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2021年9月第3回定例会・本会議総括質問【長谷川薫】

2021年9月第3回定例会本会議総括質問(長谷川薫)

1,行政におけるデジタル化推進の問題点について

行政のデジタル化の問題点について質問します。わが党は、最新のデジタル技術を国民の福祉の増進のために役立てることは必要と考えます。しかし、いま政府が進めているデジタル改革は、国民監視の強化と、財界の国際競争力強化という経済戦略のために自治体が保有する多様な個人情報を国や民間事業者に提供しようという意図が強く打ち出されており、見過ごすことができない多くの問題があります。そこで以下の5項目に絞って質問いたします。

(1)自治体の情報システムの標準化・共通化

はじめに、自治体の情報システムの標準化・共通化の問題点です。

政府は、2025年までに政府が整備する標準規格に統一しようとしています。しかし、全国共通の自治体クラウドの使用となれば、自治体独自でシステムの仕様変更・カスタマイズが原則できなくなり、本市のような国保税や市営住宅の減免、高校生までの医療費の無料化や学校給食費の一部無料化など独自の先進施策のシステム化が難しくなります。結果として住民要望に応えた地方自治が後退しかねません。自治体独自の横出し上乗せができる弾力的なシステムの構築を直ちに国に求めるべきと考えます。答弁を求めます。

【提言】地方自治法 2 条 13 項は「国は、地方公共団体が地域の特性に応じて自治事務を処理することができるよう特に配慮しなければならない」と義務付けています。これは、国が、自治事務に関して法令で定める場合であっても、地方公共団体の裁量や選択の余地を確保し、自主性・自立性の発揮を保障したものであります。

政府が策定した自治体 DX デジタルトランスフォーメーション推進計画では、自治体のシステム標準化の最大の目的は国際競争力の強化をめざす企業への情報提供と説明しています。

当局の皆さんは、行政の効率化、経費削減と安易に受け止めず、結果として国の自治体への締め付けが強まり、独自の地方自治体の行政施策が後退しかねないと警戒するように強く求めておきます。

(2)マイナンバーカード

次に個人番号制度についてです。そもそもマイナンバーは、政府が国民の資産や社会保障給付の状況を把握し、税徴収の強化と社会保障給付費の削減を進めることが目的であります。政府がまた、本市も、2023年3月末までに、ほぼ全ての住民に普及しようとしていますが、今、政府がマイナンバーカードの普及を急いでいるのは、マイナンバーカードの全国民取得を「デジタル政府・デジタル社会」構築の大前提としているからです。行政手続き、年金や公金の給付、学校教育での活用、各種免許や国家資格証など生活のあらゆる分野でマイナンバーカードやスマホを使ったデジタル化を進めようとしています。

カードには、顔写真付き公的身分証明書としての機能だけではなく、オンラインサービスを国が提供するマイナポータルを利用するための鍵の機能も入っています。

本市はさらに先駆けて、高齢者が利用するマイタクに活用したり、スマホでマイキーIDを設定すれば、最高5000円分のマイナポイントを付与する政府のカード取得誘導策に追随して、市民への普及を進めたことも問題であります。

一体化する必要性のないマイタクのような他制度機能を組み込み、マイナンバーカードを使用せざるを得ない状況に追い込むことは、任意取得の原則に反するものです。国に、マイナンバーカードの取得強制や健康保険証や預金口座や運転免許証などの紐づけ拡大の中止を求めるとともに、市としてのマイタクのような市独自の利用拡大をやめるべきと考えます。答弁を求めます。

 【提言】現在の市民の取得率は36%ですが、今後さらに取得率が高まれば、マイナンバー制度は,あらゆる個人情報の国家による一元管理を可能とする制度となり,監視社会化をもたらす恐れが強まります。情報の一元化によってマイナンバーカードはこれまでと比較にならない程の個人情報が記載されることにより、常時持ち歩くようになれば紛失や盗難された場合の不正利用などリスクは計り知れません。カードの普及促進の中止を強く求めます。

(3)個人情報の保護


総務省は、自治体は個人情報の宝庫であり、民間企業を含めた多様な主体によるデータの円滑な流通・連携の促進こそ、民間のビジネスで新たな価値・利潤を生み出すと強調し、自治体にも、多種多様な個人情報を匿名加工して企業などに提供することを義務付けています。

しかし現在の前橋市の個人情報保護条例は、個人情報を本人以外から収集した場合の本人通知義務規定、思想信条・社会的差別の原因などに関する個人情報の収集を禁止する配慮個人情報規定、個人情報を実施機関以外の外部のコンピューターとの結合を原則禁止するオンライン結合の禁止規定、不当に収集された個人情報の消去を請求できる規定など、厳格な個人情報保護規定が条例に盛り込まれています。今後、改定された国の個人情報保護法によって、本人同意もなく個人情報の利活用を大規模に進めることになれば、市民の個人情報やプライバシーの保護は大きく後退することになります。

