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日本共産党前橋市議会議員団

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議会報告
REPORT

2021年12月第4回定例会総括質問(長谷川薫)

  1. 前橋市DX(デジタルトランスフォーメーション)推進計画の問題点について

(1)推進体制

はじめに前橋市DX(デジタルトランスフォーメーション)推進計画の問題点について質問します。いま、山本市長及び大野副市長をトップにした推進体制が構築されていますが、今後、国が進めている補佐官等に民間人材を登用することになれば、本人が所属する企業の利益につながるシステム等を優先して導入するなど、行政の公正性を損なう事態を招きかねません。民間人材の登用をすべきではないと思いますが、見解を伺います。

【提言】デジタル庁の体制を手本としないでいただきたいと思います。

9月に発足した政府のデジタル戦略の司令塔である、デジタル庁は、他の省庁とは全く異なる役所になっています。公務員の兼業禁止規定を適用せず、全職員約600人のうち約200人がIT企業などの民間人材の採用となっており、企業に在籍したまま国の行政に携わっています。出身企業への便宜供与など「違法または不適切な事務処理」を防ぐために庁内に「コンプライアンス委員会」がすぐに設置されました。このこと自体が官民の癒着が避けられないことを示しています。本市においても、DX推進計画全体が官民癒着の危険性がある事を十分認識して、補佐官を任用する場合には、民間人材ではなく市民の生活利便性向上を最優先する立場に徹することができる市の幹部職員を任用していただきたいと思います。

(2)個人情報保護条例

次に、政府は個人情報保護法の改正に合わせて、各自治体が先行して制定した保護条例の大幅な緩和を求めています。 本市条例は、市民が知らない間に個人情報が利活用されないようにオンライン結合を原則禁止し、たとえ庁内の事務事業に必要な場合を含めて、例外的に情報提供が必要となった場合には、個人情報保護審査会で個別に審査するなど、独自の厳格な規制を行ってきました。それにもかかわらず、市当局は国が求める条例改正をしても問題なしという立場ですが、個人情報を匿名加工しても、他の情報と照合すれば識別は可能であります。何を根拠に個人情報が守られると判断しているのでしょうか。明快な見解を求めます。

【提言】答弁をお聞きしても、このままでは前橋市の個人情報保護条例が骨抜きになることは避けられません。いまEUをはじめ世界の国々が、デジタル化が進む中で、国民のプライバシーを守るための法律を強化し監視・監督機関を整備していますが、日本は、逆に個人情報保護法を改悪して規制を弱め、さらに自治体にも条例改正を迫っています。国民が知らない間に大企業が個人情報を利用する。このようなことが当たり前のように行われる社会は許してはなりません。前橋市は、国に迎合せず、忘れられる権利や照合を拒否する権利などの確立を求めるとともに、市民の個人情報、プライバシーを守るためにも、個人情報保護のガイドラインを国が作るよう強く求めるべきです。


②  次に、今、行政のデジタル化は、マイナンバーカードの拡大と一体的に推進されています。前橋市が市民に利便性を強調し、取得しなければポイントも付与されず不利になるという印象操作を強め、独自施策のマイタクの利用までカードに一本化して取得を誘導していることは大きな問題です。
  今後、政府が健康保険証や免許証など資格証明書、預貯金口座や年金情報など、個人情報を次々とカードに紐づけしようとしています。国の目的は国民監視を強め社会保障給付の切り捨てや税収強化をめざし、民間企業は企業利益の獲得をめざし、個人情報の利活用を進めようとするものです。

2022年度までにほとんどの市民の取得を目指す計画は、本市条例の思想信条や社会的身分病歴などのセンシティブ情報は収集しないという配慮個人情報規定とも根本から矛盾するのではないでしょうか。見解を求めます。

【提言】そもそも、プライバシーを守るルールや体制を抜本的に強めなければ国民の暮らしの利便性を強める国民ためのデジタル化は進みません。ところが、政府は、現在、国や自治体などが自前で個別のサーバーで管理している大量の個人情報を、政府クラウドなどに集中させようとしています。しかも、アメリカ政府が必要とあれば全情報を自由に閲覧取得できるプラットフォーマであるアマゾンのサーバーに保存を進めており、日本の主権が侵害されかねない情報管理です。

