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議員団紹介 長谷川薫 議員

年間1万件を超える前橋市の滞納整理の改善を!総務委員会で質問 2016年 03月 22日


【2016/3/23】

年間1万件を超える前橋市の滞納整理の改善を!


2016年3月・第1回定例議会総務委員会質問

1、税収納行政の改善について

@滞納整理について。
 まず、税の滞納整理について伺います。この間、共産党市議団は、繰り返し、本市収納課の行き過ぎた差し押さえを改善するように求めて質問してきました。しかしその都度、市長も財務部長も収納課長も、「滞納者の状況をよく調査して法に基づいて適切に徴収している」とか「問答無用の滞納整理はしていない」と答弁されています。しかし今、国や全国の自治体の間でも、「差し押さえを乱発して過酷な滞納整理をしている自治体が前橋市」とすぐに言われる状況にまでなっています。前橋市は全庁的に前橋のシティーセールスに力を入れていますが、前橋の魅力よりも、税金のきびしい取り立て日本一ということで名を馳せていることは恥ずかしいことだと思います。
今回は、私たちへ寄せられた市民からの深刻な滞納整理にかかわる相談事例を示しながら質問したいと思います。

 最初の相談事例を紹介します。(2015年6月相談)市内で暮らす48歳の男性は、病気になって働けず貯金も底をついたので、社会福祉協議会から昨年の5月に生活福祉資金を10万円借りて、ハローワークで求職活動をしていました。やっとパートとして市内の中小企業に就職できることとなり、5月21日から働き始めました。ところが6月25日に初めての給料約11万円が銀行預金の口座に振り込まれたのですが、その当日中に、滞納していた国保税74100円を市の収納課に全額差し押さえられたのです。他には預金も収入の当てもなく生活できないので解除を求めましたが、担当職員が解除を一切聞き入れてくれなかったそうです。やむなく「家賃も払えず生活もできないので、差し押さえを解除してほしい」と市長に異議申し立てをしたそうです。すぐに担当職員から連絡があり、「昨年の所得のゼロ申告をすれば国保税の7割減免ができる、その減免分約5万円については差し押さえ解除ができるのでるので異議申し立てを取り下げてほしい」との説明があったので、全額解除にならないことは納得できなかったけれども取り下げたそうです。それにしても、生活実態を把握しないで、やっと再就職先を見つけた市民の給料の全額を差し押さえ生活を脅かす処分は明らかに違法であり、行き過ぎと思います。

 ●そこで収納課長に質問します。紹介した事例のように収納課は、滞納整理にあたって、給与や年金が預金口座に振り込まれた日を狙って、預金残額の全額を差し押さえることが少なくありません。給与・年金の生計費相当額や、児童手当などの給付は、法律で差し押さえが禁止されているにもかかわらず、銀行口座に振り込まれた瞬間から「金融資産」と強弁し、平然と差し押さえる脱法行為が続いています。紹介した事例の方は、最低生活費相当額10万円+4.5万円×家族数+税金や社会保険料が差し押さえ禁止額ですから1円も差し押さえられないのです。2013年11月27日の広島高裁の裁判例からみても、差し押さえ禁止債権や禁止額を無視した差押えは、違法です。実際に、生活保護に陥り、生活を困窮させる事態が頻繁に起きています。国税徴収法にも総務省の通達にも反する差し押さえを直ちにやめるべきと思いますが、見解を伺います。

