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日本共産党前橋市議会議員団

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議会報告
REPORT

2023年第2回定例会 議案反対討論 長谷川薫議員

私は、日本共産党前橋市議団を代表して、議案第69号、議案第83号、議案第84号及び議案第85号について、反対討論を行います。

 

はじめに議案第69号、令和5年度前橋市一般会計補正予算についてです。

補正予算のうち、3つの補正予算については賛成できません。

 

一つは、補正額1億7,820万円の電子地域通貨ポイント事業です。

今年の12月から来年の2月までの3か月間に限定し、アプリを登録した市民に千円・千五百円の登録ポイントを付与し、3000円以上をチャージをした人に抽選でキャッシュバックとして1万円分のポイントを1万人に贈呈しようとする事業です。所管課は、市内の店舗や事業所での利用に限定することで、市内消費の拡大と地域経済の活性化が期待できると事業効果を説明しています。
  ところが、このアプリ取得にはマイナンバーカードまたは「めぶくI D」で市民認証しなければならず、マイナンバーカードを取得していない市民は事業を利用できません。マイタクに続いて行政サービス提供の公平性に反する事業です。
  また、電子地域通貨は、従来の紙形式の地域通貨や商品券に比べて、発行費や管理費が不要となる分コストがかからないと言われています。ところが、キャッシュレス決済サービスを広く行っているIT企業大手事業者と契約せず、本市が最大の出資者である「(株)めぶくグラウンド」に随意契約で発注してシステム開発や加盟店側の専用端末の導入を不要にするQRコード決済などを整備するため、約5千万円の費用がかかり、しかも事業開始までに半年の開発準備期間が必要となっています。
  また、スマホが苦手な市民対象にICカード型でも利用できるようにする利用者特性に合わせた機能設計をしようとしていないことも問題です。
 すでに大手キャッシュレス決済サービス事業者がポイント還元キャンペーン等を頻繁に実施しており、市内店舗もほとんどがその加盟店となっています。
  利用者や加盟店側が地域通貨を選択するメリットが小さくなっている面もあるにもかかわらず、今回の事業では市民にポイント贈呈の特典を示しているだけで、地域通貨を利用して買い物をすれば、その一部が市民の福祉や教育などへの地域貢献につながる仕組みを導入しなかったことも問題です。

 また、今、全国的にマイナンバーカードへの健康保険証や預貯金口座の紐づけで、誤登録や個人情報の漏洩が大きな問題になっています。マイナ保険証の誤登録が判明しただけでも全国で7300件、家族名義の公金受取口座登録が13万件、他人口座の登録が748件、マイナポイントを他人に付与が173件、コンビニでの他人の証明書交付など、あってはならない個人情報の漏洩を伴う重大トラブルが続出し、マイナンバーカードの利用拡大に反対する世論が沸騰しています。
  本市の電子地域通貨事業でも、買い物情報などが「(株)めぶくグラウンド」に集中するだけに、本人同意のない個人データの利活用を許さない仕組みが欠かせません。また、ポイントの不正利用や不正出金があった場合、すみやかに補償されるかどうかも不安視されています。
  広報まえばし5月号では、「めぶくI Dが実現する共助型未来都市」を特集されましたが、電子地域通貨事業も、産業振興だけではなく「めぶくアプリ」の利用拡大や「めぶくID」の登録促進策なのではないでしょうか。
  財源は全額が地方創生臨時交付金ではありますが、政府が推進するデジタル田園都市国家構想に積極的に応えるために、様々な課題を十分検討しないまま十分な市民合意もなく、拙速に本事業を具体化することには賛成できません。

 

二つ目は、補正額5億2,500万円のMaaS推進事業追加です。デジ田交付金を活用しても前橋市が一般会計から3750万円を追加負担しなければなりません。

ICT(情報通信技術)によって、バスや電車、タクシー、デマンド交通など複数の交通手段を最適に組み合わせて統合し、目的地までのルート検索・予約・決済などを一括して行うことができるようにする個別最適な移動手段を提供する群馬県との協調サービス事業と当局は説明しています。
 前橋市では、高齢者割引など市独自の施策もつけられますが、そのためにはマイナンバーカードと交通系ICカードとの連携が前提となっています。