地方自治体は、国の情報利活用計画に追随せず、個人情報を守る防波堤の役割を果たすとともに、マイナンバーカードへの各種個人情報の紐付けに強く反対の声を上げるべきです。指摘しておきます。

(3)情報システムの標準化

次に、政府は、2025年度までにほぼすべての業務を対象に国や自治体の情報システムの標準化を進めようとしていますが、例えば、国保税の減免や介護保険料の負担軽減など本市独自の住民サービスを継続できるようにシステムの設定を国に要望するとともに、必要に応じて自由に修正・カスタマイズできる権利を国に認めさせるべきです。また複数の自治体でクラウドを採用する場合でも、それぞれの自治体の独自性を尊重し、個別の自治体がカスタマイズすることを妨げないようにするとともに、その場合も国が財政支援を行うよう求めるべきと考えます。答弁を求めます。

【提言】岸田首相は、「デジタル化で地方課題を解決する」と言っていながら、実際にはシステムの標準化で、中央集権化を強め、地方自治を弱めようとしています。しかし、これまでの歴史を振り返れば、住民と地方自治の先進的な取り組みが国を動かし、公害規制や情報公開を実現し、今も、自治体独自の乳幼児医療費の無料化や少人数学級化が厚労省や文科省を動かしています。システムの標準化に無批判に追随せず、独自の福祉や教育などの住民本位の施策をさらに発展させるよう強く求めておきます。

  • 行政手続きのオンライン化
  • 次に、国が示す方針通りに行政手続きをスマートフォンやパソコンを使ったオンライン化を進め

れば、住民サービスが低下する恐れあります。国は、本人確認のためにはマイナンバーカードの取得を必須条件とし、役所への問い合わせは回答機能を持った人工頭脳AIで対応し、どうしても職員と対面で相談したいという市民だけ例外的に対応することを求めています。そうなれば、窓口職員は大幅に削減され、デジタル化に対応できない高齢者は、行政サービスから遠ざけられてしまいます。前橋市はオンライン化をどのような考え方で進めてゆくのでしょうか。答弁を求めます。

【提言】そもそも自治体の窓口業務は、憲法に基づく基本的人権を保障するために、住民を最善の行政サービスにつなぐ役割を担っています。住民の個人情報を適切に管理し、犯罪や人権侵害から住民を保護することも求められ、生活相談業務とも一体となっています。住民からの相談を待つのではなく、窓口から手を差し伸べる役割も果たさなければなりません。職員は窓口の経験を積み重ねることで、行政の専門性やノウハウが培われます。 来庁する市民を減らすことを目的にしたオンライン化を急ぐ必要はありません。

  • 次に国は、行政申請手続きをオンライン化すれば職員を半減できると強調していま

すが、簡単には進められないのではないでしょうか。例えば税収納窓口では、市民から滞納理由等を丁寧に聞き取って、減免になるのかどうか、福祉につなげる必要があるのかなどの判断が必要になってきます。また、母子健康手帳の交付窓口でも、妊娠中の市民の健康状況を把握して、各種支援サービスの利用を働きかけていくことも必要です。申請手続きのオンライン化の推進が、住民サービスの後退や職員削減につながらないようすべきです。答弁を求めます。

【提言】今、格差と貧困が拡がる中で、生活に困窮していても、自ら解決策を見いだすことが難しい方や救いの手を行政に求めることができない方も多くいます。

今後さらに高齢化社会が進むだけに、窓口業務の多様でより親切な対応はより重要になってきます。行財政改革の柱と位置付けている職員削減を、行政手続きのオンライン化によって加速させるべきでありません。

長年にわたって築き上げてきた行政と住民との信頼関係を壊すのか、それとも自治体が持つ個人情報の保護の重要性を再確認し、国が進めるデジタル化を住民とともに不十分な点を、問題のある点を改善する努力を強めることが求められていると思います。

政府のデジタル化推進方針に無批判に追随せず、デジタル技術を福祉の増進のために活用するという立場に立って、住民から信頼される真のデジタル化の道を慎重に選択するよう強く求めておきます。


2、スーパーシティ構想について

(1)再提案構想

しかし、未来型人材を育てる教育やマイカーを含む完全自動運転や前橋IDの提案は、議会への十分な説明も行われておらず、市民合意も図られておりません。

構想は官民連携を視野にしていますが、市内の児童生徒が対象となる飛び級や小中高一貫教育などについては、市教育委員会と協議も不十分です。

自動運転も対象をバス公共交通に限定せず、保有率全国トップ水準の前橋市で個人所有の車にまで拡大する提案も、交通安全上の現実性がありません。

このように再提案した構想は、国がめざす未来都市構想モデルと合致させようとしたために、前橋の市民ニーズとはかけ離れたものとなっています。なぜこのような構想になったのか見解を伺います。

