国が目指すデジタル社会の推進のため本市は国家戦略特区法のスーパーシティに手を上げ、選定をめざしていますが、市民の理解が進んでいるとは言えない状況です。
(1) 最初にデジタルデバイドについてです。
●現状
そもそもスマホの操作事態が高齢者にとっては負担で「通信会社のスマホ講座に通ったが結局操作方法が覚えられなかった」「文字入力ができない」などと訴えられます。
スーパーシティ構想では、高齢者約5万人を対象にスマホを無償で貸し出すと、すでに答弁されています。政府も総務省は全国のデジタル弱者解消へ5か年で1000万人の講習を行う計画です。スマホの基本操作から、マイナンバーカードを使った行政手続きの申請や専用サイトマイナポータルの利用方法など11のテーマを掲げていますが、国や自治体が、スマホの無償貸与やデジタルを習熟せよと求めるだけではデジタル格差は解消できないと思います。
スマホを使えない高齢者や障がい者など、困難な環境や条件にある人が取り残されかねません。また、マイナンバー カードを使用しない人も排除されます。
高齢者のデジタル化の現状をどうとらえているかこのような状況で、スーパーシティにおけるデジタルデバイド対策がうまくいくとは思えませんが、見解を求めます。
●誰一人取り残さないといいますが、非現実的な対策としかいいようがありません。
今回のワクチン接種の予約を例にとりますと、スマホを持っているがネット予約ができず子どもや知人に頼んだり、多くの高齢者が市役所、支所などの窓口での予約に押し寄せました、市民への周知は、ホームページ、SNSに加えはがきや回覧板、毎戸配布も使い、周知の徹底に努めました。改めて多様な情報発信や窓口サービスの重要さが浮き彫りになりました。この現実を直視し、多面的な市民のニーズにこたえる行政サービスの充実こそ求められていると思います。
(2)次に個人情報保護について伺います。
スーパーシティでは、企業など実施主体が、市民の様々な個人情報を集め、管理・分析し、医療、交通、金融など様々なサービスを提供しようとするものです。
また、顔認証やスマホの位置情報によって、住民の行動を実施主体が掌握する監視社会の出現により、個人のプライバシーと権利を侵害する重大な危険があります。
市は、未来の便利さを強調していますが、便利さと引き換えに個人情報が危険にさらされることになります。個人のプライバシーを守れるのか、この市民の不安に本市はどのように答えようとしているかお答えください。
●本市はまえばしIDの取得で、先端的サービス提供事業者が個人の出生から終末期までの様々なデータを、データ連携基盤から収集し、市民にサーピスを提供するものです。
個人情報が守られず、監視が進み、24時間、日常生活すべてが筒抜けとなり、個人の趣味や好み、思考パターンまで分析の対象となってしまい人格さえ丸裸にするような危険性があります。
現在、行政が保有する個人情報 は、国の個人情報 保護法と地方公共 団体の個人情報保護条例の二重構造で保護されています。今後は、これを統一化、標準化することにより、自治体の個人情報保護条例づくりにも縛りがかけられることになります。
個人情報のデータ利活用を進めるため、保護の仕組みが切り捨てられ、市民が求める実効性ある個人情報保護条例は制定できなくなると思いますが、見解を。
●政府がスーパーシティのお手本としてきた中国の杭州市は町全体のIT化が一番進んでおり、住民は、自らの個人情報を提供し、様々な最先端サービスを受けてきましたが、一方で、町中に監視カメラが張り巡らされ、国による国民監視や統治に活用されてきました。
スーパーシティで、本市市民がこのような事態にさらせされることは許せません。
(3)次は住民合意についてです。
申請にあたりタウンミーティング、地域での市民説明会を行いましたが、コロナ禍でスーパーシティへの市民の関心は低く、参加者も少なく市民の理解が進んでいません。
6月補正で860万円を予算化しようとしていますが、市民合意が無いまま進めることは問題です。159社の事業提案があったようですが、規制緩和による未来型のサービスをアピールしても、総花的で、わかりにくく市民は判断できません。
