化する「地域包括ケアシステム」体制、生活困難者を他人事として放っておかず“縦割り制度”によらない包括的な支援体制をつくるという「我が事・丸ごと」政策をすすめようとしている。公的責任を投げ捨て、いっそうの社会保障予算の削減・抑制をねらうものであり、「我が事・丸ごと」政策は見直し、安心できる社会保障施策をめざすべきである。障害関連予算は毎年増えているといっても、国際的に見ればGDP比でドイツの3分の1、スウェーデンの4分の1(国立社会保障・人口問題研究所平成28年度「社会保障費用統計」)など低いものであり、国際水準に見合った障害者予算の引き上げを求めるべきである。
?総合支援法の抜本改革にとりくみ、「応益負担」制度は廃止し、すみやかに福祉・医
療の無料化を求めるべきである。世帯収入にかかわらず、本人所得のみの収入認定とするよう国に求める。

? 障がい者が生活保護を受けることなく生活できるように、障害者基礎年金の引き上げを引き続き国に求める。

? 地域活動支援センター・グループホームなど福祉施設職員の処遇改善のための独自施策を拡充する。

?障がい者支援団体への育成補助金を増額する。

?オストメイト対応トイレの設置に努めることとされている一定規模の施設での多目
的トイレの設置が進むよう助成制度の充実を図る。

?障がいの早期発見と療育支援を行う子ども発達支援センターを充実するとともに、医
師会と連携して障がい児療育センターを早期に創設する。

? 手話通訳者を増やすための研修講座を充実させるとともに、手話通訳者の派遣手当を増額するなど、待遇を改善する。市役所に手話通訳者を採用し、聴覚障がい者を直接支援する体制を強める。

? 障害者サービスは介護保険対象年齢の65歳以上になると、介護保険サービスが優先となり原則1割負担となる。介護保険優先の原則は速やかに廃止し、介護保険対象年齢になっても従来から利用していたサービスを継続できるようにするとともに、障がい者本人が障害者福祉制度と介護保険制度を選択できるように国に強く求める。

? 障がい者の法定雇用率未達成の市長部局・教育委員会・水道局はもとより、外郭団体や指定管理者、委託事業所を含め、市として障がい者雇用の拡大に率先して取り組み、法定雇用率の早期達成を目指す。また、市内企業に対してより積極的に雇用を働きかける。特別支援学校卒業生に多様な進路を保障するために全力をあげる。

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