【指摘】前橋市は、年間1万件の差し押さえ件数のうちの94%が債権の差し押さえになっています。公売や換価手続きいらない預金債権、つまりの預金口座の差し押さえが滞納整理の中心になっています。しかも、貯蓄のための定期預金のような口座ではなく、日々の暮らしに必要な生活口座の差し押さえが容赦なく行われているのです。強制執行は、債務者の財産から強制的に弁済を受けるものですが、なんでも差し押さえられるわけではありません。債務者が生きていく上で最低限必要なものまでは、差押えすることはできません。
年金については、社会政策的見地から国税徴収法77条で全額について差押えが禁止されています。年金が銀行口座に振り込まれて貯まっている場合でも、判例は、差押えを可能とするのでは債務者の生活保障という趣旨を全うできないので、銀行口座の年金相当部分は差押えを禁止としています。しかし、前橋市は年金生活者の預金口座も無視して差し押さえています。
 預金口座に振り込まれた児童手当を鳥取県が9分後に差し押さえて、滞納していた県税に充てたのは違法と訴えていた裁判で、鳥取地方裁判所は【213年3月29日】に「権限を濫用した違法なもの」と鳥取県の差し押さえ処分を断罪しました。鳥取県は控訴しましたが、広島高裁松江支部も『児童手当の属性を失っていない』と判断し、差し押さえは『児童手当法の趣旨に反して違法である』という判決を下し【2013年11月27日】に判決が確定しました。
 高市総務大臣もわが党の国会質問に対して、児童手当の振り込みを待って狙い撃ち的に差し押さえるような方法は差し引変えるべき。実質的に児童手当を受ける権利自体を差し押さえるに等しい。裁判の判決もあるので、今年も昨年も地方税務行政の運営に合った手の留意事項という事務連絡で、滞納処分に関しては、滞納者の個別具体的な実情を十分に把握したうえで適正な執行に努めてほしい旨要請をしていると答弁しています。前橋市も、差し押さえ禁止財産である年金や差し押さえ制限金額がある給与などの振り込みを狙って、全額差し押さえをしている点では、鳥取県と同じです。いかがでしょうか。

 次の事例です。60代の会社の経営者からの今年の1月の相談です。固定資産税の1期目を納めて、その後、まとめて3・4期目を納めて完納していたと勘違いしていたそうです。ある日突然、融資を受けている取引銀行の担当者が訪ねてきて「口座の預金が差し押さえられているが、どうしたのですか。経営が大変になっているのですか」と言われ、固定資産税の滞納で差し押さえられていることが分かったそうです。取引銀行との信頼が崩れて、今後の会社経営にも影響が出かねない状態でした。事実を明らかにしたので事なきを得ましたが、丁寧な連絡を市からもらえればすぐに納めていたのに、うっかり一期分の数万円の納入ミスを突然、預金口座の差し押さえで徴収するのはひどすぎると言っておられました。

 ●この方のように滞納税が累積する前の初期段階での早期差し押さえを進めていることも、差し押さえ件数が年間1万件を超える背景となっています。法に基づく滞納処分の開始要件が充足された時には、うっかりミスも含めて遅滞なく少額滞納でも「差し押さえる」という徴収方針は問題です。税滞納市民を一律的に悪質滞納者とみなした制裁的な差し押さえの乱用ともいえる滞納整理をしています。直ちに改めて、納税者に自主的な納付を促す滞納整理の基本に立ち戻るべきと思いますが、見解を伺います。

 ●このような過酷な行き過ぎた差し押さえをしても、現年分の収納率はお隣の高崎市と比べてもあまり変わりません。
 平成26年度の差し押さえ件数と収納率を比較しますと、高崎市は前橋市の差し押さえ件数の4割で4027件です。しかし高崎市の市民税の現年分の収納率は決して低くはありません。98.99%です。国保税も全国平均より高い91.53%です。一方、前橋市は差し押さえ件数10768件、市税収納率が99.4%、国保税が95%。市税はほぼ同じ収納率で、国保税がわずか3.5%高いだけです。
 つまり、高崎の2倍以上の1万件もの差し押さえをしても、収納率はほとんど変わらない。逆に言えば、前橋市では差し押さえをしなければ高崎市並みの収納率を維持できなくなっていると言えます。滞納された市民に対して、自主納付に向けて丁寧に指導援助していくという本来の収納行政から逸脱する方向に向かっているのではないでしょうか。大変心配します。これからの市行政を担う新人収納課職員に、滞納整理の主たる手法が、預金口座の差し押さえという認識を持たせているのではないでしょうか。私は、直ちに改善が必要だと思いますが、いかがでしょうか。

