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議員団紹介 長谷川薫 議員

2014年第2回本会議総括質問(長谷川薫市議会議員・6月18日)「教育委員会への政治介入反対」「軍国主義教育の復活を許すな!」
【2014/6/19】

2014年第2回本会議総括質問(日本共産党・長谷川薫・6月18日)

1、教育委員会制度「改革」案の問題点

@私は教育問題について順次質問します。

安倍首相は、靖国神社参拝を行うなど、過去の侵略戦争を肯定・美化する立場を行動で示し、戦後教育を自虐的と敵視した発言を繰り返し、これからの日本の教育を、安倍首相流の「愛国心」で塗り替えようとしています。
下村文部科学大臣も、戦前の軍国主義教育の中心に置かれていた「教育勅語」を「至極まっとう」と評価しました。
 このような中で、今多くの市民が、日本の教育が戦前・戦中の軍国主義教育に逆戻りしていくのではないかという不安を感じております。
国のために命をささげることを最高の名誉と教え、悲惨な侵略戦争に子どもたちを駆り立てた教育を、私は、二度と繰り返してはならないと思いますが、教育長はどのようにお考えでしょうか、答弁を求めます。 

● 日本の今の政治状況を見れば、私たちは過去の歴史の事実と正面から向きあい、二度と誤ちを繰り返さないという立場に立った教育を堅持しなければならないと思います。
政府は「愛国心」を子どもたちにことさら強調するための道徳教育の重視や、侵略戦争を美化する育鵬社の歴史教科書を使わせようとしています。
集団的自衛権の行使容認など「海外で戦争する国づくり」をめざして、戦後積み上げてきた日本の教育を、大本から塗り替えようとしているのです。
 子どもたちの未来と教育を安倍政権の犠牲にするわけにはいきません。
教育長は、絶対に安倍首相がめざす右翼的潮流の強い教育を容認し追随しないでいただきたいと思います。

△教育長答弁〜政治の世界ではいろいろな考えがあるが、右にも左にもぶれない、子どもを中心に据えた教育が重要。

A 次に、政治が教育を支配することを可能にする教育委員会改悪法が自民・公明の与党などの賛成で成立しました。政治的中立性が脅かされることに教育関係者や教育行政の現場から多くの危惧の声が上がっていたにもかかわらず、教育委員会の自治体首長からの独立性を奪う法律を成立させた各党の責任は重大であります。その内容は、一言でいえば、国や行政権力から独立し、国民に直接責任を負っている現在の住民代表による教育委員会の役割を否定し、政治権力が教育を思い通りに支配するための制度改悪であります。
 首長が国の方針をもとに「教育大綱」を決定し、教育委員会を従属させるとともに、教育委員長をなくし、首長が任命する教育長を教育委員会のトップに据えます。
 さらに、文部科学大臣の権限を強化し、教育委員会に「是正指示」が出せるようにしています。 
 世論調査でも75%の人が「政治家が教育内容をゆがめない歯止めが必要」と答えています。 
  私は、今回改悪された法律の反動的な運用を可能な限り阻止し、子どもの権利を最優先に考え、子ども・保護者・教職員・住民の意見に耳を傾け、未来を担う子どもたちに最善の教育を行う立場を堅持することが大事だと考えます。教育長の答弁を求めます。

●教育長のように私は楽観できません。教育への乱暴な政治介入はすでに広がっています。
 最近も、橋下大阪市長が違法な教職員の「思想調査」を行おうとした時、市教育委員会が否決し、教育現場を守りました。
  また、島根県松江市では、教育長が漫画『はだしのゲン』を学校図書館から撤去させた時、教育委員会がその決定を取り消しています。
沖縄県八重山(やえやま)地区の竹富(たけとみ)町が、地区内の他の市町が使っている育鵬(いくほう)社版とは別の中学公民教科書を採択し、使用していることについて、下村文科大臣が町の教育委員会に対し、地方自治法にもとづく「是正要求」を行うことを公言し、育鵬社版の採択を強要しようとしています。地方の意向を無視した異常な政治介入です。

安倍政権は、この教育委員会の教育の自由を守る“最後の砦(とりで)”ともいうべき「首長からの独立性」を取り上げたのです。
 教育は、子どもの成長・発達のための文化的な営みであり、教員と子どもとの人間的な触れ合いを通じて行われるものであるだけに、自由や自主性が欠かせません。 
今回の教育制度の改悪によって強まる政治介入に言いなりにならず、前橋市の教育を守っていただくように強く求めておきます。

