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日本共産党前橋市議会議員団

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議会報告
REPORT

2023 第4回定例会 長谷川薫議員の総括質問原稿

1、前橋市DX推進計画の問題点

 

(1)行政のデジタル化の目的

はじめに前橋市DX推進計画の問題点についてします。2021年に計画を策定以来、本市は全庁をあげて7つの重点事業に取り組んでいます。行政のデジタル化は、何よりも市民の暮らしの利便性の向上や福祉の増進に役立つ住民本位の取り組みを進めるべきです。

しかし、行政システムの標準化や各種申請手続きのオンライン化などは、市が保有する市民のデジタル化した個人情報を、民間営利企業に提供し、利活用しやすいシステムの構築にもつながります。

行政のデジタル化の危険な本質を認識すべきと思いますが、どのようにお考えか、答弁を求めます。

 

【提言】

市長は、この間、市政の最優先課題にデジタル化を掲げ、先日公表した市長選マニュフェストでも、「デジタル革命で無駄を省いて暮らしを便利に」と記述し、岸田政権のデジタル戦略を積極的に推進しています。

しかし前橋市は、あくまでもデジタル技術は住民サービスの質を高める補助手段として活用すべきです。国の言うままに進めるのではなく、自治体の本旨、住民福祉の増進に基づいて、市民合意でデジタル技術の導入を図るべきであります。

 

(2)地方自治制度の再編

次に、国に言われるまま行政のデジタル化を進めれば、福祉や教育などの市独自の住民サービス施策が弱まります。国への集権化が進み、道州制など大規模な圏域行政が促進され、公共サービスの提供が民間営利企業に分散され地方自治が大きく後退する危険が強まります。

また、自治体の行政サービスは窓口業務を含めて、地域の実情に応じて住民を相手とする対人サービスによって提供されています。しかし今後、行政手続きのオンライン化や生成AI・人工頭脳やRPA・ロボットの活用による窓口業務の縮小が進めば、住民の人権を守る機能が失われるおそれがあります。 

 指定管理制度や業務の民間委託よりも、さらに議会の監視も行政の責任や関与が弱まり、地方自治の侵害や衰退を招きかねません。このような地方制度再編の危険な動きを認識されているのかどうか、答弁を求めます。

 

【提言】

自治体業務にデジタル技術を導入することは、住民の暮らしと権利、地方自治や自治体職員の在り方の基本に関わる重要な問題です。市民合意なくDX推進を進め、結果として地方自治の縮小や自治制度の再編に結びつくようなことがあってはならないと思います。強く指摘しておきます。

 

(3)個人情報の保護

次に、個人情報の保護についてです。

国は「公益性」があると判断すれば、非識別加工をして本人の同意なしに個人情報を民間企業に提供することまで自治体に求めています。

また、わが党は繰り返し、個人情報が集まるほど、情報漏洩のリスクが高まることを指摘し、健康保険証などのマイナンバーカードへの紐づけや、マイナポータルの利用による個人情報の政府クラウドへの集積システムにも反対してきました。このまま進めば、警察など国家権力による国民監視社会も形成されます。

データの利活用が優先されるDX推進の取り組みの下で脅かされる個人情報の保護についてどのようにお考えか、答弁を求めます。

 

【提言】

行政のDXの問題点を指摘しましたが、答弁は全く危機感がありません。国や財界は、自治体の個人情報の保護行政を緩和・撤廃して、民間大企業の利益追求のために積極的に開放し、同時に国民監視社会を実現しようとしています。

本来、デジタル技術は「住民の福祉の増進」の観点から、十分な議論のもと、住民の理解と合意の上で導入されなければならないものであります。

拙速に行政のDXを進めれば、住民に寄り添い基本的人権を守るという自治体の責務が弱まり、個人情報の保護もできなくなってしまいます。いったん立ち止まって、市民参加でこれまでのDX計画を総括し、見直すよう求めておきます。

 

2、まえばし暮らしテック推進事業の問題点

(1)事業の評価

 次に、岸田首相が主導している、デジタル田園都市国家構想に基づく「まえばし暮らしテック推進事業」についてです。昨年度中に、同事業のTYPE3の事業採択を受けて、10種類の先端事業サービスの提供とデータ連携基盤整備が進められ「めぶくグラウンド株式会社」が設立され、電子個人認証制度の「めぶくID」が構築されました。

