日本共産党前橋市議団を代表して、議案第52号令和6年度前橋市一般会計予算に賛成の立場から討論を行います。
小川市長は、「『前橋に、笑顔を。』という合言葉のもと、一人ひとりの市民に寄り添い、みんなが輝ける新しい前橋をつくるための予算を編成し、全ての職員と一緒に「五つの基本政策」の実現に向けて取り組みたい」と決意表明されています。
わが党は、市長が市長選で掲げた公約の実現をめざして予算化された新規事業に賛成するとともに、今後、これまでの事業を総点検し、効果検証を行い、必要な事業は継続し、改めるべきものは改めて、さらに市民の願いに応えるという政治方針を着実に推進されることを多いに期待しております。
それでは、わが党が予算案に賛成する具体的な4点の理由を順次申し述べます。
第1は、子育てと教育を最優先し、子どもの未来が輝く前橋をめざして、幅広く子どもたちを支援する予算化がされていることです。
とくに、市立中学校の学校給食費の6月からの無償化を決断し、4億1,905万円を計上するとともに、給食食材費の高騰分を給食費に転嫁せず、公費負担を一人当たり年間6千円から1万円に引き上げたことも評価いたします。
予算審議の中で、老朽化した西部および東部共同調理場の建て替えや改修に多額の予算がかかることを理由に、給食費無償化の拡充を懸念する質問や意見がありました。しかし、県内の他自治体も前橋市と同様に共通して給食調理施設は経年劣化による改修などの対策が求められています。
このような中でも、すでに県内35自治体のうち21市町村が一般会計の1%を確保して、小中全学年の完全無償化を実施しており、県内トップ水準の財政力を有する本市が、共同調理場の改修を理由に無償化の拡充財源が確保できないとは言えないのではないでしょうか。
今後、市長が実施を表明している全事業の総点検で、不要不急の事業を見直せば、さらに小学校の給食費の無償化を実施し、文字通り完全無償化に踏み出し、子育て支援を大きく前進することができると思います。
また、予算額3778万円で実施するひとり親家庭の高校3年生の受験料補助や、予算額735万円のヤングケアラーのいる家庭への支援員派遣事業は、様々な困難を乗り越えて頑張っている子ども達への温かい支援策であり多くの市民に共感される新規事業であります。
さらに、予算額約10億円の市内全20校の中学校と市立前橋高校体育館の空調設備設置および、産後ケア事業の訪問型の利用料1000円を無償化し、必要とする全ての人がお金の心配なく利用できる制度としたことも評価するものです。
なお、子ども基本条例の制定にあたっては、大人の事情や既存のルールを優先せず、子どもの権利条約に示された子どもの意見表明権を尊重し、子どもの最善の利益が第一義的に考慮された条例制定をめざすよう要望いたします。
第2は、安心して住み続けられる、誰もが暮らしやすい前橋に向けての施策が拡充されています。
マイタクの長距離利用者への運賃割引支援を1運行2千円まで拡充する制度改善案は、市民に大変歓迎されています。郊外に暮らすマイタク利用者は、現行の一運行上限千円までの割引きでは負担が重すぎるという声が上がっていました。今後、通院回数の多いマイタク利用者の年間利用回数を70回から弾力的に引き上げることを検討するべきです。
また、住宅リフォーム補助制度の予算が1000万円増額され6000万円に引き上げられました。市民にも建設関連事業者にも歓迎される経済波及効果の高い施策です。対象工事費の3分の1以内、上限8万円の現行制度をさらに拡充して補助金額を引き上げることを求めておきます。
第3は、経済の活性化と雇用の創出、働く人を支える前橋をめざす施策が拡充されています。
これまで中心市街地と市街化調整区域内に限定していた店舗改修や備品整備に助成していた事業を市内全域に広げるため、新たに市街化区域を対象とするために1500万円を予算化し、長年の商店経営者の要望に応えたことを評価するものです。