△教育長答弁〜教育委員会制度は変わるが、教育委員の意見を尊重した教育を堅持する。今までの教育方針を変える意思はない。

2、次に教育の在り方についてです。

@今年の4月に文科省が小学6年と中学3年の全員、約224万人を対象に61億円もかけて実施した7回目の全国学力テストに、本市の児童生徒も参加しました。
 文科省は学力テストの結果で示されるのは「学力の特定の一部分」「学校における教育活動の一側面」だと説明しています。それなのに都道府県別の結果を公表して競争をあおっています。
 日本の教師たちは、友達と一緒に何かをやりきる、さまざまな考え方を出し合って真理を見つける、学んだことを自分の生き方や地域と結びつけて考える。
子どもたちにこのような力を育てることを大切にしてきました。仮に学力テストの点が上がっても、他の課題がおろそかになり、本当に豊かな学力を育てることはできません。
 本市ではテストの結果を公表はしていませんが、文科省の言うように授業の改善や習熟状況の把握のためならば、市独自のテストで学力の傾向は把握できるのではないでしょうか。弊害の多い学力テストの中止を国に求めるべきだと思います。答弁を。

 ●通常のテストは授業でやったことを子どもたちがきちんと理解しているか、誰がどこでつまずいているのかを確認し、指導に役立てられていますが、学力テストは、結果が示されるのは実施から数カ月後で、返ってくるのは答案用紙ではなく、問題ごとにできたか、できなかったかを示した表です。子どもは自分がどこでどう間違えたか分からず、教師も具体的な指導ができません。
しかも、文科省は全国学力テストの学校別の平均点公表を、「序列化や過度な競争につながる」として禁止していましたが、今回から各自治体の判断でできるようにしました。結果公表は、学校の序列化競争を強め教育をゆがめる最悪の政治介入です。いまのところ教育委員会の多くは学校別の公表に慎重です。しかし、国による教育介入が強まれば、公表が進み、全国の学校間競争が一層激しくなる恐れがあります。「うちの学校はだめな学校」などと傷つくのは子どもたちです。 中止を求めていただきたいと思います。

△指導担当次長答弁〜学力テストは重要なので今後も実施する。

A次に、今全国で制度化され本市でも毎年全教員を対象に実施されている教員評価制度についてです。利潤追求の企業が経営効率化を高めるために発案された成果主義に基づく経営手法を学校経営に持ち込むべきではありません。
 教員が管理職の目を気にし、管理職は教育委員会の目を気にする、そうした中では、子どもを中心にした率直な議論や対応ができなくなるのではないでしょうか。学校現場だけでなく教育委員会にも学校現場の声が届きにくくなるのではないでしょうか。教職員が一丸となっていじめ問題解決などに向き合うためにも、数値目標で縛る教員評価制度はただちにやめるべきだと思います。見解をお聞かせください。

●学校現場の先生からも、教員を5段階にランクづけし、結果として人事や給与などにリンクする今の教員評価制度が現場のチームワークを壊していることなどの訴えがありました。行政が教員の優劣をきめて、給与や人事に格差をつけることは、教員のあり方を歪めるもので、教員どうしの協力や連携を困難にし、子どもの教育に悪影響をおよぼすものです。いじめや不登校・学級崩壊などの問題解決の点からも、評価制度の即時中止を求めておきます。

△指導担当次長答弁〜学校の管理職と各教員との教育実践についてのコミュニケーションも図られており、各教員がより良い教育をめざす目標も明らかにできるので、教員評価制度は継続していく。

3、いじめ問題について

@策定した前橋市いじめ防止基本方針には、いじめ発生の根本的な原因の記述がありません。文科省も多くの教育者も共通して、実証的な調査にもとづいて、「学校で子どもたちが競争教育によって非常に強いストレス、抑圧感にさらされている。そのはけ口としていじめという行動を起こす」と指摘しています。いじめの最大の原因となっている、子どもを点数で競わせる競争主義的な教育をどのように改めるのか、その具体策をいじめ防止方針に盛り込むべきと考えますが、見解をお聞かせください。

● 子どもを早くから「できる子」「できない子」により分け、多くの子どもが劣等感を与えられ、「わかる喜び」やみんなで学ぶ心地よさを得ることができません。
のびのび育つべき多くの子どもたちが、苛立ちをマグマのようにためこみ、強い孤独感につつまれています――このことは、これまでの過度に競争的な教育制度や格差と貧困を深刻化させた弱肉強食の経済社会が、子どもの成長といよいよ相容れなくなっていることを示しています。国連・子どもの権利委員会も日本政府に再三、「過度に競争的な教育制度」の改善を勧告しています。
 前橋市も、道徳教育を重視して、子どもたちの豊かな心をはぐくむことを方針としていますが、根本原因に迫らなければ「いじめ」を減らすことはできません。いじめ防止基本方針には、「なによりも過度な競争教育から脱却し、すべての子どもたちの能力を豊かにのばす教育への転換を目指すべき」と明記するよう求めておきます。

 △指導担当次長答弁〜方針の中のいじめを認知した時の対策などに、豊かな心をはぐくんだり、良好な人間関係を形成するための指導を強めるなどの記述があるので、あえて原因に言及する記述は必要ない。