【提言】採択された後に、再度基本構想を策定する段階で練り直す趣旨の答弁ですが、庁内の意思統一も不十分なまま、市長や未来創造部が独断専行してはならないと思います。当初提案以上に、市民ニーズから乖離した再提案になったことは大きな問題だと思います。

(2)個人情報保護

いま、国内でも不正アクセスやサイバー攻撃で、数万人規模の個人情報が大量に漏洩しています。最近も、Lineの更新記録を中国政府がいつでも閲覧できるようになっていたり、Lineペイの2重払いが7400万円2万5000軒の決済に被害が発生し、住宅金融機構の118万人分の個人情報の流出などが報道されています。平成30年には、本市教育委員会の情報ネットワーク/メネットへの不正アクセスによって、4万7千人の個人情報が漏洩したことも記憶に新しいところです。情報漏洩意を完全なくすことはできません。

提案された構想で決まって紹介される路上で倒れた意識のない市民の救命措置や顔認証によるキャッシュレス決済については、顔や指紋や血液型や既往症や服薬履歴などの生体データを事前に外部提供することが前提です。

このような生体認証は、ヨーロッパなど多くの国が、監視社会の強まりや個人情報が企業に利活用されてプライバシーが脅かされるなどの理由から法律で厳しく規制しています。このような重大なリスクをどのように考えているのでしょうか、見解をお聞かせください。

【提言】デジタル技術による先端的サービスを利用したければ、個人情報の丸ごと提供が必要で、監視社会につながるプライバシ―の侵害はやむを得ないということになります。そういう未来都市を前橋市が目指してよいのかどうか、慎重に考えるべきだと思います。

(3)市民合意
次に、先端的サービス提供についての市民合意です。前橋市が国家戦略特区に手を上げる表明したら、あっという間に159社の民間企業が事業提案をしています。新たなビジネスチャンスを求める企業の意欲に迎合して、市民合意なく未来型事業を推進してよいのでしょうか。

市民合意のないまま、官民連携を推進し、市民の税金を投入して先端的サービスを推進することはやめるべきと考えます。答弁を求めます。

【提言】岸田首相がめざすデジタル化による大胆な規制改革は、マイナンバーカードの普及で個人情報を国が管理し、本人同意もなく自治体に蓄積されている大量の個人情報の目的外利用を進め、企業がそのビッグデータを利活用することで、経済成長を促すという国家戦略です。

いま全国1700余の区市町村で、このスーパーシティ構想に手を上げている自治体は前橋志保含めて再提案した28自治体だけです。未来を展望したまちづくりは、自己責任を強調する弱肉強食の新自由主義の政治を終わらせて、全市民が希望をもって安心して暮らせる暮らし福祉の充実したまちづくりであり、なによりも福祉の増進に全力で取り組むことです。行政が積極的に個人情報を企業に差し出して、企業の利益追求に貢献するまちづくり構想は成功するはずはありません。直ちに取り下げるべきです。強く求めておきます。

3、アーツ前橋について

最後にアーツ前橋について質問します。

(1)事業運営の理念(コンセプト)

  • 開館から昨年まで8年間にわたって事業運営に携わった住友前館長が退任して8カ月になりました。借用作品の紛失事案の発生によって失墜した信頼を回復し、これまでのように郷土作家を含む内外の芸術家による魅力的な作品展示とともに、アートプロジェクトを通じた福祉や教育、暮らしなど様々な地域課題と芸術の連携などを今後ともさらに発展させることが必要だと思います。あり方検討委員会での協議が進んでおりますが、アーツ前橋の運営理念・コンセプトを再確認し必要であれば充実見直しも必要だと思いますが、いかがでしょうか。

    (2)作品収集(コレクション)
  • 次に現在の作品収集予算は年間1000万円ですが、美術館の魅力はそこにしかない作品の鑑賞でもあります。予算の増額と収集作品の選択をする委員会の強化、さらにはさう品収蔵庫の増設などについての考え方をお聞かせください。

