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議員団紹介 長谷川薫 議員

民意を無視!戦争遺跡・国登録の有形文化財 旧麻屋デパートの保存を求める請願を不採択(赤城根・2010年12月15日号)【2011/1/18】

解体して更地にして土地購入を前橋市が契約した旧麻屋デパート
解体して更地にして土地購入を前橋市が契約した旧麻屋デパート
日本共産党以外の会派は不採択を主張し、市民の願いに背を向ける

 前橋に「平和資料館」設立をめざす会・解体工事の中止を市長に要求

 開会中の前橋市議会本会議で十二月十日、日本共産党市議団が紹介議員となって提出された「国登録の有形文化財でもある千代田町の旧・麻屋デパートを保存し、平和資料館や民俗資料館に活用してほしい」という請願(四百七十名の署名を添えて「前橋に平和資料館設立をめざす会」が提出)が審査されました。
 通常の請願審査は、担当する常任委員会に付託して審査し本会議で採決しますが、十二月七日に開かれた議会運営委員会(委員長・市民フォーラムの宮田和夫議員、副委員長・真政会の茂木正巳議員)で「この請願はすでに所有者が解体して前橋市が跡地を購入する売買契約が締結されたので、不採択とするしかないので建設常任委員会への付託は不要」という理不尽な決定が強行され、本会議での審査となったものです。

請願提出を知りながら、市長が駆け込みで建物解体を条件に売買契約締結 

 この請願の提出日は十一月二十六日、議会に正式に受理報告がされた日は十二月一日。前橋市は、保存を求める請願が提出されていることを知りながら、十二月二日に麻屋の所有者と建物の解体(費用は移転補償費として約3500万円は市が負担)を条件に跡地約五〇八uを7173万円で購入する売買契約を締結しました。市民請願を無視して契約を急ぐ差し迫った理由は何もありません。
 市の中央駐車場として利用されている千代田町八番街区の再開発は、これまで市が何度か提案募集の働きかけをしましたが、手を上げる開発業者が見つからないまま「手詰まり状態」になっています。計画区域内に麻屋の土地以外にも未買収の土地はありますが、市は用地買収交渉は行なっていません。

本当に「請願事由」が失われたのか 

 日本共産党以外の会派は口をそろえて「麻屋の所有者と前橋市が売買契約を結ん
だので、建物を解体しないで保存してほしいという請願の目的が失われた。したがって請願を取り下げるか、取り下げなければ不採択という結論しかありえない。これが請願審査のルールだ」と主張しました。
 日本共産党は、このような他会派の主張を請願団体に伝えたところ、「契約は締結されたけれども、麻屋の建物は現に存在している。請願を無視して契約したのは前橋市であり、請願の趣旨に基づいて双方が再度相談して契約を変更し、十三日にも廃止される建物の解体工事をストップし、保存してほしい。国登録の有形文化財を守ってほしい。請願は取り下げない」という強い意思が示されました。
 日本共産党市議団は、「市民の請願権は、憲法16条が保障しており、今回の請願は議会規則に基づいて正式に提出された請願であるだけに、請願の趣旨をしっかり議会が受け止めて誠実に審査すべき。本請願は事態の変化はあったが、実現不可能と安易に判断して門前払いする請願ではない。市が結んだ契約変更はあり得るという立場で審査すべき。それが『市民の声に耳をていねいに傾けるべき開かれた議会』といえるのではないか」と主張し慎重審査を求めました。

 日本共産党は文化財の保存は当然と主張! 