デジタル化で便利になると言っても、個人情報が民間企業に流出しないよう自己コントロール権を維持し、プライバシーを侵害しないように現行のルールを本市条例で堅持することが必要だと考えますが、どの様な対応を考えているのでしょうか。

【提言】総務省の2020年版情報通信白書には、インターネット利用者対象の調査で、約8割が「利用に不安を感じる」「個人情報や利用履歴の漏洩が不安」、「架空請求やインターネットを利用した詐欺や電子決済の信頼性が不安」と答えています。一方、「利便性や快適性を重視して個人データを活用すべきすべき」という回答はわずか22%です。このことからも、個人情報の保護やプライバシーが守られなければ、デジタル化は進まないことが示されています。

しかし、この間、個人情報の漏洩事件が全国的に相次いでいます。デジタル技術を生かした生活の利便性の向上は大切ですが、個人情報を、特定企業の儲けのために活用して、プライバシー保護をないがしろにするようなデジタル化の推進は、個人の尊厳を傷つけ基本的人権の侵害にかかわります。私たちの個人情報がどう管理・利用されるのかを知り、利用されたくない場合は拒否する権利やプライバシー権が保障されることが前提とされなければなりません。国が地方をリモート操作するのではなく、地方自治体が国をリモートする情報主権・デジタル主権をっ前橋市も確立することが必要です。指摘しておきます。

(4)デジタル格差・デバイド

 行政のデジタル化は、マイナンバーカードやスマートフォンかパソコンを利用することが前提となっています。これらのいずれも経済的理由で保有していない、または利用できない市民に対して、どのようにサービスを提供していくか、デジタルデバイド対策をおろそかにすることはできません。

 スマホ講座を開いて高齢者などに支援することもデジタルデバイド対策ですが、オンライン申請を拙速に進めないように、現状を十分認識し行政サービスを後退させないようにすることも重要です。

行政手続きのオンライン化では、経費削減や効率化は追及できても、紙や窓口を利用した手続きが縮小廃止されれば、市民の利便性がないがしろにされかねません。災害による停電や頻繁に起きているシステムトラブルを考えても、職員が対応できる体制や紙媒体での行政サービスの申請や利用を継続すべきです。

自治体窓口が、金融機関のATMのようになって良いのでしょうか。電力や通信事業者などは、すでに窓口の廃止が進んでいますし、総務省は、行政の窓口をいかになくすかを考えるべきと繰り返し強調しています。

しかし、AIやデジタル技術の導入では、職員削減の手段とするのではなく、職員が憲法の「全体の奉仕者」として従事する公務労働の質を高める補助手段として活用すべきだと考えますが、デジタルデバイド対策をどのように位置づけておられるのか。答弁を求めます。

【提言】今、格差と貧困が拡大している中で、貧困・DV・虐待などさまざまな困難を抱えながら、それを自己責任としてあきらめ、自治体の窓口に相談することすらできない住民が増えています。

だからこそ、自治体の窓口業務にあたる職員は、担当窓口を越えて市民の声に耳を傾け、市民に寄り添い、苦しんでいる市民の人間としての尊厳を守りつつ、積極的に必要な行政サービスを届けて、市民のいのちと暮らしを守る役割を発揮すべきです。自治体の窓口業務の縮小・廃止は、自治体の役割の縮小・放棄でもあり、住民、とりわけ社会的弱者とされる人々のいのちと暮らしそのものを脅かすものであります。
  スマートフォン使い方講座に対策を狭めず、デジタル化を住民サービスの一層の拡大強化に結び付くよう十分配慮していただくよう要望します。

(5)スーパーシティ構想

大胆な規制緩和によって、自治体を丸ごとデジタル化の実験譲渡する取り組みがスーパーシティ構想であります。前橋市が申請通り国から採択されて、スーパーシテ区域に指定されれば、データ連携基盤整備事業を担う民間事業者(前橋めぶくグラウンド)は、自治体が保有する膨大な個人データを集積することが可能となり、それらの個人情報は容易に個別の事業を実施する民間事業者提供されることになります。
 これらの情報が「活用」されることで、本人の所得、資産、趣味嗜好、思想信条、宗派、健康状態、性癖、性格、行動パターン、学歴、能力、信用力などがプロファイリングされ、評価、分類、選別、等級化され、行政や民間の各種サービスにおいて恣意的に誘導や制限、排除、優遇されることにつながっていくことは明らかです。
  スーパーシティ構想によって最先端のデジタル技術が、デジタル技術を使いこなせる市民に生活利便性の向上がもたらされても、国による監視が強まったり、個人情報が企業の儲けのためにもっぱら利活用され、個人情報が漏洩してプライバシーが脅かされることが絶対にあってはならないと考えますが、そのような事態を招かないとお考えなのかどうか、答弁を求めます。


