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議員団紹介 長谷川薫 議員

生活困窮者への乱暴な税金徴収に憲法の理念を!(赤城根・2010年4月7日号)【2010/4/7】

振り込まれた給料を即日、玉村町にゼロにされ生活を脅かされた大石さんの裁判闘争
      玉村町が62万円の和解金を払い、謝罪を表明

生活無視の差し押さえ

 大石守さん(64歳。現在は前橋市在住)は、08年5月23日、玉村町に住んでいた頃の町民税や国保税の滞納分の回収を目的にした預金口座の差押を予告なしに突然受けました。夕方仕事を終えて、給料日なのでコンビニで預金口座からおろそうとすると、残額がゼロになっていました。何が起こったのかわかりませんでした。
 銀行の支店で通帳記帳してみたら、給与は振りこまれていましたが、全額引き落とされていたことがわかりました。行員に誰が引き落としたのか調べてもらったら、玉村役場が差し押さえていました。
 大石さんが役場に電話して「これだと生活できない。家賃も電気代もガス代も払わなければならない。食事もできない。死ねということですか」といいましたが、差し押さえ解除はされませんでした。そのとき、財布には300円しか残っておらず死のうと本当に思ったそうです。

異議却下、やむをえず前橋地裁に提訴

 大石さんは、「玉村町のやり方は生存権の侵害」と町に異議申し立てを行ないました(地方税法19条2・行政不服審査法45条)が、町長に却下されました。残された道は裁判だけです。 
日本共産党や民主的な法律事務所などの支援を受けて大石さんは、振り込まれた給与全額差し押さえの取り消しと損害賠償を求める生存権(憲法25条)をかけた裁判闘争を昨年の2月27日、前橋地裁に起こしました。

【大石さんの主張】

給与の全額差押は違法
 平成20年5月7日の大石さんの預金残額は1661円、5月23日に給与手取り額19万8289円が振り込まれた結果、残高は19万9950円となりました。しかし、税金の滞納分の回収を目的に町がその日のうちに差し押さえたため、一瞬にしてゼロとなりました。
 国税徴収法76条は、最低生活を維持するために滞納者と配偶者で10万円・その他の親族1人に付き4万5千円の差し押さえを禁止しており、給与の全額差し押さえはできないと定めています。これは憲法第25条(生存権)が、滞納処分段階での最低生活費非課税などの原則を求めているからです。大石さんにたいする差し押さえ処分はこれに明らかに抵触しているのです。

預金のほぼすべてが給与だと知りながら=国税徴収法・地方税法違反

 玉村町は、「差し押さえたのは給与ではなく預金債権なので違法性はない」と主張しています。しかし、大石さんの預金通帳の残額は家族の一月の生活費です。通帳履歴を見れば、毎月15万〜20万円の給与収入でなんとか生活を維持しており、手持ち金は月末にはほとんどなくなるのが常であることは十分承知していたのです。玉村町が、預金残額がなくならないよう給与の振込み日を狙って差押をしたことは明らかに問題です。
 仮に百歩譲ったとしても、大石さんの場合は給与の差し押さえ禁止財産15万3000円を保全し、残り4万6959円だけが差し押さえ可能ということになり、全額差押は違法差押となるのです。

前橋地裁の棄却判決は憲法を無視した誤り
 
 このような中で、大石さんを支援する運動が広がる中で前橋地裁は今年の2月3日、@すでに差押債権は滞納税に充当しており、玉村町の処分は完了しているので訴えの利益がない。A違法な点はない。との理由から給与全額差押の取り消しと賠償請求(80万円)の訴えを棄却する不等判決を下しました。これは国税徴収法の立法趣旨や憲法を無視した違法判決です。

町が謝罪・和解して控訴取り下げ

 大石さんは、弁護士や支援者と相談して不当判決を認めないという立場から、直ちに東京高裁に控訴。「住民を守るべき地方自治体が住民の生存権を奪うような乱暴な税金の取立ては許さない」と決意し更なる戦いを準備していました。
 そのような中先日、玉村町の貫井町長が和解を申し入れてきました。町が62万円の和解金を支払うことや納税者の生活実態の尊重が重要であることを認識するなどの内容でした。大石さんは町の実質的な謝罪と判断し和解を受け入れ控訴を取り下げました。
 長谷川薫議員は「このような生活や営業の実態を無視した乱暴な差押は、前橋市も同様です。直ちに改善が必要です。今生活や営業が苦しくて税金を滞納せざるを得ない市民が増えています。納税の義務を否定するものではありませんが、滞納者を悪質と決め付けないで、生活困窮の場合には長期分割納付を認め、減額免除などの納税緩和措置で救済すべきです」と話しています。




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