    (3)館長人事について
  • 最後に、リーダーシップを発揮し事業運営の専門的知識や経験を持つ新館長の選任人事が求められていると思いますが、どのようにお考えかお聞きします。

※質問時間の都合上、質問を短縮したため、当初予定していた原稿を参考までに掲載します。

(1)事業運営の理念(コンセプト)

次にアーツ前橋についてです。開館から昨年まで8年間にわたって、事業運営に携わった住友前館長が退任して8ヵ月が経ちました。借用作品紛失事案の発生によって失墜した信頼を回復し、これまでの美術作品管理の在り方、学芸員の業務や役割の見直しなどがあり方検討委員会で検証され改善方向が示されると思います。

今後とも、事業運営の信頼回復を目指しつつ、これまで通り、地域アートプロジェクトを通じた福祉や教育など様々な地域課題との連携や郷土作家を含めた内外芸術家による魅力的な企画展を発展させることが必要だと思います。

さらに、いま、市民からは、現代美術中心の作品展示ではなく、人物や風景画などの多様な作品も鑑賞したいという要望も多くの方から寄せられています。改めて事業運営の在り方も学芸員を中心に市民参加で検討することも重要だと思います。今後の事業運営のコンセプトをどのようにお考えでしょうか。

(2)作品収集(コレクション)
次に、美術館が全体としてどういう作品を取り揃えているのか、コレクション総体の価値を示すことがアーツ前橋にも求められています。個々の学芸員の「好み」や「得意」な分野に限定せず、館として戦略的収集方針(コレクションポリシー)をはっきりさせ、共有化すべきです。美術館の魅力は、そこにしかない収蔵作品を鑑賞できるという要望にも応える運営も必要です。安全に作品を保管する収蔵庫が足りない、収蔵作品が増えない、整理されていないということは、美術館としての発展が無いということだと思います。現在のコレクション購入予算1000万円をさらに増やすとともに、目的をもって収集するとともに、不足する収蔵庫も増やすべきです。多くの来館者に喜ばれる集客力のある企画展によって料金収入を確保し、作品購入のために基金に積み立てるなどの工夫もして、計画的な作品購入を目指すべきです。また、寄贈作品や購入作品の選定については、学芸員とともに作品評価ができる専門的な外部委員を構成とする収集委員会を拡充強化すべきです。見解を。

(3)館長人事について
アーツ前橋の理念や運営方針を豊富な専門的な知識で実現し発展させるとともに、学芸員と対等な立場で議論するなど美術館運営のリーダーシップを発揮できる館長を急いで選任することが必要です。4月に「アーツ前橋を応援する会」という皆さんから専門職の館長の選任を求める1000人を超える方の署名も寄せられています。身分を保障し、責任と権限を明確にした館長をどのように選ぼうと考えておられるのか、答弁を。

 

【提言】あり方検討委員会の会議録を読ませていただきましたが、まだまだ、アーツ前橋の再生、再出発には乗り越えるべきハードルが多く残っていると感じています。予算を増額して、事業運営と職員体制を支え、何よりも市民が気軽に足を運び、作品鑑賞にとどまらず、学芸員との交流や美術館の雰囲気が多くの市民の癒しにつながるような、街中の美術館としての役割を高めていただきたいと思います。アーツ前橋の信頼回復との再生が一にも早く実現するように強く期待しております。

最後にアーツ前橋について質問します。

  • 開館から昨年まで8年間にわたって事業運営に携わった住友前館長が退任して8カ月になりました。借用作品の紛失事案の発生によって失墜した信頼を回復し、これまでのように郷土作家を含む内外の芸術家による魅力的な作品展示とともに、アートプロジェクトを通じた福祉や教育、暮らしなど様々な地域課題と芸術の連携などを今後ともさらに発展させることが必要だと思います。あり方検討委員会での協議が進んでおりますが、アーツ前橋の運営理念・コンセプトを再確認し必要であれば充実見直しも必要だと思いますが、いかがでしょうか。

  • 次に現在の作品収集予算は年間1000万円ですが、美術館の魅力はそこにしかない作品の鑑賞でもあります。予算の増額と収集作品の選択をする委員会の強化、さらにはさう品収蔵庫の増設などについての考え方をお聞かせください。

  • 最後に、リーダーシップを発揮し事業運営の専門的知識や経験を持つ新館長の選任人事が求められていると思いますが、どのようにお考えかお聞きします。

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