 十日の本会議では日本共産党市議団を代表して小林久子議員が「戦争遺跡でもあり、前橋復興のシンボルとして現存している国登録の文化財・麻屋を保存して欲しいという願いは当然。平和や民俗資料館としての活用は中心街の活性化に役立つ。採択すべき」と賛成討論をしました。(裏面に全文)なお、中島資浩議員(一人会派・市民の会)が討論はせず趣旨採択を表明しました。
 
 ところが、市長与党の真政会の茂木正巳議員は、「建物の存続を願う心情は理解するが、実現性のない請願項目やすでに結果が出て事情変更された請願は不採択とせざるを得ない」と討論し、請願の取り下げを指導せず請願者の心を傷つけたと日本共産党市議団を誹謗中傷し、不採択としました。フォーラム前橋の藤江議員も「議会ルールを無視した」などと共産党市議団を口汚く批判しました。
 
 請願団体の代表者の岩根氏は「請願の採択に全力を尽くした日本共産党市議団の奮闘に感謝したい。市議会は多数の横暴で私たちの請願を冷たく切り捨てた。今後も、麻屋の保存を願う多くの方々と力を合わせて、解体の中止を市長に強く要求したい」と更なる運動の継続を表明しています。

この請願の不採択を主張し、旧麻屋デパートの解体除却を事実上認めた会派

【】は不採択の討論をした議員

清新クラブ 【近藤登】
真政会   【茂木正巳】
市民フォーラム【藤江彰】
公明党   【関本照雄】
真澄会・新世紀・民主党


 日本共産党市議団を代表して小林久子議員が請願の賛成討論を行ないました。

 2010第4回定例議会 請願第3号「旧・麻屋デパート」を保存し、歴史や文化を基軸とした「平和で活力あるまちづくり」を求める請願賛成討論(小林久子議員)                                      【2010/12/10】

 私は日本共産党前橋市議団を代表して請願第3号「旧・麻屋デパートを保存し、歴史や文化を基軸とした平和で活力あるまちづくりを求める請願」について、賛成討論を行います。
 本請願は、前橋市の戦後復興のシンボルであり、歴史的建造物として国登録の文化財でもある千代田町8番街区の旧麻屋デパートを保存し、平和資料館や民俗資料館などに活用して欲しいという請願であります。
本請願は、11月26日に提出され、今議会の開会日の12月1日に開かれた議会運営委員会で受理したことが正式に報告されました。提出後に本請願に賛同する470名の個人署名も提出されております。議会運営委員会には総務部長が出席されていたので、当局は12月1日には本請願が議会に提出されたことを承知していたと思います。
 従って、12月2日に麻屋の所有者と、建物を解体して更地にすることを条件にして跡地を前橋市が購入する売買契約を締結したことは、市議会に出された市民の請願を、事実上無視した態度であり、大変残念であります。しかし、当局は6日に行なわれた請願団体の市長への申し入れに答え、13日からの解体工事の開始を、15日の請願審査の終了を待って16日まで延期を決断しました。さらに、同請願団体は8日、高木市長に解体工事の着手見合せと、建物解体の「是非」を広く市民参加で検討する機会を求める請願を市長に提出し、市長との懇談を求めまたところ、市長は13日に請願団体との懇談を約束しました。当局のこれらの対応は、適切であります。
 一方、12月7日に開かれた議会運営委員会で、わが党議員団が建設水道常任委員会への付託を主張したにもかかわらず、売買契約が締結されたことをもって、請願事項が消滅したと決めつけ多数決で委員会に付託して審査することを不要と判断したことは問題であります。本議会の請願の取り扱い規定にもないのに、議会の実務的な請願の処理についての一般的な解説書のコピーを示して、提出要件を具備した請願を、委員会付託が不適切との判断を行なったのであります。
 憲法16条が定める国民・市民の請願権を尊重する立場に立てば、紹介議員に取り下げの指導を求めたりせず、何よりも誠実に審査すべきです。
 今回の請願は売買契約によって請願事項の変化はありますが、請願の趣旨は、麻屋を解体せずに保存して欲しいという内容であります。請願提出後の事態の変化については、本請願の趣旨が存在しているかどうかをより慎重に判断すべきです。
これまでの契約締結にいたる経緯からも、麻屋の建物所有者は、テナントも見つからず建物の補修や維持管理が困難となったために、前橋市に再三にわたって町のシンボルとしてまたデパートという販売方法の先駆けとして、建築構造の面でも貴重な価値を持つ登録有形文化財でもある建物を末永く保存して活用してほしいと繰り返し要請していました。本来なら前橋市に建物付で購入を願っていたにもかかわらずそれがかなわず、止むに止まれず建物の解体除却という苦渋の決断をしたことは明らかです。
 前橋市が改めて市民の声に耳を傾けて、建物の保存を決断すれば、建物所有者は直ちに解体工事を中止することもあり得ます。
 売買契約の変更は、利害関係人双方が合意すればいつでも可能であります。従って、現時点で、麻屋の建物が解体されず現存している事実を踏まえるならば、請願者の願意を受け止めて請願者からの説明も聴取して、議会として誠実に審査すべきであります。