【提言】スーパーシティ構想は、住民の生活利便性の向上という側面よりも、現在のデジタル化した社会をさらに進展させ企業利益を拡大したいという財界の強い思惑に沿って進められているものです。しかも、個別の企業の取り組みではなく、住民の暮らしの基盤となる都市全体、自治体そのもののあり方を根本から変容させる可能性があります。

その際に、だれがどのようにそれぞれの技術やシステムの導入を決定するのかという意思決定の問題、日常的にどのように維持管理するのかという実施と責任の問題、さらには実際に運用するなかで起こるさまざまな問題・課題についてどのような場で議論がなされ解決されるのかという問題などがほとんど検討されないまま、見切り発車的に申請されました。

内閣府の判断が遅れていますが、採択された後で、議会で十分議論され住民の参画がなされるのでしょうか。スーパーシティ構想には、「住民参加、住民合意」という言葉も強調されていますが、行政主導で決められた計画についての住民説明がどこまでなされるか、また負の側面も併せて十分な検討・措置がとられるかは大きな疑問です。
 しかも、生活利便性と引き換えに個人情報を提供するスーパーシティ構想に参加したくない市民の権利の保障も必要です。市当局は、マイタクの利用をマイナンバーカード保有者に限定するなど、マイナンバーカードの保有や各種情報技術を利用したくない市民の権利を保障する姿勢を示していません。
 先端的な情報技術を使った公共サービスのデジタル化は、何よりも個人情報保護・プライバシー保護に十分な注意を払うとともに、住民合意が不可欠です。コロナ危機の下で市民が不安な暮らしを余儀なくされている今、命や暮らしを守るコロナ対策を後回しにしてスーパーシティ構想を拙速に進めるべきではないことを強く指摘しておきます。

2,敬老祝金制度の改善について

 市民から「100歳になった母親が8月に急死した。敬老祝金は9月1日の生存が条件なので支給できないと市当局の説明があったが、不平等ではないか」と制度の改善を求める声が寄せられました。現行の敬老祝金条例は、100歳の方に10万円、88歳の方に1万円、が敬老の日がある9月に贈られています。今年度中に100歳になられる方が約100人、88歳になられる方が約200人3おられます。必要額は約3000万円です。

ところが9月1日に生存し前橋市民であることが贈呈の条件となっているために、年度の初めの4月から8月31日に市民が100歳、88歳になっても9月1に不幸にもお亡くなりになった方は支給対象から外れます。ところが9月1日以降は、不幸にもお亡くなりになっても全員に贈られます。基準日を4月1日として、その年度に対象年齢となる方には全員に送るよう条例改正をすべき。見解を。

【提言】基準日を4月1日にしなければ、88歳も100歳の高齢者も敬老祝い金の贈呈に不平等が生まれます。条例改正を今年度内に実施し、今年度の祝い金をすべての対象者に贈呈するよう求めておく。

3,新「道の駅」の整備について

(1)洪水防止対策

来年12月にオープンを目指している新「道の駅」が、今年の6月に市が策定した防災マップで、1~3日間で約400ミリから600ミリの集中豪雨があった場合には、道の駅建設地の東側と北側に隣接して流れている細ケ沢川や法華川日が氾濫すれば、最大3㍍近く浸水する恐れがあると想定している。青山群大教授もその危険性を強く指摘している。

共産党市議団はすでに繰り返し「河川改修や土盛りによる洪水防止対策を講じなければ防災拠点としての役割は果たせない」と指摘してきたが、具体的な対策が示されていない。

いま、異常気象の下で、被害想定を大きく超えた河川の氾濫や土石流災害も全国で毎年のように多発している。多数の死者を出した1945年のカスリーン台風の際には、道の駅の建設地域は浸水被害を出ししている。市独自の浸水被害防止対策を実施すべきと思うがどうか。

【提言】市の独自対策とともに、河川管理の責任を担う群馬県と協議し、二つの河川の護岸のかさ上げや河床の浚渫を道の駅の整備工事に合わせて求めるよう強く求める。

(2)農畜産物直売所

共産党市議団はこれまでに、「県内最大規模7㌶の道の駅が、前橋市の農業振興に役立つ施設にするためには、もっと市農政部が積極的に関与すべき」と主張し続けてきた。

ところが、最大の集客施設である農産物直売所の運営準備が事実上事業者任せになっている。現在、市民からは「にぎわっている荻窪・ふじみ(2カ所)・大胡の農産物直売所と共存できるのか。農業後継者育成などに役立つ運営にできるのか。来客者に提供する地元農産物を安定的に確保できるのか」など農畜産物直売所についての意見や疑問が寄せられている。運営事業者の創意工夫を尊重するとともに、市農政部の積極的役割発揮が必要と考えるがどうか。

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