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日本共産党前橋市議会議員団

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活動報告
ACTIVITY

行政視察報告 7/24 ~26

7月24日(月)~ 7月26日(水)まで市議団は行政視察を行いました。

東京都世田谷区、神奈川県横須賀市、静岡県富士宮市、愛知県名古屋市で次の項目について視察しました。。

世田谷区  世田谷区平和資料館の事業運営について

横須賀市  市独自の保育士配置基準の取り組みについて
富士宮市  認知症サポーターの取り組みについて

名古屋市  国民健康保険料の独自控除と独自減免の取り組みについて

 

 

以下、視察概要を報告します。

【世田谷区】    世田谷区平和資料館の事業運営について

 世田谷区は、核兵器の廃絶と平和の輪を世界に広げていくことを誓い1985年に平和都市宣言を行いました。同区の平和事業は、平和都市宣言のもとに行われています。同区は、戦争の悲惨さと平和の尊さを伝える取り組みの一環で区立小学校内に「せたがや平和資料室」を設置し、平和事業の充実と利用者の利便性向上に配慮し、2015年8月15日に同区の世田谷公園内に移設し、名称は「世田谷区立平和資料館」(愛称、せたがや未来の平和館)に改めました。施設概要は延床面積370㎡、そのうち展示施設の面積は116平方メートルです。展示施設のほかには映像資料や平和に関する資料を閲覧できるライブラリー、企画展などを実施する多目的室からなります。同館は「世田谷区立平和資料館事業方針」において、3つのステップ(視点)で運営目標を立てています。第1は、過去を知り、感じ、伝えること(戦争資料収集、保存、展示)です。第2は、現在を理解すること(世界で起きる様々な紛争を踏まえた恒久平和実現への取り組み)です。第3は、未来を展望する(平和の尊さの理解を通し地域交流、平和の意識醸成)です。

 同館の展示施設は、最初に平和宣言を紹介し「平和とは何か」について問題提起しています。そして、戦争資料が展示され学童疎開の様子や戦争の中で起きた出来事、区民の暮らしや戦争動員など、写真パネルも豊富に交え解説していました。そして、沖縄戦に関する資料や被爆したワンピースなど、東京大空襲や沖縄、広島・長崎に関わる資料展示、終戦、戦後から現代まで、現代から未来へなど、19のテーマで展示しています。

 加害に係る展示は「どういう展示なら公の施設として出せるか」について教育関係者の協力も得て検討したそうです。その結果「日本の軍隊」というコーナーで、学校で使用する教科書に記載される範囲でパネル展示をすることになったそうです。同館では、子どもたちの学びを大切に、学童疎開の写真パネル、SDGsの観点から、未来の平和について考える常設展示がされていました。今年度から展示施設をリニューアルし、「紛争、平和、貧困、環境問題」の観点から未来の平和を考える展示ブースを設置しました。企画展は「せたがやの未来の平和をSDGsで考えよう」という男女共同参画の担当課と連携した企画展示をしていました。

 同館は、事業評価委員会(学識関係者2名、小学校・中学校・PTA関係者各1名、町会代表1名で構成)を設置し、区民のニーズを的確にとらえ、平和事業を展開するために年2回委員会を開催しています。こうした取り組みの中で資料展示に関わらず様々な平和事業に関わる様々な意見が交流されています。同館は3名の専門員を配置し、専門員が企画や展示、区民や区内の学生と交わるワークショップなどを実施しています。川崎市平和館との連携による「平和へのメッセージ展」や小学生向けにフウセンカヅラの花の種を配る「平和の花」活動をしています。

年間行事では、区内3施設での巡回展、中学校へ年9~10校で巡回展、平和映画祭など各種のイベントを実施し、子どもからおとなまで平和を発信する活発な事業を実施していました。

 本市は2023年度中の市民文化会館内への公設資料館の設置を目指しています。「前橋空襲と復興資料館検討委員会」で前橋空襲など戦争資料を展示する施設の設置へ向けた検討が進められていますが、貴重な前橋空襲等戦争資料の活用とともに、子どもやおとなも戦争や平和について学び、考えることができる、本市の平和事業の発信拠点としていくことが重要だと思います。

 市民参加で、本市平和宣言に関わる発信拠点としての公設資料館を設置し、本市の平和事業を充実する観点からも、世田谷区の取り組みは本市で生かせる点が多く大変示唆に富んだものでありました。

 