 請願事項1は、建物を解体せずに前橋市が土地とともに建物を買い取るべきと言う請願内容です。前橋市は、耐用年数を超え老朽化した建物を保存するためには多額の経費がかかるので保存は難しいと判断し、建物所有者が解体し跡地を購入するという契約を締結しました。麻屋の建物解体の判断は所有者自身が独自に判断したとはいえ、更地にしなければ購入しないという立場で契約条件を示したことは事実であり、前橋市が本来は支援して大事に残すべき国登録の有形文化財である建物の解体の決断を誘導したと言っても過言ではありません。
 しかし、麻屋は1945年8月5日の前橋空襲でも焼け残り、多くの市民にとっては戦災復興のシンボルさらには戦争のない平和な世界を願う戦争遺跡として現在に至った建物であります。末永く保存してほしいと願う市民が大勢いるのはごく自然であります。
 少なくとも、前橋市は解体を急がず、市民の意見を聞いた上で、保存の可否を判断すべきです。
 多額の保存費用がかかるとはいえ、いま整備計画中の清掃工場予定地に隣接する下増田町の運動広場には、多くのスポーツ施設が整備されている中で、新たな運動広場としてすでに約24億円もの財政を投入しています。市当局は麻屋の保存には約5億円程度かかると試算されたようですが、決して他の市有施設の整備と比較しても、麻屋の保存は、平和学習や生涯学習の拠点として、中心市街地の活性化に寄与する施設として、費用対効果の点では問題はないのではないでしょうか。
 しかも、8番街区の再開発の具体的な計画はまだ定まっておらず、前橋市が建物の解体と土地買収を急ぐ特別の理由は何もありません。
 全国的には、歴史的な建造物をリフォームし、再開発ビルに調和させて保存して利活用している自治体も少なくありません。市役所の関係部所の検討だけではなく、文化財保護の専門家や建築家や歴史化など、学識経験者や市民参加で公聴会や検討会を開き広く意見を聴取して、税金投入による建物保存の可否を慎重に判断すべきです。
 以上のことから、請願者の現在の願意は、市長に対して麻屋の建物付きで土地を購入する契約への変更を求め、少なくとも建物所有者に解体工事を保留するように求めているものであり、妥当な願いであります。

 請願事項2は、前橋市のさまざまな物産を販売する店舗や平和資料館・民俗資料館などへの活用です。本市には、公的な資料館はありません。糸の町・前橋にふさわしい民俗資料館はありません。いま保存しなければ、貴重な文化財も資料も散逸してしまいます。また平和都市宣言をしている前橋市として、建物自体が戦争遺跡とも言える麻屋を残すことこそ、未来を担う子どもたちの平和学習の教材であります。文学館・美術館とともに一体的に整備されれば、新たな集客力が生まれ、中心街に回遊が高まり、活性化への貢献も期待できます。

 以上、本請願者の願意は、多くの市民の願いであり、採択すべき請願であることを申し述べまして、本請願についての賛成討論といたします。



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