しかし、サービス利用は少数の市民にとどまり、今年度も、継続されたサービスへの市民の期待感は広がっていません。そこで伺いますが、この暮らしテック事業の事業効果をどのように評価し、今後どのように事業者と連携し改善を図ろうと考えておられるのか伺います。

【提言】先端的サービス利用のために必要な「めぶくID」の現在までの取得者は市民を中心に1000人弱にとどまっています。これは、前橋市が、今後の事業展開をめざしてデータ連携基盤の構築を最優先し、市民ニーズを把握しないまま企業任せでサービスをスタートさせたからではないでしょうか。対面遠隔デジタル窓口やシュミレーション運転データ活用による危険運転度合の測定などはいくら利用啓発しても、市民には有用性が感じられないと思います。率直に反省し、サービスの改善を急ぐべきです。

 

(2)新たな格差の拡大

 

次に「新たな格差の拡大」についてです。本市は、公共交通乗換案内アプリであるMaaSや貸自転車ノルベのアプリ登録者に対する利用割引を実施し、電子地域通貨めぶくPay事業も開始します。 

しかし、すでにマイタクの利用も含めて、いずれもマイナンバーカードを取得していない市民やスマホを使いこなせない市民が各種デジタル市民サービスから除外され、利用の格差や「行政の公平性」を侵害する事態が起きています。この問題をどのように考えておられるのか、答弁を求めます。

 

【提言】

答弁をいただきましたが、デジタルデバイド対策を進めても市民の間の格差は解決できません。岸田首相は「デジタル田園都市国家構想は、地域課題の解決やスマート自治体の実現で自治体職員も市民も利便性が向上する」と説明しています。

しかし本市が採択を受けた「暮らしテック推進事業」の実施状況を見ても、多くの市民が共感し利便性を実感できるようなデジタル事業となっていません。税金投入の公的事業で行政サービスの提供の上で市民の間に格差を拡げないよう強く求めておきます。

 

(3)地方自治の縮小

 

次に地方自治の在り方についてです。本市は、高齢者の見守りについては、民生委員や自治会よる高齢者の安否確認や地域包括支援センターや介護事業者による支援、さらに災害時の要援護者の避難誘導支援、高齢者のごみの個別収集事業による安否確認など、重層的な見守り支援が展開されています。

このような中で、民間営利事業者によるデジタル技術を活用した見守り事業の拡大は、地域力や行政施策の到達点を後退させる恐れがあります。各分野の施策を民間事業者が営利事業として担うこととなれば、行政責任が後退し、住民自治も弱まる結果を招きます。生活困窮世帯や低所得の方がサービスから排除されるなど、官民連携の下で展開される営利事業が全住民対象の福祉の増進をめざす地方自治の後退をもたらしかねなません。この問題についてどのように考えておられるのか。答弁を。

 

【提言】地方自治の後退はないとの答弁ですが、デジタル化の進行についてあまりにも楽観的な見方をされていると思います。この間、市当局は、「官民連携による様々なサービスが『めぶくグラウンド』が構築したデータ連携基盤の上で展開されることによって、市民の利便性の向上だけではなく、地域全体の魅力の向上が図られる」と説明しています。

しかし、国はマイナンバーカードを押し付け、行政手続きのオンライン化で「行政の効率化」の名のもとに自治体の窓口業務の削減を進めようとしています。国民の大多数の反対の声を無視して来年秋までに健康保険証を廃止して誤登録などのトラブルが続いているマイナ保険証に一本化しようとしています。さらに今後。遅くない時期に公金受取口座に続き、介護保険証や運転免許証までマイナンバーカードに紐づけて、事実上のカード保有の義務化・市民カード化をめざしています。

さらに国は、カードの保有率を地方交付税の算定やデジタル交付金の申請、配分に反映させる方針を表明しています。自治体にカード取得を競わせ、政府の思いどおりにならない自治体には制裁を加えるなどは許されません。

しかし、ひとたびデジタルDXによって民間営利企業に公共サービスを委ねれば、その担い手は低賃金の非正規や派遣労働者に置き換えられてしまいます。そして再び市職員による公共サービスを取り戻すことは困難となり、結果として地方自治を衰退させることになります。前橋市のDX推進に強く警鐘を鳴らしておきます。