スーパーシティは自治体、学校、病院などが保有する様々な個人情報を民間IT産業に提供し、利益を上げさせようとするものです。行政サービスを丸ごと民間にゆだねるという大転換です。申請前に住民合意を取るべきではなかったでしょうか。仮に採択されたとしても、住民合意が得られなければ事業を止める決断をすべきです。それだけ、住民意見や合意を得ることが大切と考えますが、見解を伺います。
また、住民合意の方法は、関係者から構成される「協議会の議決」「議会の議決」「住民の投票」その他国家戦略特別区域会議が適切と認める方法とありますが、合意は住民の総意が大前提です。市民総参加による住民投票で市民の意思を問うべきと考えるかそれぞれ答弁をもとめます。
●議会や協議会の議決などでは、市民意見が十分反映されず、推進する民間事業者や行政トップの意向に流されかねません。住民合意も尽くさず、スーパーシティを推進することは問題です。
参加しない権利はどう扱われるのかについてですが、住民投票で同意が得られたサービスについては、「投票の対象になった住民が全員利用することを原則とする」とされています。住民のスーパーシティに参加しない権利は尊重されるのでしょうか。
また、参加しない権利が認められた場合、参加する市民と、参加しない市民との間に生じる行政サービス利用の格差をどう解消するのか伺います。
●いずれにしても、マイナンバーカード取得が前提になっており、誰一人取り残さないといいながら、市民の間に新たなサービス格差を生むことは問題です。
(4)次は基本構想についてです。
デジタル化で市民の利便性が向上することは否定するものではありませんが、スーパーシティは大胆な規制緩和、規制改革により、データ利活用が優先され、個人情報が危険にさらされることになります。スーパーシティで市民の個人情報を提供し、市財政をつぎ込んで、地域医療、介護、公共交通、教育など全体的な計画運営を企業にゆだねることになりかねません。
選考結果が出るのはまだですが、基本構想策定に向けた調査委託費が今議会に計上されています。これまで質問してきましたが、デジタル格差、プライバシー侵害、行政サービスにおける新たな格差など様々な問題がありながら、市民の理解を得ることなく、構想が計画され推進されようとしています。
基本構想の策定にあたっても、住民の意見がどこまで反映されるのでしょうか。心配です。他にもたくさんの行政課題がある中で、このままスーパーシティを進めるべきはありません。
答弁を求めます。
●少子高齢化が進み、市民は、医療・介護や生活上のたくさんの不安をかかえています。
住民の満足度を高め、暮らしの課題を解決する観点から、真に市民が求める施策こそ優先すべきです。
2、次はマイタクのマイナンバーカード一本化の問題についてです。(1) マイナンバーカード一本化の撤回
マイタクは高齢者の通院や買い物の足として、多くの方が便利に利用し喜ばれています。
ところが市当局は効率化と経費削減を理由に、来年度からマイナンバーカードがないとマイタクを利用させないとしています。すでに今年度から新規登録者はカード利用に限定しています。
来年4月には、登録者全員がカードを取得できるということはあり得ません。カードを取得しなかった登録者を自動的に切り捨てることになるのでしょうか。これは、行政サ-ビスのあり方として問題ではないですか。
行政が住民の多面的なニーズにこたえるには、行政サービスの利用方法の選択肢を増やすことが必要です。紙の利用も残すべきです。それが行政が行うべき仕事ではないですか。お答えください。
マイタク利用者へのマイナンバーカードの取得押し付けを行政がやってはいけません。
日本共産党の塩川鉄也議員が衆議院内閣委員会で、前橋市のマイタクのカード一本化方針を平井デジタル改革担当大臣に質問したところ、「いきなりすべてデジタル化し、その結果多くの人が利便性の低下を感じることがあってはならない。デジタルを無理やり押し付けることは考えていない。個人がデジタル機器を利用しない生活様式や選択も当然尊重されるべき」と答弁しています。
当初、マイナンバーカードは社会保障、税、災害対策の分野についてのみ扱うとしていたのに、空き領域でのいろいろな利用ができるとして、さらに健康保険証や個人の銀行口座まで紐づけようとしています。個人情報を国が監視するマイナンバーカードを持ちたくないという市民もいます。このような中で、カードを保有したくない人の権利は尊重されないのでしょうか。