また、有機農業推進事業やセカンドキャリア就農支援事業、援農ボランティアなどの農業応援事業は、予算額は少額ですが、高齢化する農家や新規就農者への市独自の支援策です。今後とも、農業者の要望に沿った積極的な事業展開を期待するものです。
第4は、水と緑、歴史と文化、多様性が共生する、魅力あふれる前橋をめざす施策が具体化されています。
総社古墳群最古の史跡である遠見山古墳の用地取得などの整備予算約1億5千万円が予算化されました。長年にわたる文化財保護課の粘り強い調査活動の努力が国にも認められた成果でもあります。今後、古墳の保存や考古学に関心のある市民や全国の愛好者の方が訪れて古墳や出土品等を鑑賞できる施設整備も進めていただきたいと思います。
また、仮称、前橋空襲と復興資料館設立事業予算が約1億6,600万円計上され、今年度内の開館を目指しています、
前橋空襲体験者が少なくなる中で、学生や市民が参加したミュージカル「灰になった街」が繰り返し上演されるなど、戦争の悲惨さと平和の尊さを後世に語り継ぐ平和行政を多くの市民が求めています。また平和資料館の設立を求める長年の市民の運動も続けられています。開館準備にあたっては、前橋空襲だけではなく、今も続くロシアのウクライナ侵略やイスラエルのガザ地区への攻撃など、国際法や国連憲章を踏みにじる世界の紛争の問題点や国連で成立した核兵器禁止条約や日本国憲法第9条などについても、本市の平和都市宣言の観点にたち、児童生徒も含め多くの市民が学べるような展示や企画を行うよう要望します。
次に、予算編成の課題や予算執行上の問題点について5点の指摘をします。
第1は、市営住宅の空き部屋解消に向けての対策が後景に追いやられていることです。全管理戸数5680戸の34%約1800戸の空き部屋がありながら、修繕予算が全く増額されていないため、今後さらに建物の老朽化が進み、入居需要が冷え込むという悪循環が継続されます。修繕計画の具体化など市営住宅の長寿命計画の改定と維持管理予算の抜本増額が必要です。
第2に、千代田町中心市街地再開発事業に約12億2600万円が予算化されていますが、南部拠点地区で大型店出店が進み、新前橋駅周辺の再開発事業も同時進行しており、交通の利便性が悪い中心部での店舗やオフィス需要の将来的な見通しが不透明な中、保留床の面積が過大になれば売却が進まず、結果として事業を推進してきた前橋市が、財政を支出して再開発事業を支援する事態を招きかねません。したがって、中心市街地の賑わい創出一辺倒の事業目的で再開発事業をこのままの規模で推進して良いのか、改めて検討するよう求めておきます。
第3に、まちづくりでは、多額の事業費や事業期間がかかる江田天川大島線などの幹線道路整備が優先されるとともに、市内11地区で区画整理事業が同時施行されています。たとえば、平成30年に事業が開始された事業面積34㌶の西部第一落合土地区画整理事業はすでに約6年が経過していますが、事業進捗率は1%に届いておらず、安中線から国道17号に至るボトルネックとなっている狭隘道路の拡幅はいつ実現するかわかりません。
減歩を伴う面的再開発で道路を整備する手法は、多くの家屋の移転が伴うために予算もかかり事業期間も長期化します。
今、毎年、各自治会から生活道路補修や通学路の改修や安全対策に対する要望が毎年約1千件寄せられている中で、事業予算不足のために補修対応件数が約600件にとどまっており、道路整備方針や予算配分を抜本的に見直すことが必要です。
道水路整備や舗装改良事業予算を増額して整備する方が、市民要望に短期間で迅速に応え財政支出も少ないということも十分考慮すべきです。
第4に、DX推進の問題点についてです。市民生活を豊かにするツールとしてICT技術の活用を否定するものではありません。しかし、個人情報の保護やデジタルに弱い市民への対応や行政サービス提供の公平性などの観点で、これまでの本市の拙速なデジタル化推進は問題があります。