 スマートフォン一つで運賃決済まで完結できれば公共交通を乗り継ぐ場合は便利かもしれませんが、マイナンバーカードを取得しない人はサービスから排除され、行政の公平性に反します。
  そもそも
MaaSは地理に不案内な観光地に訪れた人や首都圏などマイカーに依存していない公共交通の利用度が高い地域で利用効果や投資効果の高い事業です。市民ニーズが限定的で利用頻度が少ないMaaS事業の推進に多額の財政投入に賛成することはできません。

 なお、自家用車依存度が全国トップ水準の群馬県や前橋市で、公共交通の利用度を高めるためには、高齢者など交通弱者が利用するマイタクやデマンドバス、巡回バス、路線バスなどの利便性をさらに高めなければなりません。マイタクの長距離利用者の運賃助成率を高め、デマンド交通のふるさとバスやるんるんバスの停留所方式を自宅送迎方式に改善すること、さらに路線バスの小型化や停留所環境の改善などを優先すべきです。

 

三つ目は、9億5,400万円のサッカー場施設等整備建設工事負担金についてです。ほとんどの市民は、ローズタウンのF地区の5ヘクタールに(株)カインズが整備して、完成後に現物を寄付すると説明されてきたのに、なぜ、前橋市が9億円も負担するのか。話が違うのではないかと受け止めるのではないでしょうか。総括質問でも質問しましたが、すでに昨年8月に、予定地を無償貸与するために一般会計から産業立地特別会計に6億6千万円を繰り出して、スポーツ課に所管替えしています。土地の売り払い収入がなくなり、整備費以外の土地代相当の市民負担が発生しているのです。

 法人税が寄付金の9割減税される企業版ふるさと納税を活用して、最小の負担でサッカー場を整備するという(株)カインズの要請に安易に答えた前橋市の判断が甘かったのではないでしょうか。

 しかも、現金寄付を他の総合計画で具体化した事業に使うのではなく、サッカー場整備のために基金に積みたてて、ザスパクサツ群馬の意向に沿った整備を前橋市が発注するべきではなかったでしょうか。非常に分かりにくい寄付金の流用をしたことを認めることはできません。また施設完成後は、利用料金制でザスパクサツ群馬を指定管理者に指定して、指定管理料を支払わないとの方針ですが、施設所有者としての市の責任は将来とも免れないために、今後、将来にわたって市の財政負担がゼロという保証もありません。
 
市のスポーツ振興策はプロスポーツの応援よりも、市民スポーツ振興を優先し、老朽市有スポーツ施設の更新など市民のスポーツ環境の整備にこそ力を注ぐべきです。

 

 

 

 

次に、議案第83号、財産の出資についてです。

 

本議案は、前橋市が構築したデータ連携基盤・めぶくI D・めぶくアプリシステムを評価額8千万円で(株)めぶくグラウンドに現物出資を承認する議案です。

わが党は、デジタル技術を使って市民の福祉の向上や市民サービスの向上をめざすことは否定するものではありません。しかし市民の合意形成を十分図らないまま「スーパーシティ構想」に応募し、さらには個人情報を外部提供して成り立つ「デジタル田園都市国家構想」に基づく補助メニューに沿って、ほとんど市民ニーズとは関係のない民間IT企業の事業提案に沿った「まえばし暮らしテック事業」を推進する市当局のDX事業に繰り返し異議を唱えてきました。
 
安倍・菅政権が進めてきた「デジタル改革」を引き継いだ岸田政権は、「新しい資本主義」の重要な柱の一つとして「デジタル田園都市国家構想」を掲げ、デジタルを「地方の社会課題を解決するための鍵」として「成長のエンジン」に位置づけ、「データ利活用」を成長戦略と位置づけ、利活用しやすいデジタルインフラの整備とともに、「地方におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)」、国主導の「データ連携基盤の構築」など積極的に取り組んでいます。
  この政策に本市が積極的に追随し、全国の自治体のDX推進の先導役を担っていることは大きな問題です。
 そもそも、この「デジタル改革」は、市民の利便性向上という目的よりも、行政保有のデータを企業に開放し、「儲けのタネ」として企業の利益につなげるための「改革」です。国・自治体が保有する個人情報は、公権力を行使して取得、申請・届出に伴い義務として提出されもので、企業が保有する顧客情報とは比べ物にならない、多岐にわたる膨大な情報量です。
 これを利活用するには「行政のデジタル化」が何よりも必要であるため、内閣府やデジタル庁は全国の自治体にシステムの標準化など行政のDXを強力に求めているのです。
  しかも、2021年通常国会で成立した「デジタル改革関連法」は、行政が保有する個人情報を匿名加工して、本人同意なく、目的外に流用し、企業の儲けのために外部提供できる法制度まで構築しました。プライバシー権の侵害、利益誘導・官民癒着の拡大、行政の住民サービスの後退、国民に負担増と給付削減を押し付けるマイナンバー制度の拡大といった、多くの問題点があるものです。高齢者や障がいのある方々などデジタルに対応できない住民が置き去りにされる問題や、個人データが企業のもうけの対象とならないのか。個人情報がどこまで守れるのか。など問題が相次いで提起されてきています。地方自治体でも、国が示すシステムに従うことになり、独自の福祉的な施策が実施出来なくならないか。対面サービスの後退につながるのではないか。など指摘が相次いでいます。よって、市民の個人情報を外部提供する基盤である(株)めぶくグラウンドに個人認証のめぶくアプリシステムを出資して、市民ニーズを把握しないままの、民間営利企業の事業拡大に前橋市が積極的に貢献することに賛成することはできません。