【横須賀市】   市独自の保育士配置基準の取り組みについて

党市議団は、本市の保育現場から寄せられている「子どもたちの命を守り、安全を確保しながら発達を保障するなど、保育の質を確保するためには、現行の保育士配置基準では不十分である。1日も早く改善してほしい」という要望を踏まえて、0歳から5歳児までの独自の保育士配置基準を条例で定めて、保育士の負担を軽減している横須賀市を視察しました。

横須賀市は令和5年4月1日現在の人口は37万6,171人で、世帯数は16万5,946戸の中核市です。一般会計は約1,610億円です。隣接して横浜市や東京都などの大都市が位置しているために、福祉や教育など各分野の行政施策を可能な限りレベルアップしています。

今年度の同市内の保育施設は、公立保育所が9か所、私立保育所が61か所であり、利用児童数は1,154人で、入所待機児童は10人です。

同市は、平成25年4月1日に「児童福祉施設の設備等に関する基準を定める条例」を制定・施行し、その後も改正を5回行い、保育士の配置基準を順次改善しています。

現行の幼保連携型認定こども園、幼稚園型認定ども園、保育所の保育士配置基準は以下の通りです。

クラス年齢

国配置基準
(児童数:保育士数)

横須賀市配置基準

(児童数:保育士数)

5歳児

30:1

27:1

4歳児

3歳児

20:1

18:1

2歳児

6:1

5.2:1

1歳児

4.5:1

0歳児

3:1

2.57:1

同市は条例施行以前から「保育所機能強化費」として、質の高い保育を担保するために国の配置基準を上回って、児童の年齢に応じた保育士を配置している各保育施設に、必要な雇用経費を対象に補助金を交付しており、当該補助金の要件としていた保育士の配置基準を、平成25年に前述の条例に定めて規定しています。

この市独自の上乗せ条例によって、公立保育所9施設の保育士数は、国基準では152名ですが、29人上乗せされて181人となっています。令和4年度分で市独自の人件費支出額は公立・民間合わせて約3億2,698万円を計上しています。

また保育士の処遇改善も市独自で推進しています。国は現在、経験年数7年以上の保育士の報酬に月額4万円を加算する制度を実施していますが、国の算定は施設ごとの保育士数のおおむね3分の1を対象としているため、実態に即した必要な支援となっていません。

そのため、同市では国の加算算定で不足する分について、令和元年度から市独自で補填し、保育士に加えて栄養士や調理員も加算の対象にしています。令和4年度に市は、保育施設の197人に毎月4万円を加算し、延べ2354人分、9,456万円分の加算をしています。

以上のとおり、今回の行政視察を通じて、同市では少子化対策を重視し、子育て支援策として保育士配置および職員の処遇加算についての国制度を超える市独自の支援策を重視しており、保育現場からも市民からも歓迎されていることがよくわかりました。

前橋市においても少子高齢化に対応した子育て支援策の強化は喫緊の課題であり、横須賀市のような独自施策の実施に向けての政策提案を行いたいと思います。

                                 

なお、本市の保育士配置基準は下表のとおりです。1歳児と3歳児のみ独自上乗せがされています。

クラス年齢

前橋市基準

国基準

0歳児

3:1

3:1

1歳児

5:1(独自上乗せ)

6:1

2歳児

6:1

6:1

3歳児

15:1(独自上乗せ)

20:1

4歳児

30:1

30:1

5歳児

30:1

30:1

 

 共産党市議団は、国への改善を求めると同時に、市当局に対して毎年の予算要望書で市独自に0歳児は2:1、1歳児は3:1に改善すべきと求めています。

 

【富士宮市】  認知症サポーターの取り組みについて 

今、高齢化社会の中で認知症高齢者が増加し、その支援が大きく求められています。

視察した富士宮市は人口約12万8千人、高齢化率は30.44%、認知症サポーターは2万3873人で、市が把握している認知症高齢者は4516人と報告されました。何といっても、最も大事にしていることは「認知症って特別じゃないよ、」というスローガンのもと、その人自身の声をよく聴き、思いや生活を大切にすること。支援を介護サービスや医療につなげて終了とせず、その人にとって何が必要かという視点を持ち、関係機関と【つながる】、そこから、必要な活動やしくみを考えていくこと、という個別支援の充実に力を入れていることです。

ひとり一人の生活を考える中で、若年性認知症の人の仕事がない、居場所が欲しいという声を聴いて木工房「いつでもゆめを」を開設し、若年性認知症の方々が、従業員としても木工製作や営業活動をする事業所を作りました。