 

 

3、電子地域通貨めぶくPayの問題点

 

(1)事業目的

「何のために地域通貨を発行するか」という目的について質問します。めぶくPayはスマホの「めぶくアプリ」から登録しなければなりません。マイナンバーカードによる個人認証ではなく「めぶくID」の登録が前提となっています。しかも銀行口座やクレジットカードなどからチャージできる「ICカード」などとの併用方式を採用せず、スマホによる決済方式に限定しています。 

これは、暮らしの応援や地元商店の売り上げアップを目的とした地域経済振興というよりも、登録が進まず1000人に届かない「めぶくグラウンド(株)」が交付する電子身分証明書である「めぶくID」の登録促進や同社が展開する今後のデジタル事業を応援する目的が優先されています。明らかに地域通貨事業の本来の目的を逸脱しています。どのように市民に説明されるのでしょうか。答弁を求めます。

 

【提言】

これまでのプレミアム付き商品券の発行や省エネ家電購入補助制度、さらに住宅リフォーム補助事業は明らかに物価高騰やコロナ禍の影響による中小事業者の経営支援や可処分所得の減った市民の暮らしの支援であり経済波及効果のある事業でした。しかし、今回のデジタル地域通貨めぶくPayの発行は、キャッシュレス決済の普及拡大と、めぶくアプリで発行すること自体が目的化しているのは問題です。少なくとも高齢者などスマホなどが苦手な市民も使える地域通貨の発行方式に直ちに改善すべきです。

(2)制度設計

いま、若年層を中心にスマホを使ったキャッシュレス決済が広がっています。しかし高齢化が進む前橋の現状は、まだ現金決済の市民が大多数です。

市民が納めた税金を投入してポイント還元キャンペーンを繰り返し実施しても、安定的な継続は難しいのではないでしょうか。

しかも、全国のデジタル地域通貨は加盟店から徴収する決済取引時の手数料が主な収益源ですが、めぶくPayの場合は、手数料を徴収せず市とめぶくグラウンドが負担し無料で運営すると加盟店に説明しています。すでに、この地域通貨事業に今議会の補正予算を含めて、すでに約3億円の事業費が計上されています。このような制度設計で継続的な運営が可能なのかどうか。税金を投入し続けることに市民合意が得られると判断されているのでしょうか。答弁を。

 

【提言】

 

市長のマニュフェストでは、めぶくペイで100億円が市内を回ると打ち出しています。「市内だけで利用できる、独自の決済手段」のため、市民1万人が登録しポイント還元分も含めて一定期間に一人が100万円の買い物をしなければ100億円が地域で回りませんに。

資金が地域外へ流出せず、地域経済内で循環することにより、地域経済の活性を促すことが可能となるとして全国的にで導入されたデジタル地域通貨ですが、多くの実施自治体の運用結果をみると、利用が進まず休止や廃止となっており、域内で広く普及し「成功」している地域通貨はのはのはほんの一握りにとどまっています。

 

理由は事業継続のための最低減の収益性の確保が難しいからです。

デジタル化すれば県費が減って安定的な運営ができると考えるのは楽観的過ぎます。安定的な運営は大手事業者のように必要な投資ができる資金力が必要です。マイナンバーカード不空が広がったのも2万円のマイナポイントを付与したからです。めぶくPayもキャンペーン委によるポイント付与がなくなれば他の大手キャシュレス事業者に戻るのではないでしょうか。

 

めぶくPayアプリを通じ自身で銀行口座やクレジットカードなどからチャージし、自治体など運営主体である㈱めぶくグラウンドがプレミアムを付与し、QRコード決済を通じて地元店舗で使用する決済金額のうち一定の割合をポイントとしてキャッシュバックし、次回以降の決済で利用できる、とするキャンペーンを続けることは無理なのではないでしょうか。

 

しかし、デジタル地域通貨においては、予算の制約があり、利用者に対して金銭的インセンティブという明確なメリットで利用を促す継続的な施策を取ることが市民合意は難しいと思います。出産子育て応援給付金の5万円も5%めぶくポイントを付与しますが、同じように市の他の事業でポイントをめぶくPayにつけることも市民合意が必要です。制度設計に無理があると思います。事業実施を保留することを求めて質問を終わります。

 

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