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日本共産党前橋市議会議員団

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議会報告
REPORT

行政視察報告 11/7 ~8

党市議団は11月7日(火)・8日(水)の2日間、滋賀県長浜市(文化財保存活用地域計画)と東京都港区(福祉総合窓口)について視察しました。

視察の概要についての報告します。

視察報告「長浜市文化財保存活用地域計画」について

視察先 滋賀県長浜市 2023年11月7日(火)13:30~16:00

 

1、文化財保存活用地域計画について

滋賀県長浜市は、市内の文化財の状況と課題を適切に把握し、未来に継承するために、「歴史文化基本構想」を2019年に策定し、「地域計画」を2021年度に策定しました。

地域信仰を象徴する「観音文化」、浅井長政公や羽柴秀吉公に象徴される戦国時代の城跡や古戦場跡、長浜八幡宮の曳山まつり、近代化の歩みを象徴する慶雲館(臨江閣のような庭園・建築)など豊富な文化財があります。

 基本構想は、専門家らによる委員会のほか、庁内の部局横断でのワーキングチームで検討し、商工会議所や青年会議所、観光協会をはじめ9度の住民説明会を経て策定しました。地域計画は、基本構想をベースに策定しました。庁内横断で文化財の保存と活用方針を具体化する計画は、長浜市の総合計画にも具体的に位置づけられ、まちづくりの課題とともに一体的に取り組まれています。

 地域計画は、歴史文化の特徴を「多彩な古墳を築造した古代の王たち」「守り継がれる信仰文化」「日本の戦国時代を変えた合戦や城郭」「花開く江戸時代の庶民文化」「市民文化を作った近代化の歩み」「琵琶湖をめぐる水の文化」に整理し、さらに市内全域の文化財の状況を民間所有のものを含めリスト化しています。ボランティアガイド団体や観光協会などとも連携していました。市内の文化財の現状と課題を適切に把握し、住民とともに保存と活用に取り組む計画でした。

 長浜市でも、本市と同様に文化財の収蔵施設の確保、文化財保護に関わる職員の世代交代と継承、地域ボランティアの高齢化などの課題に直面しています。地域計画の中では、こうした課題が広く共有されています。なにより地域計画は、長浜市総合計画に反映され、長浜市の市政運営に反映されることが重要だと感じました。

産業・交流に係る政策の目標「地域の魅力を受け継ぐまちづくり」の中に、①歴史文化の活用、②文化財の保護、③良好な景観の形成を目標とした、地域の魅力を受け継ぐまちづくりが計画の目標とされています。

 地域計画を策定し、「長浜市歴史的風致維持向上計画」「観光振興ビジョン」をはじめ、様々な他の計画連携、整合性をとりながら多様な施策展開が期待されます。

 

2、長浜市歴史博物館への現地視察

地域計画の視察後、琵琶湖畔に面する長浜城歴史博物館を視察しました。歴史博物館は、年間9万人以上が訪れ、教育の拠点としてだけでなく、観光客も多く訪れます。同館の学芸員が同行し、企画展「近世の長浜~廃城とその後の長浜~」の展示解説を受けました。

秀吉によって建設された長浜城は、江戸幕府の「一国一城令」により廃城後も、長浜の人々は城跡を「古城」と呼び秀吉を崇拝し、廃城後も彦根藩の陣屋は設置されながらも独自性を持ち発展しました。琵琶湖の水運、北国街道の陸運の集積拠点として栄えていました。これらの様子が収蔵資料や住民の寄託資料の展示を通して、わかりやすく説明されました。企画展は、同館の収集資料、個人の寄託資料を活用し行われます。学芸員が資料の持ち主を探し、協力のお願いをし、持ち主と交流、信頼関係を確立する中で魅力的な企画展が実施できると説明されました。企画展の企画・準備には最低2~3か月、長いと2年は準備に必要ということでした。

学芸員が、古文書などを解読し、わかりやすく説明することで、難解な古地図、古文書が魅力的に住民に伝わるようになります。地域の資料の収集、保存、展示の専門家として、学芸員は欠かせません。学芸員が、収集した資料についてわかりやすく説明することで、毎年多くの観光客が訪れる魅力的な博物館運営がされていました。

 