【指摘】税金の納付意思がない特定の悪質滞納者に限られるべき差押えという強制手段が、全滞納者に普遍化していることが問題です。そこを強く指摘しておきます。

A 税滞納者の生活実態の把握と納税相談について。

 ●次に、税滞納者の生活実態の把握と納税相談について伺います。滞納整理の大前提は、税滞納者の暮らしの実態をできる限り正しく把握することからスタートすべきです。本来最終手段である差し押さえを最優先する滞納整理手法は、国税徴収法の制定の趣旨にも反しています。徴税吏員は強大な権力の行使の権限を持っているだけに、濫用すれば憲法25条で市民に保障すべき最低限の文化的な生活も、憲法29条の財産権も奪われます。滞納の初期段階で差し押さえることが、市民の負担軽減と説明して、差し押さえという強制処分を先行させて、納税意識を高めたり納税相談のスタートラインに立たせるという滞納整理手法は直ちに改善が必要だと思います。あらゆる手段を講じて、相談窓口への来庁を粘り強く求めるべきだと思いますが、見解を伺います。

 次の事例です。 52歳の労働者からの昨年9月の相談です。この方は、転職して零細企業に働いていてボーナスがなくなり、手取りが22万円で、年間所得が300万円です。妻は内職で月に2〜3万円.当時は高校3年生と中学3年生の子供と4人暮らしで、20年近く前に建てた持ち家は古くなりましたが、まだ住宅ローンが残っているので生活が大変で、固定資産税と軽自動車税を合計3万3400円滞納していました。本人は、必ず年内に収めるので待ってほしいと担当職員にお願いしていたのに、市は11月2日に滞納額の全額をわずかに残っている郵便貯金を差し押さえて収納しました。育ち盛りの子供さん二人がいることも、大変生活が苦しい状況は収納課も分かっており、しかも必ず年内に納入すると言っていたのに、問答無用で差し押さえています。

 ●このような例は、頻繁に起きています。納税相談では滞納者の追い詰められた心理状況を理解し、納税相談窓口に来たことを評価し、寄り添う相談が必要ではないでしょうか。事例の労働者は納税相談にも応じて、年内の納入を約束しているのに、差し押さえを行うのはひどすぎるのではないでしょうか。滞納者と良好な関係をつくり、なぜ生活困窮しているのかよく聞き出し、生活全体を把握し、解決策を一緒に考え、状況に応じて福祉につなぐ相談体制が必要です。徴税吏員がその窓口になるべきと考えますが、見解を伺います。

 ●徴税吏員という職務はいわゆる調査権も強力に持っています。事情把握もできます。しかし、前橋市は納税のための財産調査は熱心ですが、それ以外の部分、生活再建なり、生活支援についてはほとんど関心を示しません。そこが問題だと思います。そこで、根岸行政管理課長にお聞きしますが、滋賀県野洲市では、市民部がワンストップで市民の生活相談を受ける窓口を開設している。生活を再建し、納期内納入ができる納税者になってもらうためには、市役所の職員と滞納者との間に信頼関係をつくり、その人の暮らしに寄り添うことが一番大事だと思う。就労支援や暮らしの家計のやりくりなども相談できる窓口を前橋市でも開設する必要があるのではないか。見解を伺います。

B滞納処分の執行停止について。

 滞納処分の執行停止等にについて伺います。

 次の事例です。 現在70代の男性です。事業に失敗し破産し会社も整理し、借家に暮らしています。破産の際に、土地建物はすべて処分し、固定資産税も市税もすべて本税は完納し、延滞金だけ残りました。体も悪く働けず、わずかな国民年金だけの生活なので、残りの延滞金百数十万円は執行停止してほしいと担当者に何度もお願いしたけれど聞き入れてもらえないそうです。わずかな国民年金から、毎月5千円だけは払い続けてほしいと言われて、もう10年近く1回も遅れずに払い続けています。死ぬまで払い続けなければならないのかと思うと辛い。と話しています。このような方こそ、執行停止の対象になるのではないでしょうか。