誰一人取り残さないといいながら、1本化して、これに従わない人は切り捨てるというのは絶対許されません。来年度からのマイタクのマイナンバーカードによる利用の一本化の撤回を再度求めます。答弁を求めます。
●行政サービスにおいて、使いたい人が使えない状況を放置し、サービスを受けられないのを自己責任とすることは問題です。行政の公平性にも反するもので、市民は納得しません。
子どもの学習記録を蓄積したビックデータの活用は民間教育産業やIT企業による教育や生活への介入・支配につながる危険があります。さらにICT機器による画一的な学習により、人間的ふれあいを通じて人格の完成を目指す教育が、選別の教育へと変質させられる危険をはらんでいます。
タブレットの活用は学校での活用を基本としていますが、本市は、子どもたちに毎日家庭に持ち帰らせています。
家庭での使用は小学生は午後9時30分、中学生は11時までとしています。1人5ギガまで使用目安としていますが、通信料を抑えるために家庭のWiFi使用をお願いするなど、使用上の注意なども子どもや保護者におこなっています。
しかし、家庭では目が行き届かず。ドリル学習以外に、動画など長時間使用による心身や健康面への影響も心配されます。
子どもたちは家でどのような使い方をしているのか。市教委は家庭でもタブレットで情報活用能力を伸ばすことを期待しているようですが、指導の目が行き届かない中で家庭での使い方に問題が出てくるのではないでしょうか。見解を伺います。
●あくまで、タブレットは授業の1つのツールとして使用すべなのに、タブレットを活用すること自体が目的化してしまうことに危惧を抱かざるを得ません。
子どもたちの成長・発達のためのツールとして有効な活用のあり方を改めてしっかり検証すべきです。
特に低学年は、読み書きそろばんというように、実際に自分の手や体を使って学ぶことが大切です。低学年はタブレットを家に持ち帰らず学校においておくべきです。
本来ICT活用は、教職員が専門性を発揮し自主的に行う教育活動の一つの手段ととらえるべきですが、現場では教職員のICT活用指導能力の向上が求められています。
教職員は子どもたちのタブレットの維持管理や使用方法の確立、授業の教材研究や指導に加え、タブレットを活用した指導研究・研修などに追われ、新たな負担が生じています。
ギガスクールサポーターやICT担当教員などの人材を増やし、教員の負担軽減を図ることが必要と考えますが答弁を求めます。
●教職員の負担過重や長時間労働の要因とならないように、必要な教職員の増員や配置を進めるべきです。さらに教職員の間でICT機器への対応や技能の違いがあると言われていますが、すべての教職員が、ICT活用に必要な指導研究を行う時間を確保し、共同で取り組むことができる環境をつくっていくことが大切です。
子どもたちのゲーム依存やネット依存が大きな問題になっており、WHOは国際疾病分類に、ゲーム依存症を認定しています。ゲームには脳を興奮させる効果があるため、中毒性が高く、依存症を引き起こしやすいと言われており、青少年の約8割がゲームをしており,中高生のネット依存の傾向が進んでいます。さらに、スマホICT機器の使用時間が長いほど読解力や数学の成績がさがることも研究結果から判っています。
視力低下、頭痛、肩こり、うつ、睡眠不足、運動不足、ネット依存症、コミュニケーション能力や、社会性の発達への影響など深刻な問題があります。
そのような深刻な背景がある中で、子どもの心や体の成長・発達への影響について十分検証されないまま、タブレット一人一台が急いで導入されました。
今後、オンライン教材やオンライン教科書の導入など、さらに活用を強めようとしていますが、改めて、子どもの年齢や発達段階・健康状態に応じた活用やルール作りが必要です。
これ以上子どもたちの体に負担を強いるべきではありません。答弁を求めます。
●アップル創業者のスティーブジョブズ氏はiPadを自分の子どものそばには絶対おかず、ビルゲイツ氏も子どもに14歳になるまでスマホを持たせなかった。
あらためて子どもの将来を考え、ICT機器の使用による悪影響や科学的知見をしっかり検証すべきです。
タブレットと向き合う時間よりも、家庭での親子の対話が大切であり、子どもたちに生の実物体験や映像や音楽、芸術を、先生と児童生徒がしっかり向き合い深い思考力をはぐくむ授業こそ大切にすべきです。