3、今後の前橋市で生かすこと

前橋市には、まだ文化財の保存、活用に関する公的な計画がありません。文化財保存活用地域計画は、策定することで地域に散在する文化財の全容把握とともに、その保存と活用へ向けた課題を明確にすることができます。策定は住民説明が要件です。

本市の歴史的特徴を捉え、文化財を取り巻く課題、活用の道を住民とともに考え、発信するマスタープランとして「文化財保存活用地域計画」を作ることが重要と感じました。

 本市には、旧石器時代から近現代に至る貴重な資料があります。総社、粕川、蚕糸資料館など本市の資料館を多くの方々に利用していただくためにも、文化財の価値をより魅力的に伝え、適切に管理する専門家である学芸員の存在が大変重要と感じました。

 本市は、4世紀から7世紀にかけて多くの古墳が築造されました。古墳からは全国的にも希少な土器や埴輪、広瀬・朝倉の古墳群や大室古墳群は朝鮮半島とのつながりを伝える貴重な遺物が多く出土しています。総社古墳群と山王廃寺、上野国府跡など関連遺跡群は、古墳時代から飛鳥時代、古代国家の時代への変遷を現在に伝える貴重な史跡群です。律令時代の大国、上野国の国府が置かれ、近くには国分尼寺跡があります。平将門の乱など歴史的な舞台となりました。総社藩の秋元家が開削した天狗岩用水は、現在の利根西地域を潤す水源となっています。江戸時代の前橋城の遺構、近代の養蚕関連資料群、戦争の傷跡と復興にかかわる豊富な資料があります。これらの資料群は、すべて前橋市の今日の発展の基礎をなすものであり、先人の活動を伝える貴重なものです。

これらの資料を有効に活用し、文化財の保存、活用の拠点、市民に本市の歴史を伝える拠点として歴史博物館の整備も重要であると、視察を通して感じました。

 

参考資料 長浜市の主な博物館、資料館の入館状況(2022年度)

長浜城歴史博物館 90,119名(個人82,733名、団体利7,386人)

曳山博物館 28,489名

浅井歴史民俗資料館 7,085名

高月観音の里歴史民俗資料館 5,510名

慶雲館 46,685名(内一般観覧者11,466、盆栽展35,219名)

 

前橋市の指定文化財の数 318件(国指定19、県指定56、市指定243)

 

東京都港区の「福祉総合窓口」の運営について

東京都港区は、芝・麻布・赤坂・高輪・芝浦港南の区内5か所すべての総合支所(本庁に芝総合支所を併設)に昨年の令和4年8月から福祉総合窓口を開設して、複雑・多様化する区民の相談にワンストップで対応しています。

家族構成や地域社会の変容に伴い、複合的な悩みを抱える高齢者、障害者、子ども、生活困窮者の相談を、福祉分野ごとの縦割り体制で対応することが困難となってきたことが背景となっています。

このような中で、区は専門職を中心としたワンストップの相談体制の構築に向けた検討を行い、各総合支所の相談体制を抜本的に見直し、区民をたらい回しすることなく一つの窓口であらゆる福祉相談を受け止め、有効な支援につなげる「福祉相談窓口」を設置しました。

窓口は午前8時30分から午後5時まで3~5か所の窓口を開設し、保健師を含む区職員複数名、障害者基幹相談支援センター職員1名、高齢者相談センター(地域包括支援センター)職員1名が常駐して相談対応し、必要に応じて社協など他の庁舎外の機関とはリモートで連携しています。また、個人情報の保護などの配慮が必要な区民に対して、3室の相談室を設けています。

相談窓口を案内するために左のようなピクトグラムを作成してわかりやすく案内しています。4つのハートは家族、区が暖かく支援することを表現しています。

福祉総合窓口の支援の流れは、下の図表の通りですが、設置後の検証や改善は、課長級・係長級で構成する検証会議を随時開催して課題を共有し、業務改善や執行体制の拡充策を協議しています。また、人材育成をめざして、年間を通じて計画的に実務・教養研修を関係各課や地域団体と連携して研修会も開催しています。

また水曜日には手話通訳職員が常駐しているほか、常時、英語と中国語の通訳ができる職員も配置して相談対応をしています。

今回の視察を通して、前橋市にもこのような総合相談窓口の開設に向けての検討開始が必要だと感じています。

 

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