 

次に、議案第84号 財産の減額貸付についてです。

 

そもそも、不動産の寄付を受けることの是非の判断基準が要綱などで決められていない中で、赤城山麓のスローシティーエリアにあるので利活用が可能という市長の漠然とした政治的な独自判断で土地建物の寄付を受けたこと自体が問題です。

しかも、借主(かりぬし)が営業開始前のリフォームに3500万円かけるという事を理由に、月額11万5千円も減額して、公営住宅よりも安い2万6千円で民間事業者に貸し付けることも市民の理解は到底得られません。年間31万2千円の家賃収入では、今後、貸主として民法上の維持管理責任を果たすための修繕費用を積み立てることもできません。結局、市財政を投入することとなり市民負担が発生しかねないのではないでしょうか。

今、土地建物などの遊休不動産を所有している市民の中には、固定資産税が払えなくなったり、建物除却費用が捻出できないなど、自らの資金で維持管理できなくなって、市に寄付したいと希望している方も現におられます。寄付を希望する物件は当該物件に限りません。悪しき前例を作ったといえるのではないでしょうか。

これからでも、市民の理解を得られない大幅減額による賃貸契約ではなく、再度優先交渉権者と協議して、土地建物を売却することを求めます。

 

最後に、議案第85号、土地の買い入れについてです。

 

駒寄スマートインターチェンジ産業団地の用地として、地権者6人から10筆を約1億4857万円で買収するための承認議案です。

わが党は、産業団地の造成及び分譲に機械的に反対するものではありませんが、企業立地促進条例で公有地及び民有地を取得した進出企業に対して固定資産税や都市計画税、事業所税を減額し、事業開始時に土地取得代金の10%を助成するなどの優遇措置はやめるべきだと主張し、誘致企業には、市内企業から資材を調達し、運送を市内事業者企業に委ねることや、雇用の拡大につながるよう、市内の労働者を正社員として採用することを条件にすることを求めてきました。ところが本当局は、見直そうとしておりません。

政府および日銀の異次元の金融緩和による円安誘導とゼロ金利政策によって輸出大企業は莫大な利益を上げて大企業の内部留保は過去最大の500兆円に迫ろうとしていますが、中小企業や下請け零細企業の経営は今、エネルギー価格や資材・原材料価格の高騰で大変厳しい経営を強いられ続けています。

このような経済状況の下での本市の産業政策は、誘致企業には地元前橋の産業活動の中に溶け込み、いっそうの市内産業の振興、経済循環に波及するような明確な条件を求めるべきです。

さらに、ロシアのウクライナ侵攻による影響が続き、エネルギーや食料のなどの価格の高騰で内需が冷え込んでいるだけに、各企業は共通して、国内での新たな設備投資に慎重であり、産業団地をつくれば、企業が来るなどという状況ではありません。GDP国内総生産が20年間停滞し、先行きが不透明な日本経済の下で、市内に分譲する産業団地がなくなるので、新たな産業団地の造成が必要という産業政策は、あまりに短絡すぎるのではないでしょうか。

国内人口も30年後には1億人を切り、現在より25%も減少し、高齢者人口が1200万人増えるのに対し、生産人口が3500万人減少すると予想されている中で、都市間競争に積極的に参入する産業政策ではなく、いま、頑張っている地元中小企業を支援して市内経済を振興させることを産業政策の中心に位置付けるべきであります。以上の立場から、本議案に賛成することはできません。

 

以上申し述べまして、4議案に対する反対討論と致します。

 

 

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