また、認知症サポーターの取り組みでは、認知症の家族や当事者の声を大切にして、本人や家族が集い、出会える場を増やしていくことやいろいろな場面で本人が発信できること。相談しやすい体制と専門職のスキルアップを大切にしてきました。認知症カフェを当事者も家族もサポーターも一緒に楽しめる場所にと、やりたいこと例えばウオーキングがしたいという思いからウォーキングカフェをつくったり、グランドゴルフカフェ、カフェ奏(かな)でぃあんなどやりたいという思いから始まった21のカフェがつくられ、認知症サポーターも一緒に楽しみ参加し目線を同じくしており、誰が認知症の方か区別がつかない楽しい会になっています。

また、会は成功させなければならないという義務感はなくいつでも解散してよいという気軽なものになっています。

サポーターの育成では、参加できる活動の場を1つは作り、サポーター養成講座やステップアップ講座を定期的に開催してスキルアップを図っています。

前橋市は人口約33万人に対して高齢化率は約30.12%、認知症サポーター講座を受けた認知症サポーターは26,615人、市が把握している認知症高齢者は1万18人です。前橋市直営の認知症カフェは1か所、民間で実施している認知症はつらつカフェ31か所に月1万円を補助しています。

前橋市も富士宮市のように直営で認知症カフェを実施することによって、支援すべき内容や当事者の声、家族の声を直接把握でき、認知症サポーターの積極的な参加につなげていけるように、求めていきたいと思います。そして何よりも、認知症って特別じゃないとして、ひとり一人に光を当てて、個別の支援の充実に力を尽くすことが今後ますます求められますので、行政に反映していきたいと思います。

 

 

【名古屋市】 国民健康保険料の独自控除と独自減免の取り組みについて

 

名古屋市の国民健康保険加入者はR3年度末で430,828人、298,507世帯で全世帯に対する加入率は26.47%となっています。

 2013年から保険料の所得割額の算定を「旧ただし書き方式」に一本化することになりましたが、一方で保険者独自の保険料軽減を保険料の枠内で実施することが可能となりました。
 そのため名古屋市は、「旧ただし書き方式」で負担増となる多人数世帯や障害者・寡婦(夫)世帯などの保険料を抑制するため、旧ただし書き所得からさらに市独自の所得控除を差し引いた上で保険料の所得割料率を掛けています。

多人数世帯は扶養家族1人につき33万円、障害者控除の対象である扶養親族1人につき86万円を控除、障害者・寡婦(夫)本人は92万円を独自控除しています。実施により、旧ただし書き方式と比べ増加世帯が約10%減少、増加率が2倍以上になる世帯も7000世帯から2000世帯に大幅に減少したとのことです。また、新たに所得割額が賦課される非課税世帯の割合も全世帯の10%から4%に大幅減少しました。

 また、低所得者に対して、これまで法定減額対象世帯に申請により均等割を1人2000円を減免していましたが、令和5年度からは、申請不要で1人2000円を自動的に判定する制度を開始しています。

市独自の申請による「減免」は、①66万円+(3万円×被保険者数)以下の世帯に均等割の2割減免 ②前年所得が8/10以下に減少する世帯に所得割額の3割~7割を減免 ③事業の休止・廃止で所得が赤字になる世帯に保険料の7割を減免 ④災害により家屋の全壊、半壊、床上浸水などの被害を受けた世帯に発生から6か月以内の保険料の全額また5割を減免 ⑤障害・寡婦・ひとり親(所得135万円以下)・高齢者(所得45万円以下)に均等割を3割減免 ⑥会社都合で退職した人を対象に、給与所得金額を100分の30として保険料を算定。

これらの独自減免により加入世帯の約31.5%、7億3000万円(令和3)を減免しています。

県への納付金が増える中、県内自治体では保険料が上がっています。名古屋市も今年度約1割の保険料値上げを行ったとのことです。国保財政の基金は無く、一般会計から194億円(令和3)を繰り入れていますが、国や県からペナルティを課されない決算目的以外の法定外繰り入れを重視し、決算上は黒字を維持しています。また、資格者証は令和2年から廃止に踏み切りましたが、丁寧な納税相談と減免制度の適応で高い収納率を維持しています。

本市においては、払いたくても高い国保税を滞納してしまうと、収納課の強力な納税の督促で差し押さえなどの厳しい制裁が待っています。また、資格者証への制裁は、医療にかかれず、重病化したり手遅れになったり、まさに命に係わる事態になっています。

名古屋市の減免制度は一般会計からも繰り入れを行って、低所得者や多子世帯、障害者、一人親世帯、高齢者などに配慮した減免をきめ細かく実施しています。また資格者証の廃止を決断するなど、市民が払える国保料を追求していることは多いに見習うべきです。

本市においてもこのような他都市の先進事例を研究して、本市行政に生かしてほしいと強く思いました。 

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