A次に、教員の多忙化の解消策です。今、学校現場では、授業、職員会議、学年会議、部活動の指導、テストの採点、教材研究やそれ以外の雑務に追われて長時間過密労働が常態化しています。教職員のおかれている状況は大変過酷です。文科省の勤務実態調査でも、持ち帰りや早出などを含めると超過勤務は平均で81時間と過労死ラインを超えています。多くの先生が、子どもと向き合う時間が十分取れず、家庭環境も習熟度も異なる一人ひとりの子どもと信頼関係をつくっていくことが困難になっています。疲労が蓄積して、 健康面での不安を抱えている先生も増えています。
そんな中で、「子ども同士がふざけていてもいじめかふざけているのか、判断がむずかしく、いじめを見落としているかもしれません。いつ重大事故が起きるのではないか不安だ。」という話しも聞いています。
 いじめ問題などの解決のためには、このような教員の多忙感の抜本的な解消策も急務の課題だと考えますが、どのような対策を考えておられるのか。見解をお聞かせください。

△指導担当次長答弁〜各種会議を減らしたり、教員研修の集約化、報告文書の簡略化、部活の外部指導員の増員などの取り組みを強めて、子どもたちと向き合える時間を増やす。

●答弁いただいたような改善策は重要ですが、教員が多忙な一番の背景には、何よりも教師が向き合う一人あたりの受け持つ児童生徒の人数が多いという問題ではないでしょうか。そこで、30人学級の早期実現について質問します。

4、30人学級の早期実現について
 
 今本市教育委員会は、30人学級に向けての段階的な計画を明らかにしていますが、来年度から小学校5・6年の単学級の6校7学級だけを35人学級とする内容です。少人数学級の重要性を認めながら、この段階的計画ではいつになったら全学年の30人学級が実現するのかもまったく分からず、大変不十分です。
 教員の多忙感を解消し、いじめや不登校問題や、発達障害児への対応などすべての子どもたちにゆとりを持って向き合うためには、臨時的任用の介護員や・支援員・非常勤教員の増員だけではなく、正規教員を増やして30人学級を一刻も早く全小中学校で実現すべきです。教育条件整備が市の教育行政の最大の責務です。国や県にも実施をもっと強く働きかけるべきではないでしょうか。見解を求めます。

●今回の5・6年の7クラス35人学級に必要な経費は約4000万円、3・4年の30人学級の実現のためには27人の教員の増員が必要ですが経費は約1億5千万円です。合わせて2億円です。より良い教育条件整備のために、決断すれば十分財政的にも実現可能ではないでしょうか。
少人数学級をすすめていくことが、一人ひとりに細やかな指導ができ、教師にも余裕が出来、子どもたちの小さな変化にも気付きやすくなり、学力の向上はもちろん、いじめや不登校などの問題への対応などの諸課題の解決にもつながるのではないでしょうか。計画の見直しを求めます。

△指導担当次長答弁〜財政的にも困難であるので、当面は現在の計画で推進を図りたい。国や県の動向も見守りたい。

5、前橋の教育にどのような責任を果たすか

最後に教育長に質問します。これまで述べてきた安倍政権の教育委員会の「改革」、道徳の教科化などを通じて、安倍政権がどういう「教育再生」をめざしているのか、その目的はどういうものなのかが明らかになっています。
 それは、「戦争する国」づくりのための教育、アメリカと一緒に「戦争する国」を支える人材づくりのための愛国心や規範意識を教え込むことです。さらに、飛び級などを認め、早いうちから「エリート」を選び出し、「大学改革」で産業界との連携を強めるなど、財界の要請に添って、国際競争力強化に貢献できる「グローバルな人材」づくりをすすめることです。こんな教育は子どもたちを幸せにすることはできません。
 本来教育は、一人ひとりが人間として大切にされ、子どもの最善の利益が守られる教育をすすめて、だれもが人間らしい発達を目指し、能力を精一杯伸ばして、「人格の完成」をめざしていくものではないでしょうか。政府や財界の要請にそった「人材づくり」が教育の目的となってはならないと考えます。見解を。

△教育長の答弁〜政治的にはいろいろな動きがあるが、子どもにとって最善の環境を提供し、未来を担う子供たちの学力と人格形成ができるよう努力する。

●まとめ〜いま国民がねがっているのは、いじめや学力などの問題を解決するために、30人以下学級の実施など、国際的にもおくれている教育条件を抜本的に整備することであり、過度の競争教育から子どもたちを解放することです。
学校現場で築き上げている、教育内容や指導方法に政治が乱暴に介入したり、教育の自主性をおかすことのないよう、強く政府に要求すべきです。
 憲法の立場に反する、侵略戦争の美化・肯定の公教育への持ち込みにも反対すべきです。
教員の指導力量向上のためには、自発的、自主的なとりくみを奨励し、教職員が子どもや保護者にきちんと向き合えるような学校の環境をつくることです。
そして子ども、保護者、教職員、住民の意見を反映して民主的に学校が運営されるような改革こそ必要です。強く指摘しておきます。

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