 納税相談や財産調査などの結果、本人が生活困窮などやむを得ない事情により納税が難しいと判明した場合は、滞納処分の停止をすべきです。また、納税の猶予・換価の猶予・執行停止などの納税緩和制度が担当職員の裁量とならないように、全国的には法律をさらに詳細に規定する事務処理要領を作っている自治体もありますので、本市も明確な基準を策定すべきと思いますが。見解をお聞かせください。

 ●最後に、市長にお聞きします。今、収納課長や財務部長に答弁を求めましたが、示した事例でもお分かりのように、収納課では個々の税滞納者の暮らしの実態を十分把握しないまま、国税徴収法や地方税法、さらには総務省通達にも抵触する滞納整理が行われています。
 市長は4年前の市長選挙では行き過ぎた税金の取り立てをやめるとか、税金を権力の道具にしませんなどと公約しましたが、高木市長の時の平成23年が7003件だったのが、市長就任の平成24年度は8366件、26年度は10768件になり差し押さえも増え続けています。これまで、収納課長と滞納整理の行き過ぎについて具体例も示して改善を求めましたが、お聞きになって市長はどのようにお感じになられたのか、見解を伺います。

 一昨日の市民経済常任委員会で、市長は「私たちは権能に基づくことしかできないのです」と繰り返し強調されました。権能とは法律や条例や規則、通達に基づく行政執行ということだと思います。前橋市の滞納整理は、明らかに権能を超えた過酷な行政執行で、市民の命や営業を脅かしているのです。市民が悲鳴を上げています。当局は一貫して「納期内納税をしている市民との公平を保つためにも、滞納している市民には厳正な対応が必要」という立場を金科玉条に振りかざしています。納税相談でも、多くの職員が、税金滞納者を安易に悪質滞納者扱いして、上から目線で対応しています。少額滞納でも、財産調査をして、取れるところから取るという行政では、根本的な解決になりません。過酷な取り立てで市民の生活そのものを壊しては本末転倒です。強大な権力を徴税吏員として振りかざすのではなく、生活困窮者を支援するという立場で自主納付できるまで市民に寄り添うという、本来の滞納整理・税収納行政の原点に立ち戻るべきだと思います。現場をよく見て、市長の責任で改革していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。答弁を求めます。

【最後に市長に指摘】〜先日の市長選挙の時に、年間1万件を超える預金債権を中心にした問答無用の差し押さえが、税滞納者を追い詰め、市民の暮らしを困窮させている、まるで時代劇に出る悪代官のようだ。こんな市政を変えよう、という民主市政の会が作成した政策ビラの訴えに、投票所に足を運んだ4人に一人の市民が共感し樋口弁護士に投票しました。
今議会の我が党の代表質問の答弁でも、市長は滞納整理問題で、「お金を隠している滞納者の布団をはがしているのではないか」などととんでもない答弁をされました。市民に冷たい収納行政の事実を見つめなおそうとしない市長の答弁お聞きして、本当に市政のトップとして情けないと思いました。今後市長の2期目は、このような行政が改善されるのかどうか、市民は注視していくと思います。
また、今議会のわが党議員の質問に対して、市長は「丁寧には答えない」という姿勢を示しています。わが党と政策的立場が違っていても、ともに市長も議員も、様々な角度から議論を尽くし、市民の願いにこたえようとする政治家との姿勢が求められているのではないでしょうか。お互いに敬意を払いあうべき関係であることを再認識していただきたいと思います。市長の政治家としての資質・政治姿勢にかかわることですから改めて申し上げておきます。

 当局答弁は、私が具体的な事例を示しても、「税滞納者とのていねいな納税相談の努力を尽くしている。それでも納付しない場合に財産調査をして差し押さえをしている。適法な処分であり、市民の生存権を脅かしていない」と答え、預金口座を狙い撃ちにした差押えを乱発している収納行政を改善する姿勢は一切示しませんでした。今後とも、差し押さえ先にありきの前橋市の収税収納政の改善を強く求めて行きます。

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