今、本市のマイナンバーカードの交付率が87%に達していますが、、これは高齢者支援のマイタクの利用をカード保有者に限定したり、国の強力な誘導策に追随して多額の税金を投入して期間内にカード交付申請すればにポイントを付与するなどの過剰な事業推進を行った結果であります。
そもそも、マイナンバーカードの取得はあくまで任意であり、市民の全員取得を前提とした市行政であってはなりません。しかし実際には政府はカードを多く普及した自治体に地方交付税を多く配分したり、暮らしテック推進事業のように初めからカードを持たない人をデジタルサービスから排除する施策を自治体に押しつけています。さらに、いま、国民健康保険証へのひもづけを決め、運転免許証や預貯金通帳との統合など、カード取得を全国民に事実上強制する政策を強めています。
以上の観点からも、㈱めぶくグラウンドが管理する電子個人認証である「めぶくID」の取得を前提とする「まえばし暮らしテック推進事業」や市税を投入してポイント還元などで利用拡大を進める「めぶくpay」の無限定的な事業展開は見直すべきです。
第5に、行き過ぎた税収納行政についても抜本的な改善が求められています。
今も、市収納課によって、市税や国保税の滞納者に対して、生活や経営の実態を十分把握しないまま、給与や年金、電気水道料金などの口座振替のためのわずかな預貯金、売掛金などを差し押さえて収納する強権的な滞納整理が行われています。
納税相談に出向いた納税意思のある市民については、生活実態を正確に把握し、一括納付を機械的に求めず、計画的な分割納付を認め、納税や換価の猶予などの納税緩和制度を運用して、生活再建を支援し、健全な納税者になってもらう収納行政に立ち戻るべきです。
とくに、収納課が税滞納者の勤務先の給与支払者に給与の差押えを通知し執行したために、解雇を予告された市民もいます。失業し生活困窮に陥って生活保護受給者となれば、滞納繰越金の回収は不能となり、生活扶助費の支出が増えるという結果を招きます。
多くの税滞納者は病気や失業などで生活に困窮しています。本来は最終手段である差押えの乱発をやめ、生活再建を支援すべきです。
第6に、群馬県実施事業への前橋市の財政の負担の在り方についてです。
今年度予算に県立赤城公園の整備費用の負担として、8億900万円が計上され、令和4年から支出した分も含めて合計12億2,300万円が支出されることになります。キャンプ場などの整備事業が完成すれば、前橋市が享受する経済波及効果が年間2億円予想されるとの当局説明もありましたが、前橋市の負担額が群馬県の負担額と同額ではあまりにも前橋市の負担が重すぎます。
さらに、敷島公園内の県営プールの建て替え整備事業の前橋市負担も負担が重すぎます。プールの木造の屋根の建設費20億円の県と市の2分の1ずつの負担で、今年度の予算計上は4,390万円です。
今後も経年的に増えて令和10年までの5年間の前橋市の負担総額は約10億円になります。
赤城公園もプール整備についても市は負担分の9割約18億円を市債で賄おうとしています。県と力を合わせて実施する事業であっても、市債発行が増えて市財政を圧迫することにつながります。
群馬県の平成6年度の一般会計当初予算は7816億円であり、豊かな財政力を持っています。マイタクや給食費の無償化については全く県からの財政支援が受けられない下で、県事業への市の過大な財政負担については、安易に合意せず抑制的であるべきです。
最後に、小川市長に要望いたします。市長選挙では市長が掲げられた公約に多くの市民が共感し、市民本位の市政への転換を強く期待しています。
わが党も、憲法と地方自治の本旨を市政に生かすとともに、市長の公約に沿った施策推進を積極的に応援したいと考えています。
とくに今後とも、少子高齢化が進行するだけに、子育て世代や高齢世代の市政に対する意見や要望を十分に聴取して、市民の暮らし、福祉、教育最優先の市政を進めていただきますよう強く求めまして、令和6年度前橋市一般会計予算の賛成討論といたします。